門前の小僧になりたいくらげ

学究的な空気に憧れて専門家の周りに出没しては雑感を綴るブログ。化石鉱物系がやや多し、の予定。

傘岩・千畳敷岩〜2017.10.15学芸員と歩くふるさとの大地「東濃編」その6〜

2017年11月06日 | 古生物学・地学


 岐阜県恵那市大井町恵那峡の傘岩です。すぐ近くにある千畳敷岩とともに国指定天然記念物になっています。この岩は黒雲母花崗岩でできており、高さは約4.5m、頭部の直径約3.3m、くびれた部分は直径数十㎝しかないという、なんとも危なっかしい形をしています。岩の保護と事故防止のために柵がありますが、岩自体が山の斜面にあるので、観察するのは岩のある場所よりも山頂側から、をお勧めいたします。麓側には、、、留まらないほうがいいです。

 先ほどの恵那峡では苗木花崗岩の方状節理※を観察しましたが、そちらを地表に露出して風化(=マサ化)し始めた花崗岩の姿とするならば、この傘岩はマサ化が進んだ花崗岩の姿と言えます。そう離れていない場所で風化した部分とそうでない部分が混在しているのは、今現在起こっている風化を見ている、というよりは過去の地質時代(中新世後期〜鮮新世頃)の風化部が、またその後の年月によって浸食された姿を見ているということになります。このことはこの地域全体に当てはまります。(偉そうに説明していますがこの講座で聞いたことの受け売りです。)個々の風化部と未風化部を見て風化殻(風化層)と未風化核岩※の位置関係がぱっとイメージできるくらいにまでなれば、もっと楽しく観察できるだろうなあ、と思います。

 傘岩とほぼ同じ場所、同じ岩質の千畳敷岩(形状はその名のとおり大きく露出した一枚岩です)の写真もUPしたかったのですが、携帯電話のバッテリーが(フル充電してあったのに)切れてしまい撮影できませんでした。。。残念。木曽川対岸にある紅岩(べにいわ)も写真に収めたかったです。ちなみに紅岩は苗木花崗岩の表面にダイダイゴケ属の一種が寄生して橙色に見えるそうで、植物として県指定天然記念物になっています。 

↑恵那峡で見られる苗木花崗岩の方状節理 

 花崗岩生成時の高温高圧の状態から、隆起するなどして花崗岩が地表に露出し、常温常圧の状態にさらされることによって生じる岩体の体積減(冷却)と膨張(地中の圧からの解放)からできる割れ目。方状の名のとおり、直方体をなす。風化が進むにつれて角が取れて丸みを帯びた表面になってくる。

 風化は岩体が地表に露出することによって促進されるため、地表部分でより風化が進む。その風化部分を風化殻と呼び、未風化部分を未風化核岩と呼ぶ。cf.タマネギ石

 

参考:学芸員と歩くふるさとの大地「東濃編」配布資料 Oct.15.2017 岐阜県博物館刊