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フツーの見方

フツーの論理で考えれば当然だと思うことが、なぜかマスコミでは出てこない。そんな意見を書き残しておきたいと考えてます。

ネットブックをスペアナにしよう

2023-06-24 | Weblog

 スペアナ(WaveSpectra)でチューナ出力を見てると局によって高域のf特が大きく違う事が明瞭に見えて面白い。NHK東京だと20kHz以上も素直に伸ばしてる感じだが、ローカルFM局だと15kHz前後のLPF入れている所もある。まあ音質は高域よりは使用設備全体の性能で変わるのだろうが、概して高域伸ばしてる局の方が良い設備で音質も勝ると感じられる。
 ともあれスペアナはTunerのセパレーションやPilot漏れの調整には必須だ。
これまで WaveSpectra用に15.6インチのXpノートPCを使っていたがデカくて重く、移動や設置が面倒だった。
 現代では15.6型でも1kgを切るようになったが、最新の超軽量ノートを買ってもモバイルで使う用途がないなら勿体ない。そこで小型のノートを探して、ネットブック(Netbook)がちょうど良さそうだと考えた。
Netbookも時代の徒花と言えるのかな。「安価で小型軽量なネット端末」として一時流行したが、現在ではOSやCPUが古くて拡張性も殆ど無いため、最早モバイル+オフィス用途では使いものにならないから千円前後で投げ売りされてる。別途HDDやACアダプタを買っても2~3千円でスペアナが手に入る計算だ。

 NetbookのOSは WinXp か Win7 Starter が主流。性能的にも現代的アプリはほとんど無理だが、WaveSpectraは元々Win98で開発された(最終版はXp以降)ので問題なく動く。画面は10型程度でも測定器として十分見やすい。Atomでもしっかり動く。何より軽く小さい事が重要で、1kgに近い機種を狙おう。
最初期の8.9型は外形サイズが10型と大差ないし、後期の方が軽量進化してるのでベター。手持ちがあるとか格安入手できたなら mic入力のf特さえ20kHz以上伸びていれば画面は8.9型で問題ないと思う。
 当時のバッテリは大半死にかけてると思われるが、測定器なのでACに繋いで使えば問題ない。ACアダプタは電圧が合ってて電流容量の大きい物を中古で探して変換アダプタを使うかDCプラグを交換すれば良い。ノート用で主流の19Vが大半なので多分在庫がある筈だ。
 という感じで Netbookの仕様はスペアナと非常に相性が良い。利活用の道を開いてあげよう。

 購入する時にWin起動が明記されてる物を選べば簡単だが、個人情報保護の問題もあってOS入は出品自体が非常に少ない。旧いOSを持っててインストールする自信があれば出品の多いHDDが抜いてある物が安く買える。今は320GB以下のHDDなら数百円で入手できる。eMMCは寿命があるので交換容易なHDD機の方が無難。XpやW7の起動は割と速いし、立ち上げた後は休止モードで運用すれば良いのでSSDの必要はない。
 実はクリーンインストールより稼働しているHDDをデュプリケータか複製ツールで複製した方が楽。Netbookはどれも大体仕様が近いのでHDD入れ替えてもOS起動まではできる物が多い。

 後になって知ったのだが、Win7以前のOSは HDDの Advanced Format(AF)=セクタサイズを4096byteに拡張した物には正式対応してないので問題が生じる事があるらしい。ただ多くのAF-HDDは Advanced Format Technology(AFT)=512byte環境にEmulateする機能を持っていて、これならXpでも使える。大容量化に伴い現在市販のHDDはAFが標準になってるらしいが、AFT対応に関しては表面に記載がない機種もあるのでメーカー資料等で確認が必要との事。さらにXpではツールで4Kアライメント調整しないと書込性能が落ちるとも書いてある。Win7はSP1でAFTに正式対応。
私は全然知識無く単に安かった日立製320GBを購入したが、幸いAFT対応だったので現状Xpで支障なく使えている。書込性能の低下はスペアナ利用では問題にならないので敢えて調整する必要も無さそうだ。
 参考のため手持ちのHDDを10種位調べた範囲では非AFかAFT対応が主だったが、4Kネイティブが4TBの1台だけ見つかった。このタイプだとXp起動用では使えないので一応買う前に確認はした方が良さそうだ。

 ジャンク品ではメモリも抜かれていることもあるが、Win7でも WaveSpectraだけなら512MBで動いた。しかし仕様外になるので1GB以上を入れておいた方が無難。メモリは機種によりDDR2とDDR3(稀にDDR3L)があるのでその点だけ注意。これも探せば数百円で入手可能。

 なおパーツ部にネジ止めカバーのある初期の機種を除き、大多数はパーツ交換のためには本体を分解する必要がある。Netbookは拡張性が低く、本来ユーザは分解しない前提の設計になってるから分解方法は機種によって異なり、「ネット検索して分解手順が見つかる機種」を選ぶ方が無難だ。気づきにくい所にネジがあったりして予備知識無しだとプラスチック部品を壊すリスクがある。コストダウンのためにカバー類はほとんど爪固定なので分解・組立は慣れが必要だ。

 OSを新規インストールすると不足してるドライバも出てくる。PCメーカーサイトに当たってもネットブック用の旧いドライバはもう見つからない事の方が多い。
 ネット検索で出てくるサイト(DriverUpdateとか)でDLすると怪しいアドウェア入だったりする(そのアドウェアがXpだと動かないとか笑える所もあるが)ので、注意が必要だ。アドウエアを排除すればドライバ自体は一応使えるものもあるが、自己責任になるので十分注意が必要。
 やはり個別にパーツメーカーサイトからDLする方が安全。ただし型番を同定する必要がある。スペアナに最低限必要なのはグラフィック/サウンド/タッチパッド/USBのドライバ位なので他の無線やカメラ等のドライバでエラーが出ていても支障無い。
 でもまぁ探せる範囲で最新のドライバを入れておいた方が精神的にはよい。

 USBメモリはファイルコピーに必要なので絶対使えるようにすべき。Xpの場合、標準だと 2GBは読めるのに32GB(exFAT)は読めなくて当初面食らった。調べた結果、exFATファイルシステムドライバー(KB955704)を探して(MSライブラリでは見つからなかったので個人サイトからDL)インストして読めるようになった。現在はSDXC(exFAT)メディアの方が主流だからこれは必須だ。

 他の修正点として、機能とは関係ないがログイン背景や、プロパティでのメーカーロゴ等はメーカー関連のサイトから画像を探してきて差し替えた。機種名等の情報もXpならファイル(oeminfo.ini)、W7ならレジストリ(HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\OEMInformation)を修正した。やり方はネットで探せば容易に見つかるので省略。敢えてやる必要もない事だがきちんと機種名が表示されるとサマになる。
 W7Sはdefaultだと壁紙が変更できないが、標準壁紙は地味で面白くないので、壁紙変更ツール(銀杏)で起動毎に変えるようにした。同類のツールは他にもあるので自分で探そう。
 Winはバッテリの情報表示が貧しいので詳細情報表示ツールも入れた方が良い。私は Yuryu's Battery Informationを利用。通常はAC接続で使うが、短時間でもバッテリ駆動できた方が何かと便利だ。なお劣化状態によっては必ずしも正確な情報を返さない物もあるのであくまで目安。

 Win7はchrome(109.0.5414.120=W7最終版)やFireFox(まだ更新可)を入れれば一応ネットアクセス可能。ただし、OSサポート終了でリスクがあるのでネットには繋がない方が無難だ。セキュリティ自己責任の前提で、ネット接続すると内蔵時計の自動合せやMSネット認証ができるが、スペアナ機能には関係ない。
自動更新オンでネットに繋ぐと膨大なupdateがあるとMicrosoftに脅されるが、更新しなくてもスペアナ動作には問題ないので無視して良い。敢えて更新しようとしてもMS側の仕様が変更されてて途中で止まるから無駄である(実験済)。鬱陶しいUpdate警告はオフにしよう。AFTの絡みでSP1(KB976932+KB3138612)は当てた方が良いが必須でもない。

 Xpは MS update対応も終わってるし IE8ではWebアクセスすらできないので当然更新不要。実は Mypal(xp版)ブラウザを使えば何とかWebアクセスできるのだが、ネット認証には使えなかった。それにNetbookのパワーでは多くのサイトで過剰CMや動画再生が重すぎてイライラするので素直に諦めよう。必要なファイルはメインPCで探してUSB経由でコピーする方が楽。

 WaveSpectraの本家サイトは閉鎖されてしまったようなので、今だと個人サイトを探してDLするしか無い。でも比較的見つけやすいと思う。
 WaveSpectra自体のインストールは解凍して実行するだけ。ただ Programフォルダの下に installすると iniファイル更新が制約されるので、一般フォルダに入れた方が運用が楽。あと注意すべきは、realtekのサウンドドライバには音場補正機能があるが、スペアナとしては邪魔なのでサウンド設定でエフェクト類をオフにしておく事。
 後は、PCの mic入力は規格が明示されていないため、機種によってモノかSTEREOか Bias電圧が何V出ているか、自分で確認しておく必要がある。
 手持ち機種で調べたら、
'05年 東芝 dynabook TX/760 Xp L側=モノ入力 R側=Bias+2V これまで使ってきたデカくて重い15.6型ノート
'08年 ASUS Eee PC 1000H Xp ST.入力で各々Bias+2V→1V…測定中に変動大=故障? f特不良
'09年 Acer aspire one D150 Xp ST.入力で各々Bias+2.5~2.8V
'10年 東芝 dynaBook UX/28L W7S ST.入力で各々Bias+2.5V ←取説はモノと記述されてたが実測したらステレオ可
'11年 Acer aspire one 533 W7S ST.入力でD150とほぼ同じ
'11年 ASUS Eee PC X101H W7S mic+phone複合端子=分離アダプタ必要で面倒/入手時から画面が全く出力されず、復旧不可だった~出品時に通電okと書きながら点灯画面の写真はなかったので故意犯っぽい,ジャンク入札はハイリスクだ
'12年 ASUS Eee PC 1225B W7Home ST.入力で各々Bias+3.0~3.1V/画面が非常に暗い=バックライト劣化だろう
 という感じで、'09年以降発売のNetbookなら大体スペアナに利用できそうだ。

 最初の1台目だけでは復旧できず、複数落として練習を重ねて復旧テクを身に着けた。時代遅れのOSを動かすのは意外に手強かった。
 失敗を繰り返して気付いた点は XpとW7の切替では Biosの SATA mode設定が影響する事。AHCIはW7以降の対応なのでXpの場合はIDEにする必要がある。間違えると明瞭なエラーが出るわけではなく、延々と再起動のループに入るので、問題点に気づくまで時間がかかった。
 1000HではSATA設定自体無くW7で使うにはBiosをupdateする必要があった。
それらの注意点をクリヤすると一応起動した全Netbook(dyna-TXは互換性無)でXpもW7Sも起動できることが確認できた。ハード的にはどちらでも使える訳だ。

 Win認証は底面に貼ってあるPIDを使って W7ならオンラインで可能なはずだが、「不可解なエラー」が表示されて失敗する事もある。その場合は自動応答電話認証を使う。Xpでは今や電話認証しか手は無い。寧ろまだXpが認証可能な事に感謝すべきか。
予めPCにID変更の入力をした状態で電話するとスムーズに認証できる。私が試した範囲では電話認証で失敗した例はない。シールの字が非常に小さいので、紛らわしい数字とアルファベット(8とBとか)でミスった事はある。自動応答なのでミスしても気楽にやり直せる。
 プリインストールのXp/W7S/W7HのIDは互換性がなく上位互換でもないのでシールに書いてある通りのOSを入れる必要がある。新規にライセンス購入すれば問題ないが、今更Netbookに金を掛けるのは勿体ないだろう。認証しないと、警告が非常にしつこく表示されるので素直に認証した方が良い。買う時に自分が持ってるOSと合うシールが貼ってあるか要確認。スペアナ動作はXpでもW7でも全く問題はない。

 1225BとEPCX101Hは少し性能が上のマシンを比較してみたくて落としたが、結局スペアナは Atom+10型で十分なようだ。CPU性能が高くてもmic回路のf特で制約されるのであまり意味がない。小さく軽い事の方が重要。
新しい方が軽量化も進んでるから11型以上でも使えるがスペアナ用途では敢えて狙うメリットは薄いと思う。

 Mic入力は1000Hと検証不能のX101H以外のNetbookは24kHz程度まで応答した。機種によって高域レベルが微妙に異なるからf特はフラットでは無いようで、測定器としては校正できないので問題有りだが、tuner調整には相対変化が測れれば十分だ。
 1000Hだけは mic入力のf特が 8kHz位で急落してしまいスペアナとしては使い物にならなかった。初期Netbookはskype通話がメイン用途だったから音声重視で意図的に高域を抑えてあるのか、この機だけ故障なのかは、仕様にf特の記載がないので不明。
 ただ、私が落札したASUS機は皆どこかハードに調子悪い所があり、信頼できないメーカーという印象を受けた。電源電圧・プラグも一定しておらず(ACアダプタ欠品の出品が多いので)変換アダプタ作製も必要で面倒だ。
 一方、Acerは(バッテリやパーツの欠品はあったが)致命的なハード故障は無く、2台共スペアナとして使えたので、私としては Acerの方を推奨したい。ACアダプタも共通だった。
 東芝は筐体はプラ製でもHDDカバー部は金属製だったり全般にマジメな造りの印象。但しAcer/ASUSに比べると出品数が少ないし、HDDが抜かれていた物の場合、東芝固有のツールは入手困難。実際、FNキー等の挙動がネット入手の取説と一致してないようだ。OSの基本動作は正常なのでスペアナに支障はない。

 最終的に複数台のスペアナが使えるようになったので、ステレオ分岐アダプタを介して2台併用して L/R同時測定できるようになった。
 後に WaveSpectraを2つ立ち上げれば1台でもL/R表示可能と分かった。この用途だと画面が広い方が有利か。しかし同時立ち上げは netbookでは発熱で排熱が心配なぐらいの温度になったので長時間使用は危険と思える。短時間なら使えそうだが、同時測定を定常的に行いたいなら2台併用の方が安全と思う。
高価な最新型ノートを持ってる人ならそういう使い方もできるかもね。

 なお、マイクBiasは小電力だからアンプを壊す可能性は低いと思うが、絶対大丈夫とも言えないし、接続時にノイズが出る事もあるからアンプに接続する際はDCカットを入れた方が無難。
 私はたまたま手元にあったミニプラグ接続アダプタの中に積層セラCの1uF(超低音域は正確に測れないので0.1uF程度で十分かも)を挿入したDCカットアダプタを作った。接続ケーブルを切って作っても良いと思う。

 WaveSpectraの設定はほぼdefaultで問題ないが、周波数はリニヤの方が見やすい。録音サンプル数を上げると20kHz以上も測定できる。Netbookの帯域は24kHz程度までは応答するようだから 48000サンプルにして24kHzまで測定するとtunerの19kHz以上の伸び方の差が見え易い。CPU能力はAtom/1コアで十分応答。
 正確な再現性は検証していないが、WaveSpectraは長時間計測しているといつの間にか応答遅延が増えてる事があった。一旦録音停止して再スタートすれば直るので運用で回避可能。

 検索で見つかった同類のソフトも試してみた。慣れてるせいもあるが、tuner調整には WaveSpectraが一番使い易いと感じた。他のアプリはしっかり使い込んではいないので実は優れている点もあるのかも知れないが、現状置き換える気にはならず。

Spectralissime 1.0.1.3
 インスト先が固定。Xpでもアッサリ起動。L/R切替が不明瞭。横軸は20~20kHz固定みたい。設定には変更法は無いようで、帯域が20kHzかつ帯域分割数も240がmaxで pilot信号のピーク観測がしづらい。240分割でギリギリ見えるが、分解能不足でピークが平均化されているようだ。
紹介記事によるとWaveSpectraよりレスポンスがflatとあったが、tuner調整用には不向きと思う。
 普段グライコ風のサウンドディスプレイとして見せるのには良さそうだ。

Friture 0.49
 Xp~W7 64bitでは動かず。W10 64bitのデスクトップでは動いたが、WaveSpectraの方が扱い易い印象。

Sonic Visualiser for Windows V4.3
 Xpで起動正常確認。機能が多すぎるので単純なスペアナとしての設定法が分からず断念。

(オマケ)
 Netbookの他の利用法としてはUSBバスパワーで動くDVDドライブを繋げば可搬型DVD/CD再生機として使える。DVDなら速度はUSB2で十分。再生ツールは WMPや PotPlayer等、I/Fとして好みのアプリが使えるのでヘタな専用機より扱いやすいかも。内蔵SPの音質は今一だが、ヘッドホンやAMP内蔵SPを繋げば十分聴ける音になる。

 当初機種に合ったOSが入手できない場合でも何とか活用する手はないかとネットで情報を探し、Linuxをテストした。
LinuxはHDDインストールしなくてもUSB起動で使えるので実験は楽。ネットの解説記事を参考に、isoファイルをDLしてUSBメモリに入れ、NetbookでUSB-HDD起動すると自動的に起動/インストールが始まる。HDDインストールする場合はパーティション管理が必要だが、そこまで実験しなかった。
 各種テストしたがNetbookでまともな動作が確認できたのは、
xenial-7.5-simple-r1b.iso
bionicpup32-8.0-29-uefi-JP.iso
antiX-22_386-full.iso
 やはり軽量OSでないと、ギリギリ起動はしてもまともに使えなかった。私見ではpuppy系が扱いやすい印象。
 操作系は標準状態でWinやMac似で、直感的に使えた。ドライバもほとんど自動で設定され、無線IDを入れたらネット接続も簡単にできた。カスタマイズする知識は持ってないので defaultのまま使ってみたが特に問題なさそうだ。Linuxもいつの間にかずいぶん使いやすくなってた。
 アプリは標準で入ってるものでWebもDVDも利用できた。オフィスアプリも入ってる。個人用途なら十分使えるんじゃないかな。
 有益だったのはバッテリの詳細情報が出る事。前回充電の最大容量と設計値の比からどの程度劣化しているかの目安(信用できない情報を返す物もある)になる。後にWinでも類似のツールを見つけたが、標準で入ってる方が便利だろう。

 スペアナもアプリをインストールすれば使えそうだが、こちらはHDDにOSインストールしないとダメなようで失敗した。
 検索したら関連記事が見つかった。

無料ソフトでオーディオ分析。「Sonic Visualiser」で何ができる?
https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/1134161.html

 FritureのLinux版もあり、多分使えると思うが、最終的にWin起動に成功したので結局Linuxは本気で使うに至らなかった。

ChromeOSも動くかテストしてみた。何種か試したが、
android-x86-4.0-r1.1-asus_laptop.iso
 が何とか起動できたものの、応答が遅くフリーズしやすくて不安定。ネット接続は一応できたが殆どのWebで安全な接続不可と出る。Android-4.0では今やプレイストアに入れないのでほぼ実用性が無く没。4.4~9.0も試してみたが起動ロゴで数分停止状態が続き断念。
 現在のChromeOSサイトの認定モデルでは 32bitは対象外でメモリも最低4GBらしいのでNetbookは無理みたい。


FMチューナーはオワコンか まとめ編-5

2023-05-09 | Weblog

・A&D DA-F930-GD '87 ¥44.8K

 A&D(AKAIと三菱Diatoneの共同ブランド)も有名な高級チューナーを出してるがオークション人気が高くて手が出ないので、安く出ていたこちらを参考として落札してみた。ソニーのシスコン最上級の ST-V9900TV はかなりレベルが高かったので、この機種でも音の傾向は解るだろうと考えた訳だ。
BLUESS氏のHPに一ランク下の DA-F830の調整記事があったので参考にできると思ったし、ランクの違いにも興味があった。
 セット価格369,800円というバブル期シスコン GX COMPO MC-930 のタイマー付FM/AM/TVチューナー。銀に近い金色=シャンパンゴールドで側板付の外観はカッコイイ。価格的にもソニーLibertyに対抗する最高級ランクの位置づけのはずだ。ネットで情報を探したが総合カタログしか見つけられず、単体のSpecは不明。
 サイズは実測=383Wx73Hx340D(mm) ←他のシスコン機と比べ奥行が長い。ANT入力はFM/VHF兼用のF型+UHFとAMは端子型になってる。当時のTV用ANTをそのまま使える様に合わせたのだろう。
 カバーを開けて見たら、何と基板は BLUESS氏掲載の F830の写真と全く同じであった。IC名も部品配置も同一。単にケースデザインを変えただけのようだ。バブル期ならではの水増し商法か。確かに F830より一見高級感があるのだが、プラ製のサイドウッドもどきを外すと急に安物に見えるから不思議。ある意味巧みなデザインだ。
まあAKAIの規模で大手と競合するにはこういう商法も仕方ないのかな。バブル期は商品を価格別に各種揃えて売りつけるのが優先。買う側も見た目重視だったのだろう。

