国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

古文の敬語演習問題(枕草子百二段付き)

2022-06-27 19:12:25 | 国語




単語演習
空欄に入るのに適当なものを次の中から選びなさい。

1 かぐや姫、人目もいまはつつみ給はず泣き給ふ。〈
竹取物語〉
 かぐや姫は、人の目もいまは気がね〔  〕ず泣き〔  〕。
  ①なさら・申し上げる ②申し上げ・なさる ③なさら・なさる ④申し上げ・申し上げる

2  片時まかでさせず、召し使はせ給ふ。〈宇津保物語〉
 (帝は仲忠を)ほんのちょっとも〔  〕させないで、側近く呼び寄せてお使いになる。
  ①参上 ②退出 ③申し上げ ④差し上げ

3 かの白く咲けるをなむ、夕顔と申し侍る。〈源氏物語〉
 あの白く咲いている花を、夕顔と申し上げ〔  〕。
  ①ます ②なさる ③ていた ④ました

4 宮の御前近くさぶらひて、もの啓しなど、〈枕草子〉
 中宮様のお側に〔  〕て、何か申し上げたりなど、
  ①差し上げ ②お与えになっ ③お仕え申し上げ ④いらっしゃっ

5 夜いたくふけて、(宮の)御前にも大殿籠り、人々みな寝ぬる後、〈枕草子〉
 夜もたいそう更けて、中宮様も〔  〕、女房たちも皆寝てしまった後で、
  ①退出し ②お帰りになり ③おやすみになり ④寝室に入り

6  六衛府の官人の禄ども、大将給ふ。〈源氏物語〉
 六衛府の役人へのほうびを、大将が〔  〕。
  ①差し上げる ②お与えになる ③与える ④いただく

7  泉の大将、ほかにて酒などまゐり、酔ひて、〈大和物語〉
 泉の大将は、よそで酒などを〔  〕、酔って、
  ①召し上がり ②飲み ③いただき ④差し上げ

8  西国にて左の中将殿失せさせ給ひさうらひぬ。〈平家物語〉
 西国で左中将殿はお亡くなりなさい〔  〕た。
  ①申し上げ ②まし ③お仕え申し上げ ④られ

9  春宮の生まれ給へるときに参りてよめる、〈古今和歌集〉
 皇太子がお生まれになったときに〔  〕て詠んだ(歌)、
  ①いらっしゃっ ②申し上げ ③参加し ④参上し

10 天皇の、天の下しろしめすこと、九返りになむなりぬる。〈古今集仮名序〉
 帝が、天下を〔  〕ことは、九年目になった。
  ①御覧になる ②巡行なさる ③治めなさる ④ご心配になる

11  ある人、男女もろともに人の国へまかりけり。〈古今和歌集〉
 ある人が、夫婦あい連れだって他国へ〔  〕た。
  ①追いかけ ②下っ ③逃げ ④物を届け

12  おのがもとにめでたき琴はべり。〈枕草子〉
 私のところにすばらしい琴の琴が〔  〕。
  ①ありました ②おありになる ③ある ④あります

13  花見にまかれりけるに、はやく散りすぎにければ、〈徒然草〉
 花見に〔  〕たところ、すでに散ってしまっていたので、
  ①出かけまし ②行かせ ③歌を贈った ④招い

14 (その話を)きこしめす人、涙を流し給はぬはなし。〈宇津保物語〉
 (その話を)〔  〕人で、涙を流しなさらない人はいない。
  ①申し上げる ②お聞き申し上げる ③お聞きになる ④おっしゃる

15 (僧が)加持などまゐるほど、日高くさしあがりぬ。〈源氏物語〉
 (僧が)加持祈祷などを(源氏のために)〔  〕うちに、日も高くのぼった。
  ①しておられる ②参上する ③して差し上げる ④お願いする

空欄に入るのに適当な言葉を入れなさい。
16・17  内々に、思ひ給ふるさまを奏し給へ。〈源氏物語〉
 うちうちに、わたしの思ってい〔 16 〕ことを〔 17 〕に申し上げてください。

18  親王にむまの頭、大御酒まゐる。〈伊勢物語〉
 親王に馬の頭は、お酒を〔  〕。

19  夕さりまで(帝の側に)はべりてまかり出でける折に、〈古今和歌集〉
 夕方まで(帝の側に)〔  〕て退出したときに、

20 何事をのたまふぞ、聞け聞け。〈今昔物語〉
  何を〔      〕のか、聞け、聞け。





解答
1 [③] 2 [②] 3 [①] 4 [③] 5 [③] 6 [②]7 [①] 8 [②] 9 [④] 10 [③] 11 [②]
12 [④] 13 [①] 14 [③] 15 [③] 16 [ます] 17 [帝(天皇)]
18 [差し上げる]
19 [お仕え申し上げ]
20 [おっしゃる・おっしゃっている]




