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ちまちま中間手続88

2025-06-14 21:46:38 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続88

拒絶理由 新規性・進歩性
 引用例3,4には、本願所定の構造を有する窒素酸化物の除去用物質及びその使用が記載されている(各引用例の特許請求の範囲等参照:なお引用例3について、本願請求項の記載はSnの存在を許容するものであること、並びに本願明細書の記載(特に実施例)からは、Snの有無によって効果に顕著な差異が生じるとは認められないことに十分留意されたい)。
 また、窒素酸化物の除去用物質に貴金属を担持させて窒素酸化物を還元する技術や、加熱やパージ等種々の方法を用いて除去用物質から窒素酸化物を脱着させる技術も周知である(引用例5~7等参照)。

意見書
 引用文献3には、スズ(テトラ-iso-プロポキシスズが溶液中において用いられる)を含むホランダイトタイプの複合酸化物が開示されている。一方、本願発明の請求項1の物質は、スズを含まない。引用文献3には、八面体中にスズを欠いているホランダイトタイプの複合酸化物をベースとする物質は全く開示されていないので、本願発明の請求項1は引用文献3に対して新規性を有している。
 さらに、本願明細書の実施例13および14(それぞれ比較例を示す)には、それぞれ、小さい比表面積を有するホランダイトK-Sn-Znおよび大きい表面積を有するホランダイトK-Sn-Znに関する物質が記載されており、段落[0075]の表3には、八面体中にスズを含有する物質のほうが、八面体中にスズを含有しないホランダイトにより得られた物質よりもはるかに低いNOx吸着能につながることが示されている。
 したがって、スズを含まないことにより得られるNOx吸着能についての効果は、スズを含む物質と比較して顕著な差異があることが明白であり、スズを含まない本願請求項1の発明は、引用文献3に対して進歩性を有している。
 引用文献4には、NOxトラップとして用いられる組成物であって、担体と、マンガンおよび、アルカリまたはアルカリ土類から選択される少なくとも1種の元素をベースとする活性相とを含む組成物が開示されている。
 引用文献4の開示内容は、引用文献2の開示内容に近く、上記の拒絶理由3についての説明の全部が、引用文献4についても当てはまる。特に、K2MnO8およびBaMnO3が、引用文献4においても開示されている(4頁1~3行)。引用文献4はまた、マンガンの含有量が、アルカリまたはアルカリ土類の含有量と同一であるかまたは近いことを開示している(5頁30~32行並びに10頁1~22行(実施例)が参照される;そこでは、MnおよびK/Ba/Naの含有量は同一である、すなわち、10原子%である)。
 したがって、本願発明の請求項1の物質は引用文献4に記載された物質とは全く異なっている点で、本願発明の請求項1は引用文献4に対して新規性を有しており、また、引用文献4に対して進歩性を有している。
 引用文献5および6には、NOxトラップとして用いられる組成物が開示されている。引用文献5および6には、双方共に、前記組成物が用いられる形態における構造のタイプは全く記載されていない。引用文献5および6には、MO6八面体が一緒に接続されて構造が孔路の形態であるOMS2×2、OMS2×3またはOMS3×3構造を有する組成物は開示されていない。また、引用文献5および6には、組成物の基本化学式について記載されておらず、これらの組成物が酸化物タイプのものであるかが全く開示されていない。また、これらの文献の組成物が酸化物タイプのものであることが開示されていないだけでなく、それらは、OMS2×2等以外の多くの他の構造の形態であり得る(これについては、特に、引用文献2および4のK2MnO8およびBaMnO3参照)。したがって、本願発明の請求項1は、引用文献5および6に対して新規性を有し、また進歩性も有している。
 引用文献7には、排気ガスを精製する方法であって、マンガン酸化物活性化アルミナタイプの吸着剤を用いる方法が開示されている。引用文献7には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、遷移金属および第IIIAおよび第IVA族からの元素からなる群から選択される元素の吸着剤の存在については全く記載されていない。引用文献7にはまた、前記吸着剤が用いられる形態における構造のタイプについては全く記載されていない。したがって、本願発明の請求項1は、引用文献7に対して新規性を有し、また、進歩性を有している。
 以上に説明したように、本願発明の請求項1は、引用文献3~7に対して新規性を有しており、また、進歩性を有している。また、請求項1が新規性および進歩性の登録要件を満たしているので、請求項1の従属項である請求項2~27も当然に新規性および進歩性を有している。