 到着時の状態は、電源SWがやや不確実で表示が暗め。手動TuneしてもFM/AM共受信不可。MuteもST./Monoも切替ボタンは無い。局メモリは12ボタンでランダム12局。電源オフでもメモリは正常に保持されてた。

 P-SWはコンタクトスプレーで改善。パネルの内側を掃除したら表示は少し見やすくなった。基板は電源ケミCの一部とスーパーキャパシタで液漏れ跡があった。中古ではよくあるレベル。
 BLUESS氏の記事に沿って調整を試みたが、FEのVT電圧が 90MHzで一応7.2V出てるものの時々変動し非常に不安定。FE内にトリマがあったので回してみたが関係なし。
 同調点の T7を調整しても TP3-TP4間が0.73Vまでしか下がらない。かなり状態が悪い個体だった。
 多分IFT容量抜けだろうと推測し、点検口無いので苦労して基板を裏返し、IFTにセラCをパラに入れてみた。20pF~100pFで試した結果、47~80pFの時に 0Vに調整できた。結構敏感だ。取り敢えず 47pFを付けて調整を進めた。これで一応全局受信可能になり ST.ランプも点灯してヤッタ!と思ったのだが、高周波側が非常に不安定。82MHz以上の局をしばらく鳴らしていると突然ノイズまみれになり音が途切れる症状が発生する。高周波になるほど発生頻度が上がる感じ。ANT系の接触不良を疑ってコネクタ類を挿抜チェックしたがダメ。ノイズとVT電圧の不安定化に相関があり、ユニット型のFEが壊れかけてるという結論に達した。一日以上通電してみたが安定化する様子は無し。
FEはしっかりハンダ固定されていて分解困難だし、TV系も通っててかなり特殊な構造のようで私には手に負えない。それに頑張るほどの機種でもないし。

 という事で正式に音質を評価できるレベルではないが、折角ここまで直したので比較的安定な低周波側で音質比較してみた。
 重低音の量感は V9900より上で良好。静音部で少しジリジリノイズが目立つ点で負けるがこれは劣化FEの影響かも。
555ESと切り替えると、細かい音がよく聴こえる点で負け。本機は線太めで細部が丸まる印象であり高級機には勝てない。でもジリNを除外すれば、十分音楽鑑賞に耐えるレベルでキレや力強さはシスコン機として上々と思えた。一応上級機らしさは確認できたと思う。
ただとにかく受信が不安定で、数日通電してみたが全く改善せず、完全ジャンク品としてお蔵入りと相成った。
 なお時計はACを1分以上抜いても時刻保持してたので瞬断程度には耐えられそうだ。ただし時刻はその間停止してるみたい。リセットされるよりはマシか。
 時計の調整点は見当たらないが正確だった。クォーツだから当然だよね。V9900の方が特殊だ。
 タイマー系機能は、BLUESS氏の記事にあった AKAI/AT-M712 と同じ設定法で正常動作確認。従ってタイマーとしては使えるが、デカくて邪魔。現状タイマー自体使う事もないし。

・日立Lo-D FT-303 '84頃 ¥38K

 中古店のジャンクコーナーで見つけ、外形サイズと外観の雰囲気があまりに ST-G5ソックリだったので、日立が松下のOEMを売ってたのか検証するため買ってみた。日立はまだ持ってなかったし。
 「足跡」にSpecが掲載されてた。定価から見るとST-G5に相当するのは上位のFT-505の方なのかな。でもサイズ的には303の方がG5に近い。
 購入時の状態は f=-0.1MHzズレで Auto-tuneし、ST.で音もクリヤ。局メモリも正常。中古状態は割と良い。
 計16局ランダムプリセットだが G5と違い 8ボタン+SHIFTキーで切替えるタイプで面白みは無い。ボタン選局後はch表示でボタン再押すると f表示に変わる。Pオン時もch表示で局が判りにくい。
 FM-ANTは同軸直結のみ。Tuneすると"LOCKED"が点灯するが SメータやdB表示は無い。この辺がエントリ級。IF切替機能は付いてた。
 カバーを開けると、基板の構成(PTの配置、SW類のパネル接続構造)は G5と激似だったが ICは全然違う。という事から推測すると、OEMではなく回路設計は日立が行い、パナと同じ組立工場に実装を外注したという所だろうか。当たってるかどうか不明だがメーカー間の関係もなかなか複雑なようだ。

 主要ICは下記の通りで G5とは全く異なる。
IC201:松下 AN278…FM IF Amp
IC251:松下 AN7273…AM tuner,FM/AM IF-amp
IC301:日立 HA1196…PLL FM MPX
IC502:日立 D1704C 531…データ見つからず→NEC UPD1704C=PLLコントローラーの同等品か?

(FM調整)
 調整記事は見つからなかったが、基板に(調整点の説明)も印刷されてて解り易い。TPとしてCRの足を指定してある所もあって生産性は低いかも。
FEはパック型で G5とほぼ同形状なので多分4連。ただし VT=7.90V@89.9M|1.61V@76.1MHz と電圧は低め。G5は約11V@90Mだった。正常値が不明だし、受信は良好なのでノータッチ。
TP2(FM IF OUT)≒1.3V ←ここが Sレベルのはずだが低レベルで飽和してしまうようで感度調整には使いものにならなかった。A-tuneに特化した仕様なのか。
FE内コア灰&T260赤 →感度調整点と推測するが、回してもTP2が殆ど変化しないので初期位置へ戻す。
T251黒&T252赤 →TP5(FM DISCRI CENTER)=0Vに調整 2コアあるので例によって音質調整も試みたが本機ではほとんど音質変化が感じられなかった。
R302(MPX. FREE RUN ADJ.) →TP6(76kHz)でfを測るのが正道だが例によって全局ST.になるよう調整…のつもりが、MPX-ICが優秀なのか回し切ってもモノにならなかったので中央にセット。
R309(MPX. SEPARATION ADJ.) →逆chレベル最小で LR共≧50dB達成
CP301黒 ここは説明がなく何の調整点か不明で触らず
CP302&CP303 説明は無いが形と位置からLPFと見て 19kHz min.調整で <-75dB達成
 なお電源部のP-TrがHS付いておらずメチャ熱(80℃位?)だったので手近にあった小さなアルミ板をネジ止めしておいた。10℃位は下がったと思う。メーカーも仕様に出ない所は手抜きだなぁ。

(AM)は低感度で音質も凡。少し調整を試みたがほとんど改善せず、早々に断念。

 FM音質は、他と比較しなければ特に不満なく聴ける。fレンジでは低音もよく鳴るがボンツキ気味で高域伸びはもう一歩。スペアナで見ると16kHzからユックリ低下してる。
 全般無難に再生するが KT1やFX711と比較すると線が太く繊細さ・分離で負け。アタック速度と飽和ピーク、キレ&SNも負けてる。
まあエントリ機だからこんなものか。メーカーもきちんと差別化してるのだろう。単に日立がチューナーには力を入れてなかっただけかも知れないが。

・ONKYO T-445XG '89頃 ¥39.8K

 本機は、ひろくんHPでは音質低評価だったが、検索したら長岡鉄男氏が優秀賞を出していた。ONKYOの高級チューナーは持ってなかったし、実際はどんな音なのか検証してみようと落札した。ONKYOのシンセチューナーは人気が薄いようで安く落とせた。
 T-445XGとT-445XXは全く同じ回路だとひろくんが分析していたが、長岡氏も双方に優秀賞出しているので、多分音も同じなのだろう。そもそもチューナーで振動対策なんてオカルトに近い。ただ長岡氏もスピーカーケーブルの振動で音が変わると主張してたので、超高級機器で耳の良いマニアが聴けば差が判るのかも知れないが。
私としてはクソ重いXXは扱いが厄介なのでXGを落札。

 到着時の第一印象は、他のチューナーより奥行が長くて邪魔。中は無駄な空間が空いてるので他社並に短く作れたはず。フルコンポのAMPサイズに合せたのかも知れないが他のチューナーとサイズが合わず、設置が面倒だ。
 音の状態は、FM-St.受信可だが f=-0.1MHzズレ。局メモリは問題なし。
カバー開けたら電源部が 78M15主体で構成されており、このICが異常に熱く触れない程(90℃位か)。大丈夫かと思い、Spec調べたらTop=-25~125℃なので設計上は問題ないようだ。しかし周囲の影響も考えると良い訳がない。とはいえHSは既に付いてたので改善は簡単じゃない。入力側に抵抗を入れて電圧を下げる手も考えたが、点検口が無いので配線変えるのも面倒で、結局そのまま。そもそもオーディオで三端子レギュレータは邪道だと思い込んでいたが、プロが設計してるわけだし、チューナーは電流変動が少ないので問題ないのかも知れない。

 ひろくんとBLUESS氏の記事を参考にFMの調整実施。FEの電圧は 76.1Mで4.0V|89.9Mで23.0V と記されていたが、調整してみたら却って不安定になったので初期値に近い3.6Vと22.9Vにセットした。
 同調点は記事では TP1-2間≦±20mV指定だったが、L123は超敏感かつ温度依存もある。三端子ICの温度影響を見るため、一度調整後にカバーして暫く鳴らしてからカバーを開けて素早く電圧チェックしてみると、やはり結構ズレてる事が分かった。但しズレてても受信は問題ないみたい。という事で実際に fズレがなければ余りこだわらない方が良さそうだ。私がTRYした感じでは、カバー開けた直後に±0.1V位に入るように調整すれば十分と思われる。fズレはここで解消。
 L125の調整も TP8(DET OUT)≦±20mV指定だが、ここも超敏感&温度依存大なのでカバーしたら簡単にズレる。開けた状態で追い込んでも意味がない。また±0.5V程度ズレてても正直音の違いは判らなかった。ここもカバー開けた直後に±0.2V位に入るよう合せておけば十分と割り切った。この L125とL124 の2点で音質調整が可能だ。
 なお基板にTP8が2箇所あり、DET OUTと書いてある方と無い方で区別する必要がある。ひろくんHPでは特に記載してなかったので最初惑わされた。BLUESS氏の記事を見たらちゃんと区別されていた。設計段階で同じTP番号付けるハズはないので基板の印刷ミスだろうか。
 Sep.も超敏感で、本来の R231&R232だけでなくPILOT CANCELの L202でも大きく変わるので同時に調整が必要だ。しかしかなり頑張っても55~60dBが限界で公称Specの68dBは出なかった。測定系の限界か、或いはSpec詐欺か記載ミスか。但し55dBでも非常に優秀だし、実際聴いても分離は良い方だと思う。
 その他、BLUESS氏の記事にあった高調波歪補正やAuto-tuneレベル調整はスルー。Sメータは4点表示だがリニアな応答で強弱局の区分もしっかり出たので十分使える。ひろくん記事と同じくアクリルパネルの照明が切れてたが、パネルの分解が面倒だし、T445XXと違ってXGは文字が点灯するので修理は放棄した。

 さて問題の音質だが、最初聴いた時は細かい情報(ニュアンスや余韻)を削ぎ落としてしまった印象。応答速度(SR)は高い。クリヤだがかなり艶消しの音。ひろくんの言う「輪郭がハッキリしない」とは異なる印象だが、正直面白くない音だ。こんな音で長岡氏が賞を出すとは信じがたい。
 そこで L124で音質調整を試みた。これまでは線が細い方が原音忠実だろうと考えて極力線が細くなるように音質調整してきた。本機でもその方向で調整をしたから響きが無さすぎて上記の音になっていると考え、反対に極力響きが豊かに出るように調整し直してみた。まともな測定器が無いのでこの状態が「2次側波形最大」と合致してるかは不明。

 響きが付いてきたら透明系で良好な音と思えてきた。情報量は十分、SN&Sepも優秀で、高SRかつ線が極細=余分な響きが少なく分離が良い、正にモニター的な音。
 FX711と聴き比べると、FX711はキラキラ感があり T445は凄くスッキリしてる。
響きが一番豊かに出るよう調整したにも関わらず、KT1より響きは少なく線が細く聴こえる。ソニーと比べて無色と思ってたKT1もT445と切替試聴すると響き豊かに聴こえ、音楽性を意識した音作りがされてると解った。
 マランツ/ST54と対極に位置する音で、比較用として面白い。得意分野も真逆で、オケだと少し艶が減ってスケールダウン気味だが分離は良くなって室内管弦楽団風の印象になる。一方、PfやFlのソロだと澄んだ音で非常に気持ちイイ。PfやFlは楽器としては正弦波に近い波形を出すので響きが少ない方がキレイに聴こえるのだろう、と勝手に推測してる。
 但し、響きを抑えたモニター系のSPと組合せるとやせた音になってしまうので相性が悪いと感じた。響きの良いSPと組合せれば十分常用機として使える。後は分離の良いスッキリ音を好むかどうかだ。

 結局この音が長岡氏が評価した状態と合ってるのかも不明だが、潜在力は優秀なチューナーだと思う。
 それにしても ONKYOチューナーは型番でランクが判らないので損してるんじゃないかな。445って半端な数だし、T-443となると低Specのシスコン機で数字の連続性も無くて紛らわしい。何でこんな営業戦略を取ったのか理解に苦しむ。

 


科学は生活の役に立つ (2)

2023-03-10 | Weblog

 さて誰もが生活上絶対に影響を受ける自然法則の具体例として、私は「熱力学第二法則」を挙げたい。表現法は色々あるが、いわゆるエントロピー増大の法則だ。
Wikipediaは余りに学者寄りな書き方で、非常に解りづらいので下記のサイトの方が解り易い。

熱力学第二法則 - 機械設計エンジニアの基礎知識 (ものづくりウェブ)
https://d-engineer.com/netsuriki/netudaini.html
※埋込リンクは悪意のあるサイトへの誘導もできてしまうので、疑いを避けるため止めました。面倒でも URL を選択→右クリック→移動 で参照して下さい。

日常生活においては、
熱は必ず高温から低温へ移動する
キレイな物は時間が経てば必ず汚れる方向へ変化する
エネルギーを使って仕事しない限り、上記と逆方向の変化は起きない
という様な観測事実は誰もが日常で経験していて、疑問すら持たないだろう。
より具体的には、
水が自然に温度分布を変えて湯と氷になることは無い。
整頓した物は時間が経つといつの間にか散らかってしまい、散らかった物は誰かがエネルギーを使って仕事(掃除)をしない限り勝手に片付く事はない。
 日照で湯になるのは太陽エネルギー吸収だし、濁った水が徐々に澄んでくるのは重力が仕事をしている訳で、無重力なら濁ったままだ。
 こういう経験則を科学的に定式化したものが熱力学第二法則だから、法則が破れれば誰もがすぐに気づくはず。人類史で反例の科学的記録がない以上、今後も世界はこの法則に従うだろうと考えるのが科学の立場だ。

「熱力学第一法則」~エネルギー保存則も当然重要だが、法則の前提となるエネルギー的に閉じた系(外部とエネルギーの出入りが無い空間)が日常生活で厳密に成立するケースは稀である。それにエネルギー総量が保存されるなら世間でエネルギー危機を騒いでいるのは矛盾に見える。つまり日常生活では「エネルギー」という用語を科学的定義ではなく、「人にとって使い易いエネルギー」と勝手に置き換えて使っている訳で既に科学から外れている。
地球全体でみても、日々膨大な太陽由来のエネルギーを吸収し、最終的にその全てを宇宙空間に放出している完全な開放系であり、地球全体においてはそもそもエネルギーは保存されていない。だからその一部を流用する形で、人類尺度での永久機関は作れても矛盾はしない。自然エネルギー発電は人類の実用レベルでの永久機関とも言える。太陽光発電を中世に持っていけば十分通用するだろう。風力発電はバレそうだが。

 第二法則に戻る。エントロピーは物やエネルギーの分散度合いを科学的に数値化する定義である。しかし日常生活では正確な定量評価は必要ないので、ざっくりとエントロピーの差が大きい(物の集中度が高い)場合は拡散が速くなるとでも考えておけば良いだろう。砂場をイメージするのが解り易い。砂山を高くすればするほど何かの拍子で崩れやすくなる。平らに分散すれば安定(平衡化)する。
但し真っ平らな状態だと今度はゆらぎ値の低エントロピー状態になるので必ず多少の凹凸が生ずる。自然界では適当なゆらぎを持ちながら平均値がバランスするのが安定状態だ。
注)ゆらぎをエントロピーで説明するのは正確ではないと思うが、私的には概念として連続してるように感じる。日常生活では科学的な正確さより概念的な解り易さで良いと思うのだがどうかな。要は何事にも必ずゆらぎ(曖昧さ,誤差)は存在するという事だ。現状がそのまま延々と続く事は寧ろ不自然=長くは続かない。

 日本語では、エントロピー=「乱雑さ」と昔教わったが、私は「均質さ」の方が本質に近いと考える。物が一点に集中した状態はエントロピーが低く、徐々に拡散して最終的に閉じた系の中でほぼ均質化すれば、その系内のエントロピーが最大となって平衡化するからだ。
日本では均質化と言うと良い印象で捉えられがちだが、エントロピー的には終焉状態だ。均質の中から飛び抜けたものは生まれづらい。日本人の価値観は終末思想好みなのか。
 余談はさておき、冒頭で汚れを例に揚げたのは日常生活における {掃除|洗濯|洗浄} は完全にこの法則に支配されている事を示したかったからだ。汚れが落ちるのは何故か。これは汚れが集中した物からキレイな物の方へ拡散する現象に他ならない。そして注意すべきは、一方的に移動するのではなく汚れが均質化した所で平衡状態になる。平衡化すればそれ以上いくら時間を掛けても一方だけがキレイになることはない。この「エントロピー平衡状態で終わる」点が第二法則の肝。
キレイ度を上げるのは閉じた系では不可能なので、系を一新し、よりキレイな物を用意してそちらに汚れを移す工程を繰り返す必要がある。

 洗濯の例で言うと、多くの洗濯機では 洗い/すすぎ1/すすぎ2 という様な工程表記になっていると思うが、実際は、すすぎも洗浄の一環であり、汚れ落としの観点で言えば 荒洗浄/中洗浄/仕上洗浄 と書く方が実態に近い。
 汚れは洗剤の力で落ちると考えていたら完全に洗剤メーカーに騙されている。水だけで洗っても水溶性の汚れはほとんど落ちる。
 洗濯機の原理は、水を撹拌して布を揉んだり洗濯槽に叩きつける衝撃で汚れ物質を布から剥がし、エントロピー差でその汚れ物質がキレイな水の方へ拡散するものだ。
では洗剤(主成分は界面活性剤)は何のためにあるか。油性の汚れに対し水との親和性を高める効果もあるが、一番は静電気の影響を弱める効果が大きい。一般的な汚れ物質は微小な絶縁体であり布地の方も帯電しやすい物だから静電力が強く働く。ミクロな世界では静電力は他の力(重力や分子間力等)より強く働くので、衝撃で汚れが浮いても静電力でまた布に付着してしまうと拡散されない。界面活性剤は布や汚れを取り囲んで静電気をシールドするから、再付着が抑えられスムーズに拡散が進む。
 洗濯機の工程としては、荒洗浄では洗剤の効果で静電気を抑えながら汚れを大体落とし、中洗浄では少し残った汚れと洗剤を入替えたキレイな水に拡散させ、仕上洗浄で再度入替えたキレイな水で汚れ&洗剤の平衡レベルを大幅に低減させる、というのが一連の流れだ。
 記事を書くに当たって、我が家の洗濯機を改めて観察してみたら、各工程で非常に細かく制御していて感心した。すすぎの前には軽く脱水を掛けてから注水して水の清浄度を保つようにしているし、すすぎも貯めと注水を切り替え、回転数も細かく変動させて汚れを拡散し易くしているようにみえた。多くの実験を通して最適化プログラムしてるのだろう。ここは全自動に任せた方が良さそうだ。

 洗剤の酵素パワーは洗濯機内ではあまり効果ないと思う。酵素はぬるま湯でないと働きが悪いし反応は遅いからだ。事前の浸け置き洗いに使えば効果があるかもしれないが。酵素は動物性蛋白質のウールやシルクにもダメージを与えるから余り強力な物も使えないだろうし、まぁメーカーも全く効果がない物を売る事は無いと信じたいが…。
 洗剤内の香料は、キレイな衣類を化学合成物で汚染する事に他ならない。洗浄効果が優先だから香料の量は最適化されず、アレルギー源にもなりうるので健康の観点では害の方が大きいと思う。
 とは言え実際に使ってみて結果が良かったと思えるなら使えば良い。実験事実が優先だ。

