小倉文三

 3月13日、高知市で『ポチの告白』の2回目の上映が終わったとき、壇上には、監督の高橋玄さん、原案協力者の寺澤有さん、警察の不正を許さない仙波敏郎さん、片岡晴彦さん、彼の民事裁判弁護士の生田暉雄さんの5人が並んでいた。今回は、生田弁護士の裁判批判を記録しておきたい。
 
 生田暉雄さんの話
 
 弁護士の生田といいます。22年間大阪高裁等で裁判官をしておりました。その後、香川県高松で弁護士事務所を開いて、18年になります。

1

今年3月13日の『ポチの告白』上映会での生田暉雄さん。「上ばかり見ているヒラメ裁判官の関心は昇給と昇進と任地」と熱弁をふるった。撮影・小倉文三、以下同じ


 (「これが裁判か?」)
 
 片岡さんの事件は、2006年3月3日に事故が起こり、起訴したのがその年の12月6日、9ヶ月もかかっておるのです。交差点で、スクールバスに白バイが衝突したというだけの単純な交通事故なのに、なぜ起訴までに9ヶ月も必要だったのでしょうか? それは、警察が、片岡さんを「犯人」に仕立て上げたときに、どんな反発があるかを調べていたのではないか、ということです。片岡さんの経歴、親族関係などを洗うために、それくらいの時間がかかったのではないか、ということです。
 
 裁判の証拠というのは、起訴する前に集めるのです。ところが、片岡さんの事件では、起訴してから証拠を集めておるのです。記録を見て、びっくりしました。「これが裁判か?」という感じです。判決の根拠もでたらめです。先ほど、仙波さんは、「実際の警察は、この映画よりもひどい」と言われたわけですが、そんな警察がまかり通るというのは、裁判というものがでたらめだからです。
 
 (日本では、三権分立は実現していない)
 
 日本は、戦後、平和憲法の下で、裁判が重視されるであろうということが予測されました。三権分立で、裁判官の独立ということがあるので、裁判官を統制することは難しいはずなのです。しかし、日本の裁判は、実は、巧みに統制されております。裁判官は、最高裁の顔色をうかがわなければ、昇進や昇給、任地で差がつくように仕組まれておるわけなんです。その最高裁の人事を、行政が握っておるわけなんです。国や県を負けさせるような判決や無罪判決を多く書きよったら、裁判長にはなれないように仕組まれておるわけです。裁判官になったからは、誰しも裁判長になりたいわけです。
 
 私は、「3号裁判官(裁判長になれる)になるための要件とは何なのか? また、最高裁長官や最高裁判事になるための要件とは何なのか?」と最高裁に問い合わせましたが、最高裁からは、「答えられません」という返答です。それで、「国民主権なのだから、我々には知る権利がある。最高裁は、答えるべきである」という裁判を、東京高裁に起こしております。3月24日にその裁判があります。
 
 鹿児島では、2003年に、自白の強要による志布志事件という冤罪事件がありました。12人が公職選挙法違反をでっちあげられて、逮捕されました。これには、警察内部から「やりすぎだろう」という声が上がり、4年かかりましたが、無罪になりました。

3

今年3月13日の『ポチの告白』上映会にて。左から片岡晴彦(高知白バイ事件)生田暉雄(高知白バイ事件・弁護士)仙波敏郎(警察見張番・愛媛)寺澤有(ジャーナリスト)高橋玄(映画監督)の各氏。


http://www.janjannews.jp/archives/2909309.html