拒絶査定
 引用例3の請求項等参酌すれば、引用例3記載の発明がSnを含むものに限定されないことは明らかである。
 また、出願人は本願明細書【0075】の記載から、Snを含まないものが含むものに比して顕著な効果を奏する旨主張するが、(出願人が言うところの「顕著な差異」が具体的に如何なる事項を示すのかは不明ではあるが)例えば上記【0075】の実施例5と実施例14(比較例)とを対比すれば、少なくともTads=200~300℃の範囲では、スズを含むものの方が窒素酸化物の吸着に優れていることが明記されている上に、そもそも本願発明に含まれる実施例1~7各々の対比から導かれる差異を考慮すれば、Snの有無による差異が「顕著」であると認めることはできない(加えて、上記(理由1について)にも示したように、実施例で使用される以外の金属すべてがSnに比して「顕著な差異」を生じさせる根拠もない)。
 したがって、本願発明が引用例3記載の発明に対して選択発明に相当するとは認めることはできない。

 引用例4については、上記2)を参照。

 したがって、上記拒絶理由通知書に記載した(理由3)及び(理由4,5)は、依然として解消していない。
 なお、出願人は意見書において、添付書類2を掲示し、本願所定の構造を有するか否かを該添付書類2の記載に基づいて判断されていると解されるが、該添付書類2においてはその化学式が特定されており、仮に本願所定の構造を有するものが該化学式に限定されるのであれば、本願実施例における金属組成も該添付書類2記載の化学式を満たすものではないこと、並びに本願実施例を含む請求項記載の任意の金属に関して、該添付書類2記載の化学式を満たすものと同等の構造のものが存在し、それが実際に製造されたことが明細書中で何ら検証されていないことから、本願明細書は本願発明を実施可能な程度に明確かつ十分に記載されたものではないと認められる。
 また、酸化物の結晶構造は構成元素の電荷バランスによって決定されるものと解されるところ、請求項における「重量%」の規定では、例えば同じアルカリ(土類)金属であってもその原子量の相違から、同一の「重量%」を満足しても結晶中の電荷バランスは大きく異なるものと解され、また本願明細書の記載では該「重量%」による規定の技術的根拠は何ら見いだせないので、該「重量%」の規定は、本願における課題解決のための手段を反映したものであると認めることはできない。
 さらに、例えば実施例1において表1では「K1-Mn8」と表記されている一方、【0073】では該実施例を「Mn元素単位当たり1つのK+のみを含む物質」と表現しており、上記「K1-Mn8」なる記載を含む明細書中の金属組成に関する記載における数字の技術的意義を理解できない。

ちまちま中間手続87

2025-06-12 21:28:48 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続87

拒絶理由 進歩性
 引用例1には、アルミニウム酸化物や珪素酸化物等の担体とVIII族金属とモリブデンやタングステン等の金属からなる触媒により、25~500℃、0.1~10MPaの条件下で炭化水素組成物中のブタジエンを水素化することが記載されている。
 本願発明は被処理物が分解ガソリンであり、スチレン化合物も同時に処理されるのに対し、引用例1記載の発明はそうでない点で相違するが、引用例2には熱分解ガソリンをパラジウム触媒による処理と、続くVIB属元素による処理により水添を行うことにより該ガソリン中のジオレフィンやスチレンを水素化することが記載されている。
 そうすると、引用例1記載の発明において、炭化水素組成物としてガソリンを採用すること、及びそれによりスチレンも水素化することは当業者が容易になし得ることに過ぎない。