洗濯条件の考察
 
洗濯物を入れ過ぎれば、十分な撹拌ができなくなって汚れを剥がす効果が弱くなるし、水の量も相対的に少なくなるから汚れ落ちが悪くなる事は原理的に明らかだ。洗濯機の最大容量は守らなければならない。水量は過剰な分には汚れ落とし上は有利だが、節水とのバランスになる。全自動に任すのが妥当か。
 洗いの時間を規定より長くしたり洗剤を多めに入れても、メーカは上述のように実験でその機種における平衡化までの最適解を出しているはずなので、それよりキレイになる可能性は低い。
 水温を上げるのは、分子運動の汚れを叩く力が強まるので低温では落ちにくい汚れの洗浄効果は上がると思うが、平衡状態で終了する事は同じなので平均的なキレイ度が大きく上がる事は無いだろう。だから、すすぎ段階で湯を使っても大きな改善はない筈だ。
 手を掛けるなら、洗濯機を回す前に汚れの酷い部分(襟ぐりとか袖口とか)を洗剤を付けて集中的に揉み洗いするのは有効だろう。洗濯機の水流より手でゴシゴシ揉む力の方が強いので汚れを剥がす効果は大きい。

 洗剤を洗面器等で予め溶かしてから入れるのは、溶け残りが微粒子として布に絡んで残留するのを減らす意味では有効だが、最近の合成洗剤は水でもよく溶ける様に作られているので大差ないかも。天然石鹸では差が出る可能性はあるので試してみても良いだろう。
なお天然石鹸も界面活性剤には違いないので、量が多ければ自然環境に与える影響は大きい。洗濯回数を減らして洗剤使用量を減らす方が自然保護になる。

 節水狙いですすぎ1回にするのは、原理から見て汚れが少ない場合かつ拡散の速い洗剤でなければ洗浄不足や洗剤が残留するリスクがある、と科学的に考えれば下記のサイトの様なノウハウを丸暗記する必要がなくなる。

洗濯の「すすぎ1回」って?柔軟剤や洗剤は残らない? (コジカジ)
https://cojicaji.jp/laundry/laundry-tips/1879

但し、すすぎ1回より2回の方が正規分布的に予測すると平衡レベルがかなり下がる筈なのでできれば2回するのがベター。3回に増やすのは悪くはないが水消費に対しての効果は薄いと思う。
汚れが少ない物(ほぼ汗汚れ)だけであれば洗剤を少なめ(あるいは無し)にして洗い時間の短縮とすすぎ1だけで済ませることも可能だろう。

 風呂の残り湯を使って良いかという話では、「洗い」の時だけ利用可という回答が多い。これも原理から順当に理解できる。残り湯の汚れ具合に依るのは当然だが、人が入れるレベルのキレイさの湯なら日常衣類の荒洗浄段階であれば、節水や水温効果を含めて考えれば、使っても"害は少ない"と言う話だ。調べた範囲では東芝だけ 1回目のすすぎにも利用可となっていたが、通常すすぎ段階ではかなりキレイになっているはずなので余計な汚れを付着させる可能性があり、お勧めできない。新品に近いキレイな衣類を洗う時は確実に汚す方向になるので「洗い」でも残り湯は避けるべきだろう。
しかし実際に「すすぎ1」に使ってみて十分キレイになってると思えるなら使うのも良い。自然科学はあくまで前提条件下の話で、実際の現場では色々な条件が異なるから実験結果が優先だ。

洗濯にお風呂の残り湯って使ってもいいの? (ハイアール)
https://haier.co.jp/story/can-i-use-leftover-water-for-laundry/
 3)使っていいのは「洗い」のみで、「すすぎ」には使わない

ふろの残り湯で洗濯する方法は (東芝ライフスタイル株式会社)
https://faq-toshiba-lifestyle.dga.jp/answer.html?category=&page=1&id=591
 ふろ水は「洗い」と「1回目のすすぎ」に利用することができます。

蛇足)なぜ、洗濯/すすぎ と呼び分けたのか。確証は見つからなかったので推測だが、手洗いの時代は洗剤等を使って目に見える汚れを落とす工程のみを洗いと考え、その後は洗剤(または小さなゴミ)を水に流す工程と考えたのが由来だろうか。語感が似てる所から、川で洗濯していた時代まで遡れば禊(みそぎ)とも関係があるのだろうか…汚れと共に穢れも落とすというような。なお流水に汚れを流すのは常に低エントロピーの水に汚れを移せるので非常に効果的ではある。家庭でやると水道代が問題になるが。
洗濯機の時代になっても名称をそのままにしたのは技術者の怠慢か、あるいは、洗剤がない工程も「洗い」であるなら、洗剤って絶対必要な物ではないのでは、とバレるのを恐れたからか。
上述のように軽い汗汚れだけなら洗剤なしでも十分キレイになるはずで、それに対応した洗濯機も実際に販売されていた。しかし洗濯物の汚れ具合を予め調べ分別して洗うのは面倒→全部ぶち込んで全自動で洗う方が楽だから流行らなかったのだろう。

過去に三洋電機が洗剤のいらない洗濯機を開発したけど、洗剤メーカの圧力で消されたって本当ですか? (Quora)
https://jp.quora.com/%E9%81%8E%E5%8E%BB%E3%81%AB%E4%B8%89%E6%B4%8B%E9%9B%BB%E6%A9%9F%E3%81%8C%E6%B4%97%E5%89%A4%E3%81%AE%E3%81%84%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E6%B4%97%E6%BF%AF%E6%A9%9F%E3%82%92%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%81%97%E3%81%9F

 汚れが落ちる一方で染料が落ちないのは染料の分子が繊維と強固に結合しているため洗濯の衝撃でも剥がれないからだ。寧ろそういう特質を持った物が染料として選ばれて定着してきたのが歴史だろう。しかし染料と繊維の組合せは非常に複雑で染色技術の未熟や布地に対して適正な染料を使っていないと洗濯中に色落ちが起きる。落ちた染料は当然エントロピー原理で水に拡散して他の衣類と平衡状態になるまで色移りする事になる。元が白色だとそれが目立ち、色付だと目立たないだけで色移りは同程度起きてるはず。
色落ちは洗う度に徐々に減っていくが、平衡状態の繰り返しだから影響が完全にゼロになる事はない。一度色移りを起こした物は基本的に単独または色移りしても構わないという前提で洗濯するしか無いという結論になる。
下記のノウハウ集でも結局の所、予備実験や素材を調べて選別するしか無いと解りにくく言ってるだけだ。漂白剤で誤魔化すのは本質的な回避策ではない。最後はプロクリーニングのCMになっちゃってるし。

洗濯の色落ち・色移りを防ごう!予防ともしもの対策方法をご紹介! (長野都市ガス)
https://www.nagano-toshi-gas.co.jp/tips/2019/07/lose-color.html

洗濯物の色落ちや色移りの原因と対策10選 (リクリ)
https://diacleaning.com/rekuri/column/220805_101/

●洗濯物の条件
 近年になって、靴下や下着は裏返して洗った方が良いというハウツー情報を知った。それまで意識してなかったので目からうろこ。

洗濯物は裏返して洗ったほうが汚れ落ちがいい?裏返す手間も一工夫で解決! (ハイアール)
https://haier.co.jp/story/washing-clothes-inside-out-is-better-for-removing-stains/

【衝撃】洗濯物は裏返して洗うほうがいい!ただし例外あり! (家事タウン)
https://kajidaikou-hikaku.jp/%E6%B4%97%E6%BF%AF%E7%89%A9%E8%A3%8F%E8%BF%94%E3%81%97/

改めて考えたら合理的な話で、靴下や下着の内側は水の出入りが制約されるから部分的に閉じた系となり汚れの拡散が悪くなる。だからキレイにしたい面を表側にする事は理に適っている。靴下や下着は肌に触れている側に汗汚れが付くので内側を表にする方が良い訳だ。だから靴下・下着でも明らかに外側に汚れが付いてる場合ならひっくり返さない方が良いと判断できる。一方、上着に関しては普通は表の方に埃や汚れが付着するので裏返さない方が良いと解る。
ニットやセーターの毛玉や色落ちの問題は汚れとは別の話になる。汚れ落ちと繊維保護のどちらを優先するかという価値の比較だ。
と、ここまで書いておいてなんだが、現実に裏表でどれほど汚れ落ちに差があるかは正直不明だ。過去裏返さず洗濯していた頃も特に不満は感じなかったし、厳密な比較実験は素人レベルでは無理。科学的根拠を探し、専門家らしい人の発言は見つかったのでデマではないと思うが、具体的な実験データの記述はなかったので効果の程度は不明だ。

靴下や肌着を洗う時、「表のまま」「裏返し」どっちが正解? (ウェザーニュース)
https://weathernews.jp/s/topics/202106/040145/

【商品開発者が語る無印良品】靴下の正しい洗い方 (無印良品)
https://www.muji.com/jp/ja/stories/misc/519591

私としては原理的には正しい方向だし、裏返しで洗濯して今のところ特に問題も無いから一応継続してるという段階。各自で実践してみて良かった方を採用するのが正解だろう。何事も論より証拠だ。

 我が家では洗濯用ゴムボールも、衣類より重いので衝撃力を増やして汚れを浮かすという方向性は正しいと考えられるので使っている。反面、衣類へのダメージが増している可能性はある。洗濯機の設計でも考慮されていない物なので機体に悪影響があるかも知れない。これもまた実際の汚れ落ち差も明らかではないが、とりあえず悪影響も見えないので継続しているレベル。

 この様に分析を掛けて原理から考察してみれば、ハウツーを丸暗記して画一的に行うのでなく、"この話は科学的に合理的かどうか"→"実験結果と整合するか"→"現場における最適解は何か"と考えられるようになる。これが科学知識を生活に活用する思考法となる。
 日頃深く考えずに惰性でやってる事は結構多いのでネット情報は新しい視点として参考になる。しかしネット情報は玉石混交である事も確か。そこで科学的考察が役に立つ訳だ。
 科学的に根拠を説明できない情報についてはまず疑って掛かる。但し、その上でリスクの取れる範囲で実験してみて真偽を検証する。実験事実を何より重視する事が自然科学では原則。その結果から自分にとって有益な情報を見出す事が科学の利用法だ。

 


科学は生活の役に立つ (1)

2023-01-08 | Weblog

 オーディオはあくまで趣味なんで、本来語りたかったのがこちらのシリーズ。オーディオ関連もまだ色々ネタがあり、終わりが見えないので並行して始めてみよう。
 論文よりは柔らかく書いてるつもりだが、正確性も必要なので文章が堅めになるのはお許し願いたい。

 まず、世間でよく言われる「学校の勉強は社会では役に立たない」という話は絶対的に間違っている。大体本当に無駄ならば社会全体で膨大なコスト(教育予算+各家庭の教育費)を掛けて学校教育を維持するわけがない。
究極的には、教育費の大小が将来の国力を決める。教育の影響は数十~百年後に効いてくる。現在日本が先進国でいられるのは、40年以上前には国立大で極めて安く研究できた成果と言って間違いない。人口を減らし高等教育を高額化した日本が今後(発展途上でない)後進国になるのは避けがたい必然だ。

 亡国の大きな流れはともかく、個人においては科学はツールであり、使わなければ本当に無駄になる。折角学校で学んだ知識を日頃から使えていれば、役に立たないという意識は持たないはずだ。要するに科学的な思考をしていないなら知識が役に立たないのは当たり前なのだ。
 その辺を説明した本ぐらい既に出てるだろうと思っていたが、検索しても一向に見つからない事に寧ろ驚いた。クイズ的に身の回りの現象を科学的に解説した本はあったけど、雑学本に近く、日常生活に活かすという方向性では無かった。

Ref.1)「身のまわりの科学の法則/小谷太郎」(中経) ~忘れてる法則の復習には良い。切り口が新鮮なので面白く読める。かなり端折っているので厳密さを求めてはいけない。

 大学で生活科学という学科もあるが学習概要を読む限り、環境問題研究がメインのようで日常生活で直接的に役に立つとは思えない。Wikiを読むとそもそも方向性が違うようだ。
 科学の重要性は現代人なら否定しないだろうし、社会もその有用性を認めてるのに、実生活における活用が論じられないのが不思議でしょうがない。かくいう私も具体的に教わった覚えはないから、自主的に観察した日常の現象をこの様に科学で分析すると納得がいくというだけの話に過ぎない。
 誰も語らないから自分で書いてみるか、というのが発端。文章書くのは面倒なんだが思考の整理にはなるし、記録を残せば誰かが発展させてくれるかも知れない。
なお、先例が無い(見つからない)ので当然以下の分析は私の個人的見解になる。鵜呑みにせず、あくまで最終的な判断は自己責任でお願いしたい。科学者の基本は自分で考え、確認した事しか信じないという姿勢だ。
人の言う事を信用すると判断をした時点で当人の自己責任であり、私は経済的な責任は一切取らない事を宣言しておく。一方、論理が間違っていると考えるなら否定するのは自由、というより自説に正当な根拠があると思うなら批判・反論を行うのは科学者の基本だ。
私としても本筋に関わる間違いがあれば、根拠を示して指摘してもらえると寧ろ嬉しい。

 導入として、科学的知識が生活の役に立つ例を一つ。
 最近ネットで角箱の豆乳をカップに注ぐ時、注ぎ口を上にする方が注ぎやすいという雑学情報を見つけたのでやってみたら確かにその通りと感じた。口を下にして注ぐと脈流になって流れが制御しにくいが、上から注ぐとスムーズに出た。ただし量が残り少なくなると今度は注ぎ口を下にしないと注ぎにくい。しかもこれはマルサン製豆乳の場合で、キッコーマン製豆乳の場合は箱を押した分だけ出る構造なので、注ぎ口をコップに近づけて箱側面を押し、押しにくくなったら口を上に向けて空気を入れてからまた押す手順が正解になる。
 丸暗記だと、これだけの豆知識を個別に覚える必要がある。また他のメーカや、将来箱の構造が変わったら無駄になってしまうだろう。豆乳以外への応用もできるかどうか怪しい。
一方、科学的に分析すれば、「密閉容器内の液体と空気の交換が一番スムーズに行える方法を選べば良い」と理解できる。この知識であればペットボトルやガラス瓶にも直ちに応用できるはずだ。
 以上の説明は、現代の科学教育を受けていればスンナリ納得してくれるだろうが、空気の存在が発見されたのは人類史的には結構最近の話だ。

Ref.2)Wikipedia 空気 ←リンク切れやすいので自分で検索して欲しい
  「空気の発見/三宅泰雄」(角川) ~読者評高くて面白そうだが、未読なので ref.には含めない

風で物が倒れる事、水に入れば呼吸が出来ない事、等から当然空気の存在は解るハズと言うのは今だから言えること。空気の存在が実証されるまでには人類史でも長い期間が必要だったのだ。今から考えればコジツケとしか思えない「精霊の力」等が広く信じられていた時代も確かにあった訳だし。
 更に、その空気の影響で液体が出にくくなるという関係性も、直感だけでは解らない→真空、大気圧の存在、圧力の等方性といった“概念”の理解が必要になる。今は義務教育で教えられている筈だから具体的な公式は忘れても概念は何となく理解できてると思う。だから、「液体を密閉容器から出すには容器の体積を変えるか、液体と同体積の空気を入れる必要がある」という関係性がスンナリ認められるのだ。
これを全く科学的基礎の無い中世以前の人に説明しようとすれば、相当面倒な話になって結局「実際こうなるんだから全部丸暗記しろ」と言ってしまうのではないだろうか。

 この様に、科学、特に自然科学の原典は自然現象の経験則だ。その多くは「長老の伝承、おばあちゃんの知恵」の様な過去の経験から未来の予測に繋げる知識…知っていれば所属する集団の生存に有利に成る事だから当然生活に密着したものだった。
 ただし長年の蓄積で経験則があまり増えると覚えるのも大変だし、また場所や時期によって的中率が変わってくるとなると、できるだけ共通化/一般化するために、その本質を理解する事が必要になる。それが自然科学の始まりであろう。だから本来、科学は生活の役に立つ事が大前提なのである。

 逆に現代では科学に対して信用を高くし過ぎてるかも知れないので、常に意識すべきはその検証方法だ。この辺を少し格調高く書いたものがネットで見つかったので参考に。

Ref.3)「ゼロからはじめる「科学力」養成講座1(2009年度)/鈴木久男(北海道大学大学院理学研究院教授)」
 第1章 自然科学とは何か?
https://ocw.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/01/ScienceLiteracy1-2009-Text-01.pdf

 特に、「科学的方法とは?」の項で述べられている事が重要。科学とは、まず再現性のある観測事実があって、それを上手く説明できる仮説を立て、仮説に基づいて予測し、それが当たっているかを験証し、再現性高く間違いなさそうだとなった説を“法則”としてまとめたものである。
 研究の基本としては、自ら検証したこと以外信じないというのが正道だが、それでは余りに世界が狭すぎ発展しないから、科学の世界では論文を書いて世に広める事が必要とされる。論文は同分野の学者の査読を受け、更に公開された後、他の学者の験証(再現や応用)で正しいかどうかの試練を受ける。そうして否定されずに残ってきたものが正しい法則として現在認められている訳だ。掲載されたから正しいという訳ではない。
 また上述のように科学の法則は基本的に経験則だから未来永劫成り立つ保証は無い。明日突然法則が変わる事は絶対ないという証明は自然科学では不可能だ。但し過去に遡って銀河開闢まで同じ法則で説明できるなら、今後も続くと考える方が確実性は高いだろうという程度が信頼の基盤だ。

 余談になるが、この永続性の問題は神の存在証明にも繋がるという哲学もある。神が決めたからこそ絶対的な真理は永続するという訳だ。
特に、恐ろしく複雑に見える現象が美しく簡潔な数式で表される事が証明されると、神がこの様に決めたに違いないと信じたくなる気持ちも解る気がする。
まあこれは信じるかどうかの話になるので科学では立ち入れない。学者なのに神を信じる人がいても直ちに矛盾ではない訳だ。私自身は神の存在を信じてはいないが、否定できる根拠も持たない。

 さて、長年信じられてきた法則で説明できない事例が見つかっても直ちに法則が間違っているとは限らない。長期に渡って活用されてきて矛盾がなかったものであれば全く間違っているとは考えにくいから、法則の成立する条件が限定されるのではと考える方が合理的だ。その条件が解明できれば、範囲外の事象を説明できる新理論が必要となる。そうして生まれたのが相対性理論や量子力学。実際その理論は従来理論を包括するものであり、否定するものではなかった。その結果、厳密には不正確だと解った後でも日常的な出来事には古典力学で十分な精度があるから現在も利用されており、学校でも先に学ぶ。
 以上の流れから当然だが、科学で対象とする事例は実験や観察で再現性が確保できるものでなければならず、検証できない事象は科学では対象にならない。仮説を立てても再現実験が出来なければ証明できないし、逆に否定する事も出来ない。
よく超常現象番組に学者っぽい人物が出てきて「科学法則に反するから嘘だ」とか「独自の説で科学的に説明できる」と言うのは、検証できない以上全くナンセンスだ。科学の本質を理解していないとしか言いようがないので学者の肩書を外して出演してほしい。
 超常現象的でも蜃気楼やブロッケン現象の様に再現条件が解ってくれば、科学的な解明ができた例もある。データ蓄積により正確な再現条件が判るまでは、「現状では科学的には説明できない」と言うしか無い。
「月が暈をかぶると雨」というのも科学的な分析以前に、再現性が高かったから伝承されたのだろう。後に気象学的に解明されて実際に天気予測の目安にできる事が解った訳だ。一方で、気象はカオス現象と現代人なら理解できるハズだから外れても許容しなければならない。
 このカオスという概念も結構最近理論化されたもので、事象の関係性が解明できても結果を100%精度では予測できない事が科学的に証明されたという、文章で書くと何となく矛盾してるようで面白い。要は自然界には予測不能な事象で溢れているという事を科学が認めたという事だ。現代では必須な概念だと思うが、今の義務教育では教えてるのかな?

