国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

旦那芸としての手品

2021-09-21 10:46:01 | マジック

●旦那芸という言葉があって普通は悪口だが、こういう評価もある。

落語には『寝床』という秀逸な「旦那芸」咄がある。義太夫語りに夢中になって長屋の店子や店のものたちに辟易される旦那の話である。私は志ん生の『寝床』が好きで、旦那の下手な義太夫を嫌って逃げ出す隣人たちの身勝手よりも、酒肴も甘味も用意しているのに誰も聴きに来てくれない旦那の孤独にむしろ親しみを覚えた。こういうはた迷惑な素人衆の「裾野」があってこそ芸能の峰はその高度を獲得することができる。それはどのような領域においても変わらない。(内田樹『旦那芸について』より)

●ここまで誇張されるほどではないが、構造は同じである。手品という芸能の基礎には素人の幅が必要なのである。

●まして、コロナ禍である。マジシャンのリアルな実演機会は減っている。いや、アマチュアマジシャンの実演機会も減っている。ということは、時間やらお金やらを消費する人間がいないと困るマジシャン、マジックショップが困るということである。

●で、だ。

●通常のマジックのコストは他の趣味と比べて、高くはない。釣りだって船に乗れば意外と経費と時間がかかるようだし、ルアーも一つのつもりで店に行ったが、もし釣れなかったらと思い、もう一つ買ってしまうこともあるそうで。ゴルフも道具、練習に時間とお金がとられること間違いなし。ギャンブルは言うまでもなくお金がかかる。お金がかからない趣味かもしれないのは読書かな。しかし、時間はとられそうである。時間というコストはある。実際に購入する人は家の中の本棚も大変なことになる。映画が趣味の方も経費はかかるし、時間はとられる。駄作を見た時のショックは読書も映画もきついらしい。私が知り合いと映画を観にいったんだが、終わった瞬間に「そうじゃないんだよぉ」と泣きそうになった知り合いがいた。

●手品の場合、無料の情報はお勧めしない(ひどいのが多いんだよ)が、マジックには月々2580円でゆうきともオンラインが、月に3790円(税別)でmonthly Magic Lessonが教材としてある。え? ゆうきとも氏に偏っているって。私がマジックを一生の趣味にしたきっかけが、ゆうきとも氏との出会いだったもんで。ちなみにmonthly Magic Lessonは順に取るもよし、20号くらいまで取った(基礎固め)ら最新号を取り続けるという手もよし。ゆうきとも氏の最新の問題意識や関心がわかる。私もいまだに基礎や考えを両教材から学ぶことが多いのである。

●あとはトランプを月に一組くらい消費するくらいかな。Bicycleという定番もあるが、日本人が考案したストレートプレイングカードも良い。コインも何枚か買うかもしれないけど、これはめったに消費しない。

●時間は練習と実践の繰り返しで必要。けど、練習と実践のない趣味は基本ないよね。

●むろん、立派な旦那芸目指して、自分に合うマジックを探すために買い続けるの面もあり(だと思う)。

●私の場合、マジックを趣味とする友人に月に一度会うのだが、三つか四つ新しいマジックを見せる。そして、友人に同じ道具を渡すのである(お金はだいたいもらっている)。

一年だと、かなりの額である。計算したくないけど。

●ちなみにこないだ会ったときに高価な道具を買ったのだが、友人は非常に感動してくれた。使いこなせず原理を教えただけなのだが、「ほんとだ、いける!」と驚いていたのである。

●毎月、3~5つくらい新しい作品を買っていると紀良京佑氏の『爆縮』やフォーサイトの『ダブル ネクサス』などの易しい傑作と出会えるのである。量が質を保証すると言えばよいのだろうか。

Implosion((爆縮)

DOUBLE NEXUS

●「迷惑な素人衆の『裾野』があってこそ芸能の峰はその高度を獲得すること」。これ大事。あまり、迷惑をかけすぎてはいけないけど。

●というわけで、他人様に見せようとしたり、一緒に観にいこうよと誘ったり、お高い道具を含めていろいろと買ったりしても単なる迷惑ぢゃないよ。旦那芸、旦那芸。

 


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