goo blog サービス終了のお知らせ 

あしたはきっといい日

楽しかったこと、気になったことをつれづれに書いていきます。

民主主義ってなんだ

2016-01-04 22:54:45 | 映画を観る
連休も今日で終わりということで、映画でも観ようと思った。
で、モフセン・マフマルバフ監督の『独裁者と小さな孫』を観に行った。

栄華を極める「ある国」。そこは独裁者の大統領が圧政を敷く国だった。
ある日、その栄華が銃声とともに破られ、大統領とその孫は一転、憎悪の対象となった。
新たに政権を握った者たちにより懸賞金がかけられ、誰もが「敵」となる中、彼らは市民から服などを奪い、変装して逃亡を続ける。

その逃亡の旅の途中で、大統領…祖父と孫は、彼らの為政による犠牲に直視させられる。幼い孫にもそれは伝わっていたのだろうが、その犠牲を強いた本人である祖父の目には、復讐の火種としてだけでない複雑なものとして映っていたようだった。


次々と訪れるピンチにハラハラさせられる逃避行に、東西冷戦下の攻防を描いたヒッチコック作品が重なった。けれども、ヒッチコック作品に見られる痛快さはなく、凄惨さや無常さを感じさせるエピソードが続く。

現実が急激に変化するのに対し戸惑う孫に対し、祖父は「これは芝居だ」という。その展開に『ライフ・イズ・ビューティフル』を思い出した。けれども、強制収容所でも笑顔を持てた少年とは違い、幼い孫は常に戸惑い続けていた。


圧政を敷いた「悪」とされ大統領の座を追われた老人に対し、その圧政に対し蜂起した者たちは「正義」だとして振る舞う。また、圧制により苦しめられた者たちは、自らの悪行を正当化する。

マフマルバフ監督は、「悪」とされる独裁者だけでなく、彼らを倒し「正義」を自称する者たちにも鋭く視線を向ける。そして、その視線は観客である僕にも向けられているような気がした。


逃避行の途中、ある事件が起きる。牙をむく者に対し周りにいる誰も声を上げることができない。犠牲になった人が「誰も助けてくれなかったじゃないか」と叫ぶ声が僕の心に突き刺さった。特にこのシーンとラストシーンには、マフマルバフ監督の想いが強く込められていたように感じた。


「正義」の名のもとに暴力に及ぶというのは、枚挙に暇がない。それは、世界各地で起きる紛争のほとんどに当てはまるだろう。そして、そのシーンを観ていてふと、昨年起きた2020東京オリンピックエンブレム問題を思い出した。「パクリ疑惑」や「デザインが良くない」という思いから、僕もTwitterで当事者に対する思いを書いた。でも、その中には当事者を罵る汚い言葉もあった。当事者家族に対する脅迫などは論外だけど、僕の放った言葉の一部も「正義」を纏った暴力に違いなかった。


昨年の夏、僕らの前に突然、政府から「安保法制」という戦争参加を可能にする流れが提示された。いや、振り返ってみるとその流れは政権交代以降着実に既成事実を積み重ねられてのものだった。少なくともその間、僕は流れに抗する行動をしてこなかった。

いつかまたこの国に戦争による犠牲者が出てしまった時、「しっかり反対してくれなかったじゃないか」という声なき声が聞こえてくることを想像しながら、この映画を観たことをきっかけにまた「民主主義ってなんだ」と考えてみよう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

氷の花火

2015-11-29 07:55:47 | 映画を観る
先日、映画『氷の花火』を観た。

今年の6月に『山口小夜子 未来を着る人』を観に行き、それまで名前や姿しか知らなかったその人の魅力に触れた。そして、その時にこの映画について知り、観に行きたいと思った。

映画は、2007年に亡くなられたトップモデルの山口小夜子さんについて、彼女が登場したCMやファッションショーの映像に加え、彼女とともに日本を、そして世界を驚かせてきた人々へのインタビューを通じて、その姿を浮かび上がらせようとする。それは、監督の松本貴子さんが小夜子さんの姿を探し求める旅のようだった。

インタビューに答える方々は、小夜子さんとの輝くような思い出を、つい昨日の出来事のように話されていた。それぞれの方々にとって、小夜子さんとの仕事が自身にとってとても貴重なものだったろうことが窺われる。