Ref.4)「決定されているのに予測できない未来-世界観を覆した数学理論-/細野雄三(京都産業大学 理学部 数理科学科教授)」
https://www.kyoto-su.ac.jp/project/st/st11_01.html ~興味を引く書き方で本質が解りやすい

 カオスでなくても、偉い人が言ってるから信じると言うのは歴史的に全く正しくない事は、地動説が教会だけでなく当時の学術的権威多数から否定されていた事からも明らか。学者だって人間だから金や名誉に目はくらむのである。
 現代でも学会内で影響力の強い教授達が科研費を貰うために官僚に協力して、より正しいと推定できる結論を選ばなかった例は多数ある。原発の重大事故は絶対起きないとか、ワクチンを射てば感染を抑えられるとか、確証は無いという事を実は知りながら、直ちに嘘とバレる証拠さえなければ平気で迎合する学者が多数いるのが現実なのだ。官僚に従うなら個人の責任を問われることはないから平気なのだろう。官僚はそういう学者を重用して自分たちに都合の良い結論へ導く共生関係だ。人の本質はガリレオの時代から何も変わっていない。
 また、ニュートン時代の光が粒子か波かの論争で、一旦は波と確定されて百年以上信じられてきた事が、現代では二重性として再認識されている。所が、量子力学を持ち出さなくても、光に粒子性が無いと夜空は真っ白で星は見えなくなる、と今は光の粒子性の証拠の一つとして解説されている。当時の科学者は干渉等で波動論が実験事実を正確に説明できたので、結局「不都合な事実」は無視したのである。学者だって人間だから間違うのである。
善意的に見るなら、星が見えるかどうかより屈折・反射を利用した発明品の方がその後の文明の発展にとって価値が高かったから経済価値の低い問題は先送りしたとも言える。
 結局情報の受け手としては、学者の言う事は一つの説に過ぎず、必ず反対や別視点の説も集め、それらを比較した上で自分で判断する能力が必要だ。明らかな嘘・詭弁は見抜ける程度の基礎知識は身に付けておかないと社会に出ても簡単に騙されるゾ。

 新しい知識を学ぶ際にも科学の基本的知識があれば理解も速いし到達点も伸びる。現実問題に応用するにも有利になる。
利息の計算で単利と複利の違いについても、指数関数や関数のグラフ化の知識を持っていれば本質の理解が早い。
酸やアルカリが一部の金属を溶かすことを理解すれば、料理で酢や重曹を使う時に鉄の包丁やアルミ鍋を使っても大丈夫なのか用心できるし、調理後すぐ洗う必要がある事も分かるだろう。線膨張係数の違いを知っていればホーロー鍋を急熱急冷したらマズイことも理解が早い。
 人に新しい事を教える時も、数学の基礎も知らない人間と話をするのは非常に面倒に感じる。現代の先端技術で数学を使わない分野はまず無いからだ。よほど我慢強く親切な指導者でなければ、「自分で勉強しろ」と知識を教えてもらえなくなるかも知れない。現代では最低限として義務教育レベルの科学知識は社会生活する上でも必要だろう。さもないと丸暗記できるレベルの仕事しか出来ない人生になってしまう。

 おそらくは歌の影響から、役に立たない代表の様に言われる三角関数はどういう意味を持つか。
身近な所では物の形状を数値化するのに有用だ。あらゆる形状も大雑把には単純な○△□の組合せに置換えて捉える事ができると思う。さらに四角は三角2個の組合せだし、丸は正多角形で近似すればこれも三角形の組合せになる。即ち三角形の辺の長さと角度を使って大体の形状は数値化できる。この辺と角度の関係性が三角関数に他ならない。辺と角度のいくつかを測れば他の要素は計算で出せる=楽する為の道具なのである。高い塔の高さが距離と角度から計算できるのが典型例。あらゆる計測に必須な概念なのである。
 さらには周期性を持つ現象は全て三角関数を使って現せる等、実用分野では必須。理論分野では虚数を導入すればlogやexpも統一的に解釈できる超スゴイ世界(オイラーやガウスが活躍したのは何と18世紀だ)に発展するが、まあこれは一般人の実用性からはかなり遠いかな。私も完全に理解したとは言い難いし、日常で使わないからほとんど忘れてるし。

 要するに本質を理解しない内に、学校ではいきなり公式を覚えさせられるから拒否反応で身に付かないのだろう。
 公式も基本的に道具だから覚えてるだけではダメで、使い方が身に付かなければ役立たない。公式よりはその概念を理解する方が本質だ。多分こんな関係性だろうと見当がつけば、公式は調べれば見つけられる。
 その本質を見抜くには日頃から自発的に"日常生活を科学的に分析する習慣"を身に付ける事が早道になると私は考えている。

 次から実際日常的に有用と思える例を挙げていこう。(という予定)

 


FMチューナーはオワコンか まとめ編-4

2022-11-20 | Weblog

・DENON TU-950 '85頃 ¥49.8K

 DENONのシンセとして型番からは最上級のはずだが、人気はなかったようで「足跡」とDENONの総合カタログ以外にはネット情報も全く見つからなかった。オークションで安く出て競争もなかったので、DENONシンセの実力を確認するため落札してみた。
 さて初見の感想は、デザインは薄型でスマートだが、J75や後述のT-X7に似ており発売年からすると旧式感。脚はプレス加工、ANTは同軸ケーブル直結型で、ここも時代遅れのチープ感。プリセットはAM/FM合計で8局であり少なすぎ。これでは他社(ST-S333ES '84発 ¥49.8K とか)と比較したらマニアは選ばないだろう。

 到着時の状態は、選局ボタン4のランプが切れてたのと一部SW反応が悪くなってたが、メモリは正常でパワーオフオンでも保持。しかしMEMORYボタンが選局と同形状かつ同列に並んでいて間違って押しやすい。緑点灯するのでミスに気付くがキャンセルは効かないようで消えるまで操作できないのでイラっとする。
感度は悪いながら一応正常周波数で受信したので本質的故障は無いようで一安心。
 カバーを開けたら中には平行ケーブル配線が多数這い回っており、基板の調整箇所も一部隠れてる有様。これでは組立も調整も手間がかかる上、トラブルも起きやすくてコストダウンが難しいだろう。ひろくん記事で「基板の作りが良い」と書いてある意味が、この悪例を見て初めて理解できた気がする。
 あと気になったのは、HS付のパワーTrがかなり熱く(70℃位?)なる点と、傍の大型ケミCが僅か液漏れしてた事ぐらい。中古状態としては大きな問題は無さそう。

(使用IC) の型番から機能を検索すると、
TC9147AP FM/MW/LW Digital Tuning System
HA12412 FM IF(クォードラチュア検波)
HA11223W PLL FM Stereo Demodulator
 HD14027BP J-K FLIP-FLOP
 ?メーカ不明 4558D Op-amp
LA1245 AM全般
LB1417 AC/DC Voltage Level Meter
TD6301AP 周波数表示ディスプレイ用ドライバー
 という感じで、至って標準的なFM/AMチューナー構成のようだ。
 ネットには調整記事がなかったのでICとの相関からの推定と試行錯誤で調整した。ひろくん氏と違い、回路追って解析した訳ではないので極めて適当。あまり信用しない方が良いかも。
(調整箇所)
FEの前段部…本機のウリらしい SSS回路と見てパス
・FE横Vt端子…VT確認 76MHz=2.88V|90MHz=20.8V 受信はできてるので確認のみ
・FE内のTC  感度=TP5電圧がmaxになるよう調整
・VR2|T1…多分Narrow関連 TP5がWideと整合するよう調整,Nar.は普段使わないので適当
・T2黒|T3白…同調点と歪 TP1~2間≦±5mV 黒=同調点,白=音質として調整
IF部:
・VR4 IF接続段? TP5最大←変化はあまり無く調整基準が判らないので触らない方が良いかも?
・VR402/403 多分歪補正? 回しても音の変化は殆ど判らなかったのでほぼ中央へ
・VR401/404 メータレベル? 触らない方が良,私は強弱局が判別できる様に微調
・LP201(3色コア) ノータッチ
MPX付近:
・VR201…VCO TP2=76kHzが正道だろうが、全局ST.になるよう合わせる方が簡単
・VR202…Pilot(L/R) スペアナで19kHz最小化 ≦-60dB達成
・LP202/203…多分LPF? キャリヤリーク十分低いのでノータッチ
・VR203…Sep(L/R) スペアナで逆ch最小化 ≦-50dB達成
AM部: ←使わないのでかなり適当
・T305|TC303|T301|TC302…トラッキング調整? TP5max
・T303…IF調整 TP5max
・VR3…不明 受信音質変化アリ←×{Muteレベルやメータ感度とは無関係}
 AM感度調整では Sメータはすぐ飽和するのでTP5電圧で判定する必要がある。

(ANT換装)
 実際使ってると、薄型軽量なため同軸ケーブル直結だと大変扱いづらいので F型へ換装した。背パネルを外し、ANT端子板のハンダを溶かして外し、同軸固定部を取り、その穴をヤスリで広げて F端子を固定し、ハンダ付け直したら無事受信成功。ずっと使いやすくなった。コストも大差ないし'85年にはF型も一般化してた筈だから採用しなかった方が不思議。
 選局ボタンの接触不良はスプレーして何度かpushで徐々に解消。ランプ切れは常用しないので放置。

 調整後の音質は割と良好で単独では不満ないレベル。透明系の音質で低音は少しボンツキ気味だが量感は十分。情報量もまぁ十分。だが、KT1と切替比較するとヌケ&アタック、静寂感で少し負け~全てに90点という印象。90点だから十分上級レベルとも言えるが、特長も無いので私の常用機としては没だ。
 ただ長期放置でも調整ズレが少なかったから安定性は良い(良部品を使ってる)のかも知れない。

(SSS回路とは何か)
 DENONはシンセでは完全出遅れで、カタログによれば本機は「SSS回路(Super Searcher System)搭載で混信ビート排除」を差別化のウリとしている。だが私の見た所、可変式のトラップ回路にすぎないのではないだろうか(取説も無いので全くの推測)。
特定周波数だけを減衰させるトラップフィルタの中心周波数を変えられる回路がFE前に入ってて、SSS=オンにするとツマミで吸収周波数をSCANでき、その時の受信信号状態をSメータで表示するシステムと思われる。ツマミ動かしていくと局の周波数に一致したと思われる所で Sメータが大幅に減少する事が確かめられた。
しかしツマミ位置(相対fなのか絶対fなのか未験証)はメモリはされないだろうから選局ごとに一々手合せが必要なのかな。放送fの近くに混信fがある特殊なケースには有効かも知れないが、結局FMは多局化しなかったので現状使う場面はない。そもそも多局化対応をカタログに明記してるのにメモリがAM含め合計8局しかないのは完全に矛盾だ。商品戦略的にオカシイ。
 もし他に見落とした機能があるならば申し訳ないが、今の所無用の長物だな。
(追記)
 追加実験した結果、SSSのツマミの変化は吸収周波数の絶対値のようだ。ある局でSを最小に調整すると数MHz程度で隣接する局でもS値が下がる。遠い局になると影響も小さくなる。従って妨害波が複数ある時は毎回調整する必要がある訳だ。寧ろ強電界用のRF-ATTとして使えるかも知れない。いずれにせよ、使えるケースは非常に限定的だろう。

 結局、KT770やKT1に2年も遅れ、基板の作りも含めて、これでは勝てない。以降DENONが高級機より普及機に注力したのは方向として正しかったと思われる。単体チューナーの国産メーカとして最後期まで頑張ってたし。

・Victor T-X7 '80.8発 ¥54.8K

 FX711入手後なので関心は薄かったが、VictorオリジナルのPTL検波の興味と安くてTU950と同梱可能だったので落札。
 80年発売ということはまだアナログの方が音質は上と言われていた時代。Victorはシンセに先進的で、初号機 74年 JT-V20(¥160K)の後、78年に T-7070(¥160K)を出し、本機で遂にコンシューマー価格帯にもシンセを投入。PTL検波という独自技術も発明して極めて意欲的だった。Sony ST-J75が同じ年で互いにライバル意識かな。YAMAHAはやっとシンセ初号機 T-6を出した頃で、Specからも技術では敵じゃなかった。デザイン面ではビクターの方が模倣的だったが。
(参考)
Vintage FM Synthesizer Tuners http://nice.kaze.com/av/tuner_hist.html
 なおこの表で T-X7は1981年発売となっているが、調べたら'80年8月というデータがあり、こちらの方が正確そうだ。

 初期状態は、Auto-tuneも効いて音は正常そう。当時としては高級ランクだから良部品を使っていたのだろう。パネル照明は切れてた。ボタンは一部青錆あり~この頃の物はメタル製なのでしょうがない。メモリは正常。時代的に標準なのだが ANTが同軸直結型なのが残念。後に TU950同様にF型換装して非常に使いやすくなった。
 ひろくんの記事に沿って調整。PTL検波では同調コイルが1コだけで音質調整の余地が無い。T101は高調波歪調整だが、いじっても音質変化は小さかった。一例だけだが、PTLは調整の再現性が高いと言えるのかな。

 照明が無いとやはりパネルが締まらない印象なのでLEDに換装。通常の低輝度LEDで十分だが、AC10Vが来てるので保護diodeと抵抗を直列に入れる必要あり。ひろくんは青にしてたが私は白(やや暗め)の方が好みだった。元の電球に薄青のCAPが付いてるので、そのまま流用すれば僅かに青みが付く。
 ボタンの錆はJ75同様に錆取りクリームできれいになった。

 音質は澄んだ音で軽く独特の心地よさがある。電波が弱いとSNが落ちるが、ある程度強ければクリヤ。VR上げると高域のサーというノイズが聞こえるのもJ75同様に高域フィルタが掛かってないからだろう。
 基本はKT1と似た透明系で線が細く明るい音。静寂感はKT1比でスタジオ的だが実用十分。KT2と比べると深い音&高分解で少し負けるかな。低音はKT系より引き締った感じで、この頃から既にビクターの音作りの特徴が見える。アタック速度は FX711と比べるとかなり遅い感じを受ける。やはり時代の差はある。
 しかしKT1の3年前に、この音質は立派と思う。デザインもアナログ機と比べればグッとスマートだ。「回顧録」に載ってるからマニア的評価はあったと思うが、それほど売れたという情報はない。PTLもすぐ消えちゃったし、何か問題があったのだろうか。
 現在でもBGMなら使えるレベルだが、KT1を置き換える力はないのでお蔵入り。

・SONY ST-S555ES '82発 ¥65K

 これも既にESXがあるので関心低めだったが、専用出力ケーブルが欠品という事で安く出てたのを見つけ、試しに入札してみたら競争なく落札できてしまった。ひろくん記事によれば単なるI-V変換回路なので簡単に自作できるハズ。
 初期状態は、無事通電して表示はok。穴開きカバーを開けると例によって埃一杯で清掃が大変。基板は、HSが銅板を曲げた物だったり、抵抗アレイがICでなく個別の抵抗がズラッと並んでたり、ANT切替やMuteが機械式リレーだったりと時代を感じる構成。基板の部品表記は明瞭でVRにも抵抗値が貼ってあって分かり易い。当時は修理や再調整も視野に入れてたからかも知れない。

 音出しのため、出力コネクタにミノムシで抵抗を終端して、万一壊れてもいいAMP内蔵SPに繋いでテスト。さて音は…ANT-A/B共全く受信してない模様で、Muteは無関係=小さなノイズは出てる。
 安い物には訳がある。こりゃ失敗だったかと思いながら、ひろくんHPに沿って調整を試みた。まずFEの電圧:TP3=0.3Vしかない。半固定VRを回しても変わらず、悩んだ挙げ句思い切って回し切ったら急に約2VになってSメータが信号表示した。Auto-tuneも効くようで音はノイズまみれだがかすかに放送が聞こえ、修理の可能性が出てきた。VRをちょっと回すといきなり0.3Vに落ちるのでVRが壊れてると判定。VRに1kΩと書いてあるので手持ちの1k半固定の足を基板に合わせて強引に曲げて交換したら調整可能になった。ヤレヤレ。
 本機ではFEがユニット構成になってて、ひろくんHPでDLできるサービスマニュアルにも内部は触るなと書いてある。内部を見るとLやTCもあるので経時変化は無いのだろうかと心配になるが、実際電圧を合せただけで全局問題なく受信できた。ちょっと納得いかないが良しとする。
 ANT系はリレーが酸化してると思われ、A/Bで感度が大きく違うし切替えてると毎回変化し、たまに良くなる。困ったものだが何度かTRYすれば一応感度上がるので先に進む。
 同調点を調整し STEREOも点灯するようになったが、音は相変わらずノイズまみれ。
ひろくんHPに記載のあるレシオ検波のIFT容量抜けと症例が似てるので、その修理例に習ってIFTにセラCを付けてみよう。本機は点検口があるので作業は楽。IFT102の2次側に20pFをパラってIFT調整したら音質が大きく改善。さらに ST.が消えない様に注意しながら赤コアで音質調整、黒コアで 0mV調整。これを数回繰り返してほぼ直ったようだ。
 VCOは全局でST.になるように調整。19kHzやSep.もスペアナ見て調整し高特性を確認。苦労させられたが非常に良い音になった。

 最後に、I-V回路を何とかしなければならないが、外付けは作るのも面倒だし特殊な4Pコネクタも無いので、内部に作り込む事にした。
ひろくんの解説によると元回路は620Ω+10uFとなっている。この出力CはDCバイアスカット用かと思っていたが、実測すると無信号時DC出力は0mVで直結しても問題ないようだ。コネクタの短絡事故に対しても、回路図を見たらMuting時にリレーでショートしてる位なので問題ない筈。万一外部から電圧が掛かった時に内部を保護するのが目的だろうか。私も安全のため Cは一応入れる事とした。昔よりケミCは格段に小さくなっているので十分内蔵可能だ。
 ミノムシ接続で予備実験:直結の音を基準として、手元にあった緑MUSE=無極性4.7uFを入れると少し荒々しく力強い印象。4.7uF*2個パラにすると高域が少し落着いてバランスは良くなり艶感も出るが分離は低下する印象。電源用ケミC(22uFを逆極性直列)だと少し高域の滑らかさが落ちる気がしたのでやはり音響用の方が優秀なようだ。
次にケミCの代わりに積層セラC=10uFにすると高域も低域も力強く、直結に近い印象なのでこれを採用する事にした。4.7uFもテストしたが差はあまり判らなかった。まあ元と同容量の方が無難だろう。
 実は当初からの予定通りで、セラCはf特や耐久性でケミCより絶対的に優位。今や10uF以下のケミCは積層セラCで殆ど代用可能と考えていた。中国製のセット品だが、多分中身は日本製と推察。50V・10uFの積層チップCなんて日本しか作れない筈だから(最近調べたらサムスンやYAGEOも出してた=日本の先進性も薄れてきたようだ)、それをコーティングしただけだろう。LCRメータでの実測は8uF位で許容範囲。なお6.3V・100uF品も買ってみたが実測したら31~35uFだった。容量は測定条件で変わるから不正とは断定できないが、耐圧も低いのでこれは使用せず。セラCは電圧を掛けると容量が下がるので耐圧が十分高くないと信用できない。
 しかしこの様にケミC*1箇所変えるだけで微妙に音が変わる(気がする)ので、こうやってメーカは音作りしてるのだろうか。大変だなぁ。私の印象だってどれだけ再現性があるか怪しいが。それでもメーカによる音質の差はあると私は感じてしまう。となると、よくある調整記事の様に全ケミC交換とか簡単に行って良いものか…。実際は単に面倒だからトラブルが判明しない限り交換しないだけなのだが。(閑話休題)
 抵抗も手持ちに620Ωがなく470Ωに変更したが、本機はL/R出力レベルが調整可能な設計になってるので多少ズレても問題ないハズ。
 実装は元の4Pコネクタを外して、その固定ネジ穴を拡げてパネル用RCAコネクタを取り付け、抵抗とセラCをRCA端子にハンダ付け。そこに元の4心ケーブルと黒いGND線を配線した。他にも色々なやり方を考えたが、これが一番シンプルだと判断。実際に着手するまでは部品手配等もあり結構時間が掛かったが、できてしまうと全く違和感なく普通のチューナー(≒555ESX?)として使えるようになった。
 ANTリレーは暫く使っている内に B側は安定してきた。A側は切替えて高感度化しても時間が経つと低下する傾向が再現するのでNG。最悪の場合はリレーを外して片側短絡しようと考えていたが、今のところANT-Bで安定に使えている。
 なお長時間通電してもPTがほの温かい程度、P-Trの銅板HSも十分触れる温度で、上級機だけあって熱設計に余裕があるようだ。あとMutingをリレーで行ってるため選局後にLRで出音タイミングが僅かにずれる。J75は電子制御なのに、なぜ本機は耐久性の劣るリレーMuteにしたのだろうか。電源オフ状態で電流出力を完全に短絡保護する為かな?

