手話通訳者のブログ

田舎の登録手話通訳者のブログです。

手話通訳の現場から

2015-11-26 07:29:49 | 手話
スキー指導員養成講習の通訳に行った。
身体障害者スポーツの発展は目覚しい。ろう者でも資格をとって指導にあたっている方もたくさんおられる。
待ち合わせ場所で、申請者さんに会った。

申し訳ないけど、正直言って、自信ありません。
スキーに関しては全く素人だし、スポーツそのものに関心が薄く、完全なスポーツ音痴です。
「そうだよね。解ります。単に手話ができる、というだけでは難しいと思う」
資料を見せてもらって思ったのですが、今回は上級指導員の専門コース。今まで、初級から中級まで、講習を受講されていますよね?ずっと、手話通訳者派遣申込をされていたんですか?
「いや、正直言って、公的派遣で派遣されてくる通訳者では無理があると思っています。今まで、スキーが得意な手話通訳者に個人的に頼んでいました」


手話通訳者の世界は狭い。「スキーが得意な手話通訳者」と聞いて、ああ、あの人か、と判った。

スキーが得意な手話通訳者、Gさんですよね?
「えっ、なんで判るんですか?」
現役で活動している手話通訳者、少ないですから(笑)
ちょっとした特徴を聞いただけで、個人が特定できてしまう、狭い世界です(笑)
Gさん、今日は都合が悪かったんですか?
「なんか入院されたみたいで・・・仕方なく、初めて公的な手話通訳者派遣申込をしました」
なるほど・・・
予めスキーに関する手話を調べてきましたが・・・(自分で用意してきたスキー手話資料を見せる)
講習会で多用されそうな単語はどれでしょう?
「うーん、今日はスキーそのものの講習ではなく、指導者用の専門コースだから、いわゆるスキー用語はあまり関係ないと思う」
そうですか・・・


想像していた通り、非常にしんどい通訳となった。申請者さんに対して、申し訳ない限り。
終了後、申請者さんと話をした。
自分の考えを話して、申請者さんからも「うん、その通り」と言われたことが2点。
(1) 手話通訳は手話そのものだけでなく、バックボーンとしての知識(今回ならスキー知識)が重要
(2) 連続した講習会の場合、手話通訳者は同じ人が続けるのが望ましい

上記(1)のバックボーン知識に関して、派遣者が一人ひとりの手話通訳者のそれを把握することは無理。
結論として、申請者側で手話通訳者を探して、手話通訳派遣申込の際に指名するしか方法がない。
適任の手話通訳者がいない場合、同様の講習会の際には同じ通訳者を常に指名すれば、この通訳者が慣れてくるに従って、手話通訳の精度は向上する。


「今回は一連の指導者養成講習の最終回。僕は今後、スキー講習に関して手話通訳者派遣申込をすることはないけど、後輩たちが受講する時、手話通訳者を指名するように助言します」


また一人、手話通訳者指名に賛同してくれる申請者を見つけた。



コメントを投稿