夏至チャレンジ2013 渋峠 No3（虹）

草津に入り、ちょっと進んだ所で長めの休憩を取りました。
長くなった理由はただ一点。
「本当に登れるの？」と自問しておりました。
ここまで全力で登ってきました。
全力を出さなければ登れなかった草津までの道でした。
この時点でもう足はいっぱいいっぱい。正直言ってもう登れる状態ではありません。
ただ唯一希望があったのは、渋峠を登った方々が口々に
「斜度は緩いから、ペダルを回せば登れる」
という評価をされていることでした。
それにここまで160Kmを走ってきました。
目的はただひとつ。渋峠にたどり着くため。
やはり多少無理をしてでも、ここで止める訳にはいかない！
そう結論を得て、重い腰を上げて再び走り始めました。
ここから先が地獄の一丁目であるとも知らずに・・・

スタートして300ｍほどは、順調に登りました。

しかし、すぐに限界は襲ってきたのです。
わずか500ｍも走らないのに、最初の休憩・・・

ここまで160Kmを走ってきたことが原因なのか、草津までの登り坂で足を使ったことが理由なのか、
定かではありませんが、私の足はいつ攣ってもおかしくない状態だったのです。

その後、300ｍに一度の休憩を挟みながら、遥か彼方の渋峠目指して前進していきました。

有名なこの看板。
硫黄のにおいに苛まれながら、必死にペダルを回します。


看板の指示通り、何とか500ｍは足をつかないで登り切ることが出来ました。
硫黄の臭い満載の空気は、肺いっぱい吸い込みましたが・・・

駐停車禁止区間を越えると、疲れが一気に襲ってきました。
「比較的勾配が緩やかだから・・・」と聞いていました。
確かに激坂ではありませんが、もう私には登れる足はほとんど残っていませんでした。

展望駐車場で楽しそうに白根山の風景を楽しんでいるご家族の横で
大きな呼吸を繰り返しながら、必死にストレッチをしている私が、
何とミスマッチだったことでしょう。

見上げると、九十九折は遥か先まで続いています。

「とてもあそこまで行けそうにないなぁ・・・」
そう思いながら、スマホをいじっていると、
多くの仲間から励ましのツイートが目に飛び込んできました。

勝手に企画して、勝手に走り始めたのは私です。
そんな私にこんなにも応援してくれる人がいる・・・
そう思うと今現在、多少辛い思いをしているからといって、
また勝手に止めてしまうなんてことは、とても言えません。

私個人としては、この時点で帰るつもりでしたが、
「もう少し、あと少しだけがんばってみよう・・・」
そう思い、再び国道292号線を登って行きました。

そこからはまた休憩を頻繁に取りながら、一歩一歩這うような思いで登って行きました。
白根山の展望広場を通過して、ひと時のダウンヒルの後
最後の渋峠に向けて、登り始めました。

すると、この道を徒歩で歩いている方が前方におりました。
この方はこちらを向いています。
横を通過する時に「こんにちは」と声を掛けた時
「後ろの空を見てごらん」
と、逆に声を掛けられました。

ビンディングペダルを外し、停車して後ろを振り返ります。
すると

虹が出ていました。

ここまで私は必死になって、渋峠を目指してペダルを回してきました。
「苦しい」「辛い」「もう帰りたい」
そんなことばかり考えながら、ここまでやってきました。
私は私の後方に虹が出ていることなど、全く気が付きませんでした。

「俺、何も見えていなかったんだ・・・」

そう思うと自然に涙が溢れてきました。

この時の気持ちは、今でもよくわかりません。
感動したわけでもなければ、感情が爆発したわけでもありません。

ただただ虹を眺めながら数分間、その場所から動くことが出来ませんでした。

しばらく眺めていると、体が冷えてくるのを感じました。
ここは標高2100ｍ地点。気温は15℃程度しかありません。

再び背中に虹を向けて、渋峠目指してペダルを漕ぎ始めました。
全てを振り払い、目指してきた頂は目前でした。


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