 音は333ESXと大変よく似てて、しっとり感のある音色でワイドレンジの少ドンシャリ傾向。重低音がボーンと響き、高SNで高メリハリ、細かいニュアンスも聴こえる。検波方式は違うのに同じ印象を受けるからこれがソニー技術陣が理想とする音なのかな。切替えても殆ど違いが判らない位だが、細かく聴き比べると本機はESXより重低音過剰感が薄い気がする程度の差。ただ、Cも変えてるし、単に個体差かも知れない。ひろくんHPでもESX以降の回路はほとんど同じと書いてあるから、音作りとしてはこの時点でほぼ完成していたと言えるのかも知れない。
 アタック速度は FX711と比較すると少し負けるがほとんど問題ないレベル。しっとり音色と相まってBGMやバラード系の曲では寧ろ聴き易いかも。
 FEの5段/4段の違いは遠方局を聴くなら差が出るかも知れないが、私の環境では差異不明。ソニーも4段で問題ないと考えてチューナーは333系に一本化していったのだろう。
 不揮発性メモリなのでコンセント抜いても半永久的に保つ利点もあり、現在でも常用機として使える力がある。しかし旧いから当然故障リスクは高くなるので現在中古で敢えて555シリーズを狙うメリットはないかな~。
(追記)
 スペアナで見てたら555ESの出力には20kHzのLPFが入ってる事に気づいた。FX711や333ESXと切替えると20kHz以上の応答で明らかに差が出る。ESXの頃に設計方針が変わったのだろう。
意識して聴くと高域情報がESXより少し薄めの気もするが、音作りの違いレベルとも言え、音質的に特に不満を感じる程では無い。19kHzのpilot信号も普通は聞こえないのだから20kHz以上の信号は音楽とは関係ないと思う。
 放送局側の帯域進化に適合させたという事だろうか。

(雑談)
 最近昔('80年代以前)の曲が見直されてるようでFMで結構頻繁に流れてるが、それを高級FMチューナーで聴くとバックのサウンドが記憶以上に豊富かつ高音質で驚く。当時は安いラジカセ等で聴いてたので全く気づかなかった音も入っている。'70年以降の録音なら音質も十分良いし、それ以前のヒスまみれの音楽でも意外なニュアンス(味)を感じる事もある。多く言われる通り最新のデジタル臭全盛音楽より暖かみを感じる。何が違うのかは解明できていない。CDの44.1kHzサンプリングより人間の時間分解能は高いのか。しかしハイレゾが出てきてもアナログの音を評価する人は多いようだ。私が聴いてもハイレゾは分解は高くなってる気がするが、アナログとは方向性が違うと感じる。雰囲気的なノイズ(主に偶数次高調波)の影響かな。現実世界ではノイズが存在している方が自然だし。
 あとデジタル音源の尖りすぎるアタックは時に心臓に悪い気もするが、これは寧ろ安い再生機なら問題ないのかな。余り積極的には聴かないけど、ハイレゾの様に情報量が多すぎるのも長く聴くと疲れる気がする。FM位が適度なレベルなのかも。
 まあ理屈はともあれ趣味の世界では自分の感性を信じれば良い。FMは良質のCDやLPと正面から聴き比べると、アタックの鋭さやDレンジの点では敵わない。でも全部のCDを買うのは到底無理だし、音楽鑑賞には十分なレベルの情報量はあるから、こういう楽しみはFMチューナーならではだろう。

 


FMチューナーはオワコンか FX711編

2022-10-10 | Weblog

・Victor FX-711 '87頃 ¥49.8K

 オークションでも人気があり高騰して見送る事が多かったチューナーだが、ボタンが壊れて電源が入らない品という事で、この機種としては比較的安く落とせた。最悪電源入れっぱなしにすればいいかと考えてた。
 到着後、本当に電源ボタンが効かないのでカバーを外しフロントパネルも外したら(一部リベット固定になってて抜くのに苦労)、電源ボタンがプラスチック成型品でその支持部が折れて動かなくなっていたのが原因と判明した。タクトSWを直接押したら無事電源がon/offできた。
 初期状態では Auto-tuneは効かなかったが、周波数を選んでMONOにしたら受信可。Signalレベルは24dB(ANT-A/B共)と低いが特にノイズは無し。局メモリも正常でANT-A/Bも記憶し、P-オフオンしても保持。基本機能は壊れてないようで一安心。
 内部構成はよく出来ている印象。基板が銅ネジで固定されてたり、PTの高圧側にはプラスチックの保護カバーがある等、細部に配慮も伺えた。
 電源基板にパワーTrが2コあるがそれほど熱くない。一方、MPX-ICの傍にあるP-Tr*2コのHSはかなり熱い(70℃位?)。また電源ケミCに液漏れらしき跡があった。まあ中古としてはマシなレベルだろう。
 ひろくん&BLUESS氏のHPに沿って調整して感度が上がりSTEREOになったが、受信レベルがF-777と比べてかなり低い。本機の場合、受信レベルが39dB未満だと自動でQSC(一種のHi-Blend)がONになってSepが下がる。S≧30dBならば十分低ノイズなので、このQSCレベルは少し高すぎると思うが調整点は見当たらなかったので、取敢えず受信レベルの方をVR602で嵩上げしてSep調整した。歪の方は例によって耳合せ。Sepはカタログの65dBまでは上がらなかったが50dBは確保でき、一応聴ける音質になった。
 この状態で音質評価すると、やや深いタイプの音で低音は力強い。KT1比で僅かに線が太く、低音の量感は勝るがアタックのピークが低めで丸められてる感。KT2比だと深みと分解が不足という印象。
 調整過程で気になったのが T101で、感度にピークが見えないまま右に回しきっていた。これはひろくんの修繕記事で頻繁に出てくるIFTの容量抜けが疑われる。本機は点検口がないので修理には面倒でも基板を裏返すしかない。音質に不満が残ったので観念して背面パネルを外し基板固定ネジを外してみたらコネクタ類は付いたままで基板は裏返せたので思ったよりは楽だった。
ひろくんの修理例に習って T101の3端子側に5pFのセラコンをハンダ付けして基板を戻し、再調整したら感度ピークが出るようになった。ただS値は上がらず。次に10pFに交換したら更にピークが明瞭になり、S値が1dB程度上がった。さらにセラCを50pFに交換した所、より左回りでピークになったが S値は大差無し。この辺が限界のようだ。

(パネル部の修復)
 パネルには電源の他にもタクトSWが多数並び、それをパネルのプラスチックボタンで押す構造になっている。基本的にはJ75やF120と同じなのだがバネやスポンジを省いてボタンで直接、首長のタクトSWを押し、プラスチックの弾性で元に戻る仕組みになっている。プラスチックの支持部は非常に薄いので簡単に折れてしまいそうだがストロークが1~2mmしかないので耐えられるという設計。5年間の技術進歩により部品加工精度が上がったためこういうコストダウン設計が可能になったのだろう。
 まず電源ボタンを修復。折れた部分を可動の邪魔にならない裏面でエポキシ固め。強度的には心もとないが先述のようにストロークが小さいので大丈夫だろう。
 本機のタクトSWは全て6mm角の小型版で大多数が接触不良気味になっていた。そのため前ユーザが電源が入らないとてボタンを強く押し込んでいる内に折れてしまったという事だろうか。J75やF120のタクトSWは10mm角で今でも確実に動作しているから、小型品は電極が酸化しやすいとみえる。
本来全交換が正道なのだろうが、数が多すぎて高さを揃えるのも技術が要るし、正直面倒。通販サイトで高さ9.5mm(9や10でも使えるのかも知れないが不明)のタクトSWが見つからなかった事もあって、SWに錆取りスプレー(コンタクトスプレーでは力不足)を吹掛けて多数回プッシュしてみたらかなり回復した。しばらく経つと再び接触が悪くなるSWも一部あるが、数回押せば何とか応答するレベルにはなった。チューナーでボタンを押す機会はそれほど多くはないので当面これで我慢する事とした。適合するSWが入手できたら電源だけは交換したいかな~。
 ボタン配置では、通常よく使う周波数Up/Dnのボタンが他のモードキー等と区別されていないので誤操作しやすく不親切。目でも手触りでも判別できるよう三角の白いシールを貼ってみた。実用十分だが少し不格好に見えるので最初から成形して欲しい所だ。
それから局メモリ11~20の選択は'+10'キーを押してから素早く1~10を押すのだが結構失敗する。'0'キーは不要だし'+10'キーで"2_"になるのは邪魔。単純なシフトの方が使い易いと思う。周波数ダイレクト入力とかメモリを30局以上にする予定でもあったのかな?
 I/F含むデザイン関係では全般にYAMAHAの方が上手(うわて)と思う。

(追記)10mm高のタクトSWを入手。数が足りなかったので自分がよく使うキー優先で交換してみた。パネル基板はリベットを抜けば配線そのままで裏返せたので思ったよりはスムーズに作業できた。テンキー部分は10mmのままで問題なかったが、電源スイッチ含むパネル部ではそのままだと誤動作したため、ハンドグラインダーで頭を少し削った。結構シビアだ。
 交換後は応答が確実になってやはり快適。クリック感のあるタイプのSWに交換したので押した事が判り易くなった。

(AMは手抜き気味)
 ほとんど使わないのだが一応AMも調整してみた。その際気付いたのがAMのS値が突然 0dBになってしまうためANT(室内用ループ型)の方向合せが非常に困難な事。ひろくんHPで紹介されてたFX-1100BKのサービスマニュアルを見直したらこれは仕様らしく、AMでは50dB以下は 0表示になると書いてあった。ちょっと乱暴すぎ。FMの場合は10dB以下で 0表示らしい。
比較のため T-X900を引っ張り出して実験したら、AMも0からほぼ連続的に変化し、ANT方向合わせはずっと楽だった。明らかにコストダウンのため手を抜いたと思える。
 ただし音質は特に良いとは言えないもののノイズはよく抑圧されて聴き易く、実用性は確保してる。'80年代前半頃はAMでもKT1のIF幅可変とか音質改善への工夫もしてたが、本機の'87年時点ではメーカーもAMはもうオマケと割り切ってたという事だろう。

(FMの音質は魅力的)
 IFT補修後、FM部は使いながら何度か音質微調整を繰り返し、最終的に評判通りに高音質である事が確認できた。
 まず基本的な情報量やSNは良好で、常用機として十分だ。アタックは非常に高速でクリップ感もなくなった。KT1&2より少し線は太めで音色的にはTU-S707と似てる。特徴として、低音の響きが大変締まっているので全体として音楽がキレ良く弾む印象を受ける~聴いてて気持ちの良いサウンドだ。T-X900の時も似た印象を持ったので、これがビクター技術陣の音作りなのだろう。ケンウッドと比べると明らかに色付けされていると思えるが、ビクターは単なるHiFiより音楽的に魅力のある音を目指したという所か。個人的にはソニーより好みの音だ。ただし優劣と言うより曲に依る。鋭いアタックはBGM的に聴く時は少し耳に障る時もあり、バラード的な曲ではしっとり音色のソニー優位と思う。
 ビクターはこれを超えるFMチューナーを出さないままJVCケンウッドに吸収されたのでビクターブランドでの完成形といえるかも知れない。
 サブシステム側のメインチューナーに採用した。


小型スピーカで遊ぶ (1)

2022-06-15 | Weblog

 サブシステムではパイオニアの S-1300DV(公称22cmの3way)をメインSPとしているが、ウーファーエッジがボロボロに崩壊しており、代替機が必要と考えていた。
フロア型スピーカも絶滅危惧種と知ったので、ネットで色々見回ってたら長岡鉄男氏が推してた小型スピーカがあるという情報を見つけた。それが KENWOODのLS-SG7(LS-VH7説もあり)。
(B級オーディオファン) https://audiof.zouri.jp/ls-sg7.html
 ミニコンポ付属のSPで基本構成は、12cmウーファ+2.5cmソフトドーム の2way。これで高級SP並みの音が出るというのは、にわかには信じがたい。ネットでも評価は二分。理系としては自分の耳で確かめるのが一番。という事で Hオフへ行ったらそのLS-SG7が¥3.3Kで出てた。が、よく似た外観のLS-SA7も「旧年式なので処分」表記がついて¥1.1Kで出てた。カバーを外しエッジの様子を見たが結構良好でコーンもきれい。様子を見るならこれで十分かと思い入手した。

・KENWOOD LS-SA7 '96発 Avino SA-7(本体R-SA7=¥25K位?)付属のSP

 「足跡」にも掲載なく公式的なSpecは見つからず。個人サイトで書かれた数値によれば、
 サイズ:W160×H283×D239mm 重量:4.0kg 12cmコーン+2.5cmドーム インピ:6Ω 入力:30W f特:55Hz~20kHz 効率:85dB/W(?もっと低い気がする)
 KENWOODの同タイプのシリーズは、SA7('96 単体売ナシ)→SE7('97 ¥16K)→SG7('99 ¥21K)→VH7('01 ¥20K)という流れ。
 SE7以降のツイータは逆ドーム型だが本機は普通のドーム型。ユニットが異なっているがお試しレベルなら十分だろう。
 持ち帰ってサブシステムに繋いだらすんなり良い音で鳴った。しかも非常にワイドレンジでビックリした。S-1300DVと切替えると流石に重低音も高域の伸びも及ばないが、非常にフラットな印象で音楽を聴くには十分なレンジは確保できていると思えた。これなら日常的なSPとして十分使えそうだ。
 12cm前後のスピーカーサイズは耳で聴こえる帯域をカバーするにはちょうど良いのだろう。小口径だけにスピード感は優良。ただ効率が低いので50W級以上のパワーアンプでないと力不足と感じる。f特フラットなSPはある程度音量を上げないと真価を出せない。小音量でラウドネスを効かしてもフラットになる訳ではないからだ。
 SG7のオリジナルアンプR-SG7のAB級20W(A級7.5W)出力では完全にパワー不足だろう。その中でSPの潜在力を見抜いた長岡氏の慧眼(耳?)には感服だ。

 小型SPの限界は当然あって fレンジと共に Dレンジもやはり大口径には敵わない。スピーカはコーンの振動で空気を動かして音にする。即ち、音圧はコーン面積×振幅に比例する。だから小口径で大口径と同じ音量をだすにはより大きな振幅が必要になる。しかし振幅には機械的限界があるから、どうしたって負ける訳だ。
ただ、50Hz以下の重低音は耳より体で感じる振動に近く、出せる楽器も限られるからレベルが低くなっても音楽を聴く上では問題は少ないのだろう。
本機は音質比較には十分使えるし、オケを聴いても違和感はない。エレキベースの重低音も腹に響く程度には出る。S1300と切替比較すると体全体を揺するような重低音感は明らかに負けるが、音楽鑑賞として重大な支障はない。

 一方、大口径SPの問題としては、近距離で聴くと音像が大きくなる事だろう。私の場合、S1300から2m未満の距離だと、ピアノ等の大型楽器なら気にならないが、人の声だとちょっと違和感を受ける。基本的に距離が取れない狭い部屋では配置の自由度が大きい小型SPの方が総合的に勝るケースも多いだろう。
 長岡氏は定位感覚が非常に鋭かったと思われるので、小型のSPをより高評価したとも推測できる。氏の設計したスワンやマトリクス型SPは小型フルレンジユニットを使ってf・Dレンジを犠牲にしても音像定位を徹底重視した物で、楽器の定位が前後・上下まで解ると記述していたように記憶している。
 当時記事を読んで、私も真似して作ってみたのだが、残念ながら私にはそこまで定位を聴き取れる耳は無いと分かった。という事で私の評価は情報量と音色の印象がメインで定位に関しては甘々である。大体作業BGMとして聴くことが多いので、音質比較をする時以外は正面からでなく横や斜めから音を流してるから、優秀な耳を持ったマニアのレビューとは違うかもね。
 SA7は音楽鑑賞の情報量としては十分で、12cmクラスでこれだけの音が出せるのは驚きだった。さらに上級の制動力の高いハイパワーアンプで鳴らせば(定格超えるのでちょっとリスキー)、f・Dレンジだって伸びる可能性もあり、長岡氏の言う「本格アンプで鳴らすと高級SP並みの音」に近づくのかも知れない。私は持ってないので験証不可。まあ現状でも十分レファレンスに使える音質と思うので満足してる。

(追記)普通に聴いてるとどうしても重低音不足というかバスドラ等が 3wayに比べ軽い音色で不満を感じていた。試しに思い切って音量を上げてみたら重低音レベルが上ってf特バランスがぐっと良くなってきて驚いた。逆ラウドネス効果とでも言うべきか。音量はクラシック系でないとうるさくて耐えられないギリギリレベル。クラシックだと平均音量は小さいので何とか鑑賞に堪える。高域ノイズもしっかり聴こえてくるのでソースの質も重要になる。
このスピーカーは他の小型SPより大音量時の音の質・分解が優れているように感じた。また 3wayを大音量で鳴らすとSP間のバランスがズレてくる印象も受けたので 2wayの方が有利な面もある。多分長岡氏はこういう状態の音を評していたのかと改めて納得できた。と言っても防音室のない我が家ではさすがに近所迷惑になるので滅多に大音量で鳴らす事はできないが。
 なお大音量で半日ほど鳴らした後、普通の音量に戻したが重低音が前より重く響く音になった気がする。3wayにはまだ及ばないがバスドラが重い響きになって不満が減った。エージング効果か後述のラバープロテクタントの効果か?同時期にやったので判定不可。ともあれサイズ比で非常に優秀なSPと思う。SG7やVH7も多分近いものだろう。

 しかし同クラスのSPも多数販売されている中で長岡氏があえてミニコン付属のSPを推奨したのはなぜかと言う疑問が残る。じゃあ他社のレベルはどんなもんかと、また比較してみたくなった。
 このクラスは種類も数も豊富で中古だと非常に安く(数千円)出ており、遊ぶのに丁度良い。何より小型軽量で設置が楽だ。大型SPは重くて動かすのさえシンドイ。

 小型SPでよく目に付くメーカーはオンキョーとデノンかな、とオークションで探して安く買えたのが、

・ONKYO D-052A '95発 単体売=¥20K(ペア) Intec185シリーズのSP

 これもミニコン付属SPだが、単体売りもされたので「足跡」に掲載されてる。検索Hitも多く知名度も結構高いようだ。
 幅157x高259x奥行233mm(サランネット含) 3.3kg 13cmコーン+2.5cmドーム 6Ω 70W 88dB/W 50Hz~30kHz
 オークション人気は薄くて超安値落札。到着後にネットを開けて見たらウーファーエッジがボロボロ。出品時にはネットを外した写真が無かったので気付かなかった。底面カバー紙もペロンと剥がれてる。出品コメントは「写真で判断して下さい」だけで、半分騙され感。オークションはこれだから…。
 しかし旧いSPのエッジが劣化してるのは常識的で、特に90年代の安いSPは薄いポリウレタン製エッジが多く経年で硬化し割れる事が多いというネット記事もあり、要は私の調査不足であった。
 そのまま鳴らしてみたら意外にも低音はそれなりに出て(元々バスレフだし)、寧ろ高音不足が酷い。TONEで高域を目一杯上げてようやく聴けるバランス→一応名の通ったSPなので明らかに異常だ。
でもしばらく鳴らしていたら、SA7と比べなければ、それなりに聴ける音になってきて修理する価値はあるかもしれないと思えてきた。失敗しても惜しくない価格だし。
 という流れでこれを練習台にSP修理に手を伸ばし、遂にはS1300まで直せたので、正に塞翁が馬となった。

 SPトラブルについてネットで調べ、ソフトドームツィーターはコーティングが剥げると音が出ないという記事を見つけた。
Soundcraft Spirit Absolute2 ツイーター修理記(1) ムラサキノオト
https://ameblo.jp/purplesounds/entry-12113905050.html
 実際ツイータ・ドームを触るとフニャフニャで腰が全く無い。要するに柔らかすぎて空気を押せてないと判断。記事の修繕法に添ってパワーエース(木工ボンド)を墨汁で薄めて塗布する方法を試してみた。安いから壊れても仕方ないという覚悟ができるのが中古のイイところ。
 一回塗布したら高音が俄然出るように成ってバランス改善。TONE補正なしでも聴けるレベルになった。ネット情報すごい有益!! だがSA7に比べると中域が強く高域は負けてる感。更に追加塗布してみたがそれ以上バランスが良くなる事は無く、重くなって繊細度が落ちたような感じがしてきた。あわててバフ研磨してみたが元に戻ったかは怪しい。何でもやり過ぎは良くない。
 やり方は別途書こうと思うが、後にウーファのエッジ交換にも成功し、低音もより響くようになって、十分音楽が聴けるレベルに修復できた。
 剥がれたカバー紙も、パワーエースで接着し解決。スピーカーは素人でも意外に直せるものだった。
 エッジもオリジナルとは別物だし、素人が手を加えたので本来の音とは違う可能性が高いが、予備やテスト用としては十分使えるようになったから損にはならなかった。
なお現状よく鳴っているが、SA7と比べ低音の分解が低い気もする。元の音を知らないのでエッジ交換のせいなのかは不明。
 結局 f特がフラットでは無さそうなのでレファレンスには使いづらい。本機は中域感度を上げ、非力なAMPでも鳴らせる事を優先したのだろうか。歌メインだとボーカルが前に出てきて、小音量時でも聴き易い気がする。小さな部屋で聴く用途にtuneしてあるのかも知れない。大音量でロックを流しても結構ノリがいい。
 一方KENWOODは効率を犠牲にしても、チューナー同様あくまでフラットな原音忠実を追及したと言った所だろうか。
 総合としてはKENWOODの広域フラットの方がHiFiとしては上だと思うので、長岡氏の選定は的確であると理解できた。

