おっさんじゃないぜ!

気が付くと周りはしょぼいおっさんだらけ・・・オレもそうか?いや、ちゃうぜ!・・・きっと・・・

原作おはなしーその4「二人の父」

2016年09月29日 16時23分06秒 | ジバクレイ達の世界

時の堰(ときのせき)第4章「二人の父」

うららは因果について考えていた。サヨとレンが事故で亡くなり、その当日の夕方、父が自殺した。母がそれを見つけ悲しみ絶望し、私と共に死のうと言って心中した。

監物の言うように私の因果でこの武将たちの一団が出来て外道界の支配者である天子に立ち向かうならサヨとレンの事故には因果がないのか?
この外道界はサヨとレンの因果に関わっているものだと思っていたが、そうではないのか?

「城代の言っていた”あの日の因果”とはどういう事なのでしょうか?」うららは監物に聞いてみた。

「うらら殿、いや千代よ。できれば”父上”と呼んでくれぬか。千代にあらたまって城代と呼ばれると、ちと寂しゅうてな。」

そうだ、監物は400年程前の父だったのだ。初めて会った時になにかこう暖かい感じがしたのは父だったからか。うららはそう思って監物に「父上。」と言ってみた。

監物はたいそう喜び、うららを抱き上げ照基に家重に士郎に「転生した千代に父と呼ばれたぞ!」とうららを抱いたまま駆け寄り強面の顔をに満面の笑みを浮かべた。
すると士郎が「殿、二人の千代姫様ですな。至福の時でございますな。」と言ってサヨを見た。「えっ。私。」っていう顔をサヨがすると監物はうららを下ろし、サヨを抱き上げ、満面の笑みで「サヨ姫も千代姫じゃあ!」と皆に言った。

レンはうららの顔を見て「うららちゃんは千代姫の生まれ変わりで、オレとサヨは千代姫の末裔だからみんな千代姫の因果の中にいるんだね。」と真面目な顔で言った。うららは三人にそもそもそんな縁があったのかと思い、ちょっと面白くなってレンに向かって微笑んだ。私たち三人は同じ因果の中にあるのか。そう思うとちょっと愉快な気がした。レンはそんなうららの表情にドキドキしている。

そうか、監物の言ってた”あの日の因果”の中に私もサヨちゃんもレン君も居るんだ。事故そのものにゆかりは無く、私たちに”あの日の因果”があるんだ。うららはそう思った。

少し考え込んでいるうららに監物が言う。
「うらら殿。ここからは千代と呼んでいいかな。」うららは「はい。父上。」とそう答えてみた。監物は「ほんに千代は転生して、より可愛いく美しく凛々しくなったの。のう、レン殿。」と突然レンに振る。「はい、サヨより可愛く美しく凛々しいです。」レンはそう答え顔を赤らめた。
「そんな事ないよ!サヨちゃんだって私より可愛いよ!」うららはそういうと「まあ、まあ、ワケさまがアタシより可愛いのは当たり前だから。」とサヨが言い、士郎が「千代姫様もサヨ姫様もどちらも可愛く美しいのは変わりありません。お二人は我らの大切で大事な姫様ですぞ。勿論、美世姫もあおい姫もキヨミ姫も我らの大事な姫君ですぞ。」と言って、場を沸かせた。

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私は奥多摩湖から二人を追って八王子城址まで来ていた。
二人の仲間はここで一気に増えたみたい。
多勢の武者に守られていて、何か楽しそうに見えた。ジバクレイって結構普通の人たちだけど、この人たちは皆鎧武者なので見た目に迫力があるなと思った。
なにかこう二人を見ていると敵が神でも勝てるんじゃないかと思えてくる。
結構辛いハズなのに皆楽しそうだ。あの子も楽しそうだな。
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下山した一行は昭和レトロな街並みを小学生3人と中学生2人、女子高生1人同年代の女の子1人と甲冑を着た侍たちという不思議な組み合わせで先へ進む。

やがて大きくて古い不気味な工場地帯が見え、一同でその迷宮のような工場内を探索する事にした。中は広いようなので一同は10人ずつの組に分け、それぞれが四方を探索し、何か見つけたら鍾(しょう)を叩いて知らせる事にした。

監物は中畑君に白井さん吉良さんと守備兵7人に三人を守るように命じ、うららはレンとキヨミと守備兵7人、照基はサヨと士郎に守備兵7名。家重は守備兵9名を連れ、残りは侍頭を先頭に10人ずつの組にして四散して工場内を探索する事にした。

配管と配管が組み合わされた場内は幾何学的で先進的でアナログな感じの残る美しくも見える。監物は「この中に重要な何かがある。それを見つけよ。」と言った。

一同は四散し、あたりを探索した。

サヨは士郎に守られながら照基を先頭に探索した。
「サヨ姫様。ご安心くだされ。この士郎が命を懸けてお守りいたします。」と言ったが、照基も「サヨ姫。ワシも居るでな。心配は無用じゃ!」と振り返りながら言った。

突然、場内に鐘を激しく叩く音が聞こえた。

監物一行もうらら一行も照基一行も鍾の音が聞こえる向きに駆け出した。

家重の一行のしんがりの兵が激しく鍾を叩いている先頭に何か大きく動きの鈍いものがあって、長く大きく太い腕のようなものを振り回している。一行がそれに対して応戦している。

「何!あれ!」

サヨの目に飛び込んできたのは一斗缶同しをビスで留めて繋げて作ったようなゴーレムのようなロボットに見えた。顔のようなものは無く二本の不格好な腕を振り回して向かって来る。

「なんじゃ!あれは!」

照基も士郎宗貞も驚き、声を上げた。

監物が到着すると躊躇なく、刀を抜いて立ち向かって行く。監物は振り回している腕のようなものを刀で受け、抑えたが、もう片方の腕が監物の頭上に振り下ろされようとしていた。

照基が咄嗟に監物に体当たりして二人とも転げると、振り下ろされた腕が床にあたり、床が大きく陥没した。

「こら、ちときついのう。」

照基はいててといった感じで立ち上がると監物の肩を取って立ち上がった。

ロボットのようなゴーレムのような怪物は動きこそ鈍かったので勢いよく襲われる事はないがゆっくりと一向に迫ってくる。

ふと、サヨは怪物の後ろに何かにつながる太い配線のようなものがあるのに気が付いた。
うらら達が駆けつけ、やはり怪物を見てギョッとしている。

「ワケさま見て、あれはきっと機械仕掛けのロボットだよ!」

サヨはそううららとレンに言うと、後ろに配線のようなものがあると教え、「アタシと士郎殿でロボットを引き付けるからその間に、ワケさまとレンは配線を切って!そしたら多分動かなくなるから!」そういうと「士郎殿一緒に怪物の前へ出て注意を惹き付けましょう。」と言い、二人で怪物の前へ出た。

怪物はゆっくりと不格好な腕を振り回しながらサヨと士郎宗貞を追う。うららはヒラリと飛ぶようにロボットの後ろへ回り、刀を振り上げ刃先で配線を切った。
ビシッと高い音が響き、閃光が散った。

「しまった。」うららのひとたちは配線を捕らえたが、配線に思わぬ強度があったからか斬り込みは浅く、半分まで切れてはいない。

怪物は音と光に反応し、大きな体を素早く捩り、後ろにいるうららに振り上げた不格好な腕を振り下ろした。

すかさずレンがうららの体に飛びつき、振り下ろされた腕の軌道から脱した。

怪物の腕は半分斬られた配線の上に勢いよく落ちて配線ごと床を潰して動きが止まった。
うららとレンは潰された床のすぐそばで倒れていた。

「いてて。うららちゃんゴメンね。急だったんで押し倒しちゃった。」レンがそういうとうららは叩き潰され、床にめり込んだ怪物の腕を見つめながら呆然と「レン君。助けてくれてありがとう。」とつぶやいた。

何これ。なんでこんなものが居るの。うららはそう思った。これ、ロボット?ジバクレイの世界に何でロボットがいるの?

