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おっさんじゃないぜ!

気が付くと周りはしょぼいおっさんだらけ・・・オレもそうか?いや、ちゃうぜ!・・・きっと・・・

原作おはなしーその4「二人の父」

2016年09月29日 16時23分06秒 | ジバクレイ達の世界

時の堰(ときのせき)第4章「二人の父」

うららは因果について考えていた。サヨとレンが事故で亡くなり、その当日の夕方、父が自殺した。母がそれを見つけ悲しみ絶望し、私と共に死のうと言って心中した。

監物の言うように私の因果でこの武将たちの一団が出来て外道界の支配者である天子に立ち向かうならサヨとレンの事故には因果がないのか?
この外道界はサヨとレンの因果に関わっているものだと思っていたが、そうではないのか?

「城代の言っていた”あの日の因果”とはどういう事なのでしょうか?」うららは監物に聞いてみた。

「うらら殿、いや千代よ。できれば”父上”と呼んでくれぬか。千代にあらたまって城代と呼ばれると、ちと寂しゅうてな。」

そうだ、監物は400年程前の父だったのだ。初めて会った時になにかこう暖かい感じがしたのは父だったからか。うららはそう思って監物に「父上。」と言ってみた。

監物はたいそう喜び、うららを抱き上げ照基に家重に士郎に「転生した千代に父と呼ばれたぞ!」とうららを抱いたまま駆け寄り強面の顔をに満面の笑みを浮かべた。
すると士郎が「殿、二人の千代姫様ですな。至福の時でございますな。」と言ってサヨを見た。「えっ。私。」っていう顔をサヨがすると監物はうららを下ろし、サヨを抱き上げ、満面の笑みで「サヨ姫も千代姫じゃあ!」と皆に言った。

レンはうららの顔を見て「うららちゃんは千代姫の生まれ変わりで、オレとサヨは千代姫の末裔だからみんな千代姫の因果の中にいるんだね。」と真面目な顔で言った。うららは三人にそもそもそんな縁があったのかと思い、ちょっと面白くなってレンに向かって微笑んだ。私たち三人は同じ因果の中にあるのか。そう思うとちょっと愉快な気がした。レンはそんなうららの表情にドキドキしている。

そうか、監物の言ってた”あの日の因果”の中に私もサヨちゃんもレン君も居るんだ。事故そのものにゆかりは無く、私たちに”あの日の因果”があるんだ。うららはそう思った。

少し考え込んでいるうららに監物が言う。
「うらら殿。ここからは千代と呼んでいいかな。」うららは「はい。父上。」とそう答えてみた。監物は「ほんに千代は転生して、より可愛いく美しく凛々しくなったの。のう、レン殿。」と突然レンに振る。「はい、サヨより可愛く美しく凛々しいです。」レンはそう答え顔を赤らめた。
「そんな事ないよ!サヨちゃんだって私より可愛いよ!」うららはそういうと「まあ、まあ、ワケさまがアタシより可愛いのは当たり前だから。」とサヨが言い、士郎が「千代姫様もサヨ姫様もどちらも可愛く美しいのは変わりありません。お二人は我らの大切で大事な姫様ですぞ。勿論、美世姫もあおい姫もキヨミ姫も我らの大事な姫君ですぞ。」と言って、場を沸かせた。

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私は奥多摩湖から二人を追って八王子城址まで来ていた。
二人の仲間はここで一気に増えたみたい。
多勢の武者に守られていて、何か楽しそうに見えた。ジバクレイって結構普通の人たちだけど、この人たちは皆鎧武者なので見た目に迫力があるなと思った。
なにかこう二人を見ていると敵が神でも勝てるんじゃないかと思えてくる。
結構辛いハズなのに皆楽しそうだ。あの子も楽しそうだな。
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下山した一行は昭和レトロな街並みを小学生3人と中学生2人、女子高生1人同年代の女の子1人と甲冑を着た侍たちという不思議な組み合わせで先へ進む。

やがて大きくて古い不気味な工場地帯が見え、一同でその迷宮のような工場内を探索する事にした。中は広いようなので一同は10人ずつの組に分け、それぞれが四方を探索し、何か見つけたら鍾(しょう)を叩いて知らせる事にした。

監物は中畑君に白井さん吉良さんと守備兵7人に三人を守るように命じ、うららはレンとキヨミと守備兵7人、照基はサヨと士郎に守備兵7名。家重は守備兵9名を連れ、残りは侍頭を先頭に10人ずつの組にして四散して工場内を探索する事にした。

