実態がほとんど知らされないままに開始された後期高齢者医療制度が案の定問題を起こしまくりです。実際非常に不可解な制度で、広報を読んでも従来と特に変わらない、と言うような書き方でさっぱり要領を得ません。
下記のコラムを読んでようやくこの"保険"ではない"制度"の成り立ちと問題点が明瞭になりましたので紹介します。
後期高齢者医療制度が「現代の姥捨て山」と批判される本当の理由 (辻広雅文)2008年04月
http://diamond.jp/series/tsujihiro/10024/
社会保障の専門家である西沢和彦・日本総合研究所主任研究員は、「これは、『制度』であって『保険』ではない。関連法律には、保険であるという表現は一切出てこない」と指摘する。保険であれば、運営責任者である「保険者」がいる。国保であれば、市町村が保険者である。保険者はその保険の財政責任を負わなければならない。保険者がいなければ、その運営主体は財政責任を負わない。つまり、給付抑制のインセンテイブが働かない。それが、最大の問題である。
(中略)
市町村が新制度の運営主体になるのを嫌がったからである。そして、財政責任など負いたくないから、「保険」ではなくなったのである
(中略)
運営主体は広域連合という“架空の地方自治体”
(中略)
実は、新制度の給付費に対する、当事者たちの保険料負担は1割に過ぎない。残りの5割は税金からの補填であり、4割は拠出金という名の支援金である。どこからの拠出金か。前述した4つの健康保険からの支援金である。つまり、勤労者の支払う保険料が移転されているのだ。
非常に分かりやすく書かれております。いつのまにか医療「保険」が「制度」にすり替わっているところ等、官僚による表面的なつじつま合わせのうまさに、ある面感心してしまう程です。しかも、県単位なら県にその組織を置けばよいのに、ちゃっかり広域連合なんて実体の分かりにくい組織を作ってポストを増やしています。
どう考えても早晩破綻して高齢者医療の切り捨てになるか、医療水準を保とうとすれば、保険料の大幅UPもしくは税金投入が必至な制度ですね。
しかし、国会で論戦が始まってもこの記事にあるような本質的な問題点が、新聞テレビ等のマスコミ報道では指摘されていないようなのが、また不思議です。
かつて保険の問題を経済的な面から提起していたコラムはありました。
「口を出すが、金は出さない」医療制度改革の実体 (内藤眞弓)2008年1月
http://diamond.jp/series/money_lesson/10006/
しかし、今の後期高齢者医療制度には反対の声が強いものの、医療費抑制は確かに必要で、現状維持では保たないのも確かでしょう。ただ、そういった制度改革は大体反対の声の方が強くなるので、できるだけ問題点が見えないようにして誤魔化してしまえという政府&官僚のやり方はどうでしょうか。国民の側もこれまでの日本的なお上にお任せ的な意識を変えないと。どこまでの保障をして、どの世代がどのぐらい負担するか、を考えるべきで、その機会をマスコミが提供してくれると良いのですが最近のテレビのバラエティ番組ばかりの低俗化を観ると、遠いですね。
Internetで色々な情報は手に入れやすくなったので、せめて自分で調べて自衛しましょう。
(資料)
「にいがた高齢者医療.com」(新潟県後期高齢者医療広域連合ホームページ)
http://www.niigata-kouiki.jp/index.html
図が多く、平成18年6月からの一連の活動を含め、運営の仕組みがよくわかる。
神奈川県後期高齢者医療広域連合<よくある質問>
http://www.kouiki-rengou-kanagawa.jp/07_shitumon.html
Q1: 後期高齢者医療広域連合とは何ですか?
A: 平成20年4月から始まった「後期高齢者医療」を運営する都道府県単位の特別地方公共団体です。(市町村等からの派遣職員等で事務を行います。)
広域連合は、各都道府県ごとに区域内の全市町村が加入して構成されます。