また、けたましく鐘を叩く音が四方から聞こえた。

だだ広い場内の四隅から土煙が上がり、轟音と共に先ほど動きを止めたロボットが現れた。監物一行は囲まれてしまったが、ロボットの動きは遅く、また、ケーブルを切る事で動きを止められる事はサヨもレンもうららも解っている。

「ロボットの後ろに見える縄を狙え!」レンがそう叫び、監物が「縄じゃ!後ろにある縄を切れ!」と叫んだ。兵たちはロボットの後ろに回り長く伸びた配線ケーブルを切っていくと、一体、また一体とロボットは動きを止めていった。

「何じゃったんか。こいつは。」動かなくなった不格好なロボットを叩きながら監物が言った。監物が平手でロボットの体を叩くと金属の響く音が聞こえる。

「もう、こいつは動かんのかの。」そう言ってまじまじと見ている。照基も士郎たちも不思議そうに見ていた。

「城代。これはロボットといって機械で動くもので人の代わりをする、アタシたちの世界では普通にあるものなの。」
サヨがそういうと、監物たちは感心して「ほう。ほう。」と言いながら叩きながらロボットを見ていた。

うららは辺りを警戒しているとジバクレイが一体、自分たちを警戒しながら様子を伺っているのが見えた。

「父上!ジバクレイがいます!」うららがそう叫ぶとジバクレイはこちらの動きに気が付き逃げ出した。

監物たちはうららが指さす先にジバクレイを確認すると「兵は姫たちを守りながらついてまいれ!千代はワシに、士郎はサヨ殿とレン殿を引き連れワシらの後に続け!」と言ってジバクレイの後を追った。

今まで私たちを見て襲って来るジバクレイはいたけど、このジバクレイは何で逃げるんだろう?サヨもレンもうららもそう違和感を感じていた。

逃げるジバクレイはそう速くもなく、迷宮のような場内を右へ左へ逃げていたが見失うことなく追いついた。うららが飛ぶようにジバクレイに一打を浴びせようとしたとき、ジバクレイから眩い光が発せられ監物、うらら、士郎、サヨ、レンを包んだ。

後を追う照基たちはその閃光に包まれる監物たちを見ていたが、みな、眩しさに一瞬目がくらんだ。照基たちが気が付くとその場からジバクレイ共々監物たちが消えている。一同は何があったか解らず呆然と立ち尽くしていた。

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閃光に目がくらみ視力を一瞬失ったうららはひとまず着地して目を閉じてあたりの気配を探った。自分の後ろには監物たちの気配がする。みな無事のようだ。狙ったジバクレイは目の前にいたが、遠く離れていく感じがした。

監物達もうららと同じく閃光に一瞬視力を奪われていた。視力が戻ってきてみな目を開けると目の前にはジバクレイはおらず、しかも大きな教会のホールといった場所にいた。

「なんと!何処じゃここは!」

監物の大きな声がホールに響く。
先ほどは大きな工場であったはず。なのにここは石造りの大きなホールの中だ。遥かに高い天井のステンドグラスや装飾が美しい。ホールの中にはガーゴイルや天使の彫像が並び、壁側には西洋の大きな槍や両刃の剣、銀色の鉄製の鎧などが飾られている。監物と士郎の甲冑がこの場に不釣り合いに感じた。

みな動揺していた。何が起こったのか。うららがホールの先の一段高い場所に誰かいるのに気が付いた。

「父上。奥に何か居る。」

動揺するサヨとレンに向かって「安心せい。士郎とワシがついておる。」そう言って「方々は士郎の間合いを出ぬようにあたりを警戒しながら行くぞ。」といって、「千代。慎重にまいるぞ。いつでも刀を抜けるように構えたまま近づくぞ。」と姿勢を低くしながらホールを進んだ。

奥に王が大きく煌びやかで不気味な椅子に座っている。生きているのか?「あれは何じゃ?」うららに監物が問いかける。

「西洋、つまり南蛮の王様のようです。」

どう見てもファンタジー映画やゲームで見るいわゆる王様に見える。何でいきなり王様が?それにこの建物はなに?

王様は持っている杖を握り直し椅子から立ち上がった。と同時にその首が揺らいで鮮血と共に落ちた。

「余の名はチャールズ。イングランドの王、スコットランドの王じゃ。余はここから出られない、誰も訪ねてこない。治めていた国に斬首された呪われし王じゃ。余に断りなく宮殿へ入った者はそれだけで重罪じゃ。裁判の上、みな斬首にしてくれるわ!」

落ちた首が鮮血を垂らしながらそう頭に響く嫌な声で雄叫びを交えて叫んだ。

首のない王は両手を広げ「みな捕らえよ。余が裁き、斬首にいたす!」再び雄叫びを交えて叫ぶとホールの彫像や鎧が動き出し、5人を取り囲んだ。

「何じゃ!どういう事じゃ!」

監物の怒鳴り声がホールに響く。

「この王様はイングランド王チャールズのようです。1649年つまり八王子城の戦いの59年後にイングランドで議会と対立した後、裁判で斬首となり、その宮殿も火をかけられ焼失したとされている王です。ここはその焼失した宮殿の中でしょう。あの顔は本で見た事があります。」とうららが答えた。

「南蛮か!なぜ南蛮に!」

ガーゴイルの彫像からの攻撃や鎧たちの攻撃を避けながら監物はうららに聞くと「私にも解りません。さっきのジバクレイがなにかしたのかも。」

「どうすればいいんじゃ!」戦いは激しくなりこのままでは捕らわれて斬首されてしまう。
「あのジバクレイもここに居るはずです。探し出せば戻れるかも!」うららがそういうと「わかった!ここは一旦引くぞ!」そう言ってガーゴイルの彫像の一体を叩き壊した。

「ワシが突っ込んでいき、惹き付けるからその隙に後退して一旦引け、なるたけ狭い通路に陣取れ。広いと四方から襲われてしまうで!」

監物はそう叫ぶと彫像を狙って片っ端から叩き壊しながら、鎧を吹っ飛ばしながら派手に左に突っ込んでいった。

彫像も鎧も監物に向かっていき、一瞬攻撃に隙があった。士郎は「姫様、レン殿行きましょう。」といってホール後方に向かって駆けていく。
ホールの左側では彫像を砕いた煙と鎧を吹き飛ばしている中に監物がいる。うららは何度も振り返りながら駆けていった。

まるで迷路なような宮殿の中を駆け抜け、比較的狭い左右に長い回廊で一旦、足を止めた。敵が襲って来るなら遠くからその姿が確認できそうだ。

「みんな聞いて。」

うららは囁くように小さい声で皆に話す。

「さっき工場内でジバクレイを追っていたじゃない。たぶん、あのジバクレイもこの中にいると思うの。そのジバクレイを捕まえれば元の場所に戻る方法が解るかも知れない。」

うららはそう話すと、同じく小声でサヨが言う。

「でもこの広い宮殿の中をどうやって探すの?」

「あのジバクレイ、他のジバクレイと違ってこっちの様子を遠目で伺ってたの。だから、今も近くでこちらの様子を伺ってるんじゃないかと思うのよ。さっきは襲われてて気付けなかったけど、ここならどこかにいるのを見つけられそうだと感じるの。」とうららが小声で囁くように言った。

「あたりに気を集中してみて。」うららがそういうと四人はさりげなく辺りを伺った。

「あっ。」

サヨが小さくつぶやいた。

「見つけた。逃げられちゃうから追わないで。」

そう小さくつぶやくと一人駆け出した。レンもうららも士郎も見つけられていない。

みな、サヨに気が付かないふりをしていたがレンは横目でサヨの姿を追っていた。真っすぐな回廊だと思っていたが先に右へ折れる回廊が接続していたらしい。サヨはそこを一旦過ぎてそっと戻ってきて中へ入って行った。サヨが右へ曲がっていったのを確認すると、レンもサヨを追って回廊を右に曲がった。

士郎とうららもレンに気が付き、レンの後を追う。

二人が回廊を右に曲がるとそこにもその先にもサヨの姿もレンの姿もなかった。

士郎とうららはサヨとレンを探したが回廊の左右には扉も窓もなくただ絵が飾られている。声を出すと先ほどの彫像や鎧に追われてしまう恐れがあるので声は出せなかった。

士郎とうららは慌てた様子で付近を探したがなんの手がかりも見つける事ができない。

二人は慎重に回廊の奥へ向かって行った。

--

サヨが気付くと銀色の鎧に両腕を押さえられ地べたにペタリと座らされている。見上げると先ほどの王様が首のない姿で大きな鎌のようなものを持って立っている。

「さあ、裁判を始めよう。」目の前からそう聞こえ、サヨは恐る恐る眼だけ下に向けるとそこには切り口に鮮血したたる王の首が見えた。

「キャー!嫌だ!助けて!」

サヨはそう叫んだが無駄だった。

「どこから来たか知らぬものよ。余の許しなく宮殿へ入ったその罪は重い。したがって斬首の刑を求刑する。何か言いたいことはあるか。」

王はそういうと、首だけでサヨを見た。

「イヤ!アタシはこんなんなるのはイヤ!何も悪い事してないのに何でこんなことされるの!」と叫ぶと悔しくて涙が溢れてきた。

--

サヨは回廊のすぐ右でこちらを伺うジバクレイを見つけた。一瞬だったが間違いないと思った。うまく隠れているっぽい感じだった。
サヨは一旦回廊を真っすぐ走り、ちょっと戻ればジバクレイを捕まえられるだろうと思った。実際にそうしてみると右へ曲がったすぐ先にジバクレイがいた。
これはチャンスって思って慌てて後を追った。ジバクレイは回廊左の壁の隠し扉を開けて入っていく。「ふーん。こんな仕掛けが。」と思ったサヨは同じように回廊を隠し扉を開けて中に入った。