配管と配管が組み合わされた場内は幾何学的で先進的でアナログな感じの残る美しくも見える。監物は「この中に重要な何かがある。それを見つけよ。」と言った。

一同は四散し、あたりを探索した。

サヨは士郎に守られながら照基を先頭に探索した。
「サヨ姫様。ご安心くだされ。この士郎が命を懸けてお守りいたします。」と言ったが、照基も「サヨ姫。ワシも居るでな。心配は無用じゃ!」と振り返りながら言った。

突然、場内に鐘を激しく叩く音が聞こえた。

監物一行もうらら一行も照基一行も鍾の音が聞こえる向きに駆け出した。

家重の一行のしんがりの兵が激しく鍾を叩いている先頭に何か大きく動きの鈍いものがあって、長く大きく太い腕のようなものを振り回している。一行がそれに対して応戦している。

「何!あれ!」

サヨの目に飛び込んできたのは一斗缶同しをビスで留めて繋げて作ったようなゴーレムのようなロボットに見えた。顔のようなものは無く二本の不格好な腕を振り回して向かって来る。

「なんじゃ!あれは!」

照基も士郎宗貞も驚き、声を上げた。

監物が到着すると躊躇なく、刀を抜いて立ち向かって行く。監物は振り回している腕のようなものを刀で受け、抑えたが、もう片方の腕が監物の頭上に振り下ろされようとしていた。

照基が咄嗟に監物に体当たりして二人とも転げると、振り下ろされた腕が床にあたり、床が大きく陥没した。

「こら、ちときついのう。」

照基はいててといった感じで立ち上がると監物の肩を取って立ち上がった。

ロボットのようなゴーレムのような怪物は動きこそ鈍かったので勢いよく襲われる事はないがゆっくりと一向に迫ってくる。

ふと、サヨは怪物の後ろに何かにつながる太い配線のようなものがあるのに気が付いた。
うらら達が駆けつけ、やはり怪物を見てギョッとしている。

「ワケさま見て、あれはきっと機械仕掛けのロボットだよ!」

サヨはそううららとレンに言うと、後ろに配線のようなものがあると教え、「アタシと士郎殿でロボットを引き付けるからその間に、ワケさまとレンは配線を切って!そしたら多分動かなくなるから!」そういうと「士郎殿一緒に怪物の前へ出て注意を惹き付けましょう。」と言い、二人で怪物の前へ出た。

怪物はゆっくりと不格好な腕を振り回しながらサヨと士郎宗貞を追う。うららはヒラリと飛ぶようにロボットの後ろへ回り、刀を振り上げ刃先で配線を切った。
ビシッと高い音が響き、閃光が散った。

「しまった。」うららのひとたちは配線を捕らえたが、配線に思わぬ強度があったからか斬り込みは浅く、半分まで切れてはいない。

怪物は音と光に反応し、大きな体を素早く捩り、後ろにいるうららに振り上げた不格好な腕を振り下ろした。

すかさずレンがうららの体に飛びつき、振り下ろされた腕の軌道から脱した。

怪物の腕は半分斬られた配線の上に勢いよく落ちて配線ごと床を潰して動きが止まった。
うららとレンは潰された床のすぐそばで倒れていた。

「いてて。うららちゃんゴメンね。急だったんで押し倒しちゃった。」レンがそういうとうららは叩き潰され、床にめり込んだ怪物の腕を見つめながら呆然と「レン君。助けてくれてありがとう。」とつぶやいた。

何これ。なんでこんなものが居るの。うららはそう思った。これ、ロボット?ジバクレイの世界に何でロボットがいるの?

また、けたましく鐘を叩く音が四方から聞こえた。

だだ広い場内の四隅から土煙が上がり、轟音と共に先ほど動きを止めたロボットが現れた。監物一行は囲まれてしまったが、ロボットの動きは遅く、また、ケーブルを切る事で動きを止められる事はサヨもレンもうららも解っている。

「ロボットの後ろに見える縄を狙え!」レンがそう叫び、監物が「縄じゃ!後ろにある縄を切れ!」と叫んだ。兵たちはロボットの後ろに回り長く伸びた配線ケーブルを切っていくと、一体、また一体とロボットは動きを止めていった。

