川越雑記帳2(川越見て歩き)

万葉の歌詠まれたか鹿見塚(シシミ塚)/昔の姿思うすべなし

富士見町の浅間神社に、大小2つの石碑が並んでいる。
向って右の大きな石碑は「萬葉遺蹟 占肩之鹿見塚」で、左の小さな石碑は「仙波町略史」である。


以前、「仙波町略史」の碑についてほ、表の碑文を紹介した。

一方、「萬葉遺蹟 占肩之鹿見塚」の碑には、裏に碑文があるが、
その内容は書かず、傍にある「説明板」で代用した。


そこには、つぎのように書かれている。

県指定・旧跡
占肩の鹿見塚(うらかたのししみづか)
 万葉集巻十四
 武蔵野に占(うら)へ肩灼(かたや)きまさでにも
  告(の)らぬ君が名うらに出にけり
 という歌は古代日本人が多く住でいた鹿
を持し、その肩を焼いて吉凶を占った習慣
にことよせた情緒深い歌であるが、この誕
生地が長いこと謎だった。
 この仙波の地には、父塚・母塚もふくめて
古墳群が形成されていた。しかし、この
鹿見塚は大正三年に東上線が開通する際、
破壊され消滅してしまったが、土地の小名
にも「シシミ塚」「シロシ塚」などと記録され
ている。シシとは鹿のことである。
 建碑の場所は便宜上浅間神社の前を選ん
だのである。
  平成四年三月
           川越市教育委員会


一方、大きな石碑には、つぎのように彫られている。

「 埼玉県指定史跡
 萬葉遺蹟 占肩之鹿見塚
    埼玉県知事 大沢雄一書 」

石碑の裏に入ることはできるが、狭くて裏面全体の写真を撮ることができない。
また、南向きに建てられているため、裏からだと逆光になってしまう。
部分的に撮った写真を見ながら読むと、つぎのように彫られている。

      萬葉遺蹟 占肩の鹿見塚
奈良時代に編纂された萬葉集二十巻四千四百九十六首の歌は王朝文学の精華として日本文化の誇りと称されている。その中には本県に関するものが約十四首もあって純真素朴な東歌と賞され郷土人に懐しく伝えられている。
     萬葉集 巻十四 東歌
 武蔵埜爾宇良敝可多也伎麻左低爾毛乃良奴伎美我名宇良爾低尓家里
 武蔵野に占へ肩灼きまさてにも告らぬ君が名うらに出にけり
往古東国の人々が武蔵野に棲んでいた多くの鹿を狩して、その肩骨を焼いて吉凶を占う風習があった。この故事から情緒深い占肩の歌が遺され、地名をシシミ塚と称していた
 然るにいつしかシロミと転訛して城見塚と書改められたこともあったが、今も尚シシミ塚として一町七畝余もある。また新編武蔵風土記にも遺跡としてのその小名が地籍に記されている。この地には上代の古墳が遺存し、父塚母塚と呼ばれ、母塚の丘陵上には富士浅間神社を祀り富士の腰と称し、こゝの初山の行事が古来から有名である。
 シシミ塚の地域が萬葉占肩歌の遺蹟鹿見塚として柴田常恵小川元吉岸伝平の三氏の調査によって昭和廿一年三月に埼玉県指定史蹟に決定したことは、わが郷土文化の将来のため誠に欣幸に堪えない。仍つて茲に永くこの光栄を記念するため建碑するものである。
   昭和二十九年十一月       川越市教育委員長岸 憲夫撰
                   川越市立図書館長相原信達書

説明板では上記のように、末尾に「建碑の場所は便宜上浅間神社の前を選んだのである」と書いてあるが、
この碑文を読んだだけでは、この浅間神社も古墳であるため、ここがシシミ塚だと勘違いされそうである。

その点を、故岡村一郎氏も「鹿見塚のあった所」で危惧している。
「川越歴史小話」 岡村一郎 川越地方史研究会 川越歴史新書5 39鹿見塚のあった所

鹿見塚は線路の近くにあったが、説明板にある通り「大正三年に東上線が開通する際、破壊され消滅してしまった」。
国道16号と川越街道が交わる交差点の歩道橋の上から、2つの鉄道を見ることが出来る。
国道16号の南側では、東武東上線とJR川越線が立体交差している。
上が東武東上線、下がJR川越線で、それぞれ池袋方面と大宮方面へ向かう。
ここはちょうど台地の端で、台地を削りながら市内へ入ってくる。


国道16号の北側は、東武東上線の上を川越街道が通っている。


どちらを見ても、鹿見塚があった所は、まったく見当がつかない。
ここに古墳があったら、どんな風景だったろう。
また、その古墳の上から見る景色はどんなだったか、いまでは想像するのも難しい。

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