 本SPはSA7同様に大音量で鳴らすと、重低音は多少増加するが中域がかなりうるさくなるのでやはりバランスが悪い。

・DENON SC-ME33 '04.9発 一体型シスコン ラピシア D-ME33(Op≒¥3万)のSP

 これもシスコン(エントリー級)のSP。比較的新しいのでカカクコムにデータが有り、ネット記事も見つかり、Specは以下の通り。
 W160xH270xD243mm 2.9kg 防磁型 14cmグラスファイバーコーン+2.5cmソフトドーム 6Ω 50W 効率やf特は記載無。
 個人サイト情報によれば、バッフルはMDF材、板厚は9tでやや弱い、吸音材が入ってない、ネットワークはTweeter(Tw)のCカットのみ=手抜き、で音質評は今一だった。
エッジ修理ができると知る前の頃で、新しい機種ならエッジも大丈夫だろうと予想し、格安だけど一応デノンだし箱が大きめで Woofer(Wf)が14cmなので低音がよく出るかな、12cmとどれほど差があるかな、と入札してみたら競合無く落札。

 到着時、薄く埃はかぶっていたが外観はキレイで、エッジも正常。音も正常に出たが、高域の伸びでSA7に完敗、低域もSA7と大差なし。効率的にはD052と同程度と感じた。
 D052の様にTwの劣化を疑って、ドームにパワーエース塗布してみたが本質的には変わらず。原液塗布まで試みたが塗りムラが出来て大失敗。やはり薄めて塗らないと危険だ。バフ研磨して何とか目立たない程度には修復した。
 単独で聴いていれば特に問題を感じる音でも無いのだが、SA7や改修したD052と切替えると高域がスーと広がるので明らかに差がある。いくらTONEいじっても高域の伸びは及ばない。
スマホのスペアナアプリ(Spectroid)を使って相対的なf特を測ったら、SA7に比べて10kHz以上の高域レベルが低めで、特に15kHz以上はほとんど出ていないように見える。出ないものはTONEでもリカバーできないという事か。低音はそれなりに出ているので、価格的に下の機種では安物Twを使って差別化してるのかも知れない。
 箱はしっかりしてるからTwを替えれば改善できそうだが、購入価格を考えると新規Twの方が高く付くので馬鹿馬鹿しく思われる。それにTwを外してみたら、フレーム一体型だったので市販Twを入れ替えて使うのは難しく、バッフルまで改造となると全く割に合わない。

 やはり価格的に2万クラスのSPでないと SA7の対抗馬にならないようだ。
という事でアブナイ機器の実験用に回し、普段は他の小型SPの置き台という事になった。小型SPではTwの指向性が強い(高域に余裕がない)から、Tw高を耳に近づける必要があり、置き台も必要だ。
 なお小型SPの多くは化粧シート貼りで、重ね置きすると結構滑るので、底面に同サイズでカットした滑り止めシートを両面テープで貼り付けた。クッション&傷防止にも成り丁度良い。マニア目線だといい加減過ぎか。でも上下入替えも簡単だし、結構安定だ。

・SONY SS-M90HD '06.11発 HDDコンポ・ネットニューク NAS-M90HD(Op≒¥10万)のSP

 中古店で色々見てたら、真っ黒BODYと銀色アルミコーンが目についた。ちょっと気になってネット検索したが、情報、特に音レビューはほとんど見つからなかった。しかし、アルミコーンの音に興味があり、エッジは良好そうだしソニーで9ナンバーだからそれほど酷い事は無いだろうと思い購入。
NAS-M90HDの仕様 https://www.sony.jp/products/systemstereo/M90HD_spec.html
 公式Specは 130mmアルミコーン+25mmソフトドーム 4Ω だけ。サイズは実測:158Wx239Hx218D(ネット込)mm=前3機より一回り小さく、重量は持つとME33より僅か重い感じなので3kg位か。ユニット配置は左右対称でバスレフ穴は背面。
 音出しは正常で、効率は低め≒SA7と同じ位。聴いた印象ではSA7に非常に近い高域までよく伸びるフラットな音。サイズはSA7比かなり小さく感じるのに低音は壁に近づけなくてもSA7と同程度響く。もしかしてこれがアルミコーンの力かな。金属的な音色という印象は無い。ただ低音の分解が少し負けてるかも。fレンジもSA7の方が端の落ち方がなだらかな気がする。容積の差が効くのかも知れない。やはりトータルでSA7は優秀と思う。
 本機でも高域の伸びが改善するかとパワーエース塗布してみたが、変化は判らなかった。なお機種毎にドーム周りの構造=エッジ幅や凹凸量、バッフルとの距離等が違っていて塗りやすさに差がある。このSPではバッフルが非常に接近してて塗りにくかった。
当たり前だがメーカー想定外の邪道な方法であり、余程コーティングが剥げていない限り効果も薄そうなので、普通はやらない方が良いと思われる。でもオーディオは趣味の世界だから試すのは自由だ。
 本機の音質はワイド&フラットで僅かに重低音ボンつき気味…やっぱりSonyのチューナーと似てる印象を受けた。同じ技術陣がtuneしてるのだろうか。音もSA7比でしっとり感がある…気もするが、多少先入観入ってるかも。
 ともあれ、これもレファレンスに十分使える拾い物だった。単体売りはしてなくてもハイクラス価格帯なのでしっかり作ってるのだろう。
 しかしSA7同様、この低効率SPも20Wのアンプでは実力は発揮できなかったのではないだろうか。50W級以上のAMPと組み合わせるべきだった。実際の売上がどうだったかは知らないけどNet情報の少なさから見て知名度が低い事は確か。勿体ない。

 本SPはSA7同様に大音量で鳴らすと、低音は多少伸びるもののドンシャリ気味なので重低音の伸びはSA7に及ばない。小~通常音量時の方が低音がボンボン響く印象で向いているようだ。

・ONKYO D-032AX '98頃 ¥17K(ペア) INTEC185シリーズ(CR-185X)のSP

 4台で止めるつもりだったが、他との抱合せで落札。単体売りで「足跡」にも掲載あり。
 幅153x高さ259x奥行246mm(サランネット含む) 3.8kg 12cmバイオクロスコーン+2.5cmソフトドーム 55Hz~35kHz 6Ω 70W 87dB/W/m
 D052Aと比べ、数mm幅狭で奥行が約1cm長い。バッフルが厚い木製で重心が極端に前寄りになってる。サランネットの互換性はない。
 そういえば ONKYOも型番がランクと関連薄く、決め方の根拠が分からない。032もエントリ機ではなく052の後継に近い。SPは同時発売のシリーズにおいては数字が大きい方が上ランクのようだが、他シリーズの数字とはバランスが取れてないし、桁数もまちまち。
アンプはグレードを示すナンバリングの時もあるが、やはり根拠の分からないナンバーが多くて、寧ろ同型番にサフィックスを付けて展開し、途中でグダグダになって数字を変えてる感じだ。
チューナーは上級も低級もほとんど400番台になってる。結局型番からはグレードが判断できない困ったメーカーだ。

 今回は出品時からエッジは一部割れていると明示されていたが、残ってる部分も硬化気味で極薄なためちょっと押したら割れが広がってしまった。経時劣化が明らか。
 音は正常に出て、高域・低域もそれなり伸びてる。感度や音質はD052とよく似てて中域が前に出る感じ。やはりこの音が ONKYOの選択なのか。低音は僅かに軽くて分解が良い気もするが、明瞭な差ではない。逆に、修理したD052も意外にまともな音が出てるらしいと分かった。
音楽鑑賞としては十分使えるが、フラットf特ではないのでレファレンスとしては使えないかな。
 エッジも直したい所だが、音が似てるから急ぐ必要もないかな~。なおエッジの価格が、この半年の間にアホノミクスの円安影響で1.5倍ぐらいに値上りしてた。いい迷惑だ。

 その後しばらく鳴らして比較したら高域伸びは052より良く、感度も052より少し上の感じ。052はTw劣化してた影響もあるからこちらがONKYOの実力か。立上り/立下りはM90より上という感じもする。SA7とは微妙。一方、M90やSA7比で重低域は薄くバランスが劣る。こうなるとエッジ修理する価値もあるかと思えてきた。必要性は薄いのでどうしようかな。

(追記)最近、KURE ラバープロテクタント(ゴム製パーツ保護剤) を入手し、直接スプレーは危険なので紙に吹いて硬化したエッジに慎重に塗布したら柔軟性が明らかに回復した。スゴイ効果、最初に使えば良かった(でも残念ながら効果は1か月程度で消えるようだ)。艶も出て少し押しても弾力があって、低音がよく響くようになりトータルで052より上の音になった。SA7比でflatではないが Vocal曲は寧ろ聴き易いとも思える。
ただし大音量で鳴らすと割れたエッジがビリつくので流石にダメだった。小音量なら何とか使えるという話。やはり本気で使うならエッジ交換が必要だ。
 原理的にはエッジは柔らかい方が良いはずなので、他のウレタンエッジSPにも塗布してみた。硬化が進んでいた032程の変化はしなかったがいずれも柔軟さが多少向上した気がする。音の変化はハッキリとは判らないが悪くは無さそう。但し耐久性は課題。ゴムの性質を変えたという事は劣化しやすくなった可能性もある。使う場合は当然自己責任。私も保証はできない。

 小型SPはメチャ安で出てる物が多いからもっと比較で遊んでみたい気もするが、レファレンス級も2台見つかったし、S1300等も修理でき、さすがに置き場所がなくなってきたのでこの辺で打ち止め。
スピーカーは単に保管しているだけだとエッジの硬化が速まる気がするので、常時鳴らしてやる必要があると思う。しかしチューナーより切替が面倒で使い分けるにも限界がある。中古マニアとしてまだ使える物を捨てるのは忍びないからなぁ。

(考察)
 SPの評価基準として、他の条件が同じなら、重い方が良い可能性が高いと推定できる。空気を振動させて音を出す以上、SPにも反作用の力が掛かるから負けない重さが必要だ。それにキャビネットやフレームやマグネットを強化すれば当然重くなるから、重さと音質に相関が出るのは必然のはず。
実際 SA7を持った時にずっしり重い事に結構驚き、他機との比較パラメータとして重量を体積で割って大きさの違いを吸収する比重を使うことを思いついた。体積はネット部を含まない方が正確だと思うが、サイズ表記はネットを含む値が主流なので今回はざっくり公表値で計算した。あくまで目安なので相対的に同じ基準で比較すれば良いと思う。
ちなみに今回の5種では、
LS-SA7 ⇒比重370 (kg/m3)
D-052A ⇒比重348
SC-ME33 ⇒比重276
SS-M90HD ⇒比重360位…仮定3kg
D-032AX ⇒比重390
となって、結構納得が行く相関が出た。ただし低域を犠牲に小形化したSPだと比重は大きく出るから、似た構造で f特も近いSPでないと良い比較にならない。バスレフと密閉型でも違うし、板厚を薄くして箱鳴りを音の一部とするSPもあるので絶対的では無い。ただ必要条件の一つとして、レビュー情報が見つからない時に比重が極端に小さい物は回避するという利用はできると思う。
 データが見つかったいくつかの小型SPで計算してみると、
KENWOOD LS-SG7  ⇒比重350 99年 ¥21K 11cmウーファ
KENWOOD LSF-777 ⇒比重351 97頃 ¥90K 15cm
KENWOOD LS-300G ⇒比重347 93年 ¥60K 15cm
KENWOOD LS-NA7  ⇒比重582 16年 Op≒¥16K? 8cmウーファ 60Hz~40KHz ←小型SPは大きく出やすい
ONKYO D-200Liverpool ⇒比重392 87頃 ¥55K 16cm
ONKYO D-032A  ⇒比重371 98頃 ¥16K 12cm
Technics SB-M300 ⇒比重390 94頃 ¥66K 14cm*2
Technics SB-M20 ⇒比重377 95 ¥44K 14cm
DENON SC-F100 ⇒比重333 00頃 ¥21K 14cm
DENON USC-M50 ⇒比重404 00頃 ¥22K 12cm*2,3way
Sony SS-M95HD ⇒比重315 07 単体売無(NAS-M95HDのsetで¥10万位) 12cmアラミドコーン
Sony SS-M75HD ⇒比重292 07 同シリーズ下位(set実売¥6万位?) 12cmアルミコーン →ソニーはアラミドの方が上という判断か?
 これらの値から12cm級SPでは最低300、350超が望ましい比重となるだろうか。しかし価格と比重が正比例でない事も確か。どれほど音質と相関があるかも不確定。
 ちなみにスピーカの口径はJIS規定があるわけではなく、各社が勝手に決めてる自称値らしいのでメーカ間の比較は注意が必要。フレームまで含む例もあり実際のコーン径とは2cm以上差のある物が多い。趣味の世界はハッタリだらけ。
 なお明らかにクラス違いの3waySPで計算すると パイオニア S-1300DV ⇒比重389 は良い値が出るが、Sony SS-G5 ⇒比重249 となってやはり同クラス比較しか意味がないようだ。フロア型は容積大だから低く出るのは当然だ。

 最終的に高価格製品の方が音は良くなるようにメーカも差別化してると思われるので、定価の高い物を探すのが基本だが、当然中古売価も高い。それに中古では保存状態の影響が大きいので、コーンを見て選べる店頭で買う方がSPに関しては良さそうだ。SPは大体大きくて重いので送料が割高になるから、その点でもオークションより有利。
 但しエッジに関しては、機種にもよるが小型SPなら交換も意外に難しくないからエッジ割れがあっても他の状態が良くて格安な物であれば狙い目とも言える。

 


FMチューナーはオワコンか まとめ編-3

2022-03-30 | Weblog

・Victor T-X900 '83発 ¥64.8K

 Victorは聴いたことなかったし、高級帯のチューナーが人気ないのか安かったので落札してみた。
 型番がヤマハと似てるため情報検索で紛らわしく、旧いためHitも少ないが、Specは価格に見合う優秀さだ。
前にも書いたが、Victorは Aurexと共に1974年に初のシンセチューナー(JT-V20 ¥160K)を発売した開拓者で、技術基盤はしっかりしていると思われる。
(オーディオ懐古録) ~非常に凝った仕様でデザインもマニアック過ぎ,価格的に一般向けではないので技術者の趣味がフルに出たのだろう。

 ひろくんHPに調整記事があったが、2階建て基板で部品交換は面倒という記述があり、故障していたら厄介だなと恐れたが、到着後に ANT-Aで Muteオフにしたら低感度ながら受信でき、致命的な故障は無かったと分かり一安心。ANT-Bに替えたらAuto-tuneも可能で fズレもなく拍子抜け。ANT-Aの接触が悪かったようでコンタクトスプレーしたらA/Bの差もほぼ解消した。動作は一通り確認できたが、気づいた問題は①時々ブチっとノイズが入る点と②電源オフで局メモリが消えてしまう点。
原因追求は先送りして、まず受信調整を行った。調整だけなら基板を外さなくても出来るように基板は巧く設計されていた。記事に沿って一通り調整後ブチノイズは一応消えた。一応というのはまだたまに出る気もするが、再現性も不明で頻度はごく少ないので当面無視。メモリに関してはオフしなければ正常に局メモリは効いてるので試聴には支障ない。

 本機はクォードラチュア検波なので2コアのコイル調整でKT1に極力音質を近づけたが、最終的にKT1比、線はやや太めで弦は艶があり、Sonyに似たしっとりした音色+深い響も少し感じた。情報量は十分。低音がやや強めに感じるが引き締まって力強い低音だ。ソニーだとズーンと鳴ってるベースがビクターだとズンやドンという感じで聴こえる。同社の別機でも似た音の傾向と感じたので、この締まった低音がビクターの特長と思われる。重低音が気持ち良く響き、キレやSNも良いので十分定価に見合った高音質と思う。
ただダンピングが強く効いた音は長く聴いてると、私は少し堅苦しく感じる事もあった。と言っても注意して長く聴いた時の話で、普通に聴き流している分には問題ない。
 83年発売ということは Sony ST-S555ESの翌年で、ライバルを十分意識して出してきたと思われる。デザインはヤマハを意識してる感じもするが、バブル中期は他社でも黒が主流(オーディオが黒物家電と呼ぼれる様になった所以)だったので偶然似ただけかも。青色LEDは開発前で赤以外のLEDは暗かったし。
 最近 Victor T-X5(79頃)の写真を見たら、あまりにYAMAHA T-5(79頃、但し77年の T-1からデザインは踏襲)と外観の印象だけでなく LED表示によるTuningのアイデアもそっくりで驚き。
本機もYAMAHA T-950(83頃)と雰囲気が似すぎている。業界事情は詳しくないので不明だが、ここまであからさまで、ほぼ同時期なのでデザイン盗用というより提携かOEMでもしてたのだろうか?中の回路は完全に違ってる(Victorの方が先進的)ので技術提携は無さそうだが。
T-X7(80.8)は YAMAHA T-6(80頃)と似てる…とは言えないな。
そういう目で見ると FX-711(87頃)は SANSUI α707(86)と似てる。ただこちらは Sony ESXシリーズが源流かも。うーむ、一体何でこうなったのか。
 なお「足跡」では本機の発売は'85年頃となってるが、ひろくんHPでは'83年だし、アンプA-X900も'83年発売らしいのでこっちが正解だろう。

 さて、音はイイのだが実用するにはメモリが電源オフで消えてしまうのが大問題。オートSCAN機能はあるが受信条件を全部切替えながら判定するためにやたら時間がかかるから毎回やるのはシンドイ。
テストを繰返して、たまにANT-Bがメモリできる時はオフ・オンしても消えない。一方ダメな時はANT-Bでメモリ登録すると勝手にANT-Aに切り替るので、ANT-Bメモリとの相関は判明した(オフしなくても験証可)が、その再現条件が不明で、一時良くなっても暫く使ってオフにするとまた消えてしまう。

まずスーパーキャパシタ劣化を疑って交換してみたが無効。基板で目立つIC:MN1203 を検索したらCMOS-SRAMで、本機はこれでメモリしてると推定。このICピンに電源オフ時も電圧が掛かっている事をテスタで確認できたので、キャパシタは基本停電対策であり今回は関係なさそう。
SRAM故障も考えたが、ディスプレイ表示を見てるとオン時にオフ時の局が瞬間的に出て直後リセットされる感じなのでリセット回路が誤動作してる疑いが濃い。しかしデジタル回路は弱いので、どこを直せば良いのかがさっぱり。電源ケミCにも少し液漏れの疑いがあるが関係性は不明で、正直お手上げ状態。
 本機は基板が複数に分かれ、構成が複雑かつ基板間をリボンワイヤのコネクタが多数這い回っているのが構造的弱点と思われる。部品点数・工程が増えるしメンテも面倒だからコストダウンが難しい筈だ。
そのコネクタも多種類あって、スーパーキャパシタを交換するために上部基板だけをひっくり返すのにもコネクタの外し方の解読に最初は苦労した。コネクタに慣れ、手順を守れば割と簡単に分解できるよう設計されていると判ったが、それでも十分手間だし、コネクタ接触不良の発生率は高くなる。
実際コネクタの接触不良でホワイトノイズが出た事もある。調整中になぜかWNが乗ってきて ANTや局を変えても消えず悩んだが、たまたま P502コネクタに触った時にノイズが変動する事に気付き、コンタクトスプレーしたら消えた。
この際に同型の P501も共に接点スプレーして挿抜を繰返していたのだが、直後、メモリ機能が直ったのでコレか!と期待したが、暫く経って電源オフオンしたらまたダメになった。これを数回繰り返したが、この周辺に原因がありそうだとは思うものの結局コネクタ原因とも断定できず、解決失敗。
 という感じで面倒になってきて、イイ音ではあるけれどKT1&2を置き換える必然性までは感じないのでお蔵入り機となった。

・SONY ST-J75 '80発 ¥67K

 ひろくんHPによればESシリーズの前身となる機体で、音も絶賛されてたので狙ってみた。
 Sonyは初出こそ遅れたが ST-J88(78年 ¥160K), ST-J60(78年 ¥54.8K), ST-J55(79年 ¥49K)とシンセを着々と開発・普及してきた歴史があり、本機はその一連の完成形ともいえる。この後はESシリーズに移行した訳だし。