中でも、山本寛斎さんのインタビューが印象深かった。寛斎氏は長らく小夜子さんとともに作品を送り出していた。その長さをかけがえのないものと思いつつ、彼女への思いの強さから、新たな表現の道を模索する小夜子さんと袂を分かってしまったという辛い話もされていた。

寛斎氏は、今も悔やんでいらっしゃるようだけど、寛斎氏との出会いがあったからこそ、小夜子さんはその道を模索しようとしたんじゃないかと思う。だから、小夜子さんの中には、彼女が意識していたかどうかはわからないけど、寛斎氏がいたのだと…

映画のラストに、思いもよらない形で小夜子さんの姿を目にする。そのシーンに携わった全ての人々が感じられた様子を通じて、小夜子さんがそこにいるように思えた。とても不思議で、今思い出しても涙がこみ上げてくる。

観終わって、改めて山口小夜子という一人の女性が多くの人たちに愛されていたことを思い、心が温まる感じがした。


人は亡くなられても、その人のことを想う人がいる限り、生きていると言えるのではないか。そんなことを考えながら、映画館を後にした。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あえかなる部屋

2015-10-12 22:00:17 | 映画を観る
先日、中村佑子監督の映画『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』を観た。

数か月前、脳科学者の茂木健一郎さんのTweetで内藤礼さんという現代アート作家の方について知り、この映画にたどり着いた。そして、必ず観ようという気持ちを繋ぎ止めるため、別の映画を鑑賞した後に上映劇場に寄り前売券を購入した。

映画は、中村監督から内藤さんへの取材依頼から始まる。監督自身の語りとともに映し出される映像は、再現なのか、それとも実際その時に撮られたものなのか。そんなことを考えながら、監督と内藤さんとの間の、朧げに見える繋がりが少しずつ強くなっていくように感じながら、スクリーンを見つめていた。そして、内藤さんからの突然の取材拒否によって、映像の見た目は大きく変わっていった

中村監督が内藤礼さんを取材しようと思われたきっかけは、香川県・豊島美術館の内藤さんの作品「母型」との出会いだったそうだ。

僕は5年前に瀬戸内国際芸術祭を観賞するために豊島を訪れた。



その日は天候に恵まれ、電動アシスト自転車を借りて島巡り・アート鑑賞を楽しんだ。





けれども、訪れた10月初めにはまだ豊島美術館は完成しておらず、この作品を鑑賞することはできなかった。
そして、一昨年は豊島をコースから外してしまったため、残念ながら未だに鑑賞できていない。


さて、内藤さんからの取材拒否によって、映像の見た目は大きく変わっていった。
内藤さんの姿・声が消えるとともに、一人の女性が登場し、更に4人が加わり、豊島美術館の内藤さんの作品「母型」に集う。

その姿に、中村監督、内藤さん、そして5人の女性たちが、直接もしくは作品を通じて互いに影響し合っていることを感じた。

映像の見た目は変わったものの、映画の本質は変わっておらず、中村監督が追い求めたものが見えたような気がした。実際にそれが彼女が追い求めたものなのかはわからないけど、そう僕が思えたのなら、それでいいのだろう。

不思議な映画だった。こうして感想を書いてみたものの、読んでくれる皆さんには伝わらないかもしれない。でも、それでいいのだと思う。

豊島美術館をこのような形で見てしまったけど、あの中に入ることが彼女の作品を鑑賞することなのだろうから、いつかこの作品を鑑賞したい。その時、隣に誰かがいて、なんとなく共鳴できたらとと思う。

わかりやすくはない。わからなくてもいいと言ったら乱暴かもしれないけど、興味を持っていただけたらぜひ観ていただきたい映画だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ココニイルコト

2015-04-23 22:04:18 | 映画を観る
最相葉月さんの本を読んでいて思い出した 映画『ココニイルコト』をまた観たいと思った。

真中瞳さん、『電波少年』で体当たり企画にチャレンジされたり、『ニュースステーション』でスポーツレポーターをされたりと大活躍だっだ彼女は、笑顔の素敵な美人さんという感じで、僕はそんな彼女がけっこう好きだった。

