国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

中高生のための内田樹(さま) その20

2018-10-12 12:53:50 | 中高生のための内田樹(さま)
●この企画も20まで進んだ。正直ここまで続くとは思えなかった。

 なんと昨日に限って言えば

①マジックコイン新型Professional500(Byトリッ...
②マジックのリハビリと日記22
③中高生のための内田樹(さま) その18
➃小論文入門
⑤恩師
⑥中高生のための内田樹(さま) その19
⑦中高生のための内田樹(さま) その14
⑧マニアックな替え歌
⑨中高生のための内田樹(さま) その16
⑩中高生のための内田樹(さま) その12

とまあ、このブログの人気記事の上位10個のうち5個が内田樹氏の記事なのだ。

どこかの先生が勧めてくれたのか、夏目漱石検索組が少しは他の記事も読んでみようかと思ってくれたのかは知らないが嬉しいことである。

●回数的にも「作文参考書 陸軍予科士官学校」を抜くとはね。

●で、だ。

20回を記念して紹介したい本があるのだ。それはちくまプリマー新書の『先生はえらい』である。ちくまプリマー新書は中高生向き(本当は大人にも読みごたえがある本が多いんけどね)に書かれている本なのである。ウチのブログのコンセプトにぴったりの本なのである。

●題名からして誤解されやすいが、単純に「先生はえらい」と言っているわけではない。

待てぇ、内田樹(待てぇ、ルパン風に)

この本は君たちを違う次元に持っていく本である。そうそうたやすく「先生はえらい」に行きつく本ではない。

目次の一部を見ると

 「恋愛と学び」
 「なんでも根源的に考える」
 「前未来形で語られる過去」
 「うなぎ」
 「沈黙交易」
 「誤読する自由」
 「沓(くつ)を落とす人」

などがある。


どう? 行く先が見えない感じがしない? 

「沈黙交易」なんて初めて見た。どういう言葉なんだ? 「前未来形?」「うなぎ?」とか思うでしょ。
 

(ついでに言っておくと交易として「日本書紀の斉明天皇6年(660年)」と「天照大神と須佐之男命の誓約」を沈黙交易としてテーマに料理できないかと大学4年生のころ考えていたのだ。周りがとめたからやめたけど。デジャブがした人は偉い! ここ似たようなことが書いてあるな)


内田樹氏の設定した道筋を追えれば君も立派な探偵読者である。

否定の嵐

この本は否定から入ることが多い。そしてなぞ解きをするというパターンが多い。

それは読者の常識を否定してから教えるということなのである。

「第一に『いい先生』というのはみなさんが出会う前にあらかじめ存在するものではないからです(9頁)」
「『誰もが尊敬できる先生』なんて存在しません(13頁)」
「コミュニケーションでは意思の疎通が簡単に成就しないように、いろいろ仕掛けがしてある、ということです(107頁)」
「『どうしてこんな作品ができたのかわからない』という自分自身の創造工程に対する『無知』が失われてしまうからです(141頁)
「私たちが敬意を抱くのは『生徒に有用な知見を伝える先生』でも『生徒の人権を尊重する先生』でも『政治的に正しい意見を言う先生』でもありません」(142頁)」

 否定から入っての魅力的な展開を楽しんでほしい。

内田樹ってかっこいい!

決め台詞のような言葉もある。例えば

「その(『世間』からの否定的評価という)前提がなければ、じつは恋愛も師弟関係も始まらないのです。『自分がいなければ、あなたの真価を理解する人はいなくなる』という前提から導かれるのは、次のことばです。
 だからわたしは生きなければならない(35頁)」

 な。かっこいいでしょ。

「『よい文章』というのは、誤読する自由、誤解する権利を読み手に確保してくれる文章の方なのです(134頁)」

 こんな言葉そうそう国語の先生じゃ言えませんぜ(誤読についてはおいらもこのリンク先で少々触れている。)


落語+推理小説という魅力

 かなり『先生はえらい』から引用したが、読んでいくと衝撃のラストが待っている。

 すくなくとも私はそう思った。

 「先生はえらい」という謎を丹念に追っていくと必然的にオチがつくのだ。

 だから、少々難しく思っても少しづつじっくりと読んで最後の3行を味わってほしいのだ。

 今回の記事もこの本に挑戦する人にとっての灯台みたいになればと願って書いた。

●ぜひ中高生は購入して読んでほしい。

 大人でも滅多に味わえない知的興奮をあじわえるぞ。




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