 この頃の機種で中古出品されてる物は大体ボタン類が青緑色の錆で覆われているものが多い。時代的にプラスチックが主流でなく真鍮系合金でできてるためだろう。出品機は錆の他にもボタンが押し込まれて戻らない所もあり、見た目が悪いためかソニーの割には安く落札できた。
 到着後、通電すると表示はクッキリ、Auto-tuneも効く、不揮発メモリだから昔のプリセットが残ってた程で、正に完動品。余程大事にされていたのか部品の品質が高いのか。音もクリヤだったが、よく聴くとヌケが悪くバランスが悪い気もして、やはり調整ズレはあるようだ。
 ESシリーズと違い本機は穴なしカバーなので内部はキレイだった。中古だとこの差は大きい。
 基本的な故障はないと思われるので、先にパネル部を分解してボタンの錆取り修理を優先。分解して見たら、何と各ボタンに押し棒がバネ機構付で設置されており、それで本体基板に付いてるタクトSWを押す構造。それらは個別にフィラーエポキシで接着されており、恐ろしく手間暇の掛かる製造法だ。到底量産向きじゃない。当時の加工精度ではこうするしか無かったのかな。さらに組立誤差を緩和するために厚手のゴム円板がタクトSW前に置かれており、これが落っこちたためボタンが戻らなかったようだ。穴あきカバーでなかったので失われず幸い。構成的には似たようなものだが、F-120のスポンジと違い、ゴムの劣化は無さそうなので拾い上げてSW前に置くだけで直った。
 ボタンの緑青錆は「自転車用サビとり」で磨いたらキレイになった。ボタンがピカピカになるとプラスチックと違い全体にグッと高級感が出る。しかし油断してるとすぐにくすんでくるから高級感を保つには定期的に布(マニアならセーム革)で磨く必要がある…そう言えばこの当時のオーディオ機器ってこういう手間の掛かる大人のオモチャだったかも。

 機構部を直した後、ひろくんHPに添って調整。劣化は小さくほぼ微調整レベルで優秀なSpecが確認できた。多分良い部品を使っているのだろう。
 本機は出力レベルも調整できるので比較試聴がやりやすい。ESX(PLL検波)と比較したら少ししっとりした音色で重低音がややボンつき気味なところがよく似てる。これがソニー技術陣の好む音なのだろう。クラシックには合う。あえて差異を探すと、J75はホールの雰囲気感がやや上、高域の滑らかさはESXが勝るという印象~何度も切替えて比べないと判らない程度だが。
あと本機は電波の弱い局で少しWNが目立つ気がした。但しESXやKT2でもツイータに近づいて聴くとWNが無い訳では無く、高域が巧いフィルタ処理で滑らかになっててWN感が抑えられているようだ。J75は高域までストレートに出してる印象で寧ろフラットなのかもしれない。上述の印象の差とも整合する。スペアナで見ると18kHzまでキレイに伸びて18kHz超でストンと落ちてる。ひろくんが「聴き方によっては SONY ST-S333ESG より良好」と書いたのも肯ける。電波が強ければ非常に良い音だ。
 残念なのはSメータで、5LED表示だが点灯が完全にデジタル的で低レベルで飽和傾向+温度依存もあるようなので、感度VRいじっても強い局/弱い局の差別化ができなかった。この点ESXのSメータはしっかり判別できて優秀。
ランダム8局メモリというのも現在の常用機とするには不足で残念。オートサーチが超高速なので使えない訳でもないが。
 AMは付属してたバーANTが意外に高感度で実用的。こちらもほとんど調整ズレは無かった。
 という事で、電波状態がよく、ボタン磨きを苦にしなければ愛着の持てるチューナーだ。


FMチューナーはオワコンか まとめ編-2

2022-03-10 | Weblog

 もう十分と思うのだが、高級機が余りに安く売り出されているとオーディオマニアの性でつい手を出し、段々増えてしまった。それでも金額的には全部合せて昔の高級チューナー1台分程度だから、本当に一部有名機以外のFMチューナーは人気が無い。寧ろ最近の安物機の方が高く落札されたりする。サイズや部品劣化懸念で古い物は回避されるのか…まず自分で調整・修理しようとする事自体ないのだろうな。全然音質が違うんだけどねぇ。
一方で、落札額が万を超える有名機はそこまで差があるのだろうか。KT1&2で十分FMの音質を引き出せてると思うので、興味はあっても無理はしない方針。
 調整後の機体は、これまた中古品ばかりで組んだサブシステムで交替に鳴らしてるが、さすがに場所を取って困るようになって来た。私も出品したい所だが、まともな測定器で調整してる訳でもないので完全調整済とは呼べないし、結局時間が経てばまたずれるだろうから責任も持てないし。外観の傷等は気にせず購入してるので売る時は不利だから安すぎて出荷の手間の割に合わない気もする、コマッタなぁ。
 なお、これら中古Audioをリペアするのにネットで有用な情報を得てきたので、恩返しのつもりで私の経験をこのBlogに書いている。
実際に機種によってトラブルの出やすい弱点は確かにあるみたいで、ひろくんやBLUESS氏の記事と同じ症例が出た事も多く、修理の役に立った。だから私の経験値も誰かの参考になれば幸いだ。とは言え、文章書くのが思った以上に面倒で時間がかかってなかなかUPできない。ネタは多数貯まってるのだが。
全部まとめようとすると延々と終わらない、ということで少しづつ分けてUPして行こう。

・SANSUI TU-S707X DECADE '85発 ¥54.8K

 中古ショップのジャンクコーナーで見つけ、サンスイはまだ聴いてなかったので購入。ひろくんHPでは後継の αシリーズの方が高評だったけど、多分それほど大きな差は無いと思うし、デザインはαよりスマートで好み。
 ひろくん&BLUESS氏の解説によると、SANSUIは中身がほとんど変わらない物を名前だけ変えてモデルチェンジをアピールする傾向があるようだ。大手より開発に費用を掛けられないから苦心の営業戦略なのだろう。物自体は真面目な作りなので下手に新規性を入れて失敗するよりはベターかも。
 さて店頭表記ではFM受信可とあったが実際動かしてみたら、Muteオフで何とか受信するがSTEREOには成らないレベル。ま、こんなものだろう。局メモリは正常に効いた。本機はコイン電池で5年バックアップが売りだが36年も経ってるから前オーナーが交換したのだろうか??

 ひろくんHPでは本機を取り扱っていないのでBLUESS氏のサイトを参考に調整。
最初に、天板の爪の引掛りが強すぎて非常に開けにくかったので爪を少し曲げて開けやすくした。元々か中古だからかは不明だが、調整では何度も開閉するので必要事項だ。
 BLUESS氏もDECADEの調整記事で書いていたが、本機でもFEの最大電圧が指定値まで上がらなかった。76MHzでの電圧を上げると90MHzの電圧も上がるが、そうすると低周波局の感度が下がってしまう。なお両側バー型のSメータは明度の変化が敏感で意外に変化が分り易い。
BLUESS氏は76Mを4.2V、90Mで22.9Vにしていたが、私は76Mを3.3Vに設定して、90MHzは17.0Vで妥協した時が全域での感度がほぼ均等になったのでこれでOkとした。その後もずっと良好に受信できているので、本機ではこの電圧で問題ないようだ。個体差はあるかも知れない。
 クォードラチュア検波の同調点と歪調整の項は、まともな測定器を持っていないので変化の小さい側のコアを回して極力KT1に近いスッキリした音質に近づけ、それでズレたTP電圧をもう一方のコアで 0mVに近づけるという手順の繰返しで合せた。他のクォードラチュア検波機でもIFTが2コアであれば大体このやり方で音質を微調できる。ただし機種によって変化がよく出る物と、ほとんど変わらない物もある。これで歪が最小になるかは不明だが、私はKT1をHiFi基準と考えているので自分で使う分には問題ない。他の歪関連の調整点も同じく耳合せ。
しかし正直な所、高級機にある二次三次の歪補正回路は調整しても耳ではほとんど変化が判らない。サ行の耳障りが多少変わるかな~という程度。測定器でしか判らないカタログSpec用の調整点の様に思える。だから迷った時は大体VRの中央程度に合せておけば問題ないと考えている。アナログ期や現代の安物機は歪0.5%程度で売ってるのだから、その程度でも人間の耳では問題なく聴けるという事だ。

ともあれ最終的にクリヤで力強い音になった。KT1よりは少し線が太く低音が強めに出る感じ。相対的に高域が不足する印象を受けるが、高域が出ていない訳ではなく情報量としては十分と思う。弦もKenwood系よりは少し艶を感じる。重心がどっしりして安定感のある音がSANSUIの特徴かな。
使って気になったのは TrのHSがかなり熱くなり(多分60℃超)、近くのケミCの寿命が心配。ただ今の所イイ音出てるので例によってスルー。

 音質同様、受信性能も非常に安定感がある。確証は取れないが、80年代前半の高級機の方が調整後の安定性が良いと思える。80年代後期~90年代の廉価機は、半年の間で調整が怪しくなった様に聴こえる時があった。使用部品の差か、特性を上げるため調整がピーキーになってるのか、それを回避する調整ノウハウが必要なのか。
全機を均等に使っている訳でもないし、データ的証拠はないのであくまで個人的印象だが。KT1,KT2,ESX,F777と本機は半年経っても特に劣化や不調を感じないので、音質とは別で評価できる。

・Pioneer F-777 '92発 ¥55K

 ひろくんHPではソニーに比べて今一という評だが、オークション人気は高いので実力はどうかと思い、天板に凹みや全体に傷もあって安めな物を落札してみた。
 到着時Manualでも受信不可だったが、Fine(Muteオフ)で探したら正規から -0.04MHzの所で何とか音が出た。Sレベルは28dBと非常に低かったが致命的な故障は無さそうでヤレヤレ。
なお丸ツマミはマニュアルTune専用でAutoやFine-Tuneは +/-ボタンしか使えないのはインターフェースとして統一感に欠け不便だ。
 本機はサイドの飾り部を外すのに六角レンチも必要。カバーを開けた時少し焦げた臭いがした。PT(50℃位)とP-TrのHS(70℃位)がかなり熱くなるようでカバー裏面に黒いススが付いていた。寿命に影響あるかも。
中で黒い角型部品が破裂気味に割れていた。どうやらスーパーキャパシタらしく、コンセントを抜くと局メモリが数分で消えてしまう。しかしACを挿しておけば電源オフしてもメモリは保持されてるようなのでとりあえず放置。点検蓋がなく基板外すのは相当面倒そうなんで。

 ひろくんHPに沿った調整で全局Auto-tuneが効き、スッキリしたキレイな音になった。
音はKT1より線が太くアタックが弱い。なるほどこれはHiFiとしては落ちるかも知れない。静寂感は室内的印象。クリヤな音を目指して歪調整部やIFT、さらに正体不明のT204を調整して音質を極力KT1に近づけ、少し線は細くなったが立上り速度は本質的に及ばない感じだ。なお T204は、ひろくん記事には全く記載がなく T-757の回路図にも載ってないので何の調整用か不明だが、回してみたら音質が変わる気がしたので勝手に合わせてみた。当然自己責任。
立上りの遅さは出力Op-ampが原因かとも思ったが、使われてるIC:uPC4570HAは、4558の高性能版らしくSpec上は十分高速なので、これではないようだ。
「オーディオの足跡」の解説文によると本機では復調部で帰還を掛けて歪を下げているとあるのでこの辺が怪しいかも知れない。アンプでもNFB掛けすぎると音が鈍るものだ。
あとスペアナで見るとLPFで15kHz以上が明らかにカットされてる。これもソフトな音になる一因か。3wayスピーカーでKENWOOD等と比較するとやや高域の響きが物足りない気もする。でも長く聴くには耳に優しいかな。
 結局HiFi至上主義では今一という結果だが、単独で聴いているとソフトで低刺激=聴き易い音と言える。立上り速度もKT1等と切替比較しなければ、極端に遅いという程でもない。S/NやDレンジ、キレやヌケも十分鑑賞に耐えるレベルだ。安物とは格が違う情報量はある。本機だけ聴いてるなら特に不満を感じないだろう。
 もしかして基本設計方針として耳あたりの良い音を目指したのかも知れない。カッチリしたF-120からの大方針転換だ。最近NHKニュース開始時に流れるキャッチの音楽は非常にアタック鋭くて、KT1等でいきなり流れると反射的に驚かされるが、F777だとそれほど刺激されない。耳に優しく疲れにくい音質と思う。ラジオの場合、常に真正面から対峙して聴く訳でもないからこれはこれで理があると思う。
線はやや太めで低音が良く響くので、ロックやポップス系なら気持ち良いサウンドかも知れない。ボーカルに艶が乗る感じもあり、しっとりした歌だと魅力的に思える。
速度不足の弊害では、現代音楽でフルートが強烈な破裂音を連発した時に音が濁ったように感じたことがある。しかし再現性も不明だし滅多に無い状況だろう。V990の項で書いたようにスピーカー等とのバランスが取れない場合、高速性が寧ろ歪の原因になる可能性もある。BGM的に余り邪魔にならない音を流しておきたい様なケースなら本機をお薦めできる。
 一方で、正面から音楽を聴きたい時だとアタックの弱さに物足りなさを感じる事もある。比較対象として持ってると面白いが、普通の人はそんな事考えないかな。
経時による調整ずれも今の所感じない。安定で扱いやすい機種と思える。

 AMの音質は、ひろくんも高評価してたが私も他のチューナーよりクリヤでFMに近い高音質と感じた。Spec上 f特はFMには絶対及ばないけど。感度も良好。といっても普段AM聴かないので私的ポイントは低い。
AMステレオ放送は今やニッポン放送系のみであるが、野球実況中継等を本格ステレオ装置で聞くと臨場感がよく出て面白かった。だから野球ファンにもお薦め。普及しなかったのは残念だが、将来的にAM放送自体中止の方向らしいので致し方ない。

・YAMAHA TX-900 '87発 ¥49.8K

 ヤマハ最高級機TX-2000は今でも非常に人気が高くてオークションでも安くならないので、ひろくんHPでその前身機と書かれていた機種を狙ってみた。
出品コメントで「電源が入らない」とあったので故障原因探すのも面倒なため普段ならパスするところだが、TX-100を調整した時の経験から TXシリーズの場合バックライトが切れると他にランプが無いため電源が入らないと誤認されてる可能性を考えて落札してみた。電源故障だとしてもSW故障や断線とか簡単に直せる可能性もあるし。
到着した実物は電源入れても確かに全く反応がなく、適当に選局ボタン押しても音は出なかった。
そこで、カバーを開け中を見る。本機はカバーを横に少し広げて真上に引き上げるタイプで、他社では少し後ろに引いてから持ち上げるタイプの方が多いので最初ちょっと迷った。
 基板はスッキリした配置で各種コメントが印字されており調整しやすそうなタイプ。電源らしいラインの電圧を測ると印字に近い電圧が出ていて電源は問題なしと判断できた。
次に照明の豆球を外して白色LEDを差し込んだら周波数表示が読め、周波数を合せたら音が出た。予想通りの豆球切れだった。調整もずれててAuto-tuneが効かなくなっていたため、表示無しでtuneするのは無理だったという話だ。
照明はTX-2000と同じで 8V150mA麦球x2個を直列にしてAC(開放時20V)で点灯する回路だった。直列でなく独立に通電で片方だけが切れたならランプ切れとすぐ気付いたかも知れない。トラブル=即メーカ修理という前提の設計なのだろうが、既にメーカサポートの方が終わってるのが皮肉。
なお直列なのに不思議と2個共に断線していた。取敢えず手持ちの低照度LED(放射角狭いので代用にはならない)を差し込んで調整を進めた。ネットで交換品を探したが、こんな大電流の麦球は通販サイトでは見つからなかった。
 内部の特徴としては、ひろくんも書いていたがPTが非常に小さくて大型ケミコンも少なく電源配線も1φ程度の極細線で実に頼りない。基板自体もケース比小さめで部品数もKenwood比でかなり少なく見え、とても上級機とは思えない簡素さ。直感的にはこれでいい音が出るとは思えない雰囲気だが、音を聴くと透明感がある繊細な美音で感心した。
電源オフオンのMuteは効いてるが、ANT抜いた時やManual同調時はMuteが効かない。TX-100でも同じだったのでこれがヤマハ仕様か。電源オン後は1s位、選局後は0.5s位音が出ない~KT2同様で勿体ぶった高級機仕様。

ひろくんHPに従い一通り調整し、受信感度は上がった。
ヤマハのSメータは信号強度でなく電波状態を表わすと紹介文に書かれているが、ひろくんの T-70記事によればレシオ検波でのS/Nを示してるらしく、音に合せて変動するのが他社と明らかに違う。さらに T-7の記事によれば "Signal Quality=受信レベル-高域雑音レベル" となるように定義されてるらしい。実際スペアナで見て 20kHz以上まで信号が伸びているNHKより 15kHz以上をLPFでスパッと切っているローカル局の方がSレベルが高く出る事もある。HiFi音質でなく聴きやすさを示しているようだ。
 調整後しばらく使ってみて CSLからFineにして少し低い周波数に合せた方が Sレベル(音で変動するので目視平均)が上がることに気付いた。
まず CSLずれを疑い、発振器は持ってないので放送局の周波数は正確という前提で CSLを調整。CSL調整モードでもAuto-tuneは有効で、Tune後に表示が1桁upするから、その値を±0.1(0.01MHz)精度で合わせると全局ほぼ整合したので多分この調整法で合ってると思う。
しかし CSL調整後も僅かに低いfの方が Sがupする傾向はそのまま。なので次に、Fine=規定周波数にセットして Sメータが最大になるようにレシオ調整してみた。この結果 fのズレはほぼ無くなったが、CSLからFineにした方が Sがupするという傾向はしっかり残った。強い局ではCSLによる音の変化は感じられないが、電波の弱い局が CSL+オートIFで SuperNARROWにされると大音量時に歪んだ音になる。SuperNARROW状態でレシオ調整を少し触ってみたが歪は消えず、故障してるのかも知れないが、本機の SuperNARROWは聴けたものじゃないというのが結論。そういうことで、CSLはアテにせず Fine+Wide状態をメモリして使うことにした。CSLオフでも今の所 fズレは問題ない。
 それから、本機の局メモリは Hi-Blend等のモードも記憶するため、HiBlend=ONとなってる事に当初気付かないままセパレーション調整して、20dB位しか取れないのが MPX-ICの故障かとかなり悩まされた。要注意だ。
あと Sep-VRが超敏感で、スペアナ表示を追いかけても遅延のため調整が非常に難しかった。それでまず耳で逆chの音が最小になる点に合せ、最後にスペアナで追い込んだら Sep≧50dBが得られた。VRが敏感すぎるので長期安定性はやや不安が残るが、40dB位取れていれば実際は十分だろう。カタログSpec狙いの設計かも。
Pilotも追い込めば-70dB以下になるが少し経つと-60dB位になってる。TX-100よりはマシなので実用上は十分。

 調整後の音は高域が滑らかでキレイ、低音はややボンつき気味な感じ。基本ソフトタッチ(アタックを巧く丸める感じ)で上品な印象。分解やf&Dレンジはしっかり出てるので上級機として十分と思う。個人的にはKT系の方がアタックやキレ・静寂感・重低音の伸びが僅かに上で総合では好みだが、本機を常用しても大きな不満はない。シルキーで柔らかな高域は原音忠実とは別で、曲にマッチすると実に魅力的。これがヤマハトーンなのか。この感覚は TX-100では感じなかったので上級機として回路的な工夫があるのだろうか?先に書いたように基板を見た限りとても高級仕様とは思えないので不思議だ。
こうなるとTX-2000も気になるが、まあ方向性は解ったので高いのを無理して買う程でもないかな。

 その後、麦球の代用品として高輝度LEDを数種類通販で購入。比較実験した結果、「3チップ内蔵型白色LED 9Vタイプ」が、単chipの高輝度LED+光拡散CAP よりも広範囲に照明でき、電圧的にも扱いやすかったのでこれを装着した。AC電源なので保護用diodeを直列に繋いだ物を2個逆向きに接続し、さらに400Ω直列で10mA程度に電流制限した。放射角130度の広角で更に光拡散CAPも装着したが、それでも無指向性の電球とは違い、遠目だと周辺が僅かに暗めになってる。色味も写真で見るオリジナルとは違って白っぽい印象だが情報は十分可読。
これで一応完成でも良かったのだが、理系の趣味で実験再開。試しに黄色LEDで照明すると全部黄色になり赤い部分は見えなくなる。LEDでは黄色の波長しか出ないからだろうな。黄色の拡散CAPが売ってたのでこれを使うと良くなるかもと思ったが時間がかかり面倒。思いつきで白い拡散CAPの正面部だけ赤のペイントペンで点描したら赤が深みのある色になり輝度分布も少し改善した。簡単で丁度いい。側面まで赤く塗ったら文字表示も赤くなり見づらくなったので加減が大事。
赤色が暗めになって視認性は落ちたが選局のために近づけば読めるから問題ない。直列抵抗の値を下げた方が良いかもしれないが、例によって面倒なのでスルー。