この映画が上映された際も、そんな理由で観に行った。

彼女の演技は拙さがあるものの、主人公 相葉志乃の不器用さが彼女にダブって見えて、良かったと思う。でも、それ以上に衝撃的だったのが、堺雅人さんの自然な演技だった。当時、彼については全く知らなかったので、こんなすごい俳優さんがいるんだという思いを強くした。彼のその後の活躍は多くの人が認めるところだけど、それを目の当たりにすると、当時僕が感じた印象は間違っていなかったと再認識する。


で、初めてamazonを利用し、DVDを購入した。そして、今日届いた梱包を解き、早速再生した。

終盤に近づくにつれ、映画館で観た時と同じように目が潤んだ。そして、14年前に観た時の気持ちが、はっきりとではないけど蘇る感じがした。


万人受けする作品でないと思うけど、僕は、改めてこの作品をいいと思う。


長澤雅彦監督の作品は、その後、『青空のゆくえ』しか観ていないけど、他の作品も観てみたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペコロスの母に会いに行く

2015-03-25 22:39:18 | 映画を観る
日曜日に観た映画の3本目は、森崎東監督の『ペコロスの母に会いに行く』

岡野雄一さんが認知症のお母様を介護された実体験を元にして描いた漫画を原作としたこの作品は、赤木春恵さんが「世界最高齢での映画初主演女優」としてギネスブックに登録されたことでも話題になっていた。この話はNHKBSでもドキュメンタリードラマとして、イッセー尾形さんが岡野さん(雄一)を演じられていたけど、映画では岩松了さんが演じられた。

母親の介護というのは、僕にとっても他人事ではない。同居している母は、今はまだ身の回りの事を自分でやることができるけど、このままならばいつ介護が必要となるか不安だ。コメディタッチで描かれた作品で、ところどころで笑い出してしまったものの、赤木春恵さん演じる母親の認知症の症状が進んでいく様子を観ながら、母もいつかこのような状況になるのだろうかという思いが頭の中に浮かんでいた。竹中直人さんも巻き込んだ「ハゲ」ネタも…

この映画、僕は素直にコメディ映画として楽しんだ。そういう観方もいいのだろう。「認知症の親の介護を考える映画」なんて言われたら、もしかしたら観ていなかったと思う。でも、コメディ映画として楽しめたから、介護についても考えられたのかな…

「ボケるのも、悪いことばかりではない」といった言葉を雄一が発する。その言葉を彼が言えるようになるまでには相当な苦労を重ねてきただろう。僕も同じような状況になった時、母にそんな言葉を言えるようになりたい。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

そこのみにて光輝く

2015-03-24 21:26:04 | 映画を観る
日曜日に観た映画の2作目は、呉美保監督の『そこのみにて光輝く』、実は最も観たかった作品だった。

もっと言えば、昨年春の公開時に観に行きたかったのだけど、ついつい観逃がしてしまっていた。
なぜ観たいと思ったのだろうと言うと、あの、池脇千鶴さんを見つめる綾野剛さんの写真を視た時、気持ちがそそられた。具体的にどうこうではなく、そう感じた。

映画は、あることがきっかけで仕事を辞め函館のアパートで独り暮らしをする達夫が、パチンコ店で出会った拓児に誘われ彼の家に向かう。そして、彼の姉、千夏と出会う。2人はやがて互いに惹かれ合う。それでも、千夏には素直に達夫に向かっていくことは出来ない。そして、達夫も。この辺りは物語の核になる部分なので、あまり踏み込まないようにしたい。いや、僕が綴る言葉ではとても表現しきれないから…

綾野剛さんは、何かを抱えて動けない、けれども、千夏と出会ったことで変わろうとする達夫の微妙な心情を、彼の持つ雰囲気以上のもので演じていた。彼が演じたからいいというのはあるけれど、原作、そして脚本により作り上げられた達夫が綾野剛さんの演技を通じ確かな像を持ったと言ったらいいだろうか。これも、言葉では言い尽くせない。

池脇千鶴さん、「体当たりの演技」なんて書いたところで彼女がこの作品に込めた思いの足元にも及ばないだろう。自分の置かれた境遇に荒みつつも、芯の純粋さを失っていないと思われる千夏に達夫が惹かれる瞬間、そこにその純粋さが垣間見えた。千夏が高橋和也さん演じる中島に抱かれる…というより、犯られると言った方がいいだろうか、達夫に心を寄せている千夏が中島を受け入れざるを得ないそのシーンが切なくて、千夏と達夫が抱き合うシーンに、互いに求め合う、いや、必要としていることを強く感じた。

