Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

終末期の輸液について

2010-04-27 12:27:09 | 輸液関連
緩和ケアの領域で、経口摂取が困難になった場合、輸液をするかどうか
が問題となる場合があります。緩和医療学会からガイドラインが出ていて
輸液判断のひとつの参考に出来ますが、輸液にはその医療的なメリット、
デメリットの他に患者様、御家族の想いが入り込み、しばしば判断が
難しくなります。

確かに、輸液はせん妄の改善や意識低下を改善する可能性、ある程度の
延命効果は期待出来る一方で、点滴がもたらす延命が単に最もつらい時期を
引き延ばすだけに終わる可能性を考えなければいけません。また、
点滴の管に繋がれていることを苦痛に思う患者様も予想以上に多く、
四肢や顔面の浮腫み、胸・腹水や気道・腸管分泌物の増加、尿量増加
(トイレに移動する患者様では負担増)等輸液そのものが苦痛を増して
しまうこともしばしばあります。緩和に携わる医療者はそういった場面
をたくさんみていますし、逆に輸液を行わない最期が「良い死」である
事が多いので、輸液を行うことに否定的な方が多いです。

私も医療者として、医学的には輸液は避けた方が良い場合も多いと
思います。しかし、理屈のうえではそうでも、患者様、特に御家族
にとっては輸液が命綱、奇跡的な回復の最後の希望のシンボルで
ある場合もあります。その場合、理屈で説得して中止にしても、
後で“想い”が残ってしまう場合があるのではないかと考えています。
実際、患者様が拒否しているならともかく、家族が判断をしなければ
いけない場合、「輸液をしないで良い」という判断を下すのは相当
難しく、つらいことも多いと考えます。

従って、輸液を食べられないから、と自動的に輸液を行うのは
間違っていますが、逆に全例点滴を行わない、とする方針も乱暴です。
当然のことながら、輸液はケース・バイ・ケースで考えていく事柄で、
実際のところ、不感蒸泄を考慮しても200~500ml程度の輸液では大きな
苦痛をもたさず(あまり益にもなりませんが)、中止にしなくて良い場合
も確かにあります。苦痛が明らかに増してくる場合、輸液の減量/中止を検討
しますが、中止にする場合も、「金輪際しません」という決断・説明をする
必要はないと思います。

ちなみに輸液に関しては以前のブログにも書いた事があります。
結論はあまり変わっていないのですが…。
http://blog.livedoor.jp/kotaroworld/archives/12419851.html

ご意見ある方はお待ちしています。

2 コメント

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Unknown (ぴすた)
2010-04-28 17:30:09
家族が見ていられる程度の医療が緩和医療において重要と言うことでしょうか?
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Unknown (こたろう)
2010-04-28 22:42:33
最も大切なのは患者様の想いに沿う事ですが
患者様を最も身近で理解し愛している御家族
への配慮なしに良い緩和医療は成立し難い
のではないでしょうか…。
どのようなお気持ちでのコメントか分からない
ので、見当違いのレスでしたらごめんなさい。
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