【YAMAHAチューナーの歴史】

 ヤマハの機種番号には規則性が見えず、番号からは製品の格が分らない。アナログもシンセも、高級機からエントリ機、さらにシスコンや海外版までもゴッチャで、系統が見えず思いつきで命名してるとしか思えない。社内的には何か規則は有るのかも知れないが、ユーザから見てすぐに機種の格が判らないのは販売戦略として失敗じゃないかな。他社では大体頭の数字で相対的な格が判別できるケースが多いと思う。例外もあるがあくまで例外で、ヤマハのは無茶苦茶に見える。
 入札時に毎回仕様を調べるのが面倒になったので、WEBで見つけたT-番号機(CTシリーズは旧すぎるので省略)をNet検索して発売年(技術の起点)と定価(製品の格)を一覧にしてみた。情報がほとんど見つからない物や又引で怪しい情報も混じってるからあくまで目安。
シスコン機等、実際はもっと多数ありそうだ。それに海外版で型番だけ異なってる物や海外だけ販売の型番もあるらしく、複雑怪奇。
発売年や定価に関しては、カカクコムに載ってれば多分正確と思うが、比較的新しい物しかない。
「オーディオの足跡」サイトでは発売年が怪しい物が結構あるのだが、メーカーサイトやカタログ等の情報もほとんど見つからないので確定が難しい。メーカーも歴史を守ることには熱心じゃないようで残念。まあ潰れちゃったメーカーも多いからそれどころじゃないか。多分「足跡」では蒐集したカタログの発行年を記載してるのかな。だから販売期間が長い機種だと発売年は曖昧になると推定。
発売年に関しては他のサイト「オーディオ懐古録」「B級オーディオファン」の方が時系列的に掲載されてるので正しそうだと考え、主に参考にさせてもらった。海外に関しては「hifi engine」 がHit率高く、主に参照した。その他の個人サイトや 5ch等でHitした情報も参考にしたが、記録取ってないし、学術論文でもないので割愛させていただく。
ペアとなるアンプの発売年もTunerよりHit率が高いので参考になる。/A- が対応するAMPと見て、大体1年内に発売されてるとすればほぼ整合している。
なお T-1桁機に関しては BLUESS氏が一覧表にしているので引用。
http://bluess.style.coocan.jp/audio/yamaha_T_1-9_history.htm
 期せずしてオーディオ技術の歴史、盛衰がよく見えるものになった。ちょっと哀しい。

T-1  77年 ¥60K 4連バリコン /A-1 78年 ¥115K /セパレート型C-1&B-1 75&74 ¥400K+¥335Kは別格?
CT-1000 78頃 ¥59K 5連 NFB・PLL・MPX ←この辺りでCTシリーズが終り
T-2  77~78年 ¥130K FM専 7連 /C-2&B-2 76年 ¥150K+¥200K
T-3  78年 ¥43K FM専 5連 /A-3 78年 ¥59K
T-4  78年 ¥48K 4連 /C-4&B-4 78年 ¥98K+¥138K は釣り合わない?
T-9  79頃=79.10のカタログに掲載 ¥98K FM専 5連 /A-9 79年 ¥245K
T-5  79頃 ¥32K 3連 幅435×高さ92×奥行341mm 4.4kg 消費電力9W /A-5 79年 ¥45K
T-501 ? ? Sメータ以外T5ソックリの外観 奥行345mmと消費電力6Wだけが異なる=T5の省エネ化? /A-501 79年頃?
T-7  80年 ¥69.8K 4連 同型番で黒モデルもアリ /A-7 80年 ¥89K
T-6  80年 ¥49.8K 初シンセ=AutoTuneのみ /A-6 80年 ¥66.5K
T-8  81~80年 ¥59.8K シンセ SN84dB 歪0.04% /A-8 81年 ¥169K
T-6a(海外T960Ⅱ) 81~80年 ¥44.8K シンセ /A-6a 81年 ¥69.8K 中身はフルchg
T-5D(海外T-560) 81? ¥34.8K 3連 PAL端子 SN84dB 歪0.06% Sep55dB /A-5D 81年 ¥49.8K
T-40 ? ? W435×H90×D260?mm 3.6kg DC-NFB PLL MPX 多分T-5の廉価品;パネル簡素化=メータ無(LEDチューニング) /A-40 ? ? W435×H113×D300
T-461
=T-40? 81? ? 外観T-40ソックリ PAL RCAケーブル出し 消費7W /A-461 ? ?
T-4D(B)
=T-40? 82頃 ¥28K 3連 435x92x305 3.7kg SN84dB 歪0.2% Sep40dB 単なる使いまわし? /A-4D 81 ¥39.8K W435xH112xD299.5
T-300(海外のみ?) 83発? バリコン? 同軸直結 435x72x299 3.2kg SN76dB 歪0.3% Sep40dB T-4DとSpec近いがパネルは全然似てない
T-70  81頃 ¥62K シンセ T-8の黒版=AMPに合せたらしい /C-70&B-70 81発 ¥170K+¥180K
T-500 82頃 ¥34.8K シンセ /A-500 82頃 ¥49.8K T501との関係が不可解
T-950  83頃 ¥53.8K シンセ SN87dB 歪0.02% /A-950 83年 ¥118K
T-750  83頃 ¥39.8K シンセ パネルはT950似 SN85dB 歪0.07% W435xH72xD316mm 3.8kg /A-750 83年 ¥73.8K
T-550  ?84頃 ¥30K位? シンセ 同軸直結=シスコン機? SN76dB 歪0.2% W435×H72×D281mm 2.8kg Specはかなり違うが外観雰囲気はT750似…日本語取説アリ /A-550 84年 ¥59.8K

T-2x 83年11月? ¥98K /C-2x&B-2x 83年 ¥220K+¥270K
T-2000(W)(2xの兄弟機) 83年12月? ¥74.8K(W=¥85K) /A-2000 83年 ¥189K
T-100X  87年頃? ¥32.8K 幅340x高さ70x奥行356mm 2.7kg SN76dB Sep52dB 歪0.05% /A-100X 85年 ¥64.8K, A-200X 87頃 ¥79.8K コンパクトコンポ
T-70X 87頃 ¥28K コンパクトコンポ=幅340x高さ71x奥行299mm 2.7kg SN76dB Sep52dB 歪0.1% 16局ランダムプリセット 外観≒T-100Xの廉価版か /A-70XはHitせず
TXシリーズに移行
TX-900 86~87年 ¥49.8K /AX-900 86年 ¥79.8K (海外)AX-700 AX-500 AX-400 AX-300がランク分け販売
TX-400(海外) 86~89年 435x72.5x260mm 2.3kg SN76dB 歪0.1%
  1987 日本楽器製造ヤマハ㈱に改称
TX-500
  87発 ¥34.8K 幅435x高さ92.5x奥行282.5mm 3.1kg SN76dB 歪0.07% Sep52dB ~外観はTX900似 /AX-500 86年 ¥49.8K
TX-300(海外) 88頃 435x72x237mm 2.1kg SN76dB 歪0.2% Sep40dB ~パネルは配置が少し違うがTX400似
cf. TX-100/TX-410はPioneerが'71頃/79頃, TX-440はOnkyoが'76頃販売していた。TX-300はTEACが'79頃販売してたがYAMAHAも海外で販売。海外商標登録の問題かな。
TX-505 ? ? TX500と全く似てない=ミニコンポ 505シリーズ /AX-505 ? ? EQ付AMP
TX-700  88年 ¥39.8K TV付 /AX-700V 88年 ¥59.5K /AX-700D 87年 ¥69.8K
TX-2000(海外=TX-1000) 88年 ¥100K 最高級機 /AX-2000 87年 ¥210K, AX-2000A 90年 ¥240K  海外でもAX-1000はHit無→/AX-1050, AX-1090が相当(セレクタが丸型)
TX-530(海外) 89 435x92.5x283mm 3.1kg ~中はTX500? 国別対応?
TX-330
(海外) 89 435x72x237mm 2.1kg SN76dB 歪0.2% Sep40dB ~中はTX300?
TX-100
  90年 ¥39.8K チタンゴールド色で英語表記 TV付 /AX-100はHit無 AX-640 90年 ¥49.8K がペア対応?
TX-100J  ? ? オークションで出品されてた物を発見 黒色で日本語表記 以外はTX-100と外観ソックリ=国内専用版と思うが Netに全く情報が無い不思議な機種
TX-340(海外) 90-91 435x70x237mm 2.1kg SN76dB 歪0.2% Sep40dB TX100似だが廉価版=回転ツマミ無 16局メモリ
TX-540 
90-91 ? 435x72.5x320mm 3.1kg 歪0.03% SN79dB Sep45dB 24局メモリ~外観はTX100ソックリで上位版か IF切替付 オークション出品あり=国内版(情報無)あったのか? TX-930/TX-340とランク分け
TX-930
(海外) 90-91 435x76x320mm 3.4kg 歪0.03% SN90dB PAL*2 Fine RF-ATT付 24局メモリ ~外観TX100似(黒モデルあり);TVは無
TX-950
(海外) 91-95 Spec同上? 40局メモリに増
TX-350(海外) 91-95年 435x76x237.5mm 2.2kg SN76dB 歪0.2%
  バブル崩壊後
TX-10
  94年頃 ¥25K ハーフサイズコンポ /AX-10 94頃 ¥50K
TX-670RDS(海外) 93? 435x86x291mm 0.02% SN79dB /×AX-670無→AX-870|1070 94-96 もう同型番ペアに拘らなくなった?
TX-470(海外) 95? /AX-470(海外) 93-95年
TX-480  95年頃 ¥19.8K ←廉価機の番号はもう適当としか思えない /AX-480はHit無 AX-490 92-96年 が相当?
対応チューナー無? /AX-890 95 ¥89.8K リモコン付 130W*2
TX-492 97.8 ¥19.8K /AX-492(海外) 97
TX-590RDS(海外) 96~97年 435x86x293mm 3.2kg SN70dB 歪0.2% RDS対応
TX-592RDS(海外) 98? 435x86x289mm 3.2kg /AX-592 97.6 ¥49.8K 120W+120W
TX-492RDS(海外) 98? 435x86x278mm 3.2kg
TX-497  2005.11 ¥22K /AX-497 05.12 ¥42K
TX-761DAB(海外) 2007 435x87x307mm SN95dB EU主体のデジタルラジオ対応
T-S500 2009.9 ¥29K 歪0.5% Sep40dB AMステレオ対応 /A-S500(海外) 09~10頃
T-S501 2015.11 ¥35K S500をwide-FM化しただけ? /A-S501 14.9 ¥60K

 


便利な小道具

2021-12-25 | Weblog

 最近、私が実際に使ってみて特に有効と思えた小道具を紹介しよう。

接点復活剤:私が買った物は KURE コンタクトスプレー(300ml) だが、多分それほど効能は違わないので類似品でも良いと思う。
 金属は自由電子が結晶中に多数存在し金属同士が接触すれば自由電子が流れて導通が取れるというのが教科書的説明だが、現実には自由電子は非常に不安定なので空気中の酸素に触れると瞬時に結合して金属の界面は(金メッキであっても)ごく薄い酸化膜で覆われている。ごく薄いので通常は金属を接触させればその衝撃で破れて導通は取れるものだが長期使わなかったり水がかかると酸化膜が厚くなって接触不良を起こす。導通を回復するにはこの酸化膜を除去する必要がある。金メッキがあると酸化は進みにくいため酸化膜が極薄のままで破れやすいのが他の金属より有利にはなる。
接触不良時に以前はCRC5-56等の潤滑スプレーを使っていたが、これらは浸透性は優れているが基本短時間で揮発して悪影響が残らないようできているのですぐにまた酸化する。
一方、接点復活剤は汚れ除去と同時に薄い保護膜を作り酸化を防止する効果がある(メーカー解説)。普段は油膜が表面を覆っているが接触部では押し出されて金属同士が接触するから導通が取れる、というのが原理だろう(あくまで推測)。一方で油自体は絶縁性なので少しぐらいならはみ出しても悪影響を与える可能性は低いだろう(推測)。
論より証拠で、実際に使ってみると非常に効果が高く、電気接点がある所には接点復活剤を必ず塗布しておいた方が良いと考える。電池を入れる際には必ずスプレーして更に数回入れ直して酸化膜を除去して使うと電池が長く使えるはずだ。日常、電池切れと思っても実は単に接触が悪いだけという状況が結構あるんじゃないかと思う。気付かず交換すればその時に酸化膜が破れて導通するだけで、実はまだ使える電池を捨てる事になっているかも知れない。日本全体で考えたらどれだけ無駄になっている事か。一人でも共感して使ってくれればエコに貢献するかも知れない。
あとACコンセントにも塗布して抜き差しして皮膜を作っておくと火花が飛ぶ危険性が減るので安全対策にもなる。火花は暗闇で通電したコンセント(待機電流の大きい機器とか)を抜き差しすると見えるので効果が実験しやすい。ただしそれで万一火事になっても責任は持てないが。火花の飛ぶ位置に燃えやすい物がなければ普通火事にはならないものの綿埃だって非常に燃えやすいので清掃が大事。乾拭きかエアーで飛ばそう。
 最近PC画面が数秒暗転する症状が時々発生するようになり、アクセラ回路の故障か、そろそろ買い替え時かなと思っていたが試しにHDMIコネクタ(金メッキ有)にコンタクトスプレーしたら発生しなくなった。すごい効果。何と、まだ使えそう、だがWin11非対応機種なのでOSの方が原因で終焉しそうだ。全く勿体ない。

 あと電池も種類が多くて用途を考えて使わないとそこでも無駄が出る。最近は充電式電池(2次電池)が安くなったので、繰返し使うものはこれを使う方が安上がりだろう。eneloop以降自然放電も少なくなったので、あえて1次電池を使うべきなのは小電流で1年以上使う物=リモコン、時計ぐらいだろうか。時計でもNiH電池(小電流なので劣化気味の物で十分)を使って私の実験では4ヶ月位は動くので充電交換の手間を惜しまなければ十分使える。劣化気味の充電池を使う場合、使用前に2回充電する方が良い。劣化すると電圧変動が大きくなるので不十分な充電でSTOPしてしまう可能性があるからだ。なお電圧が低いと動かない製品もあって(私の経験では電波時計とか)NiHだと短期しか動かない場合は1次電池を使った方が良い。
さらに循環ストックという考え方に立てばリモコンもNiHで良い。いくら最近のNiH電池はリークが減ったと言っても1次電池のように年単位で保つ訳ではない。全く使わず仕舞っておくより順番に使い回すほうが合理的だ。NiH電池が現状1次電池の8倍程度の価格とすれば1次電池で1年使える機器でNiHを繰り返して使うと8年で元が取れる。NiHは普通に使えば10年位は使えるはずだ。なおNiH電池は完全放電すると劣化するので、循環ストックにする場合2~3ヶ月毎に入れ替えて充電すべき。充放電回数500回として2ヶ月おきなら1000月≒83年なので製品寿命には影響しないだろう。
ダイソー等のNiHは安い分容量少なめで割安感は無いが、大電流を必要としない用途がメインなら十分かも。これなら5年で元が取れる。まぁ循環ストックの考え方では元を取る事は主眼ではないが。
ちょっと気づきにくい注意点として最新の高容量タイプの充電池は微妙にサイズが大きめになっているから電池ケースに入らない/抜けにくい/接触しない事がある。特に大電流を必要とする機器以外は通常タイプの方が汎用性が高い。大は小を兼ねない訳だ。この辺は実際試してみるのが一番早い。
今や緊急時に充電切れで使えない時の用心に1次電池を在庫する程度で、ほとんどの用途はNiHで代用する方がエコになる筈だ。通常の1次電池より高容量なので単1・単2はサイズ変更アダプターを用い、在庫は単4と単3に集約できる点もエコに役立つ。

シリコーンスプレー:これは調整とは関係ないが、ついでに買って使ってみたら効果絶大だった。
スプレーすると表面に薄いシリコーン皮膜を形成し摩擦を大幅に低減してくれる。これも同等品であれば同じような性能と思うので安いのを買えば良い。ダイソーでも小さい物を売ってたのでお試しには十分だろう。
これは戸棚や引出し、襖等、一応動くがやや抵抗が大きい場合に、可動接触面に塗布すると驚くほど軽くなってビックリする。戸棚や引出しは軽くなりすぎて力加減に慣れるのに結構時間がかかった程だが、指一本でスルスル動くのは快感。
表面の摩擦係数を下げるものなので凸凹が大きい面だとあまり効果が出ない点は注意。そういう所は先にヤスリがけすべき。
油のようにヌルヌルしないので弊害は少ないが、スプレーの際周辺の畳・床・敷居等にかからないように紙を敷く等のマスキングをしないとツルツル滑りやすくなって困る事になる…実際やってしまった。中性洗剤で落ちる事になってるが簡単には消えなかった。
初めに非常に効果があった所は3ヶ月以上経っても潤滑効果が持続している。コーティング膜は薄いので元の表面がざらついてるともっと早くダメになるかも知れない。まずは色んな所に使ってみて有効性を確かめることだ。
最近少し堅いファスナーに塗布したらぐっとスムーズになった。洗濯したら効果が消えちゃうだろうが、日常使うものだからその間だけでもストレスが減ると思う。油と違って乾燥後はベタつかないのが良。

LEDヘッドライト:調整時の照明で、LEDライトでは狙った所に当て続けるのに手が足りず、ランタンでは照度が足りず悩んでいた。本格的なアウトドア用のヘッドライトは高価で大げさだと思ってたのだが、最近ダイソーで見つけたので買ってみたら非常に便利。ヘッドバンドも付いてて角度も変えられるスグレモノ。
調整以外でもアンプの背面の配線とか物陰の探し物とか、見た所を明るく照明でき両手が使えるのは非常に有益。
多分防水は効いてないし、照度や広がりの調整もできないから本格的なアウトドアでは力不足だろう。流行りのミニキャンプ用に開発したのかな。デザインはアウトドア用をコピーしたのか無駄な焦点リングまで真似てるが意味がない。
ともあれ屋内で使う分には十分な性能だ。停電用にも一台持ってれば有効だと思う。改めて調べたら最近はアウトドア用ヘッドライトも充電式でコンパクトかつ安くなってて見直したが、それでも1500円位するから110円のCPには敵わない。

DCプラグ変換アダプター:ACアダプターも小物はUSBに集約される傾向が出てきたが、HDD等を買うとまだ必ず付属してくる。PC関係ではほとんどが+12Vか+5Vなので電圧が合ってて電流に余裕があれば流用できるはずだが、困ったことにコネクタ形状がメーカによって違うというバカバカしい状況がある。PC関連で主流なのは外径φ5.5だが内径はφ2.1とφ2.5の2種類が流通している。パッと見ただけでは判別困難で、穴が小さい方は嵌まらないので判りやすいが、大きい方は嵌るし時には導通もするが振動で接触不良を起こすためHDDでは却って害がある。この変換アダプタを買うだけでかなり使いまわせると思う。ACアダプタの電流容量(必ず記載があるはず)が足りている事だけ注意。メーカ保証外に成る点も留意。
Topland ノートPC用マルチACアダプタ:ノートパソコンのACアダプタも共用化できるはずだが現状はメーカによって電圧が微妙に違うので変換アダプタだけで流用するのはリスクが有る。最初に各社相談して電圧統一を計れば良かったのに。
この製品は変換コネクタを挿し替えると電圧も変わるようにできていて主要メーカのノートPCに広く対応できるのが特徴。電力が足りるかどうかだけが重要。メーカは余裕を見ているので実際は1割ぐらいの電力不足なら使えるようだ。アダプタの発熱具合をチェックして長時間使用しても熱くなければ大丈夫だろう。但し保証はないので自己責任。

最近ようやくEUを中心にUSB-Cに統一化の動きが出てきたが遅すぎる。本当に無駄が多い話で、本体が壊れて買い直すたびに余ったACアダプタが溜まっている or 簡単に捨ててしまったモノも多いのではないか。
これも世界中で考えたらどれほど資源の無駄遣いになってるか。アホみたいに温暖化脅威論をアピールする集団がこういう問題=物を極力買わない・捨てない・作らないようにするのが一番のエコ(省エネ・省資源=CO2削減)であるというアピールはしない事が、人為的CO2悪玉論が詐欺の一種であることの証拠のようなもの。物が売れなくなるとバックのスポンサーが困るからだ。人為的CO2は全地球CO2のごく一部でしかないことや、ライフサイクルではCO2を膨大に出す原発の問題も絶対言わない。製造・廃棄を無視して「運転中はCO2を出さない」事にどれほどの意味があるのか。熱効率は石炭火力よりはるかに低いので排熱で海水を温めて海水中のCO2を追い出す効果は強く、核ゴミは半永久的に熱を発生し続けるので保管にエネルギーが必要=最後は結局CO2になる、こんな事は学者なら誰でも解るはず。
それを指摘せず原発はCO2削減に有効だと言うIPCCが他の事だけ正確な事を言ってると考える方が無理があるだろう。