--

サヨはそこまでしか覚えていない。どうして捕まっちゃったのか。訳も解らず悔しい。こんな所で斬首なんてされたくない。

「言いたいことはそれだけなのか。」王はそういうと「罪人の発言は全て却下。」と言って大きな鎌を振りかざした。

「イヤー!助けてー!」サヨの目から大粒の涙がこぼれた。ふと王の首の奥にジバクレイが見えた。王も鎧も気が付いてないようだ。

そうか、ジバクレイは正体が分からないままだとこの人たちに気が付かれないんだ。だから何処にでも行けるんだ。サヨがそう気が付いた時には既にサヨのうなじを目がけて大きな鎌は振り下ろされていた。サヨの目からは相変わらず大粒の涙が溢れている。

「キヤー!」

サヨの金切り声が響いたと同時に金属と金属がぶつかり合う大きな音が響いた。
鎌の刃は砕け、サヨの後ろにレンが綺麗な装飾をされた大きな槍を手に立っている。サヨは振り返ると「レン!」と泣きながら名を呼んだ。

「首なしおっちゃん。オレの親友をいじめないでくれねーか。」

レンはサヨから手を放し、襲い掛かって来る二体の銀色の鎧を王の鎌を砕いた大きな槍で真っ二つに切り捨てた。

銀色の鎧は大きな金属音をたてて床に崩れ散った。

サヨが立ち上がり、走ってレンの後ろに隠れる。

「助けに来てくれたんだね。ありがとうレン。」

そういうと小さい子がするようにレンのシャツの後ろを掴んでいる。

レンが後ろを振り返るとサヨの泣きながらの笑顔と目が合った。

「もう、大丈夫だぜ。サヨ。」

レンはそうサヨに言い、振り返るとそこに既に王の姿はなく、隅にジバクレイがいた。

サヨの金切り声を聞き付け士郎とうららが駆けつけてきた。レンの後ろで怯えて泣くサヨを見て「サヨちゃんも普通の女の子なんだな。」ってうららは思った。

「サヨ姫様。ようご無事で。良かった。」

士郎がそういい、サヨの前に跪くとサヨは泣きながら士郎に抱き着き「ホラーだったよ。スプラッターだったよ。怖かったよー。」と泣きながら言う。

うららとレンは隅であたふたしているジバクレイに「元の工場へ戻しなさい!」と詰め寄った。

あたりに再び閃光が走り眩いばかりの光が皆を包む。

レンとうららはジバクレイを掴んでいて逃がさないようにしていた。

--

「おお!お戻りになられた。」

歓声が聞こえたと同時にバタバタと何かが暴れる音も聞こえた。

「城代!どうされた!」

そういう照基の声と皆の笑い声に目を開けるとクモの糸のようなもので縛られまくっている監物がそこにいた。バタバタ暴れている。
どうやら監物もサヨと同様に捕まってしまっていたらしい。

照基は刀で監物を拘束している糸を切ると「大丈夫でござったか。」と声を掛けた。

「いやなに、一人囮になって皆を逃がしたが、所詮多勢に無勢。最後に捕らわれてしまったわ。」と監物はおどけて言った。

「アタシは王様に斬首されそうになっちゃった。けど、レンが助けてくれたの。」

さっきまで大粒の涙を流して泣いていたサヨがもうケロッとしてそう言う。

レン。レン。サヨがそう呼び近づくと「ピンチに駆けつけてくれてありがと。」そういって背伸びして右頬にキスをした。

レンは真っ赤になりうつむいてしまった。でも、まんざらではない感じかな。

さて、捕らえられたジバクレイはどうしようか。

”経を読め”

サヨの右腕に再びメッセージがきた。
ポケットの中を探すと経文があり、サヨは再び経を読んだ。

ジバクレイの動きが止まり人の姿が見えてきた。

「パパ!」うららがはそういうと呆然と立ち尽くしている男の人にギュッと抱き着いた。

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原作おはなしーその3「助っ人」

2016年09月26日 16時44分32秒 | ジバクレイ達の世界

時の堰(ときのせき)第三章「助っ人」

「よく町はずれに道祖神の祠とか、先人を祭った祠とかあるじゃない。」うららが言う。

「町中を探すより古いジバクレイを探すなら町から出たほうがいいと思うの。」

サヨもレンもそりゃそうだね。と思った。しかし、薄暗い低く赤い夕陽の射す町はずれはちょっと怖いかも。とも思った。

「それはそうだよ。綾瀬さんの言うとおりだ。町中を探索しても古いジバクレイに出会う事はあっても稀と考えていいだろう。多く人の死んだ、もしくは沢山殺されたいわくつきの場所は閉じられ、人が寄り付かないから町に発展する事はほぼないんじゃないかな。」

中畑君はそういつもの早口でいうとうららの前にしゃしゃり出て「綾瀬さん。町はずれだよ。」と言ってうららの手を取り、「こっちだよ。きっと。」と言って細い路地にうららを連れて走り出した。

「あいつ!」レンは怒って一言小さく言うと、うららの後を追う。同時に皆も後を追った。

路地の奥には雑木林が広がり、その間を細い砂利道が続いた。

レンは走る中畑君とうららに追いつくと二人の前に出て、両手を広げ立ちはだかった。

中畑君はうららの右手を握っている。
それを見るとレンは面白くなく、怒りのような感情が湧き出してきた。

「おまえ!うららから手を放せ!」

思わず言ってしまった。さすがにレンの殺気にビビったのか中畑君は「はい。」と言って手を放した。

三人に追いついたサヨは道を塞いでるレンを見て「うわ!マジで怒ってる。」と感じた。困ったな。どうしようか?

すると、二人の前に仁王のように立ちはだかるレンにうららはそっと近づき、レンをぎゅっと抱きしめた。
とたんにレンの殺気が消え、レンの表情が和らいだ。

「ありがと。」

うららがそういうとレンは急に恥ずかしくなり、そわそわしだして「いや、オレ・・・急に・・・危ないかと・・思って・・・」小さくしどろもどろに言った。

サヨは今だ!っと言った感じで「ワケさま!」と言うとうららに後ろからぎゅっと抱き着いた。

「レンだけずるい!」と言って「アタシもぎゅっとして!」と言う。

うららは落ち着いたレンを放し、サヨをぎゅっと抱きしめた。丁度、妹と姉が互いに抱き合ってかのように見える。うららに比べるとサヨはまだ小さい。

レンはそれを見ると「オレもあんな感じなのかな。」とまた恥ずかしくなった。

うららとサヨはレンと中畑君に向かって「友達なんだから、仲間なんだから、仲良くね。」ってにこやかに言った。

レンと中畑君は苦い感じで笑ってた。

サヨはふと、思いついたかのように白井さんに「女子高生の白井さん。サヨをぎゅっと抱きしめてみて。」と言い、うららに続き姉妹のようにぎゅっと抱き合ってみた。

「なにかこころ安らぐね。」

白井さんがそういうと「レンもぎゅっとしてあげて。」と言って「キヨミちゃーん。」と言ってキヨミに抱き着いた。

白井さんはサヨの言う通り、レンをぎゅっと抱きしめた。

「レン君守ってね。」

そうかわいい白井さんにささやかれ、レンは真っ赤になった。レンは吉良さんにもぎゅっと抱きしめられて「助けてね。」と言われ、鼻の頭に汗をかいた。

キヨミにもぎゅっと抱きしめられて「レン君かっこいい。好きだよ。」と言われ、はたから見てもムッチャ照れている。

最期にサヨがレンをぎゅっと抱きしめて「一緒にあの日の朝に戻ろう。」とささやかれ、ムチャムチャテンションが上がっている。

中畑君も女の子たちにぎゅっと抱きしめられデレデレといった感じだ。

レンはサヨに抱きしめられた後、うららの前に行き「あの・・・その・・・」と言うと、うららは何も言わずぎゅっと抱きしめた。

「レン君。私を助けてね。救ってね。」

そう言われてレンは誓った。「必ずみんな助ける!」

うららは思った、サヨちゃんは凄いな。さっきの険悪な雰囲気から一気にみんなを打ち解けさせ最悪な関係になりそうだったレン君と中畑君をも自然に打ち解けさせちゃった。
年齢も違うみんなをここで纏めちゃうって凄い子だなあと。