菅田将暉くん、僕は彼を『泣くな、はらちゃん』、『35歳の高校生』、そして『ごちそうさん』と、テレビドラマでしか観たことがないけど、前2作、それも続けて放送された2作で全く異なる役柄を魅力的に演じられていた。そして、『ごちそうさん』については多くの方がご存じだろう。自転車の乗り方、たばこの吸い方、飯の食い方などなど、拓児ってこんな奴なんだなと思う。そして、彼も姉と同じように芯の部分に純粋さを保っている。

函館の街の、華やかさとは一線を画した荒んだ場所で、荒んだもの同士が出会い、互いに自分にとって大切な存在だと思い、だからこそ、その相手を守ろうとする。人を好きになるってそういうことなんだろうと、改めて思った。

好き嫌いの別れる映画だと思う。でも、タイトルの通り「そこのみにて光輝く」映画だ。

そう、上映後のプロデューサーの星野秀樹さんと、脚本の高田亮さんのお話も楽しかった。観客の方からの質問には「?」と思うものもあったけど、お2人ともその質問を上手く膨らまして裏話をしてくれた。

そんな映画が昨年のキネマ旬報日本映画ベストワンと、主演男優賞、監督賞、脚本賞を獲得したのは納得できる。
一方、某映画祭についてホームページで受賞結果を確認すると、優秀作品賞にすらノミネートされなかったものの、こちらでは池脇千鶴さんが優秀主演女優賞の1人に入り、少しはまともな部分もあったんだと思った。

まあ、観る上で賞などは関係ない。僕がいいと思えばいいんだから。昨年観逃がしたことを改めて後悔し、ここで観れてよかったと思う。

そして、呉美保さん、高田亮さん、星野秀樹さんによる次回作『きみはいい子』が6月末から公開されるという。トーク終了後に予告編が上映されたけど、こちらも観てみたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

旅立ちの島唄

2015-03-23 23:27:00 | 映画を観る
日曜日、所沢で開催された『ミューズ・シネマ・セレクション』で映画3本を観てきた。それは昨日も書いたけど、今日からそれぞれの作品についての感想を書いてみたい。

1作目は、吉田康弘監督の『旅立ちの島唄~十五の春~』(2013年)

この作品は、NHK『にっぽん紀行』で放送された「15歳 旅立ちの島唄」という番組に着想されたという。
沖縄県南大東島には高校がなく、進学する子どもたちは15歳になると島を離れなければならないそうで、番組では島の民謡教室で三線を習っている少女が「卒業コンサート」を迎えるまでの日々を追っていた。その時も、たまたま予告で知り、録画して視た。そして、今もハードディスク内に残してある。

主演は三吉彩花さん。以前、ドラマで大学生を演じていたのでそれくらいの年齢だろうと思っていたけど、その頃はまだ高校生だったそうだ。大人になりかけた感じは、ドキュメンタリー番組で紹介された少女もそうだった。

さって、番組をそのままなぞるのでは映画にはならないのだろう。15歳という多感な時期に、恋や家族の問題を物語に織り込んでいる。上映後に観客の方から、そうしたエピソードが必要だったのかといった質問が寄せられていた。その時僕は「15歳を描くのには必要だったのだろう」と思った。今思うと、少女が家族と離れ離れになるということを深掘りする内容もあったのではないかとも思うけど、多感な時期の淡い恋の話、好きだな。

グッと心を掴まれるような映画ではなかったけれど、じんわりとくる内容だった。三吉彩花さん演じる主人公の優奈、家族や友人、そして好きな人との距離を測りかねる複雑な役柄を、優奈になりきって演じられていた。

上映後のティーチインが終わり、ロビーで監督のサイン会があるというので、パンフレットを購入しその列に並んだ。そして、気になったことを質問させてもらった。それは、エンドロールで優奈たちが乗る船が遠くへ去っていくのをずっと映していた中で、優奈がデッキから船室に入っていくタイミングについてだった。
吉田監督は、そのタイミングを彼女に任せていたと仰っていた。これから始まる高校生活への希望と、島に残る家族と別れる事の寂しさ。同級生それぞれに違っているだろうその比率を、彼女は最後にゆっくりと船室に入っていった。そこから、優奈の父への愛情の深さを感じることができた。
ここはよく見ていないとわからないかもしれないけど…

