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ちまちま中間手続54

2025-04-05 21:15:48 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続54

拒絶理由 新規性・進歩性
 引用文献1には、アルミナにW、Pt、Pdを担持したリーンバーンエンジンのNOx浄化触媒が記載されている。W等の担持量は、本願請求項5~8の規定と重複している(引用文献1:[0032]段落、実施例5等参照)。

 引用文献3には、タングステン担持ジルコニアに白金、パラジウム、ロジウム及びイリジウムから成る群より選ばれる少なくとも1種が担持された、酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化触媒が記載されている(引用文献3:請求項1、[0001]段落等参照)。
 引用文献4には、タングステン担持ジルコニアとPt,Rh,Pdの1種又は複数種の貴金属を含む、過剰な酸素が含まれた排ガス中のNOx浄化触媒が記載されている(引用文献4:請求項1、[0001]、[0022]段落等参照)。
 一方、引用文献3、4には、担持する貴金属としてPt及びPdを用いた実施例が記載されていない。しかし、酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化触媒において、Pt及びPdを担持した触媒は公知であるから(引用文献5:請求項1参照)、引用文献3、4記載の触媒において、担持する貴金属としてPt及びPdを選択することは当業者ならば適宜なし得る。そしてその効果も、引用文献に比して格別とは認められない。
 (本願明細書には、ジルコニア担体にW、Pt及びPdを担持した触媒が、メタンを還元剤とした酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化に効果があることが具体的に示されている。しかし、本願請求項1、2においては担体がジルコニアに限定されておらず、また還元剤がメタンに限定されていないから、明細書に記載された当該効果を請求項1、2に係る発明の効果とすることはできない)

意見書
 引用文献1には、アルミナにW、Pt、Pdを担持したリーンバーンエンジンのNOx浄化触媒が記載されている。
 しかしながら、本願発明の触媒は、ジルコニアを担体とし、これにパラジウムおよび/または白金を担持させ、さらに、タングステンをこれに添加または担持させたものであり、触媒の構成成分が全く異なっている。したがって、本願発明は、引用文献1に対して新規性を有している。
 また、引用文献1の触媒およびそれを用いた排ガスの浄化方法は、特にその段落[0028]に、「本発明の触媒は、排ガスを燃料過剰状態(リッチ)或いは理論空燃比状態(ストイキ)にし、このようにしてできた還元雰囲気の排ガスを触媒に接触させることによって再活性化することができる」と記載されているように、還元雰囲気下に窒素酸化物を分解する反応を行っており、本願発明のように、「酸素過剰雰囲気下においてメタンを還元剤とし窒素酸化物を分解する」ことは開示されておらず示唆する記載もない。したがって、引用文献1には、酸素過剰雰囲気下で窒素酸化物を分解する、という思想はなく、引用文献1の記載に基づいて、本願発明のような触媒およびそれを用いた排ガス浄化方法に想到することはできない。

 引用文献2には、触媒担体としてセラミックス繊維からなるプレフォーム板状体が記載されている。
 しかしながら、上記(3)で説明したように本願発明は引用文献1に対して進歩性を有するものであるから、引用文献1と引用文献2とを組み合わせたとしても本願発明に想到することはできない。

 引用文献3には、タングステン担持ジルコニアに白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムから成る群より選ばれる少なくとも1種が担持された、酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化触媒が記載されている。
 引用文献4には、タングステン担持ジルコニアとPt、Rh、Pdの1種または複数種の貴金属を含む、過剰な酸素が含まれた排ガス中のNOx浄化触媒が記載されている。
 しかし、引用文献3および4の実施例には、白金およびパラジウムの両方が担持された触媒は記載されていない。
 これらの文献の実施例では、単一種貴金属を担持した種々の触媒を用いた場合の窒素酸化物の分解性能の結果が記載されているが、本願発明のように、長期間にわたって安定的に高いNox分解性能を有するか否かについては、全く明らかにされていない。
 引用文献5には、PtおよびPdを担持した触媒が開示されている。
 しかしながら、引用文献5の触媒は、本願発明のようにタングステンを担持したものではない。引用文献5の触媒のNOx転化率を示す図1では、時間の経過と共に明らかにNOxの転化率が低下している。これは、本願明細書の段落[0014]~[0017]において説明されているように、触媒中の硫酸根が時間の経過と共に脱離していくことに起因している。
 したがって、引用文献3~5の発明を組み合わせたとしても、長期間にわたって安定的に高いNOx分解性能を得るという本願発明の効果は容易に想到することができない。
 また、引用文献3および4では、ストイキ状態やリッチ雰囲気のガスに曝されることによってNOx浄化性能が向上または回復することを利用している(引用文献3の段落[0039]、引用文献4の段落[0016])。
 さらに詳細に引用文献3および4の記載内容を検討すると、引用文献3の段落[0033]に「触媒中の前記貴金属の含有量は、NOx吸収能とストイキ時の三元触媒性能が十分得られれば・・・」と記載されている。また、引用文献4では、「リーン側ではNOxがアルカリ土類金属(NOx吸蔵体)に吸蔵され、それがストイキ~リッチ側でHCやCOなどの還元性成分と反応して浄化されるため、リーンバーンにおいてもNOxを効率良く浄化することができる」(段落[0005])、「リッチ雰囲気において・・・還元される。・・・・NOx吸蔵能が容易に回復する」(段落「0016」)と記載されている。
 そして、それらの触媒の性能評価は、引用文献3では段落[0072]に記載のようにストイキ状態からリーン雰囲気に切り換えて、また引用文献4では段落[0057]に記載のようにリッチモデルガスとリーンモデルガスを切り換えながら行っている。
 したがって、引用文献3および4の発明は、ストイキ状態やリッチ状態と、リーン状態とを繰り返すリーンバーンエンジンの排気ガス処理を想定したものであり、酸素過剰雰囲気下であるリーン雰囲気で触媒にNOxを吸収させ、その後のストイキ状態あるいはリッチ雰囲気下に触媒に吸着されたNOxを還元する二段階の工程でNOxを浄化しているのであって、酸素過剰雰囲気下に一段階でNOxの分解まで行っている本発明とは全く異なっている。

特許査定

不必要に長文になった嫌いがある



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