意見書
 引用文献1には、アルミニウム酸化物や珪素酸化物等の担体とVIII族金属とモリブデンやタングステン等の金属からなる触媒により、25~500℃、0.1~10MPaの条件下で炭化水素組成物中のブタジエンを水素化することが記載されている。
 一方、引用文献2には、パラジウム触媒による一次水添処理と、続くVIB族元素による二次水添処理とによって熱分解ガソリン中のジオレフィンやスチレンを水素化することが記載されている。
 当該拒絶理由は、引用文献1に記載の発明において、炭化水素組成物としてガソリンを採用すること、及びそれによりスチレンも水素化することは当業者が容易になし得ることに過ぎない、との認定を趣旨とするものである。
 しかしながら、本願発明は、本意見書と同時に提出した手続補正書による補正により上記の拒絶理由を解消した。
 すなわち、本願発明は、ジオレフィン化合物とスチレン化合物と「メルカプタン」とを含むガソリン留分を処理する方法を提供するものであり、当該メルカプタンをも含むガソリン留分の処理のために、特定の触媒活性金属を含む触媒を用いている。本願発明において用いられる触媒を用いれば、本願明細書の段落[0009]に記載されているように、単一工程で、ジオレフィン、スチレン化合物の水素化およびメルカプタンの転換を行うことが可能である。
 これに対して、引用文献1には、所定の触媒を用いてブタジエンを水素化することのみが記載されており、ジオレフィン性の化合物およびスチレン性化合物の両方を含有するガソリン留分を処理する方法は記載されていない。さらには、引用文献1にはガソリン留分中に含まれるメルカプタンを処理することは一切記載されていない。
 また、引用文献2の方法には、その明細書の第2頁右下欄第17行~第3頁19行に記載されるように、一次水添によりジオレフィンおよびスチレン類を除去し、さらに、二次水添により含有される有機イオウ化合物を硫化水素に転換する、二段階の水素化処理方法が記載されている。
 引用文献1および2には、単一種の触媒を用いる単一工程により、上記3種の物質を同時に処理することは記載されておらず示唆する記載もなく、ブタジエン(ジオレフィン)のみを水素化している引用文献1および上記3種の物質を除去するのに2段階を要する引用文献2の記載からでは、本願発明のような単一工程により上記3種の物質を同時に処理することに想到することはできない。
 以上において説明したように補正後の請求項1は、引用文献1および2に基づいて容易に想到することができるものではないので、進歩性を有する。
 新請求項2~16は、進歩性を有する新請求項1の従属項であるので、当然、これらも進歩性を有している。
 したがって、本願発明の拒絶理由は解消した。

拒絶理由2 進歩性
 引用文献3及び4に記載されているように分解ガソリンにはメルカプタンが含有されていることは周知である。
 そうすると、引用例2記載の熱分解ガソリンもまたメルカプタンを含有するものと認められるから、引用例1記載の発明において、炭化水素組成物として分解ガソリンを採用した際には、その炭化水素組成物は結果的にメルカプタンを含有するものと認められる。
 よって、本願発明は引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められる。

意見書
 引用文献3および4には、分解ガソリンがメルカプタンを含有するものであることが記載されている。
 しかしながら、引用文献3および4の記載から引用文献2の熱分解ガソリンもメルカプタンを含む可能性が高いとしても、引用文献1~4を組み合わせることは当業者にとって容易に想到することができるものではない。
 引用文献1には、ジオレフィン性またはアセチレン性または芳香族性の原料の選択的水素化方法が記載され(実施例4、5を参照)、ここで用いられている触媒は、少なくとも1つの担体と、白金族からの少なくとも1つの金属と、モリブデンおよびタングステンであり得る少なくとも1つの追加金属とを含む触媒である。
 引用文献2には、第1水素化工程においてはPd触媒を、第2水素化工程においては第VIB族からの少なくとも1つの金属と、第VIII族からの少なくとも1つの金属とを 含有する触媒を用いる、熱分解ガソリンからのC6-C8原料の2工程水素化方法が記載されており、該方法を実施することによって、ジオレフィン性およびスチレン性の化合物の水素化がもたらされ得る。
 しかしながら、引用文献1には、ガソリン留分中に含まれるメルカプタンを処理することは一切記載されていない。
 また、引用文献2の方法は、その明細書の第2頁右下欄第17行~第3頁19行に記載されるように、一次水添によりジオレフィンおよびスチレン類を除去し、さらに、二次水 添により含有される有機イオウ化合物を硫化水素に転換するものであって、メルカプタン の処理と、ジオレフィンおよびスチレン化合物の処理とは別々に実施しているのであって、単一の工程にて同時に両処理を行っているものではない。すなわち、引用文献1および2には、単一種の触媒を用いる単一工程により、上記3種の物質を同時に処理することは記載されておらず示唆する記載もなく、ブタジエン(ジオレフィン)のみを水素化している引用文献1および上記3種の物質を除去するのに2段階を要する引用文献2の記載からでは、本願発明のような単一工程により上記3種の物質を同時に処理することに想到することはできない。
 さらに、引用文献3および4にも、用いる単一工程により、上記3種の物質を同時に処理することは記載されておらず示唆する記載がない。
 したがって、引用文献1~4の全部を組み合わせても、本願発明に想到することは容易ではない。