で、次に観た『そこのみにて光輝く』についてはまた明日以降に…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

味園ユニバース

2015-02-18 23:07:16 | 映画を観る
映画『味園ユニバース』を観た。

先日、兵庫県にバレーボール観戦に向かう途中に難波で降りてぶらぶらしていたら、たまたまこの「味園ビル」を通りかかったけど、映画を観るきっかけはそのことではなく、昨年の『ドキュメント72時間』で取り上げられたのを視てこのビルに興味を持っていたからだと思う。まあ、理由はどうでもいいか…



さて、映画の舞台はもちろん大阪。冒頭の暴力シーンに、こんなこともあるのかもしれないと思いながら、その後、渋谷すばるさん演じる主人公が和田アキ子さんの「古い日記」を歌うシーンで「あの頃は…」と歌いだすところで心を掴まれた。彼は関ジャニ∞のメンバーだというくらいしか知らなかったけど、パワフルな歌声、そしてその存在感の大きさに圧倒された。

そして、記憶を失った彼を引き取り、「ポチ男」と名付けて祖父と共に三人で暮らし始めるカスミ。二階堂ふみさんの演技を始めて観たのは大河ドラマ『平清盛』で清盛の娘、徳子を演じた姿だった。メインの出演者ではなかったけど、強烈な印象を持った。その後、ドラマ『Woman』でも難しい役を演じられていて、今後の活躍が期待される女優さんだというのは僕にもわかった。

映画の魅力は渋谷すばるさんの歌だと思う。「古い日記」だけでなく、劇中で歌われる「ココロオドレバ」と、エンディングで流れる「記憶」も良かった。彼でなければこの歌は活きなかっただろうし、この歌でなかったら彼の歌声が心に響かなかったのではないかと思った。

でも、この映画はミュージカルではない。山下敦弘監督の作品は『リンダリンダリンダ』、『天然コケッコー』、『苦役列車』をこれまで観たけど、この作品でもポチ男とカスミの心の移ろいを丁寧に描いている。中でもスイカを食べるシーンが心に響いた。カスミの心の揺らぎが観ている側にも共振する。細かく書くとネタバレになってしまうので控えるけど、二階堂ふみさんもこのシーンを印象的だったそうだ。

面白かった。クスッとする場面もあったけど、涙を流す方が多かったかな。まあ、それはおじさんだからかもしれないけど。

多くの人に勧めたい作品だ。渋谷さんの歌を聴くだけでも価値がある…なんて言ったら乱暴だけど、それをきっかけに山下監督の作品を楽しんでもらえたら、それも良いのかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

神様はバリにいる

2015-02-06 23:25:02 | 映画を観る
映画『神様はバリにいる』を観た。きっかけは、堤真一さんが主演ということだった。

実は、彼が出演している作品をこれまでほとんど観たことがなかった。けれども、朝ドラ『マッサン』で彼が演じる「鴨居の大将」こと鴨居欣次郎という人物がとても魅力的だったからだ。モデルとなったサントリーの創業者 鳥井信治郎氏についてはよく知らないけれど、きっとあんなスケールの大きな人物だったのだろう。

さて、映画の方は、事業に失敗しバリ島に来た演じる祥子(尾野真千子さん)が、現地に住む強面の風貌を持つ大富豪の「アニキ」(堤真一さん)に出会い、彼の思いに触れることで、一度は自殺しようと思っていた気持ちが変わっていくという話だ。

どうすれば成功することができるのか。祥子はアニキからその秘訣を教わっていく。それはとても難しいというものではない。当たり前のことかもしれない。でも、その当たり前ができずに僕らはいつも立ち止まってしまう。「辛い時こそ笑え」というのは僕も以前はそうしていたけど、ここ1年ほどは笑うこともできないほどの状況が続いている。いや、笑ってしまえば大したことではなかったのかもしれない。。