「何じゃったんか。こいつは。」動かなくなった不格好なロボットを叩きながら監物が言った。監物が平手でロボットの体を叩くと金属の響く音が聞こえる。

「もう、こいつは動かんのかの。」そう言ってまじまじと見ている。照基も士郎たちも不思議そうに見ていた。

「城代。これはロボットといって機械で動くもので人の代わりをする、アタシたちの世界では普通にあるものなの。」
サヨがそういうと、監物たちは感心して「ほう。ほう。」と言いながら叩きながらロボットを見ていた。

うららは辺りを警戒しているとジバクレイが一体、自分たちを警戒しながら様子を伺っているのが見えた。

「父上!ジバクレイがいます!」うららがそう叫ぶとジバクレイはこちらの動きに気が付き逃げ出した。

監物たちはうららが指さす先にジバクレイを確認すると「兵は姫たちを守りながらついてまいれ!千代はワシに、士郎はサヨ殿とレン殿を引き連れワシらの後に続け!」と言ってジバクレイの後を追った。

今まで私たちを見て襲って来るジバクレイはいたけど、このジバクレイは何で逃げるんだろう?サヨもレンもうららもそう違和感を感じていた。

逃げるジバクレイはそう速くもなく、迷宮のような場内を右へ左へ逃げていたが見失うことなく追いついた。うららが飛ぶようにジバクレイに一打を浴びせようとしたとき、ジバクレイから眩い光が発せられ監物、うらら、士郎、サヨ、レンを包んだ。

後を追う照基たちはその閃光に包まれる監物たちを見ていたが、みな、眩しさに一瞬目がくらんだ。照基たちが気が付くとその場からジバクレイ共々監物たちが消えている。一同は何があったか解らず呆然と立ち尽くしていた。

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閃光に目がくらみ視力を一瞬失ったうららはひとまず着地して目を閉じてあたりの気配を探った。自分の後ろには監物たちの気配がする。みな無事のようだ。狙ったジバクレイは目の前にいたが、遠く離れていく感じがした。

監物達もうららと同じく閃光に一瞬視力を奪われていた。視力が戻ってきてみな目を開けると目の前にはジバクレイはおらず、しかも大きな教会のホールといった場所にいた。

「なんと!何処じゃここは!」

監物の大きな声がホールに響く。
先ほどは大きな工場であったはず。なのにここは石造りの大きなホールの中だ。遥かに高い天井のステンドグラスや装飾が美しい。ホールの中にはガーゴイルや天使の彫像が並び、壁側には西洋の大きな槍や両刃の剣、銀色の鉄製の鎧などが飾られている。監物と士郎の甲冑がこの場に不釣り合いに感じた。

みな動揺していた。何が起こったのか。うららがホールの先の一段高い場所に誰かいるのに気が付いた。

「父上。奥に何か居る。」

動揺するサヨとレンに向かって「安心せい。士郎とワシがついておる。」そう言って「方々は士郎の間合いを出ぬようにあたりを警戒しながら行くぞ。」といって、「千代。慎重にまいるぞ。いつでも刀を抜けるように構えたまま近づくぞ。」と姿勢を低くしながらホールを進んだ。

奥に王が大きく煌びやかで不気味な椅子に座っている。生きているのか?「あれは何じゃ?」うららに監物が問いかける。

「西洋、つまり南蛮の王様のようです。」

どう見てもファンタジー映画やゲームで見るいわゆる王様に見える。何でいきなり王様が?それにこの建物はなに?

王様は持っている杖を握り直し椅子から立ち上がった。と同時にその首が揺らいで鮮血と共に落ちた。

「余の名はチャールズ。イングランドの王、スコットランドの王じゃ。余はここから出られない、誰も訪ねてこない。治めていた国に斬首された呪われし王じゃ。余に断りなく宮殿へ入った者はそれだけで重罪じゃ。裁判の上、みな斬首にしてくれるわ!」

落ちた首が鮮血を垂らしながらそう頭に響く嫌な声で雄叫びを交えて叫んだ。

首のない王は両手を広げ「みな捕らえよ。余が裁き、斬首にいたす!」再び雄叫びを交えて叫ぶとホールの彫像や鎧が動き出し、5人を取り囲んだ。

「何じゃ!どういう事じゃ!」

監物の怒鳴り声がホールに響く。

「この王様はイングランド王チャールズのようです。1649年つまり八王子城の戦いの59年後にイングランドで議会と対立した後、裁判で斬首となり、その宮殿も火をかけられ焼失したとされている王です。ここはその焼失した宮殿の中でしょう。あの顔は本で見た事があります。」とうららが答えた。