拒絶理由3 新規性・進歩性
 引用例5の特許請求の範囲、第3頁右上欄及び実施例には、共役ジオレフィンや有機硫黄化合物を含有する熱分解ガソリンを水素化パラジウムとモリブデンやタングステンをアルミナに担持した触媒により、本願発明中の条件と同様の条件下で水素化精製して、ジオレフィンや有機硫黄化合物の濃度を減少させることが記載されている。
 そして、石油留分にはメルカプタンが含有されることは、引用例6及び7に記載されているように周知であるから、引用例5記載の発明における有機硫黄化合物はメルカプタンを含有するものと認められる。

 引用例5記載の発明において、パラジウムの担体への含浸の程度、水素化条件を本願発明中の毎時空間速度比や圧力下にて行うことは当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎない。

意見書
 引用文献5には、共役ジオレフィンや有機硫黄化合物を含有する熱ガソリンをパラジウムとモリブデンやタングステンをアルミナに担持した触媒により水素化精製して、ジオレフィンや有機硫黄化合物の濃度を減少させることが記載されている。
 しかしながら、引用文献5には、ジオレフィンとスチレン化合物の両方を含有するガソリン留分を処理する方法が開示されていない。
 これに対して、本願発明の請求項1では、ジオレフィンとスチレン化合物の両方を含むガソリン留分を単一工程で同時に処理することができる。
 さらに、引用文献5には、本願発明の請求項1のような「球体または円筒状押出物形態であり、第VIII族貴金属が、前記球体または前記円筒の半径の80%未満の深さで周辺層内に浸透して球体または円筒状押出物の表面に担持された」触媒は開示されていない。
 したがって、本願発明の請求項1と引用文献1とは同一ではないので本願発明の請求項1は新規性を有している。
 請求項1以外の他の請求項は、請求項1を引用しているので、当然、これらも新規性を有している。
 また、本願発明の請求項1では、上記のようにスチレン化合物をも含む留分を処理することができ、また、「球体または円筒状押出物形態であり、第VIII族貴金属が、前記球体または前記円筒の半径の80%未満の深さで周辺層内に浸透して球体または円筒状押出物の表面に担持された」と規定されるような特定の触媒を用いている。このようなことは、引用文献5の記載に基づいて当業者が容易に想到することができることではない。また、石油留分にはメルカプタンが含有されることが記載されている引用文献6および7と引用文献5とを組み合わせても、本願請求項1に想到することは容易ではない。

拒絶査定
 出願人は意見書において、a.引用例5には処理されるガソリン留分がスチレンを含有することが記載されていない旨、及びb.引用例5には触媒単体の形状及び金属の浸透深さが記載されていない旨を主張する。
 しかしながら、上記aの点に関しては引用例5の例えば実施例には処理対象のガソリン留分が、沸点範囲65~149℃であることが記載され、この留分はスチレンの沸点である142℃を含むので、この留分にもスチレンが含有されるものと認められる。また、上記bの点に関しては、引用例5には触媒の金属を担体に含浸させることが記載されているが、この含浸の程度を本願発明の深さと同程度の深さとすること、さらに触媒担体一般の形状として周知の球状等の形状の担体を選択することに特に創意工夫を要するとは認められない。
 そうすると出願人の上記主張は採用できず、本願発明は依然として特許を受けることができない。

 なお、補正等の際には、本願明細書の実施例には、触媒担体への含浸深さが記載されていないので、これらの実施例は本願発明の実施例であるとは認められないし、また本願発明は実施例の記載により十分に説明がなされたものではないことに留意されたい。