みんな抱き合ってきゃっきゃ言っていたが、サヨは「じゃあ、また、皆でジバクレイを探そうよ!」そう言ってうららを中心に左右をサヨとレンサヨの後ろに中畑君、レンの後ろにキヨミちゃん、中畑君の後ろに吉良さん、キヨミちゃんの後ろに白井さんという陣形であたりを捜索する。
雑木林の奥は暗く不気味だった。町中だと不気味な感じはしないが、雑木林の中の細道はちょっと怖い感じがする。

道が二手に分かれており、左側に道祖神が見えたので左に行ってみる。進んでいくと大きなイチョウの木の下に祠が見え、ジバクレイが見える。

みなが繋いでいた手を放し、うららを中心にサヨとレンも構えた。キヨミは石を拾い、投石の準備をしている。習って白井や吉良、中畑も石を拾って応戦するようだった。

戦闘力MAXな意識のレンが飛び出し、ジバクレイに素早く立ち向かって行ったが、ジバクレイに押し戻されて吹っ飛んでいる。

うららもサヨも驚いた。このジバクレイ強くない?

めげずに二人はジバクレイに向かっていくがサヨの攻撃も受けられ吹き飛ばされてしまった。

「あれ、なんなの!全く通用しない!」

ジバクレイの動きは素早く、レンとサヨの攻撃は全て受けられてしまう。キヨミや白井さんの投げた石などことごとくかわされてしまう。

吹き飛ばされた二人の前にうららが立ちはだかり、ジバクレイからの攻撃を模造刀で受けている。その動きは素早く、打ち込みも激しい。

「みんな、下がって!こいつは普通のジバクレイじゃない!」

ジバクレイから闘気のオーラが見え、うららからも闘気のオーラが立ち上っている。「本気モードだ!」サヨはうららを見てそう感じた。

サヨもレンもキヨミも吉良さんも白井さんも中畑君も後ろに下がり見守った。ただサヨとレンは竹刀を手にワケさまの後方に構えている。

ジバクレイの闘気とうららの闘気がぶつかり合い、互いの動きにサヨとレンはついていけなかった。うららも強いがこのジバクレイは恐ろしく強い。サヨもレンも打ち込めずにいると、サヨの右手にメッセージが見えた。

--
「私」は二人を追って奥多摩湖の小河内ダムの前まで来て、苦戦している二人を見つけた。
この様子では敗北してしまう。
ジバクレイに敗北すると壺に抑えている魂の緒が天子の力によって元の場所に戻されてしまう。二人はまた、最初から仲間を探していかなければならないだろう。
「私」はピンチを窮する二人に再び経文を送った。と同時に経を読めというメッセージも送る。
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「レン!経を読めって!」サヨの右手にそうメッセージが現れ、消えた。サヨはポケットを探り、経文を広げ、慌てて経を読んだ。

ジバクレイの動きが止まり、正気に戻ったのかジバクレイの正体が見えてきた。

鎧武者だ!うわっ!ジバクレイっぽい!ってサヨもレンも思った。見るからに怖そうで強そうな鎧武者だった。しかも大きい。

鎧武者はハッと我に返るとあたりを見回し、サヨに気付くとズカズカ走り寄ってきて、唖然とするレンを尻目にサヨを軽々と抱き上げ「千代!千代!」とサヨを呼び、その無精面をサヨの顔に擦り付けた。

サヨは訳が分からなかったが千代ではないので「おじさん。アタシ千代じゃないよ。サヨだよ。」と言った。

鎧武者はサヨの顔をじっと見据え、にこりとほほ笑みんだ。
「うぬは千代姫の転生ではないのか。」鎧武者はそういうと、まじまじとサヨを抱き上げたまま見る。

「おお、転生ではなく、末裔か。」そう言うとサヨを抱き上げたまま辺りを見回し、「おお、うぬも末裔か。」とレンに向かって言う。

「えっ?千代姫って?誰?」サヨが鎧武者に向かって言うと「ワシの娘の名じゃ。」と答えた。

鎧武者はうららに気が付き、サヨを抱き上げたまま「ちこう。ちこう寄られい。」と手招きし、じっと見据えた。「うぬは強いの。念流か。」そううららに問いかけた。

サヨは抱き上げられたままだったが、鎧武者に「ワケさまは強いのよ。日本一の剣士なんだから。おじさんにちょっと苦戦しちゃったけど。」と言い、「おじさんは誰?」と聞いた。

鎧武者はサヨを抱き上げたまま「わしゃ、横地監物と申す。北条家臣の八王子城代じゃ。」と名乗った。

「けんもつ!」サヨとレン、うらら、中畑君が同時に驚く。

サヨは変わらず鎧武者に抱き上げられたままだったが、鎧武者の無精面をまじまじと見ながら「おじさんが横地監物なの?城代の?」と聞いた。

「そうじゃ。監物じゃ。千代は青梅に逃がしたワシの娘の名じゃ。」といい、サヨを下ろし地面にあぐらをかいて腰を下ろした。

「サヨ殿と申したか。さきは千代と間違えてしまったわい。年の頃も顔も千代にそっくりじゃで。」

監物がそういうと、「ぬしらはここで何をしておるんじゃ。」そう言うと、うららの顔をじっと見た。

「私たちは、サヨとレンの事故死のきっかけとなったジバクレイを探して、町はずれの祠で監物殿を見つけたのです。」うららが監物にそう告げた。

サヨとレンが監物の娘の千代姫の末裔ならば、いささか古すぎるかと思うが、監物殿が現れ、サヨとレンの事故に起因するジバクレイもしくはサヨとレンの運命に起因するジバクレイだとしても不思議ではない。うららはそう思い、監物に聞いた。

「監物殿は、サヨとレン、二人の末裔の事故に因果がある方なのでしょうか。」

監物はうららの目をじっと見据えながら「いや、そうではない。」と答え、つづけた。

「ワシは千代に危機が訪れた時に、千代を助けるために現れるのじゃ。千代とそう約束したでな。」と意外な事を言う。

えっ。どういう事?思い悩むうららの姿を見据え、監物はにやりと笑い続けた。

「ワシは事故とはなんのゆかりもないジバクレイじゃ。じゃが、事故にゆかりのないだけで、おぬし達にはゆかりがある。」

うららは意味不明の説明に悩んだ。どういう事だろう。

悩むうららを見て、監物は一同を見渡して言う。

「さて、ワシは名乗ったがサヨ殿しか名を知らん。他の御一同、名乗っていただけぬか。」
監物はうららを見据えて「そちは名を何と申す。」と一番先に声をかけた。

「私の名は、綾瀬うらら。念流剣道初段、居合貫6段。中学一年生。12歳。」

監物は「うらら殿と申すか。念流の使い手か、さすがに強いのう。感心したわ。」と喜んだ。

「オレの名は、レン。うららちゃんと同じく念流の剣士、小学5年生。11歳。」

レンがそういうと、慌ててサヨも「アタシはサヨ。レンと同じく小学5年生の念流の剣士よ。11歳。」と告げた。

監物はにこやかに「サヨ殿とレン殿にうらら殿か。皆、念流の剣士なのじゃな。たのもしいのう。」とうれしそうに三人の肩を抱いた。

中畑、吉良、白井、キヨミが自己紹介を終わると、監物は立ち上がり、皆に言った。

「ワシがここに居るのは千代姫と別れた小河内村でのあの日の因果じゃ。サヨ殿、レン殿、うらら殿、おさみ殿、みう殿、あおい殿、キヨミ殿、7人の方々のお味方いたす。ワシだけじゃ心もとないので、ワシの配下の者と仲間にもお味方していただく。ここからは大船に乗ったつもりでいられい!」

そう、強面の監物が言うと、うららを残してみな沸き立った。強そうな監物が仲間になって戦ってくれるとは頼もしい。サヨは「城代よろしくー」と言って監物に抱き着いた。

「サヨ殿は、まこと千代姫にそっくりじゃて。」そういいながら監物はヒョイとサヨを抱き上げ肩に乗せると、「皆様方、ついてマイラれよ。」といって祠の奥の雑木林に入っていく。
中は暗く、お化けでも出そうでこわく、恐る恐る進んでいく中畑君や白井さんをレンが見て「お化け出そうだけど、そもそもオレ達ジバクレイだぜ。」と言うと、みなハッとして「なんだ。」と言って、ズカズカ進む監物の後についていく。