堤真一さんは、派手なTシャツに金のネックレス、そしてバリバリの関西弁でしゃべる「アニキ」を楽しんで演じられていたように見えた。その姿は、どこか「鴨居の大将」に通じるところがあるように感じた。きっと、僕の他にもそう思う人はいたんじゃないかな。

尾野真千子さんを初めて観たのはドラマ『Mother』だったけど、それ以来、シリアスなイメージが強かったけど、この作品ではコメディエンヌとしての魅力を輝かせていた。前々から思っているんだけど、いつか芦田愛菜ちゃんと親子役でコメディをやってほしい。

玉木宏さんは主役を演じる作品も多いけど、こうして脇を固めるのも上手い。そう感じたのは『平清盛』の時だけど、リュウという青年がなぜアニキを慕うのかが何となく伝わってきた。

ナオト・インティライミさん、お名前は聞いたことがあったけど、初めて拝見した。役者として初めての作品だそうだけど、警察に捕らえられたシーンとか、新人俳優さん(?)とは思えなかった。

なかなかすっきりしない日々が続いているけど、久しぶりに心から笑うことができたから、良かったのかな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の悲劇

2013-09-16 06:04:26 | 映画を観る
昨日は台風が迫り、朝から激しく雨が降っていて、降っていなかったら、いや、小雨だったら車で出掛けようかとも思っていたけど、諦めて近所の温泉に向かった。電車の時間を考えない分、先週の磯部温泉よりはゆっくり入っていられたけど、午後になりお客さんが増えてくると居場所がなくなり、ふと、今日観ようと思っていた映画の上映時間をスマホで検索したら、次の上映まで1時間を切っていた。空を見たら雲は少なかったので、「行こう」と決め慌ただしく温泉を後にした。

『日本の悲劇』は、小林政広監督、仲代達矢主演の作品で、同じ組み合わせでの『春との旅』が非常に印象的だったのを思い出し、前売券を買うことにした。

老親が亡くなっても届を出さず、子どもが不正に親の年金を受け取っていたという事件を受け、監督はこの作品を構想したという。物語は、勤め先からリストラされ妻子にも逃げられた息子に対し「最後にお前にしてやれること」と言い自室に閉じこもり飲まず食わずで餓死するという父親と、その父を気遣う息子との会話を中心に進んでいく。釘を打ちつけ外から開かないようにし、扉をけ破って入ってきようものならノミを使い自殺するとまで言う父に対し、息子はただ部屋の外で泣き、叫ぶことしかできない。

一人部屋の中で父は、息子の嫁が去り、妻が倒れ、心を病んだ息子とともに妻を送り、そして、震災の日に自らも病に倒れたことなどを思い出していた。その中には、息子夫妻が孫を連れて訪ねてきて、妻とともに楽しく過ごす時間もあった。全編モノクロで描かれる中、このシーンだけがカラーで描かれていた。楽しかった思い出が色鮮やかで、その後の辛い日々はモノクロでしか記憶されていなかったということか。僕はそのシーンを見ながら泣いていた。幸せそうなだけ、父親が一人妻の遺影を前に座る姿が哀しかった。そして、自分はこんな楽しい思い出も持たずにいずれこのような時を迎えるのだろうかなどと思いながら…

仲代さんのべらんめえ調の台詞は頑固な父親そのものに思えた。そして、シリアスな内容なのに思わずクスッと笑ってしまうようなチャーミングな面も交えながら。そして、息子を演じた北村一輝さんは、心優しいゆえに傷ついた息子を熱演されていた。彼が演じた『妖怪人間ベム』の夏目刑事を思い出し、余計にそう感じた。

僕は父親と酒を酌み交わすことなどもうできない。そういう意味ではこの息子を羨ましいと思った。突然リストラで職を失うというのは他人事ではない。そして、年老いた母と暮らしている今の自分をスクリーン上の息子に重ねて見ていた。日頃から母の小言を鬱陶しく思っているので、もし母が同じような選択をしたらと考えたら受け入れるかもしれない…いや、そんなことはないだろうと思う。


これを読んでから観に行っても十分に作品を味わうことができると思い、かなり細かく書いてしまったが、これを読んで観た気にさせてしまったら申し訳ない。これから消費税増税をはじめ庶民には厳しい世の中になっていく中、多くの人たちにこの作品を観て感じて欲しい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする