フツーの見方

フツーの論理で考えれば当然だと思うことが、なぜかマスコミでは出てこない。そんな意見を書き残しておきたいと考えてます。

FMチューナーはオワコンか まとめ編-6

2024-04-10 | Weblog
 どうも油断してると書けなくなっちゃうな。ネタは一杯あるのだが、文章を整えるのは非常に手間が掛かるので、ついつい間が開いてしまう。確定申告もあったし。
 という事で、深く考えなくて済むオーディオネタで再起を図ろう。

・ALPINE/LUXMAN T-105 '85.3発 \44.8K
 ラックスマンはオーディオマニアとして一台は欲しいと思ってた。T-105はレビューも少なく人気も薄いようで、安く落とせた。
 「足跡」の情報ではやたらカタカナ修飾語の多い回路解説になってるので却って胡散臭い印象。Specは並レベルだし。特にSN=75dBというのは高級機には不足だ。
 一方、デザインはシャープ&スマートで表示部も控え目で欧風の印象。あちらではパネルがギラギラ煩いのは好まれない様だから、パネルOFFスイッチの付いてる機種もある位。
 さて、到着時の状態はFM:-0.1MHzズレでST.受信可。AMは正常受信可。状態は良い。驚いたのは Sメータで 5セグメントなのだがTU-S707同様、センターから対称に灯る仕様で実質3段。手抜きかと思ったが、やはりS707同様アナログ的光り方で高速応答するので変化は判りやすかった。
 局メモリはFM16+AM8あり十分。Auto-tune機能は無く、fスキャンは超高速なので周波数不明でサーチするのは難しいかも。メモリしてしまえば全く問題ない。

 本機の調整記事は見つからなかったので、ひろくんのT-400記事とBLUESS氏のT-530記事を参考とした。T-105の分解記事はネットでも見当たらなかったので内部写真掲示。



 カバーを開けてIC名を見ると、
LA1235…同調点検出+スーパーワイドFMディテクタ(T-400のクォードラチュア検波との差異は不明)
LA1245…AM Tuner
HA12016…PLL FM Demodulator
LUX 8437XY TC0201…制御MPU
 信号系はT-400と同じICで、周りの部品配置も結構似てる。で真似て調整しようと思ったが、基板にテストピンが見当たらず、一体どこの電圧を計れば良いのかが解らない。
基板で丸付数字の傍にある丸で囲われた孔がチェックポイント(CP)でここに極細のテスターピン(普通のテスターピンだと入らない)を差し込んで計る事に気付くまでずいぶん時間が掛かった。ひろくん記事では特にコメントも無くCPの電圧を計るとしか書いてないのでメーカー関係者では常識なのだろうか?

(試行錯誤の調整手順)
まず適当な局で同調点を調整。
 L101緑…IC寄が多分同調点調整 局の公式周波数で CP③-④間≦±0.2V
 L101緑…IC逆側が多分歪調整=私の場合音質調整ポイントだが、本機では音質変化は少なかった。
 FEのVTはチェックしただけ。同形状のT-400では3Vと21Vの指定だから多分正常範囲と思う。
76.1MHz (L106) B2=3V
89.9MHz (CT106) B2=20V
 {CT103 CT104 CT105 IFT} を適当な局を受信して LA1235 13ピン電圧Maxに調整
 VR101…Sメータレベル 触る必要ないが、強弱局が区別できるよう少し調整
 VR103…SEP. 逆chの音量minに調整, LR共≧55dB取れた
 L106×2…LPFかな? 19kHzリークは R≦-70dB, L≦-75dBで問題無かったので触らず

 基板をざっと見た時、電源回路が3端子IC(L78N12)+大型ケミC*1個だけで余りに手抜き、HiFiコンポでこれは無いだろうと思った。ただ連続通電時、PTがやや熱く(60℃位)、3端子はケースに直接固定され40℃位で放熱は問題なさそう。FUSEを使ってるのが'85時点としては珍しく感じた。

 調整後の音質は透明系で落着いたイイ音。fレンジは十分。静寂感は室内的。KT1比少し線太めでSNは負け。SPに近づくと無音時に微小だがハム音が聞こえる。音楽鑑賞では気にならないレベルだが、80年代の単品コンポでハム音が出るのは異例。やはり電源回路の手抜きが影響してると思われ残念。経時でケミCの容量抜けが影響してるのかも知れないが、元々1個しかないのは少なすぎ。ケミC交換すればマシになるかも知れないが、目立った特長も無いので放置。
 アルパイン提唱のS.T.A.R.サーキットの効果は全く不明。S.T.A.R.記述のないT-400の基板に比べて特に部品が多いとも見えないので全く謎。ネット検索したら「各回路の電位を徹底して揃えていくことで、アース電流によるノイズの影響を最小限に止める」ため回路パターンや電源供給を見直し、デジタル/アナログ回路の干渉を減らす設計法らしい…ヤッパリ何だか解らない。そもそも電源回路に手を抜いてる時点で明らかに音質は劣化してるだろう。
 85年製なのにF型も付いてないし操作系もほぼ同じだしSpecも僅かながら低下してるようでは、結局T105はT400の焼き直し手抜版なのかも。

 掃除の為フロントパネル外したら、FLは青緑発光でパネルに赤色フィルタを入れて白に見せてるようだ。個人的には青緑のままにした方がキレイだと思う。黒パネルに白数字は味気なさすぎだ。まあ好みは人それぞれだが。
 F-120等と比べ、後発の4万円台の機種としてはSNが低く、LUXMANブランドとしてはちょっと物足りない出来。AMPとセットのデザイン性で選ぶ前提か。
音の素性は悪くなさそうなので定価をあと数千円UPして電源を強化すれば高級機に接近できたように思えるので勿体ない感。コンポとして全体のバランスもあるからそう単純にはいかないかも知れないが。

・AIWA S-R7 '79頃 \36K ミニコンMy Paceのチューナー
 安かったのでアイワのチューナーはどんなものかと思いゲット。AIWAはラジカセで音楽聴いてた頃には非常に有力なブランドで私も使ってたので馴染みがある。
ひろくんの記事もあったし、出品時に「通電しボタンも反応する」と書いてあったので多分直せるだろうと思ったが、失敗した例。

 到着時、確かに周波数表示も変化しメモリもできたがAM/FM共全くSメータが点かず音も出ない。
 ひろくん記事に沿って調整を始めたが、まずFE(VT):B2=31Vもあり、周波数変えても全く変化しない。
 ICの電圧計ると、HA11211のVcc=0V, H12016のVcc=6.7Vと異常。電源部の故障が疑われた。本機はケーブルがゴチャゴチャで点検孔も無いためメンテ性が悪く、面倒なので暫く放置。
 数か月後、頑張って基板を裏返し、電源回路の出力電圧計ったら、+72V, -28V, +8Vは繋がっている ケミCの耐圧から見て正常っぽい。Q25-Trの出力が0.5Vしかなく異常。Q25と周辺のツェナーやケミC,抵抗を順次外してテスターでチェックしたら、R134(赤/茶/黒/金)がオープンになってた。多分21Ωヒューズ抵抗と推定…持ってないので普通の27Ωで代用。すると出力が+12Vになった。
これでAMはSメータも振れて受信でき、ノイズ混じりながら音も出た。
 しかしFMに切替えると相変わらずB2=31Vのまま変化せず。こうなるとFEの故障が疑われる。AM受信はOkなので電源や低周波回路は正常と判断。FEの修理なんて私には知識も無いので断念。投資が無駄になり残念。

・TRIO KT-80 '79 \37K
 バリコンチューナーは糸掛けが出来ないので原則回避してるのだが、TRIOのパルスカウントを聴いてみようと落札。ひろくんの音質評価も高かったし、薄形デザインはスマートで好み。
 到着時、ランプは点きREC TONEは出たが全く受信せず。ツマミと針の動きはスムーズでMUTEオフでホワイトノイズは出るから低周波系は大丈夫そう。
 薄形設計のためカバーの造りが凝っていて、下側のネジを外して真後ろへ引き抜く構造。ケースが無駄に大きいのでこれが結構大変。バリコン回転部が上下ギリギリで糸を引っ掛けないよう注意が必要。
 基板や配線の引き回しはキレイに作られている。AMP(KA-80)に合わせたでかいケースなので配置は余裕があり、中央部が広く空いててダイヤルとなるLEDへの配線が引っ掛からないように工夫されている。
 電源は割と簡素で価格なり。PTrはHS付で60℃位、PTは40℃位で熱設計は良好。
 ひろくんHPを参考に調整を始めたが、まず音が出ないのでツマミを回して少しでもSメータが光る所で同調点T2を回してR13両端の電圧が<0.2Vになったら音が出た。回路的な故障は無さそうでヤレヤレ。
 周波数82.5MHzの局が78.8MHzの所で受かっていた。そこでバリコンのTCR1&2を回してSレベルを最大化したら4点光るようになった。この段階で他の局も探して受信してみたら大体3~5MHz低めの所で受信することが判った。バリコンのTCOを回しても全く変化が無く、このトリマーの容量抜けが疑われた。
 似た症例がひろくんのKT-990記事にあった。KT-990と違い、KT-80では底面に点検蓋があり、外すとバリコンの基板面も見えたのでその気になればトリマーの交換も容易だ。ただ手持ちにトリマーが無い。ひろくん記事を参考にバリコンの端子にセラコンを付けて周波数がどう変化するかテストしてみた。とりあえず10pFトリマーの半分目安の5pFを仮半田付けしたら周波数ずれが -0.2~-0.7MHzに縮まった。セラCで様子を見てから適当なトリマーを購入するつもりであったが、一発で正解を引いた感じ。これなら十分使える。
 ここで再度TCA1&2で感度調整したらS=5点灯するようになった。さらにセラCのフロート側のリード線を長めにしてバリコン側にクリヤテープを貼ってリード線を押し付ける事で浮遊容量を増やしたらズレは0~-0.2MHzに収まった。実用的にはこの程度なら許容範囲と判断。トリマーより安定の筈だ。



 改めて、ひろくん記事に従って調整を行った。感度調節ではR53Fの電圧を計ると書いてあったがミノムシでクリップすると電圧が変化してしまうようなので、Sメータで調整した。光り方がアナログ的なので十分調整に使える。
 問題はパルスカウントのT3調整で、2MHz超のオシロが必要だが持ってないのでお手上げ。T4=Noise Ampの所も調整法不明。
結局、T3は余り触らないようにしてT1/T2/T4を耳合せで調整。変化は微妙で何度か調整してみたが正直どの程度良くなったのかは自信ない。T3も試しに少しいじってみたが音変化は正直不明だったので測定器が無いなら触らない方が良さそうだ。
 最終特性は Sep≧55dB, 19k≦-80dB, f特は16kHzの弱いLPFが入ってる感じ。
 感度が改善したことでクリヤでイイ音になった。パルスカウントらしく声の子音がハッキリしてる。高域&低音やや強めでワイドなドンシャリ傾向か。SNも十分だが、ESXと切替えると無音部の静寂感には差がある事が判る。KT80はSN80dBで KT1はSN88dB, ESXはSN91dB。数値は絶対的ではないが同メーカでの違いは上級機との差別化があると推測できる。実際は電源ケミCの劣化が影響してる可能性もあるが…
 また詳しく比較試聴すると、KT80は弦楽器の細かいニュアンスがつるんと滑らかになってしまう印象でやはり高級機には及ばない感じ。中級価格だからメーカとして上級機と差別化してるのだろうか。ただし切替比較しない限り判らない僅差レベルだ。まだ調整で改善する余地もあるかも知れない。
 でもオークションだと価格は大差ないからパルスカウントの音が絶対と感じないなら高級機を狙った方が良いと思う。

 低廉機と高級機は電源回路の差が一番顕著で解りやすい。電源のノイズはSNにも効くし安定度でも電源がチャチだと最初は良くても経時劣化で余裕の無さが音に現れてくる。チューナーは回路自体の電流は少ないので例外的に省ケミCで音が良い物もあるが、端的に言うなら、電源回路のケミCの数と容量が少ない物は中古で狙うのはお奨めしない。

 LOCK=オンにするとバリコンでチューニングする時かなり適当に回しても吸収してくれるのでバリコンでも割と楽にtuneできる。しかし音質重視ならオフにしてキチンと音の良い位置にチューニングした方が音が安定してる気がする。暫く通電した後ならLOCKオフでもfズレは小さく問題はない。電源オン直後は多少変動するので頻繁に電源オンオフするならLOCKオンの方が良い。
ちなみにツマミは軽くて回しやすいが、30Tの様なフライホイールの高級感は無い。価格相応だろう。
 ひろくんも書いてたようにパワーSWの照明は電球だが、私の入手した物では切れてなかったが逆にまぶし過ぎで照明のバランスが悪い。LEDに替えるのも面倒なので紙を一枚電球前に挟んで減光したら適度になった。
 バリコン機なので90.3MHzで弱くST.信号が受かった。TBSのFM補完放送らしい。発売された当時には全く仕様外の放送が受信できてるのは妙な感じ。

(追記)
 最近、設計者自らが KT-80の改良記事を書いてるのを見つけた。

KT-80リニューアル (Atelier AUDILLUSION)
http://www.audillusion.com/audillusionkt801.html#KT801
この記事によれば、低域カットオフ拡張/電源ケミC増加/シャントレギュレータ追加/GND分離等の改造で D-3300T 並みの音質になったとある。でもシャントの追加となると結構な手間であり、私はそこまで頑張る元気は無いのでパス。
 なお[HOME]から読める他の記事もなかなか興味深いが、技術レベルが専門的過ぎて完全な理解は難しい。以下の記事では当時の設計側の苦労が分かって面白かった。
最近のFMチューナー
パルスカウント検波からDLLD
歪の考察


コメント
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