レンから見ると何かちょっとマヌケな感じがした。

うららは監物の先ほどの説明の意味が解らず悩んでいる。

監物は開(ひら)けた場所に着くとサヨを下ろし、皆を後にづかづか進む。やがて小道に出て、緩やかな登りを歩いていると焦げ臭いにおいがして、焼け落ちた櫓(やぐら)のようなものと門が見えた

櫓と門のあたりに無数のジバクレイが見える。

監物は「うらら殿。ワシの右手にマイラれよ。サヨ殿はワシの後ろ。レン殿はうらら殿の後ろで詰めてくれ。」と言って丁度、前衛二人を監物とうらら、後衛二人をサヨとレンという四角い陣形を取り、他の者は離れて隠れているようにと言った。

「うらら殿。今はその悩み、忘れてくれ。ジバクレイ達を正気に戻す事が今は優先じゃ。」

4人が門に近づくとジバクレイが次々と現れ、襲い掛かって来る。
監物とうららは間合いに入ってきたジバクレイを次々と倒す。
ジバクレイはテレビで見た事のある傘を被った雑兵(ぞうひょう)といった感じの見た目で、我に返ると監物に気が付き、跪(ひざまず)いて「城代!」と言い、監物の「こやつら!蹴散らせ!」の一言でジバクレイに向かって行く。
まさに合戦の様だったので、サヨもレンも思わず熱くなって、ジバクレイと戦って門を入り、櫓まで来た。ジバクレイは雑兵たちのようでそれほど強くはない。サヨは監物に守られているので思いっきり戦えた。何故か自分が凄く強くなった気がして監物の間合いの外へ出てしまい、ジバクレイに挑んだ。

「きゃ!」サヨの声が聞こえ、うららが振り向いた。サヨは地面に倒れ、ジバクレイが今にもサヨに飛びかかろうとしている。うららは咄嗟(とっさ)に模造刀の鞘(さや)をジバクレイに向かって投げた。

鞘はジバクレイに当たり、ジバクレイの動きが止まった。監物が気が付き、素早くサヨの前に回った。

「サヨ殿。危なかったのう。サヨ殿はワシの間合いをでてはならぬって。この場は本場の合戦場だで、油断は禁物じゃ。」

サヨは押し倒されて尻餅をついただけだったが「いててて。」と言って立ち上がり。「城代ごめんなさい。」と監物に謝った。

「実戦じゃからのう。サヨ殿も気を付けられよ。」と言うと、うららに鞘で投げ倒されたジバクレイが正気に戻り、目の前のサヨを見て突然跪き、「姫様!士郎でございます。」と言った。

これを聞いていた監物は「士郎か。また姫を守ってくれ。」と言うと「城代!承知仕る!」と言ってサヨの正面に立ち構え、次々と襲ってくるジバクレイを倒していった。

半数のジバクレイを正気に戻しただろうか。形勢は監物にあり、ジバクレイはみな正気に戻った。ここでの軍勢は30に増えた。

監物は隠れていた皆を呼び、雑兵たちに7名を守るように伝え、皆「承知!」と答えた。

先ほど士郎と呼ばれた鎧武者がサヨの前に来て、「姫様。お久しゅうございます。」と跪いた。サヨは動揺して監物を向いた。

「士郎。サヨ殿を千代と間違えるのも無理はないが、その方は、サヨ殿と申す千代姫の末裔じゃ。ワシも顔がそっくりじゃから間違えたわ。」

監物がそう言うと、サヨは、ほっとして、「ごめんなさい。千代姫じゃなくって、アタシはサヨだよ。」と士郎に言った。

士郎は「城代。では千代姫は逃げきれたのですね!」と言い、頷く監物を見ると涙を流しながら「この士郎宗貞。姫の盾となった甲斐がありました。」と言い、サヨに「サヨ殿。この士郎宗貞がお守りいたします。」とアツい感じで言った。

ジバクレイだった監物の配下の者たちの再会で場が湧いている中、監物はうららに「さすが念流の使い手じゃのう。」といい、「その刀、見せてはくれんかのう。」と続け、うららからいつも居合でつかっている模造刀を受け取った。

「ほう、この刀は刃がついてないのう。珍しい刀じゃ。」監物がそう言うと「私たちの時代では戦(いくさ)がないから刃はいらないの。」とうららが答える。
監物は「では。」と言って、一振りの刀をうららに渡し、「これは同田貫といって、千代姫が好んで使っていた刀じゃ。実戦向きの刀じゃな。」と言って、「抜いてみよ。この刃のない刀より、しっくり来るじゃろ。」と続けた。

うららが、鞘から刀を抜き、上段に構え、振り下ろす。空気が切れる音が鋭く軽くキレがある。
「この刀。何か違う。」うららがそういうと監物は「そうじゃろ。こっちの方がうらら殿には良いハズじゃ。」と言い、「このあとは、その刀を使ってくれ。」と続けた。

最初は監物一人で違和感があったが、もはや最初の7人以外は戦国時代を戦ってきた兵と武将に守られ、すでにパーティは守備兵と将合わせて30名とサヨ達7名に監物の総勢38名に膨れ上がっていた。
サヨ達7名はドラマや映画でしか武将を見た事がないので、本物に守られているなんてカッコいいって思ってた。監物を頭に配下の者たちでアタシ達を守ってくれてるんだ。

パーティは監物を先頭に、ところどころ焼け落ちている砦の中の山道を登った。監物の隣にはうららが居る。サヨの隣には士郎宗貞がにこやかに付き添っている。
レンは白井さんや吉良さん、キヨミちゃんを守っていて、その後ろに中畑君がいて、拾った棒を縦に振っている。剣の練習をしているのかな?戦う気満々?

やがて、また、焼け落ちた櫓のある場に来ると、ジバクレイ達が襲ってきた。監物とうららは、一刀でばさばさ打ち倒していく。雑兵たちも7人を守りながらジバクレイに応戦していく。

やがてまた、ジバクレイ達も正気を取り戻し、「城代!」と跪いて7人の警護に付き、ジバクレイ達と応戦する。士郎は相変わらずサヨを守り奮戦する。サヨも一線で戦いたかったが先ほどの事もあるので油断せず、士郎の間合いを離れず、戦っていた。

レンが女の子たちを守り戦っていた時に、雑兵たちの守りに混ざって拾った棒で隙間から応戦する中畑君を見た。「彼なりにも頑張っているんだなあ。」レンがそう思った瞬間。雑兵たちを吹き飛ばすジバクレイが現れた。

「中畑君が危ない!」レンはそう咄嗟に思い、駆け出して中畑君の前に出た。

雑兵たちはジバクレイに押され、ジバクレイはレンの前に現れた。

「こいつ、相当強いな。」ジバクレイの闘気のオーラを感じたレンは、竹刀を下段に構え、相手の打ち込みを誘った。シバクレイが飛び込んでくる。レンは突きで押し戻そうとしたが、ジバクレイの方が素早かった。レンが「しまった!」と思った瞬間。ジバクレイに胴脇を取られてしまった。「まずい!やられる!」と思った瞬間。ジバクレイの動きが止まった。ジバクレイの後ろに剣先が見え、真後ろにうららが居る。「レン君。大丈夫だった。」うららが微笑んでくれた。

雑兵たちの奮戦で、この曲輪の戦いもジバクレイたちを全て正気に戻した。レンが戦ったジバクレイは、金子家重(かねこいえしげ)というここの曲輪で奮戦した武将で、やはりサヨを見ると千代姫と呼んだ。
よほどサヨは千代姫とそっくりらしい事が良くわかる。監物と家重は仲良いらしく、ここでの総勢は40人ほどでパーティは78人に膨れ上がった。

「家重殿。サヨ殿は千代の転生ではないが、また、千代の為に働いてくれぬか。」
監物は家重にそういうと
「何を言われる城代。喜んで働かせていただきますぞ。」と言った。

一行は監物を先頭にうららとレン、士郎宗貞とサヨ、雑兵に守られているキヨミ、白井さん、吉良さん、中畑君と続いた。
サヨの所に家重が来て、サヨ殿は千代姫にそっくりじゃのう。と感心して繰り返し言う。家重は強面の監物とは違い、明るい感じで話好きの明るいおじさんだった。サヨに千代姫の事を我が娘のように自慢げに話してくれた。

千代姫は念流の使い手で、その剣技も相当のものだったとのことで、北条家の中での剣術大会で負けたことが無かったそうだった。利発で思慮深く、僧たちとの禅問答に舌を巻く者も多く、また、器量も良く北条家はもとより、まだ11と子供なのに輿入れをこう男子も後をたたなかったそうだった。何より文武両道を極めたといった印象の姫だったと。

サヨは興奮しながら自慢げに話す家重の話を聞きながら、「それって、ワケさまの事じゃないの?」って思った。

やがて、焼け落ちた鳥居が見えてきた。

うららはレンと並んで歩いていたが、ふと「この道をこんな感じで歩いた記憶がある。」とレンに話した。監物はそれを聞いて確信した。「やはり、千代の転生はうらら殿であったか。」

一行は山頂の曲輪に着くと焼け落ちた櫓の方から多数のジバクレイが向かってきた。

「一同、心してかかれ!」
監物がそういうと「おう!」と皆いい、ジバクレイに立ち向かって行った。

「カッコいい!映画の中のようだ。」サヨは思った。まさにその模様は映画の中の合戦の始まりといった感じで将は刀を抜いて先頭に立ち兵を伴って駆けていく。

監物とうららは一対でジバクレイを次々と倒し、正気に戻していった。監物の配下は既に80近い軍勢になっていて、一体を除きすべてのジバクレイを倒していた。

「みなみながた、このジバクレイは大石殿じゃ。」

「大石殿はワシとうらら殿で正気に戻すでな。手出し無用じゃ。」

そういうと監物はジバクレイと激しく打ち合った。その闘気は凄まじく、みな目を見張った。

一進一退の打ち合いが続き、監物の後ろにつけていたうららが刀を抜き、低く構えてジバクレイに向けて大きく飛んだ。ジバクレイは闘気むき出しのオーラでうららの刀を受けたように見えたが、ぱたりと動きを止めた。士郎宗貞と金子家重と一部の侍頭が「おお!」と歓声を上げた。

サヨ達には何があったか解らない。ただ、あんなうららは見たことが無い、あの構えはなんという型なのだろうか。

ジバクレイがこれまた強面の鎧武者になった。

「うわー!凄い!強そう!」サヨは思わず言ってしまった。

鎧武者はハッとして辺りを見回すと「おお!城代!監物殿!」と監物に気が付き「これはまた!みなみながた!戦でも始められるか!」と見回して「がはは!」と笑いながら言った。一同は照基の姿を見て沸き立った。これで八王子城で監物と戦った、千代姫と共に戦い、監物と千代姫を脱出させた面々が集った。

照基はサヨを見つけると「千代姫じゃあ!」と言ってずかずかサヨに寄ってきて抱き上げた。

「あ、大石殿。その姫はサヨ殿と申して、千代の末裔じゃ。千代の転生はおぬしを打ち倒したこのうらら殿じゃ。」

監物はそういうと、”えっ”といった表情のうららをひょいと抱き上げ肩に乗せた。

士郎宗貞も配下の兵もうららに跪き「姫様。我ら一同姫様のため、また働かせていただきます。」と言った。

「うーん!カッコいい!やっぱりワケさまは普通の人ではなかったんだ!」サヨは感動して思わず声に出してしまった。
「やっぱり、あの凛とした感じ、あの柔らかい美しさ、知的な話し方どれをとっても一般人じゃないよね。高貴な感じがしてたんだ。」

照基は相変わらずサヨを抱き上げている。照基の肩の上でバタバタとはしゃぐサヨとうららを照基は交互にまじまじと見つめながら、「千代姫の転生はこれまた美しいのう。凛々しさ倍増じゃ。でも、サヨ姫も可愛いのう。のう城代。どう見てもあの千代姫の姿のままじゃ。」

ここでの将兵の総勢は30人ほどで一行は100名を超す軍勢になっていた。

「みなみながた、再び千代姫の為に働いてくれ!」監物がそう肩にうららを乗せて言うと一行は「えい!えい!おー!」と地響きのようなかちどきを上げた。

「きやー!本格的!すごーい!城代!ワケさま!超かっこいい!」サヨが興奮してキャーキャー言って照基の肩の上でバタバタはしゃいでる。

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原作おはなしーその2「告白」

2016年09月20日 12時50分21秒 | ジバクレイ達の世界

時の堰(ときのせき)第二章「告白」

「美世(みう)ちゃんだったね。思い出したくないのだろうけど、何も残ってなくってさ、調書作らないといけないから協力してね。」

病室で目を見開いたまま青い顔で小刻みに震える少女の前に男の警官と女性の警官が二人座っている。

「どんな感じだったの?こう、トラックが猛スピードで突っ込んできて、状況からして、お友達の二人はトラックと壁の間に押しつぶされちゃったの?」

少女の眼にはその模様がコマ送りのように焼き付いている。

「ドーンと突っ込んできて、トマトのような感じでブチュッっと押しつぶされちゃったのかな?」

その少女は、サヨとレンのクラスメートの吉良美世と言った。彼女の眼に前で二人はトラックと壁の間に押しつぶされて燃えてしまった。
美世が二人に気が付き「サヨちゃん!レン君!」と声を掛けながら駆け出した瞬間に彼女の眼に、大きなトラックが迫ってきた。掛け声に気が付いた二人は足を停め、後方へ右向きで振り返ろうとした。
トラックはそのまま二人を弾き、壁へ押し付けた。トマトが潰れるように真っ赤な液体がトラックと壁の間から飛散し彼女を包む。ビシャっと嫌な大きな音を立てて。
血みどろになって呆然としている彼女を見た誰かたちが彼女をその場からそのまま引きずり出し、潰れたトラックと壁は小さな炸裂音と共に炎に包まれた。彼女の眼には遠ざかる炎が強く残像として焼き付いている。

美世は何度も繰り返し再生される記憶を思い出しながら、小さな震える声で「いやぁ。いやぁ。」と毛布の端を強く握りしめ言う。

「トラックの前から火が出ちゃってさ、お友達の痕跡共に焼けこげちゃって、詳しい状況が解らないから教えて欲しいんだけど・・・」

「いやー!ぎゃー!」

断末魔のような美世の金切り声が病院内に響き渡る。

病室の外に居た美世の母と父が慌てて病室へ飛び込んできた。

「あんた!娘に何をしたんだ!」

美世の父が怒鳴り声をあげた。
警官二人は驚いた様子で美世の父と母を見て小さな声で言う。

「いや、あの、状況を見ていたのはこの子だけ何で、その、状況を聞いていただけで・・・」

病室にいた医師が冷めた表情で警官二人に言った。

「ほら、言ったでしょ。今はショック状態のままなんだから、ダメですよ。事情聴取は彼女が落ち着いてからにしてもらって、今日の所は引き上げてください。」

二人の警官の内、男の方はなによらブツブツ言いながら、美世の両親と医師たちに会釈をして帰って行く。
美世は目を見開いたまま汗をかき、青い顔で小刻みに震えている。

「いやー!いやー!」

美世は泣き叫びながら、かけてあった毛布やら枕やらを室内に投げる。

「ちょっと、君たち美世ちゃんを押さえてて。」医師がそういうと二人の看護師は美世の両腕を押さえた。

「美世ちゃん。少し寝むろうね。」医師はそういうと一本の注射を美世に打った。

過呼吸気味だった美世の様子が少し落ち着き、見開いたままの眼が閉じられ、美世は落ち着きを取り戻し、眠りに入った。

「ちょっと強めの安定剤を投与しましたのでこれでしばらくは落ち着くでしょう。」

医師はそう両親に告げると看護師になにやら指示をして部屋を出て行った。

「そりゃ、目の前で友達二人が圧死しちゃったんだから、相当なショックを受けてるでしょうね。さっきの警官もそのへん解ってただろうに。状況を聞き出そうとしてもまだ無理ですよね。」看護師が両親に向かって言った。

美世は眠っているが繰り返しサヨとレンに声を掛けた後の記憶を反復している。間一髪のところで自分は助かったが、自分が声をかけなければ二人は無事逃げられたかも知れないと強く思い込んでいる。

はっと、誰かに呼ばれている声が聞こえた。声は「お前なんか死んじゃえ。友達殺した人殺し。」美世にはそう聞こえた。

「私がサヨちゃんとレン君に声をかけなければ助かってたかも知れないのに。」何度も二人の顔を思い出そうとする。すると、二人が振り返るより早くトラックに押しつぶされてしまう。思い出せない。名前だけしか呼べない。

