ブツは手に入れた

彼からの電話はいつも突然やってくる。
当然私には拒否する権利はない。

いつものように身支度をして、足早に家を出た。
指定された場所に、指定された時刻までに行かなければならない。
わたしには遅刻は当然許されない。そして彼もまた、時間には正確無比である。

そしてその場所に赴くと、突然私のスマホが反応した。
彼からのメールだ。
尾行を気にしているのだろうか、約束の場所を変更してきた。
当然私はその指令にただ従う以外、選択肢はない。

そしてその場所に到着してあたりを見回していると、後ろから声がした。
「金はいつもの口座に振り込んであるだろうな」

まったく、挨拶もなしで実務の話からかよ・・・
そう思うが、そんなことは口にすることはない。

「もちろんだ。いつものトリニダード・トバゴのプライベートバンクに振り込んでおいた。」

そう告げると、彼はおもむろにスマホを操作し始めた。
そして約30秒後
「OKだ。早速取引に移ろうじゃあないか」
入金が確認できて安心したのだろうか、１オクターブ高くなった彼の声が
すでに廃墟になってしまった、元病院のフロアにこだました。

「こっちはすでに入金も済ませたんだ。早くブツを渡して欲しいものだな」
緊張感を解きつつあった彼に向かい、私は少々語気を強めて言ってみたものの
彼は口元に若干の笑みを浮かべながら
「まあそう焦るなよ。大丈夫だ。約束は必ず守る」
「ただこれを渡す前に、ちょっとした決まりがあってね」
「君にはもうしばらく、私に付き合っていただくよ」

そう言うと、彼は右手をスーツの懐に移動させた。
「殺られる！」
そう思い身構えた私に対して、彼は「ニヤ」と笑みを浮かべた。
そしてゆっくりと一枚の紙を取り出した。

ホッとする私を見て、彼は再び
「大丈夫だ。これまでと同様必ず約束は守る」
と言った。

「その言葉を早く信用できるものにしてくれないか」
私の精一杯の虚勢である。
今はただ恐怖しか感じていない。できることなら早くこの場を立ち去りたかった。

そんな私の台詞を一切無視する形で、彼はその紙に書いてある文章を読み出した。
どうやら彼は、ここに至ってなお、私に主導権は一切渡さないようだ。

「え～、これは今から150年前のこと。私の曽祖父、ぽじ沢ぽじ左衛門が・・・・・・・・・」

ここから2時間の講釈と、ぽじ家の秘宝「出依越治婆」引渡しの舞を1時間踊った後、
やっと私の元にブツはやってきました。

ぽじさん、ありがとうｗ

やっと私の元にやってきてくれた「出依越治婆」ことDHバー。
来週中にはこれをマド次郎に装着して、来る7月12日の加須TTに備えたいと思います。

そしてお読みして下さった皆さま、
ここまで本当にくだらない話をしてしまったこと、お詫び申し上げます。



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