マル激トーク・オン・ディマンド 第469回(2010年04月10日)
なぜ日本はデフレを脱することができないのか
ゲスト:高橋洋一氏(政策シンクタンク「政策工房」会長、嘉悦大学教授)
現在日本が直面する最大の課題を問われれば、迷わずデフレの脱却と答える人が多いのではないか。雇用不安も財政赤字も、その根底には1990年代から始まったとされるデフレがある。しかし、なぜ鳩山政権はこの単純な命題を、一向に実現できないのだろうか。
元財務官僚で、現在は自ら立ち上げた政策シンクタンク「政策工房」の会長を務める高橋洋一氏は、その原因はもっぱら日銀の無策とそれを放置する鳩山政権にあると言う。日本経済が明らかな需給ギャップを抱えているにもかかわらず、日銀は金融政策という最も基本的な施策を実施しようとしない。そして、鳩山政権はそれを放置している。鳩山首相はどうも、政府は日銀に対してそうした注文を一切つけてはならないものだと官僚から思い込まされているようだと、高橋氏は言う。
他にも「官僚の書いた作文をそのまま出しただけ」(高橋氏)の成長戦略や、展望もないまま国営回帰を図る郵政改革法案など、ここまで鳩山政権が打ち出してきた政策、とりわけ経済政策には、疑問符がつくものが多い。高橋氏自身は子ども手当や高校無償化など、自民党時代の公共事業を通じた再配分から家計への直接給付の政策転換には一定の評価を与えると言うが、その大前提だったはずの予算の総組み替えも実現できていない。その結果が、戦後最大となる92兆円の予算であり、1946年以来となる国債発行額が税収を上回るという異常事態だった。
高橋氏は鳩山政権のこうした体たらくを、政治主導が実現できていないために、官僚に手玉に取られている結果だと指摘する。
そもそも鳩山政権が、総選挙で勝利した直後に「政権移行チーム」を作らなかったことが、ボタンの掛け違いの始まりだったと高橋氏は言う。いざ政権が発足すれば、日常の公務に忙殺されることはわかりきっていた。政権移行チームはそうなる前に、新政権の意思や優先すべき政策を明確に打ち出し、それに協力する意思のある官僚を枢要な地位に就ける意味がある。政権発足後に政務三役で役所に乗り込んでいっても、多勢に無勢で勝負にならないからだ。
ところが鳩山政権の下、首相官邸を始め各省庁で働く秘書官や補佐官らは、いずれも自民党政権当時のままだ。これでは政権交代の真価は発揮できないし、政治主導など実現できるはずがない。
もともと民主党はそのような状況に陥らないために、100人以上の国会議員を政府に送り込むことを公約していた。しかし、政権の枠組みを決める場所になる政権移行チームが作られなかったため、そのために必要となる国会法や内閣法の改正準備がまったく進まなかった。その結果が、「古い道具のまま新しいことをしようとする」(高橋氏)ようなことになってしまった。
政権発足時の準備不足が全ての悪循環を生んでいると指摘する高橋氏は、その解決策として、民主党の若手に比較的多い官僚OBの政府への登用を進言する。彼らなら官僚の手口を熟知しているし、法案作成のノウハウも持っているため、官僚の策略を未然に防げるし、官僚に依存せずに法案の作成が可能になるというのがその理由だ。法案さえ作ることができれば、国会で過半数を持っている連立与党の立場は強い。
とは言え、これとて小沢一郎幹事長の意向次第で、実現の可能性はおぼつかない。どうやら鳩山政権が抱えるガバナンス欠如の問題は、民主党という組織のガバナンスの欠如に、直接の原因があるのかもしれない。
デフレを脱するための処方箋から政権運営のあり方まで、鳩山政権発足後の半年間に噴出した諸問題を高橋氏と総ざらいした。
元財務官僚で、現在は自ら立ち上げた政策シンクタンク「政策工房」の会長を務める高橋洋一氏は、その原因はもっぱら日銀の無策とそれを放置する鳩山政権にあると言う。日本経済が明らかな需給ギャップを抱えているにもかかわらず、日銀は金融政策という最も基本的な施策を実施しようとしない。そして、鳩山政権はそれを放置している。鳩山首相はどうも、政府は日銀に対してそうした注文を一切つけてはならないものだと官僚から思い込まされているようだと、高橋氏は言う。
他にも「官僚の書いた作文をそのまま出しただけ」(高橋氏)の成長戦略や、展望もないまま国営回帰を図る郵政改革法案など、ここまで鳩山政権が打ち出してきた政策、とりわけ経済政策には、疑問符がつくものが多い。高橋氏自身は子ども手当や高校無償化など、自民党時代の公共事業を通じた再配分から家計への直接給付の政策転換には一定の評価を与えると言うが、その大前提だったはずの予算の総組み替えも実現できていない。その結果が、戦後最大となる92兆円の予算であり、1946年以来となる国債発行額が税収を上回るという異常事態だった。
高橋氏は鳩山政権のこうした体たらくを、政治主導が実現できていないために、官僚に手玉に取られている結果だと指摘する。
そもそも鳩山政権が、総選挙で勝利した直後に「政権移行チーム」を作らなかったことが、ボタンの掛け違いの始まりだったと高橋氏は言う。いざ政権が発足すれば、日常の公務に忙殺されることはわかりきっていた。政権移行チームはそうなる前に、新政権の意思や優先すべき政策を明確に打ち出し、それに協力する意思のある官僚を枢要な地位に就ける意味がある。政権発足後に政務三役で役所に乗り込んでいっても、多勢に無勢で勝負にならないからだ。
ところが鳩山政権の下、首相官邸を始め各省庁で働く秘書官や補佐官らは、いずれも自民党政権当時のままだ。これでは政権交代の真価は発揮できないし、政治主導など実現できるはずがない。
もともと民主党はそのような状況に陥らないために、100人以上の国会議員を政府に送り込むことを公約していた。しかし、政権の枠組みを決める場所になる政権移行チームが作られなかったため、そのために必要となる国会法や内閣法の改正準備がまったく進まなかった。その結果が、「古い道具のまま新しいことをしようとする」(高橋氏)ようなことになってしまった。
政権発足時の準備不足が全ての悪循環を生んでいると指摘する高橋氏は、その解決策として、民主党の若手に比較的多い官僚OBの政府への登用を進言する。彼らなら官僚の手口を熟知しているし、法案作成のノウハウも持っているため、官僚の策略を未然に防げるし、官僚に依存せずに法案の作成が可能になるというのがその理由だ。法案さえ作ることができれば、国会で過半数を持っている連立与党の立場は強い。
とは言え、これとて小沢一郎幹事長の意向次第で、実現の可能性はおぼつかない。どうやら鳩山政権が抱えるガバナンス欠如の問題は、民主党という組織のガバナンスの欠如に、直接の原因があるのかもしれない。
デフレを脱するための処方箋から政権運営のあり方まで、鳩山政権発足後の半年間に噴出した諸問題を高橋氏と総ざらいした。