「ひやー。」悪夢の中で二人を呼ぶ声にならない声が小さく病室に響いた。

美世が気が付くと、暗い病室にいた。足元には母がうつぶせて眠っている。気づかれないように起き上がって窓を開けると結構高い。ここから落ちちゃえば死んじゃうだろうな。そう思う。

美世は先ほどとは違い、落ち着いてはいたが、自分だけ生きているのが苦しかった。幾度もあの瞬間を思い出してしまう。自分がサヨとレンを殺した張本人なのだ。自分のせいで二人が消えた。二人に謝りたい。そう強く思った。

「サヨちゃんとレン君に会いに行くね。二人に謝るの。ごめんねって。」

そう、疲れて寝ている母につぶやくと窓から飛び降りた。


新たなジバクレイを見つけた四人はうららを先頭に、左右をサヨとレンが固め、一番後ろにキヨミがいるという偃月(えんげつ)の陣のような陣形をとった。うららの作戦で、これなら強敵にうららが手こずっても、サヨとレンが左右からサポートできる。

病院内を探索するとジバクレイが襲い掛かってきた。
うららは居合で使う模造刀の柄に手を添えると一瞬のうちに倒した。
ジバクレイの動きが止まり、中からまた、見覚えのある顔が現れた。

「あっ!吉良さんだ!」サヨとレンが同時に言う。
美世は、はっと我に返り、サヨとレンに気が付き、突然泣き出し、その場に崩れた。
何で泣いてんだろとサヨは思いながら美世の魂の緒をみつけて壺に入れた。

レンは美世に駆け寄り、「どうして泣いているの。」と優しく聞いた。

「だって、サヨちゃんもレン君も、目の前で死んじゃうんだもん。あの朝以来あえてないもん。でも、今会えた。良かった。会いたかった。うえ〜ん。」

美世は泣き続けながらレンに抱き着いた。

「そうか、あの朝、アタシたちに声を掛けたのは吉良さんだったのか。」

サヨが言った。

美世はサヨにも抱き着き「ごめんね。ごめんね。」とただ繰り返した。

「いや、謝ってくれなくてもいいんだけど、あの朝なにがあったの?私たちどうやって死んじゃったの?」
サヨが美世に聞くと美世は泣きながら教えてくれた。

その話は生々しく、そんな事があったのかと二人は驚いた。何せ二人の記憶は誰かに声を掛けられたまでしかないからだった。

「そっか、アタシとレンは一緒に潰れて燃えちゃったのね。」意外とサヨはドライに理解したようだった。レンも特に驚いている様子はない。

「で、何で助かったはずの吉良さんがジバクレイになってんの?」レンが不思議そうに聞いた。

美世は”私が声を掛けなければ二人が事故に合わなかったかもしれない”と思い、精神的に追い詰められて、あの朝、会えなかった二人に会いたくて謝りたくて会いにいこうと思って発作的に窓から飛び降りちゃったのだと言った。

「あー。でも折角助かったのにもったいない。オレとサヨなんか死んでるって言われても全く実感ないんだぜ。吉良さんに言われてなんか状況がわかったけどね。でも実感全くない。」

美世は「あの朝の事が目に焼き付いていてあのままでは辛くて生きてはいけなかったの。」と言ったが、「また、サヨちゃんとレン君に会えてうれしい。」とまた、泣きながら喜んだ。

確かにクラスの友達やうららやキヨミが仲間になってどんどん増えていくのは嬉しいが、この状況は何とかしないといけないとサヨもレンも思った。また、このまま進むと友達やクラスメートのジバクレイが増えて行って、何か自分たちのせいで友達が死んでいくんじゃないかと心配にもなってくる。

どうしたものかと二人で悩んでみた。

--
「私」が二人の軌跡をたどってくると大きな総合病院の前だった。
駐車場の壁寄りに小さな花とうさぎのぬいぐるみが置かれている。
私は香を焚き九字をきって二人の様子を見た。新しくこの場所にいた少女のジバクレイを仲間にしたようだ。皆の声は聞こえないが、見た感じ同じくらいの年の子たちに見える。友達なのかな?
香の煙の中にちらちらと様子が伺えるが、二人は何か悩んでいるようだった。
私は短冊に「先へ進め。悩んでいても解決しない」と書いた。
--

「レン、また、メッセージが来た!」サヨがそう叫んでレンに右腕を見せた。

”先へ進め。悩んでいても解決しない”

そら、そうだと二人は納得した。そう、現世で二人を見守ってくれている人もいるんだ。大丈夫だよ。二人は顔をあわせて頷いた。

「さあ、吉良さんも私たちの新たな仲間だよ。皆で天子と戦って世界を解放しよう!」

美世は驚いた顔で二人を見る。

「天子ってあの、最初に出て来る怖い神様の事?」美世がそういうと、サヨは「アタシとレンは天子に会ってないから知らないけど、このワケさまは天子と戦ってんのよ!」とうららを美世に紹介した。

「ワケさまは強いのよ。多分、オリンピックに剣道があれば絶対金メダルね!」そうも言う。
するとキヨミが前へ出て「吉良さんって言うんだ。私はキヨミ。強くないけどよろしくね。」

また、仲間が増え、チームは5人になった。サヨとレンはジバクレイを見つけて正気に戻して仲間にしている事を美世に教えた。

「サヨちゃんもレン君も強いんだね。」美世がそういうと、サヨもレンも「この中で一番賢くて強いのは、ワケさまだよ。」と言い、うららは「そんなことない。」って首を横にふりながら答えた。「諦めないで先へ行こうとするサヨちゃんとレン君が最も強いと思うよ。」

話をしながら先へ進むと、小さな駅舎が見え、そばにジバクレイが居るのを見つけた。
みな、戦闘態勢をとり、うららを先頭に陣形をとった。
吉良さんは、戦力にならないのでキヨミの後ろでキヨミに守ってもらうようにして、また、うららの左右にサヨとレンが構えた。

うららは駆け出し、風のようにジバクレイを追い、一撃で仕留めた。

サヨとレンも後を追ったが追いつけなかった。

うららが倒したジバクレイはキヨミと同じ年頃の可愛い感じのお姉さんだった。

「あれ。、サヨちゃんとレン君!」お姉さんはそういうと、二人の前に駆け寄ってきた。

えっ?誰このお姉さん?サヨがそう思った時にレンがお姉さんの顔を覗き「白井あおいさん?」と聞いた。

「あっ、嬉しい!レン君覚えてくれてたんだ!」

ええっ!白井さんってクラスの子じゃん。こんなお姉さんじゃないよってサヨも思って顔をよくみると、確かに成長して女子高生になっている白井さんだった。

「えっ!何で白井さんが大人になっちゃっているの?」サヨは不思議に思い聞いてみた。

「だって、小学生の時、サヨちゃんとレン君が死んじゃって、私、中学生になって、高校生になって、でも、友達もいなくって、毎日がつまんなくて、寂しくって、なんか二人の事思い出して、ふらっと電車に飛び込んじゃったんだ。」

サヨもレンも白井さんの事は覚えている。いつも一人で座ってた。話しかけても一言二言かわすだけ。てっきり一人が好きなのかと思ってた。

「私って人見知りで、頭悪くって、暗くて、一緒に居て楽しくないでしょ。サヨちゃんとレン君は元気良くって頭もいいし、いつも私の事気にしててくれていて、なんかこう教室でも目立ってたじゃない。いつも二人は賑やかだったし。憧れてたんだ。友達になれないかとね。でも、あの朝、二人がいなくなって、クラスが一気に暗くなって、誰も私の事なんか気にしてくれなくなって、そのまま中学、高校ときたけど、友達もできなくて、サヨちゃんとレン君がいたときと違って毎日が寂しくつまんなかったんだ。」

えっ!そんな経ってから自殺しちゃった白井さんもここに現れるってどういうこと?