問題演習1
傍線部a~dの主語を文中の一単語で答えよう。
帝、おりゐ給ひてまたの年の秋、a御髪(みぐし)おろし給ひて、ところどころ山踏みし給ひて行ひ給ひけり。備前の掾(ぜう)にて橘良利といひける人、内にbおはしましけるとき、c殿上にさぶらひける、御髪(みぐし)おろし給ひければ、やがて御ともにdかしらおろしてけり。(大和物語) 
注 山踏み…(ある目的をもって)山を歩くこと。   掾…補佐官
      a[    ] b[    ] c[    ] d[     ] 
問題演習2
傍線部の敬語の種類と敬意の方向を答えよう。
蝶めづる姫君の住み給ふかたはらに、按察使(あぜち)の大納言の御むすめ、心にくくなべてならぬさまに、親たちかしづき給ふことかぎりなし。(堤中納言物語)
敬語の種類【    】  【         】から【       】に対する敬意

問題演習3
次の傍線部の敬語の種類はa―尊敬語、b―謙譲語、c―丁寧語のどれか。記号で答えなさい。また、誰の誰に対する敬意かをも書きなさい。なお、訳の文の敬語をチェックするのも良い勉強になる。


 中納言(=隆家)(が中宮さまの前に)①まゐりたまひて、御扇③たてまつらせたまふに、〈中納言〉「隆家こそ、いみじき骨は得て④はべれ。それを張らせて、進らせむとするに、おぼろけの紙は、得張るまじければ、求めはべるなり」と申し⑤たまふ。〈中宮〉「いかやぅ

にかある」と、問ひ⑥きこえさせたまへば、「すべて、いみじうはべり。『さらにまだ見ぬ、骨のさまなり』となむ、人々申す。まことに、

かばかりのは見えざりつ」と、言高く⑧のたまへば、〈清少納言〉「さては、扇のにはあらで、海月のななり」

と⑨きこゆれば、「これは、隆家が言にしてむ」とて、笑ひ⑩たまふ

〈番号〉< 種 類 〉 〈 誰  の  〉 〈  誰 に 対 す る  〉
 ①  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ②  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ③  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ④  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ⑤  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ⑥  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ⑦  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ⑧  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ⑨  〈  〉  〈         〉〈             〉
 ⑩  〈  〉  〈         〉〈             〉







問題1解答
a帝 b帝(おはす=尊敬 「おはします」がは「おはす」より敬意が上)
c橘良利(謙譲語・さぶらふ=お仕え申し上げる) d橘良利(常体=無敬語)

その他の重要単語
御髪(みぐし)おろす…出家する   行ふ…仏道修行する  掾…補佐官  内…宮中。内裏。 やがて…そのまま、すぐに
かしらおろす…出家する


問題演習2解答
尊敬語・作者の親たちへの敬意

その他の重要単語
   めづ…かわいがる 心にくし…奥ゆかしい
   なべて…一般に・普通に  かしづく…大事に育てる

問題演習3訳文

中納言隆家様が中宮様の前に参上なさって、(中宮様に)扇をさし上げなさると、
「私隆家はまことに素晴らしい骨を手に入れましたよ。それを張らせてさし上げようと存じますが、いいかげんな紙はこの骨には張られまいと存じますので、いい紙を探しているところです」
と、申しあげなさる。そこで中宮様が、「それはどのような骨ですか」とお尋ね申しあげなさると、隆家様が、
「何から何まで素晴らしいものです。『今まで、一向に見たことのない骨の様子である』と、人々が申します。本当に、これほど素晴らしいものは、まだ見たことがありませんでした」
と声高くおっしゃったので、私が、「それでは扇の骨ではなくて、海月(クラゲ)の骨みたいですね」と申し上げたところ、隆家様は、「これは私が言った言葉にしておこう」と言われて、お笑いになる。


問題演習3解答
〈番号〉〈 種 類 〉〈     誰  の     〉〈  誰 に 対 す る  〉
 ①  〈 b 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中宮            〉
 ②  〈 a 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中納言(隆家)       〉
 ③  〈 b 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中宮            〉
 ④  〈 c 〉〈       中納言(隆家)   〉〈   中宮            〉
 ⑤  〈 a 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中納言(隆家)       〉
 ⑥  〈 b 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中納言(隆家)       〉
 ⑦  〈 a 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中宮            〉
 ⑧  〈 a 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中納言(隆家)       〉
 ⑨  〈 b 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中納言(隆家)       〉
 ⑩  〈 a 〉〈       作者(清少納言)  〉〈   中納言(隆家)    〉


★イマイチできなかった人には以下の記事が有効だと思われます。

ご参考までに。

『古文の敬語、その前に』

『敬語のレジュメ』

 

 


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