ちまちま中間手続86

2025-06-11 21:52:49 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続86

拒絶理由 新規性
 引用例1には、水添処理または水添分解を行うための炭化水素処理触媒の外面を植物油、動物油であってもよい酸素含有炭化水素でコーティングすること、この触媒が炭化水素処理条件下に供給されること、コーティングは含浸によっておこなわれることに関して記載されており、このように処理された触媒と、当該触媒を用いて炭化水素処理を行うことに関して記載されている(特に第15頁第11行~第18頁第14行、実施例等参照)。
 本願請求項1、2、6、8~11、14、15に係る発明と引用例1に記載された発明との間に実質的な差異は認められない。

 引用例2には、炭化水素の水素化処理触媒の外面をオレフィンで不動態化することに関して記載されている(【0001】、【0002】、【0005】等参照)。
 本願請求項1、2、4、14、15に係る発明と引用例2に記載の発明との間に実質的な差異は認められない。

 引用例3には、触媒の表面を樹脂であってもよい有機高分子化合物でコーティングすること、コーティングはコーティング溶液による噴霧や浸漬によって行うこと、このような処理をうけた触媒を水素化脱硫反応に用いることができることに関して記載されている(請求項1~4、【0008】、【0010】、【0012】等参照)。
 本願請求項1、2、4、5、8~11、14、15に係る発明と引用例1に記載された発明との間に実質的な差異は認められない。

意見書
 引用文献1には、少なくとも12個の炭素原子を有する少なくとも1種の酸素含有炭化水素を含有する物質によりコーティングされた自然燃焼性触媒からなる組成物が開示されている。引用文献1では、コーティング工程は、予備硫化工程の前、それと同時またはその後に行われる(11頁9~10行)。
 コーティング物質は、酸素含有炭化水素であり、具体的には引用文献1の16頁10行~18頁14行に実際の化合物が列挙されている。
 しかしながら、引用文献1には、コーティング物質として、「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」は開示されていない。また、その導入方法は含浸であり、噴霧による方法は開示されていない。
 さらに、引用文献1には、細孔容積を丁度満たすような、より一般的には、細孔容積の50~100%を満たすようなコーティング物質の量が開示されている(19頁15~23行)。しかしながら、本願発明においては、細孔容積の30%未満の量で堆積させられる。
 また、本願発明における「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」であるコーティング物質は、引用文献1の酸素含有化合物を含まないものであり、実際に、酸素含有化合物は、潤滑基油の特性を減少させる酸化剤として周知のものである。
 したがって、本願発明は引用文献1に記載された発明とは異なっているので、本願発明は新規性を有している。
 引用文献2は、第VIII族貴金属を含む改質触媒を不動態化する方法に関するものである(段落[0005])。引用文献2において不動態化処理に用いられるのはオレフィンであり(段落[0006])、これが、引用文献2において挙げられた唯一の化合物である。
 また、引用文献2の方法の目的は、触媒の表面上に炭素を析出させることにあり(段落[0007])、このような析出された炭素は、改質反応の間に生じた水素によって除去される。不動態化は、200~500℃で(段落[0008])、好ましくは、オレフィンを含むガス流として触媒に接触させることにより行われている(段落[0008])。
 以上のように、引用文献2には、本願発明における「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」であるコーティング物質は開示されていない。さらに、本願発明の触媒は、第VIII族貴金属を含んでいない。また、本願発明ではオレフィンをコーティング物質として用いていないので、引用文献2のように不動態化工程の間に触媒の表面上に炭素が析出することもない。
 したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明とは異なっているので、本願発明は引用文献2に対して新規性を有している。

 引用文献3には、触媒反応において除去され得る有機高分子量化合物によりコーティングすることによって触媒の機械的強度を増加させる方法が開示されている。そして、引用文献3において適切な化合物は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等の高い解重合性を示す化合物である。また、引用文献3におけるコーティング操作は、浸漬(細孔容積全体の浸漬)またはスプレイ(化合物+溶媒)によって行われている。
 したがって、本願発明は、引用文献3とは、噴霧によりコーティングすることが唯一共通しているものの、その目的(「不動態化」対「機械的強度の向上」)および用いられる化合物(「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」対「有機高分子化合物」)の点で全く異なっている。
 したがって、本願発明は、引用文献3に記載された発明とは異なっているので、本願発明は引用文献3に対して新規性を有している。

 上記の新規性に関する説明にも示したように、本願発明のコーティング物質が「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」であるのに対して、引用文献1に記載されたコーティング物質は、酸素含有化合物であり、コーティングのために用いている物質が全く異なっており、引用文献1の記載から本願発明のコーティング物質に想到することはできない。
 また、引用文献1には、細孔容積を丁度満たすような、より一般的には、細孔容積の50~100%を満たすようなコーティング物質の量が開示されているが(19頁15~23行)、このような引用文献1の教示とは逆に、本願発明に係るコーティング物質では、細孔容積の30%未満、好ましくは25%未満(請求項2)に対応する量で効果を発揮させることができる(段落[0028])。
 引用文献2の目的は、触媒上にオレフィンを導入することによって金属触媒の表面上に炭素を析出させることである。このような炭素析出は、一般的には、本願発明の硫化触媒においては大きな不利益点である。炭素が、容易に除去されないかもしれず、それ故に、それは、適切でないコークスを生じるからである。
 したがって、引用文献2の記載から、本願発明に想到することは容易ではない。
 引用文献3の目的は、機械的強度の向上である。したがって、触媒の活性表面を適切に不動態化しようとしている当業者にとって、引用文献3の開示は本願発明の動機付けにはなり得ない。また、本願発明のコーティング物質である合成または天然物質の石油源炭化水素化合物は、機械的強度の向上に関して全く効果を有しないものである。
 以上のように、本願発明は、引用文献1~3の記載に基づいて容易に想到することができるものではない。

拒絶理由 進歩性
 平成19年11月26日に提出された意見書に記載されているように、引用例1にはコーティング物質が「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」であることに関しては記載がない。しかしながら、空気中で不安定な触媒表面を保護することを目的としてコーティングを行う際、コーティング物質としてポリエチレンロウ(本願の「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」に相当)を用いることは引用例2に記載されているように知られており、引用例1においてこれを採用することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。また、触媒上にコーティングを行う際噴霧等の手段を用いることは引用例3に記載されているように慣用手段である。さらにコーティング物質の量は当業者が所望により適宜決定しうる程度の事項に過ぎない。
 そして、本願請求項1、2に係る発明の効果を検討しても、請求項1、2が従来技術に比して格別の効果を奏すると認めることもできない。(もし、本願が「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」をコーティング剤として採用したことや特定の方法によってコーティングを行うこと、コーティング量を特定のものにすることによって格別の効果を奏するのであればその旨を意見書等で具体的に説明されたい。なお、前出の意見書には、コーティング量に関して、「本願発明においては、細孔容積の30%未満の量で堆積させられている」との主張があるが、この主張と請求項1、2における「固体(触媒)に対して30(25)重量%未満」という記載との関連が不明である。)

意見書
 引用文献1には、少なくとも12個の炭素原子を有する少なくとも1種の酸素含有炭化水素を含有する物質によりコーティングされた自然燃焼性触媒からなる組成物が開示されている。引用文献1で開示されたコーティング物質は、酸素含有炭化水素であり、本願発明のような「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」は開示されていない。
 引用文献2には、微結晶ロウ、パラフィン等の20℃で固体の飽和炭化水素によって触媒粒子を被覆することによって、湿ったガスおよび/または酸素含有ガスに対して触媒粒子を保護する方法が開示されている(第4頁左上欄19行~同頁右上欄2行)。
 しかしながら、本願出願人は、引用文献2に記載された「ポリエチレンロウ」が本願発明において規定された「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」に相当するとの拒絶理由1の指摘に承服することができない。
 本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項5には、「物質が、・・・パラフィン、ワックス、・・・潤滑基油、・・・」と、「パラフィン、ワックス(ロウ)」と「潤滑基油」とを分けて規定していた通り、本願出願人は、「パラフィン、ワックス(ロウ)」と「潤滑基油」を明確に区別している。
 また、一般的にも、例えば添付書類1には、基油について、「原油から蒸留、抽出、脱ろうなどの精製工程を経た油で・・・」と定義されていることから、常温で液体である「基油」と固体である「ロウ」とは明確に区別されている。
 引用文献2に記載されるようなロウまたはパラフィンは、凝固点が低く、それらは、20℃程度の常温において固体としての特性を示すことになる。これとは逆に、本願発明において規定される「基油」は、20℃程度の温度では液体であり、固体ではない。
 引用文献2に記載されるロウまたはパラフィンの使用は不利益点を有している。引用文献2の第3頁右下欄の4~8行には、「触媒の活性あるいは触媒中の化学反応を阻害しないように、フィルムの構成物質は工業ユニット中の装入された後に、ユニットの初作動段階において容易に除去されうるものでなければならない」と記載されているが、これらの室温で固体の成分は、仕込原料を伴うかまたは伴わないかのいずれかで加熱によって除かれるべきものである。
 しかしながら、仕込原料が伴わない場合には、溶融状態のロウは、反応器の底部内を流れた後、さらに、反応器より低温のライン内を流れ、ここで溶融状態であったロウは固化し、これによりラインは詰まる。また、仕込原料が伴う場合には、溶融状態のロウは流出物と混合されることにより容易には分離され得ない状態になるか、あるいは、仕込原料を伴わない場合と同様に溶融状態のロウが固化してラインに堆積し得、これによりラインが閉塞することになる。したがって、引用文献2では、初作動段階での制御は困難である。
 液体成分である「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」を用いる本願発明では、以上のような不利益点を呈することがない。
 より正確には、用いられる制限された量の潤滑基油は、反応のために反応器内に触媒が装填された場合に、より良好な運転開始を可能にする。実際に、制限された量の基油は、容易に触媒から除去され、反応からの流出物と共に反応器から容易に取り出される。また、該基油は20℃で液体であるので、閉塞の危険性もない。
 以上のように、本願発明は、引用文献2のロウ等を用いた場合には得られない効果を有するものであり、また、引用文献2には、本願発明の「石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油」を用いることについて動機付けとなるような記載はない。
 引用文献3には、触媒反応において除去され得る有機高分子化合物によりコーティングすることによって触媒の機械的強度を増加させる方法が開示されている。ここで、引用文献3における「有機高分子化合物」は、その段落[0008]に例示されるように、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等の「ポリマー」を意味するものであって、本願発明のような「石油源炭化水素化合物」を包含するものではない。
 以上に説明したように、本願発明のように、「不均一触媒粒子の外面を、コーティング物質である石油源炭化水素化合物の群から選ばれる潤滑基油からなる少なくとも1つの保護層で覆う」ことは、引用文献1~3のいずれにも記載されておらず、また、その動機付けになるような記載もないので、本願発明は、引用文献1~3およびその組合せに対して進歩性を有している。

拒絶理由 明確性

補正

特許査定

ちまちま中間手続85

2025-06-10 21:53:23 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続85

拒絶理由 進歩性
 引用文献1の特に【請求項1】、【0011】、【0014】-【0016】及び実施例1-2の記載を参酌し、引用文献1に記載された発明の水溶性物質は本願請求項1に係る発明の保湿剤に相当すると認めた。
 そして、引用文献1の【0011】にはフッ素樹脂が、【0014】-【0015】にはゲル化する吸水性樹脂及びポリビニルアルコールが記載されているから、砥石のボンドを「フッ素樹脂」、保湿剤を「ポリマーゲル」又は「ポリビニルアルコール」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
 なお、保湿剤をヒアルロン酸ナトリウム等公知の他の保湿剤に変える程度のことも、当業者が適宜設定し得る設計的事項にすぎない。

意見書
 引用文献1には、非水溶性物質中に砥粒および水溶性物質を含有する研磨パッド用組成物が記載されており、水溶性物質としてポリビニルアルコールが例示されている。引用文献1は、このような水溶性物質を含ませることにより、容易に研磨パッド中から遊離させることのできる砥粒を含有するために、砥粒を自己供給することができ、さらに、押し込み硬さを調整することができ、また、研磨時に砥粒をポア等に保持する性能が高いことを特徴としている。
 これに対して、本願請求項1のフッ素樹脂ボンド研磨用砥石では、砥石の空孔に保湿剤を含ませることを特徴としており、本願請求項1のこのような特徴によって、砥石と加工材の間に水膜を保持し、これにより、研磨の切れが良くなるために、撥水性の高いフッ素樹脂砥石であっても、研磨液に水を用いることができ、従来のアルコールによる研磨液に比べて低コストであり、研磨後の洗浄工程を省くことができる等の効果を有している。
 引用文献1には、「砥石の多孔質フッ素樹脂の空孔に砥石と加工材の間の水膜を保持するための保湿剤を含有させる」という本願請求項1の特徴は開示されておらず、当然、本願請求項1の特徴によって得られる上記効果についても開示されていない。

拒絶査定
 出願人は平成19年8月3日付け手続補正書において、補正前の請求項1-2を補正して新たな請求項1-2とし、補正前の請求項3-4を補正して新たな請求項4-5とし、新たな請求項3,6-7を新設した。
 そして、出願人は同日付け意見書において、「引用文献1には、「砥石の多孔質フッ素樹脂の空孔に砥石と加工材の間の水膜を保持するための保湿剤を含有させる」という本願請求項1の特徴は開示されて」いない旨の主張をしている。
 また、出願人は同日付け意見書において、「引用文献2では、液体成分を浸透させる対象が「熱硬化性樹脂」であって、フッ素樹脂を用いた砥石ではなく、また、浸透液が「水溶性微粉末の溶液」(蒸留水:段落[0017])であって、保湿剤ではない」と主張している。
 しかし、引用文献1に記載された発明の砥石も保湿剤を含有しているため、本願発明と同様に砥石が水を含むことができ、それに伴って砥石と加工材の間の水膜を保持できるといえる。

雨期入り前の高知ツー

2025-06-10 17:03:35 | ツーリング
5月31日の日記

久しぶりの休みにした。

年末に行きたかった高知に今行く。

淡路島経由が一番近かろうというところであったが、大鳴門橋にて12mの強風。恐怖の時間帯だった。

四国に入っても強風やまず。やむなく高速を下りた。

下道にて吉野川沿いを西へ。

昼飯時になったので、適当なところへ。

道の駅 藍ランドうだつに着く。

中の食堂にて みまフランク添えカレーいただく。






飯後、すぐ裏から、うだつの町並みがある、との案内だったので、休みがてら寄ってみることにした。

うだつが上がらないの語源になったところ。

人が多いような少ないような。





「うだつが上がらない」とは、努力はしているものの、なかなか状況が改善せず、出世や金銭面でうまくいかない状態を表す言葉です

とのAI解釈でました。数年前の自分のことやな。今も当ては升かも、、ではある。

県道から橋をわたって、国道へ。

そこからしばらくして着く

加茂の大クス

大きな木。

パワー欲しいけど直接触れないので、元気玉ポーズにてパワーもらおう。

ぐるっと一回りしてみた。









さらに西へ。

高知と愛媛の道分けれから高知方面へ。

大歩危の辺りで休憩。

ローソンとラーメンと土産物屋等が並んでいる。

次来たときは、ラーメンもええな、と思ってたけど、たむらけんじの色紙が飾ってあったので、やっぱりやめにして置こう。

景色はよかった。



高知に入る。

本日、もう1カ所寄る

大豊
杉の大杉

日本一とかの杉がある。









時間もいい具合なので高知へ。

はりまや橋の表示があったので、それに従う。

はりまや橋に着いてから駐輪場所探すのに苦労する、がなんとか停めた。

はりまや橋、初めて来たけど、がっかり名所言われてるのは納得。

ゲストハウスなるものに初めて泊まるが、セキュリティ大丈夫なんかな。8人分のベッドがあるけど、カーテンがあるだけ。

管理人もいない。料金を用意されてる封筒に入れてポストに投げるだけ。

女の子一人いたけど、悪いやつが2人いたら、自分一人で助けるの無理やな、、とか思いつつ、過ごしたけど、特に事故もなく、助かった。

はりまや橋の飲食店街、人が多くてはやっている。和歌山のぶらくり町とはえらい違いやな。

走行距離 337.9km