アタシとレンはあの朝のままの姿で、白井さんは女子高生になってる。でも、うららの自殺も吉良さんの自殺もあの朝以降に起きている事で、白井さんも時間はかなり経っているけど、あの朝以降起きた事だ。

サヨはキヨミが気になり、いつ死んだのか聞いてみるとやはり、あの日の朝以降の出来事だった。

そうか、あの日の朝の後は時間の流れなど意味がないんだ。サヨとレンは顔をあわせ頷いた。そうか、もしかすると、このジバクレイの世界の外道界ははアタシ達の世界なのかもしれない。

サヨとレンがあの朝、事故死してから数珠のように連鎖して起きている友達や仲間たちの死。

これらは自分たちの事件に端を発している。

あの朝、事故がなければ皆、救えたかもしれない。

だとしたらアタシ達は天子を倒してジバクレイを解放するだけではなく、事故がおこる前に戻らなければ皆を助けられないかも知れない。

そう考えると、自分たちの事故もこの世界にいる誰かの事件がきっかけになってその事件以降にあの日の朝が起きたという事も考えられる。

”因果応報”

何事にも切っ掛けがあるという事をサヨはパパに教えてもらってた。

あの日の朝の出来事にも何かきっかけがあるに違いない。サヨはそう強く感じた。

「レン、ジバクレイを正気に戻してあの朝より前にジバクレイになった人を探してみよう。」

サヨがそうレンに言うとレンも解っている様子でサヨに言った。

「この世界に時間の流れがないのなら、事故の前に戻れる可能性はあるね。オレ等があの日の朝の前に戻れればここにいる皆を助ける事が出来るね。」

サヨとレンはこの話を新しく仲間に加わった白井さんを含めて説明した。

白井さんもキヨミも吉良さんも良くわからないといった反応だったが、うららは「そうね。サヨちゃんとレン君の事故の因果になった事件があるのかもしれない。事故の日より前にジバクレイになった人を見つけてみようよ。」と言った。

サヨとレンは中心にうららを置いてそれぞれ左右に分かれ手を繋ぎ楽しそうに先へ進む。最初は二人だけで逢魔が時を迎えたままの世界でちょっと不気味なレトロな街並みのさみしい場所だったが、今は六人の友達が仲間になっている。

特にうららは強く賢いので二人の頼れる存在になっている。彼女がいるだけで安心できた。

しばらく六人は手を繋いで散策しつつ、歩いて行くと、古い木造の校舎が見え、先の教室らしい部屋の中にジバクレイが見える。

「ほら、ジバクレイが居る。さあ、皆で行こうよ!」サヨがそういうと皆で古い木造校舎向かって校庭を走り出した。サヨもレンもうららもみんな楽しそうに駆けていく。

そのジバクレイは今までのみんなと違い教室にただ佇んでいた。皆が教室に入ると、突然物凄い勢いでうららに襲い掛かって来る。その迫力に白井さんとキヨミ、吉良さんは逃げ出したが、うららは冷静に模造刀の柄に手を置くと目の見えない速さで踏み出し打ち倒した。

ジバクレイはサヨやレンの知らない男の子の姿に変わった。

「中畑君!」うららがそう呼んだ。

その男の子は、うららに気が付くと顔をくしゃくしゃにし突然泣き始めた。

「綾瀬さん。ごめんなさい。ごめんなさい。」ただ、うららに向かって謝っている。

さすがのうららも動揺しているようで困った表情をしていた。

「中畑君。どうしたの?何があったの?何で私に謝るの?」

うららがそう聞くと、その男の子はこう答える。

「ボク、いつも学年で綾瀬さんの次で二番しか取れなかったんだ。それを両親に怒られ、いつも寝る間を惜しんで勉強してたんだけど、全然駄目だったんだ。でも、綾瀬さんが亡くなって、学年でようやく一番になれたんだ。そうしたら、ボクの両親が邪魔者が消えて良かったなとか酷いことを言うんだ。でも、ボクは実力で一番になったんじゃないんだ。綾瀬さんが目標で綾瀬さんがいたから二番に成れてたんだ。綾瀬さんがいないと勉強ももうできないかも知れないし、実力に及ばない一番なんて維持していくのはできないんだ。綾瀬さんは頭が良くって、可愛くて、綺麗で、凛としてて、気高くって、ボクには到底及ばない雲の上の女神のような人だったんだ。綾瀬さんが死んじゃって良い訳がないじゃん。」

とやたら滑舌のいい早口で言う。

要するに、中畑君はうららが憧れの人だったらしい、で、両親がその憧れの人を邪魔者扱いしたしたことを謝っているらしい。で、うららが目標だったのに目標がなくなってしまったとの事で、手の届かない存在に感じていたという事のようだった。

「えっ?中畑君。それなら、私と勉強すればよかったのに。声を掛けてくれれば、一緒に図書館で勉強できたのに。二人で同じことやってれば一緒に一番になれたかもしれないよ。」

中畑君はそれを聞くと「綾瀬さんにそんなことお願いできない。」と顔を赤らめてもじもじしながら言った。

「でも何で中畑君がジバクレイになっているの?」うららがそう聞くと、「勉強が嫌いで、綾瀬さんも死んじゃったし、ボクも死んじゃえば、また、綾瀬さんに会えるかと思って・・・」恥ずかしそうにやはりもじもじ言う。

なんだコイツ。レンはムカついてきた。なんか自分が自殺したのはうららのせいみたいじゃないか。勝手に死んでろよ。うららを巻き込むな。そう思ったが、もう、皆死者なのでそんなこと言うのも馬鹿らしくなってきた。

でも、まあ、新しい仲間だ。こいつにも何かの役にたってもらおう。

この男の子はうららのクラスメートで中畑修(おさみ)と言った。頭はそこそこいいのかも知れないが強くはなさそうだ。そこでうららが皆の目的を中畑君に話した。

「そうか、ここには時間が存在しないのだね。ならば未来と過去が入り混じっている空間なのかも知れない。つまり、ここを通って未来にも過去にもいける神の領域なのかも知れない。何故なら、ボクが天子に呪縛された時に言われた永遠の罰を与えると言ったことから解釈するに、この世界に時間の尺度がなかったら、ジバクレイにされ、呪縛されればそれは永遠になる。でも、勝手に時間をさかのぼったり進んだりは出来ないだろう。これが出来るのならば天子に呪縛されてないサヨちゃんやレン君は勝手に時間を遡れるハズだ。でも、これができないという事はやはり、その操作を天子が独占していると考えて間違いないだろう。しかしながらまず、過去と未来への時間軸が平坦であるという証明に未来の誰かと過去の誰かと会っておく必要があるだろう。」

とまた、滑舌のいい早口で言った。

うららは「レン君とサヨちゃんのクラスメートの白井さんが高校生になって、ここで現れたから、未来と今が今ここで同期していることは解っているの。今、確認できていないのは過去も同期しているのかという点だけなの。」と言った。

「ワケさま。過去はきっとあの日の朝の事故の因果となったジバクレイだよ。この中畑くんの事件もワケさまの自殺の因果だし、ワケさまの事件は、あの日の朝の事件に因果があるし、唯一解らないのはキヨミちゃんの事件が何の因果か解らないだけで、ひょとするとあの日の朝の事件の因果と同じなのかも知れないよ。」

サヨはうららにそういうと「でもまあ、今は考えてても先に進まないから、どんどんジバクレイ見つけようよ!」と皆に言った。

チームは7人となり、うららを中心に左右にサヨとレン、と続き、偃月の陣形のように並び先へ進む。うららによるとこの並び方がこのチームにはいいとの事。中畑くんはうららと手を繋ぎたかったようだったが、レンが阻止している。うららはそんな二人の姿を見てちょっと嬉しくなった。

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Nexusのfarstboot/RecoveryMode

2016年09月13日 11時27分12秒 | オレのマシーン
動作が緩慢になったり、本体が暴走(熱くなりすぎたり、バッテリーが激減)してたらやってみる。結構効果あり。

まず、電源を切る。

①電源ボタン+音量ボリューム下げるボタンを押して起動させるとfarstboot画面が表示される。
②すると、ボリュームボタンの上げ下げで「start:通常起動」、「Restart bootloader:再起動して再びこの画面に戻る」、「Recovery mode:リカバリモードに入る」「Power off:電源を切る」が上に表示されるので、リカバリモードを選択して、電源ボタンを押す。


③倒れたドロイドくんが表示され「コマンドが指定されていません」と表示されるので、電源ボタン長押し+ボリュームボタンの上げを押すとメニューが表示されるので、「wipe cache partition : キャッシュパーティションのクリア」をボリュームの下げ上げで選択して、電源ボタンで確定。



④メッセージが表示されるのでcompleteと出たら、今度は「reboot system now : 通常再起動」を選択して電源ボタンで確定。これで終わり。

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不動海岸へ

2016年09月10日 15時50分53秒 | 日常

不動海岸へ行ってみた。駐車場は有料なんだ。ちなみに10月いっぱいまでの土日祝日は県内の有料道路(道路公団の道路は除く)は無料解放してるよ。
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君の名は

2016年09月03日 16時10分16秒 | 映画
観たよ。観た。
面白かった。言葉の庭までは落ちなしな感じで、映像の綺麗さが際立っていたけど、今回は落ちもあっておもしろかったよ。超おすすめ。僕がすすめなくてもみんな観に行くか。

いや、面白い。ハッビーエンドでスッキリ!
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