「南蛮か!なぜ南蛮に!」

ガーゴイルの彫像からの攻撃や鎧たちの攻撃を避けながら監物はうららに聞くと「私にも解りません。さっきのジバクレイがなにかしたのかも。」

「どうすればいいんじゃ!」戦いは激しくなりこのままでは捕らわれて斬首されてしまう。
「あのジバクレイもここに居るはずです。探し出せば戻れるかも!」うららがそういうと「わかった!ここは一旦引くぞ!」そう言ってガーゴイルの彫像の一体を叩き壊した。

「ワシが突っ込んでいき、惹き付けるからその隙に後退して一旦引け、なるたけ狭い通路に陣取れ。広いと四方から襲われてしまうで!」

監物はそう叫ぶと彫像を狙って片っ端から叩き壊しながら、鎧を吹っ飛ばしながら派手に左に突っ込んでいった。

彫像も鎧も監物に向かっていき、一瞬攻撃に隙があった。士郎は「姫様、レン殿行きましょう。」といってホール後方に向かって駆けていく。
ホールの左側では彫像を砕いた煙と鎧を吹き飛ばしている中に監物がいる。うららは何度も振り返りながら駆けていった。

まるで迷路なような宮殿の中を駆け抜け、比較的狭い左右に長い回廊で一旦、足を止めた。敵が襲って来るなら遠くからその姿が確認できそうだ。

「みんな聞いて。」

うららは囁くように小さい声で皆に話す。

「さっき工場内でジバクレイを追っていたじゃない。たぶん、あのジバクレイもこの中にいると思うの。そのジバクレイを捕まえれば元の場所に戻る方法が解るかも知れない。」

うららはそう話すと、同じく小声でサヨが言う。

「でもこの広い宮殿の中をどうやって探すの?」

「あのジバクレイ、他のジバクレイと違ってこっちの様子を遠目で伺ってたの。だから、今も近くでこちらの様子を伺ってるんじゃないかと思うのよ。さっきは襲われてて気付けなかったけど、ここならどこかにいるのを見つけられそうだと感じるの。」とうららが小声で囁くように言った。

「あたりに気を集中してみて。」うららがそういうと四人はさりげなく辺りを伺った。

「あっ。」

サヨが小さくつぶやいた。

「見つけた。逃げられちゃうから追わないで。」

そう小さくつぶやくと一人駆け出した。レンもうららも士郎も見つけられていない。

みな、サヨに気が付かないふりをしていたがレンは横目でサヨの姿を追っていた。真っすぐな回廊だと思っていたが先に右へ折れる回廊が接続していたらしい。サヨはそこを一旦過ぎてそっと戻ってきて中へ入って行った。サヨが右へ曲がっていったのを確認すると、レンもサヨを追って回廊を右に曲がった。

士郎とうららもレンに気が付き、レンの後を追う。

二人が回廊を右に曲がるとそこにもその先にもサヨの姿もレンの姿もなかった。

士郎とうららはサヨとレンを探したが回廊の左右には扉も窓もなくただ絵が飾られている。声を出すと先ほどの彫像や鎧に追われてしまう恐れがあるので声は出せなかった。

士郎とうららは慌てた様子で付近を探したがなんの手がかりも見つける事ができない。

二人は慎重に回廊の奥へ向かって行った。

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サヨが気付くと銀色の鎧に両腕を押さえられ地べたにペタリと座らされている。見上げると先ほどの王様が首のない姿で大きな鎌のようなものを持って立っている。

「さあ、裁判を始めよう。」目の前からそう聞こえ、サヨは恐る恐る眼だけ下に向けるとそこには切り口に鮮血したたる王の首が見えた。

「キャー!嫌だ!助けて!」

サヨはそう叫んだが無駄だった。

「どこから来たか知らぬものよ。余の許しなく宮殿へ入ったその罪は重い。したがって斬首の刑を求刑する。何か言いたいことはあるか。」

王はそういうと、首だけでサヨを見た。

「イヤ!アタシはこんなんなるのはイヤ!何も悪い事してないのに何でこんなことされるの!」と叫ぶと悔しくて涙が溢れてきた。

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サヨは回廊のすぐ右でこちらを伺うジバクレイを見つけた。一瞬だったが間違いないと思った。うまく隠れているっぽい感じだった。
サヨは一旦回廊を真っすぐ走り、ちょっと戻ればジバクレイを捕まえられるだろうと思った。実際にそうしてみると右へ曲がったすぐ先にジバクレイがいた。
これはチャンスって思って慌てて後を追った。ジバクレイは回廊左の壁の隠し扉を開けて入っていく。「ふーん。こんな仕掛けが。」と思ったサヨは同じように回廊を隠し扉を開けて中に入った。

