ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

雲ちゞれ

2018-01-31 03:06:04 | 資料

雲ちゞれつめたくひかるうすれ日をちがやすがるゝ丘にきたりぬ    宮沢賢治


また賢治に興味を持ってみた。

賢治のことばは清らかに感覚に突き刺さる。

作者が鮮烈に感じている自然の命が読むと自分の感覚にも勢いよくそそぎこんでくる。

うまいを通り越して、すごい。

いつものように自分の歌を歌うのに、怯えを感じるのはこの人くらいだ。


ゆふさりてたなびきわたるあかねぐもひかりはおちてとほやまに染む    揺之






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黒い帽子

2018-01-30 03:05:35 | 絵画


ジュリアン・オルデン・ウィアー(1852-1919)、アメリカ。


帽子には心を隠す効果があるものか。

女の表情には、何かを隠したいと思っている風がある。

心を隠したいと思う心には二種類ある。

見られたくないというものと。

知られたくないというものと。


からころもたもとの玉をさぐりつつまなこにいづるこひやくるしき    揺之






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まひまひが

2018-01-29 03:05:37 | 添削

まひまひが仮眠してゐるひるさがり葉影にすももゆつくり太る    上村典子


「まひまひ」は「まいまい」だろう。「まい」は「まき(巻き)」のイ音便のはずだ。

イ音便やウ音便は間違いやすいので注意したい。

本人の作品とは思えない。情感が本霊とはずれている。

おそらく他霊の作品である。こういうことはもうだれにもわかる。

仮眠は夏眠だろうか。

ちょっとしたことだが、こういうところに教養の薄さが出る。


かたつぶりたまをつむごと手にとりて眠りの夏の夢をこそきけ    揺之






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海人の刈る藻に住む虫のわれからと音をこそ泣かめ世をば恨みじ

2018-01-28 03:05:49 | 古今抜粋

海人の刈る藻に住む虫のわれからと音をこそ泣かめ世をば恨みじ    藤原直子


序詞の秀逸な例であるが、技術よりも作者の切なさを強く感じる。

恋がかなわぬのは自分のせいなのだ。世間のせいなのではない。

恋してはならぬ人を恋する自分が悪いのだ。

「われから(割殻)」というのは海藻に住む下等なエビ類なのだそうだが、そのようにとるにたらないようなものとも、自分が思えるのだろう。


刈菰の乱れ散りなむこひ衣われからたたむたへがたくとも    揺之






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都会の夏の夜

2018-01-27 03:05:38 | 資料


また中也に興味を持った。


 
月は空にメダルのように、
街角に建物はオルガンのように、
遊び疲れた男どち唱いながらに帰ってゆく。  
――イカムネ・カラアがまがっている――

その脣は胠ききって
その心は何か悲しい。
頭が暗い土塊になって、
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。

商用のことや祖先のことや
忘れているというではないが、
都会の夏の夜の更――

死んだ火薬と深くして
眼に外燈の滲みいれば
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。



飼いならされた男というのは悲しい。

荒ぶる心を鼠のように丸めて心の奥に押し込み、
羊のように生きていかねばならない。

いずれ何か暗いものに食われていくのがわかっていながら何もできない。

男になれないのではない。なろうとしないのだ。

堕落になれきった人間は、終末願望を歌いながら、文明の与える刹那の愉楽にいつまでも浸っている。


政治家が悪いといひて飲む酒にやらぬ男は腐りゆくかな    揺之






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晴天なれば

2018-01-26 03:05:52 | 添削

しかたなく洗面器に水をはりている今日もむごたらしき晴天なれば    花山多佳子


盗作臭い。

むごたらしい晴天というものがどういうものか、歌人にわかっているとは思えない。

それらあきれるほど長い年月の徒労を味わわねばわからない情感だ。


晴渡る空の青さは物質のごとくさしぬる徒労の水を    揺之






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大空の月の光し清ければ影見し水ぞ先づこほりける

2018-01-25 03:05:40 | 古今抜粋

大空の月の光し清ければ影見し水ぞ先づこほりける    よみ人しらず


古い時代においては夜に明るいものといえば月だけだった。

ゆえにそれを見る時の感性は否が応でも磨かれた。

一筋の影も漏らさないほど見つめたものだ。

その月の光があまりに清らかなので、それを見た水がまず凍りつくほどなのだと。

詠み手は素直に感じたことを詠んだのである。

夜を照らす明るい月の景色が見えるようでもある。


おほぞらにかかる月夜も群雲のかかるまなこは見てもかからず   揺之





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ならずものの

2018-01-24 03:06:35 | 添削

ならずものの大国の辺に寄りそへる三等国日本のつくつくほふし    馬場あき子


岩田正の夫人だそうだ。夫よりは若干ましに見える。

だがこういう自虐を装った呪いは好きではない。

国を愛さない国民はどこかに嫌な矛盾をはらんでいる。

言論の自由を角のように立てて、何か気高いものを装いながら、獣的な欲望をごまかしているようである。


国負けてはひつくばりし土を噛む真夏の闇の蝉時雨かな    揺之






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浮浪児は

2018-01-23 03:05:49 | 添削

日本人われをさげすみ浮浪児は物をねだると米兵に寄る    岩田正


盗作っぽい。

だがなにがしかの救いがあるのは、本人がそれを悔いているからだ。おそらく。

われをさげすみ、という句に本人の心が出ている。

意趣は分かるが、もう少し整理するべきである。


敷島のやまとごころも敗れては敵にも媚ぶる戦後も去りぬ    揺之






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脱ぎ捨てた

2018-01-22 03:05:41 | 添削

脱ぎ捨てた服のかたちに疲れても俺が求めるお前にはなるな    奥田亡羊


盗作臭い。

霊的盗作かとも思うが、そうでもない感じがする。

おそらく原作がある。それをなんとなく詠み変えたものではないか。

本人の情感と歌の意趣が妙にずれている。

命令形は使い方によっては読む者の気持ちを逆なでする。




いつはりの羊の皮を脱ぎ捨ててこれがきのふのおれかともみる    揺之






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