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サヨはそこまでしか覚えていない。どうして捕まっちゃったのか。訳も解らず悔しい。こんな所で斬首なんてされたくない。

「言いたいことはそれだけなのか。」王はそういうと「罪人の発言は全て却下。」と言って大きな鎌を振りかざした。

「イヤー!助けてー!」サヨの目から大粒の涙がこぼれた。ふと王の首の奥にジバクレイが見えた。王も鎧も気が付いてないようだ。

そうか、ジバクレイは正体が分からないままだとこの人たちに気が付かれないんだ。だから何処にでも行けるんだ。サヨがそう気が付いた時には既にサヨのうなじを目がけて大きな鎌は振り下ろされていた。サヨの目からは相変わらず大粒の涙が溢れている。

「キヤー!」

サヨの金切り声が響いたと同時に金属と金属がぶつかり合う大きな音が響いた。
鎌の刃は砕け、サヨの後ろにレンが綺麗な装飾をされた大きな槍を手に立っている。サヨは振り返ると「レン!」と泣きながら名を呼んだ。

「首なしおっちゃん。オレの親友をいじめないでくれねーか。」

レンはサヨから手を放し、襲い掛かって来る二体の銀色の鎧を王の鎌を砕いた大きな槍で真っ二つに切り捨てた。

銀色の鎧は大きな金属音をたてて床に崩れ散った。

サヨが立ち上がり、走ってレンの後ろに隠れる。

「助けに来てくれたんだね。ありがとうレン。」

そういうと小さい子がするようにレンのシャツの後ろを掴んでいる。

レンが後ろを振り返るとサヨの泣きながらの笑顔と目が合った。

「もう、大丈夫だぜ。サヨ。」

レンはそうサヨに言い、振り返るとそこに既に王の姿はなく、隅にジバクレイがいた。

サヨの金切り声を聞き付け士郎とうららが駆けつけてきた。レンの後ろで怯えて泣くサヨを見て「サヨちゃんも普通の女の子なんだな。」ってうららは思った。

「サヨ姫様。ようご無事で。良かった。」

士郎がそういい、サヨの前に跪くとサヨは泣きながら士郎に抱き着き「ホラーだったよ。スプラッターだったよ。怖かったよー。」と泣きながら言う。

うららとレンは隅であたふたしているジバクレイに「元の工場へ戻しなさい!」と詰め寄った。

あたりに再び閃光が走り眩いばかりの光が皆を包む。

レンとうららはジバクレイを掴んでいて逃がさないようにしていた。

--

「おお!お戻りになられた。」

歓声が聞こえたと同時にバタバタと何かが暴れる音も聞こえた。

「城代!どうされた!」

そういう照基の声と皆の笑い声に目を開けるとクモの糸のようなもので縛られまくっている監物がそこにいた。バタバタ暴れている。
どうやら監物もサヨと同様に捕まってしまっていたらしい。

照基は刀で監物を拘束している糸を切ると「大丈夫でござったか。」と声を掛けた。

「いやなに、一人囮になって皆を逃がしたが、所詮多勢に無勢。最後に捕らわれてしまったわ。」と監物はおどけて言った。

「アタシは王様に斬首されそうになっちゃった。けど、レンが助けてくれたの。」

さっきまで大粒の涙を流して泣いていたサヨがもうケロッとしてそう言う。

レン。レン。サヨがそう呼び近づくと「ピンチに駆けつけてくれてありがと。」そういって背伸びして右頬にキスをした。

レンは真っ赤になりうつむいてしまった。でも、まんざらではない感じかな。

さて、捕らえられたジバクレイはどうしようか。

”経を読め”

サヨの右腕に再びメッセージがきた。
ポケットの中を探すと経文があり、サヨは再び経を読んだ。

ジバクレイの動きが止まり人の姿が見えてきた。

「パパ!」うららがはそういうと呆然と立ち尽くしている男の人にギュッと抱き着いた。


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