浜をゆき胸のうれひをかみしめてこひしき人の幻をおふ

浜をゆき胸のうれひをかみしめてこひしき人の幻をおふ

悲しみのただよふ風にひたりゐてもとむるものは明日の光

悲しみのただよふ風にひたりゐてもとむるものは明日の光　　　　揺之

花を折り君の心を苦しめて過ぎて帰らぬわれをぞ恥づる

花を折り君の心を苦しめて過ぎて帰らぬわれをぞ恥づる　　　　揺之

野の道を花をめでつつそぞろゆけば彼方に君の袖ふるを見る

野の道を花をめでつつそぞろゆけば彼方に君の袖ふるを見る　　　　揺之

すみのぼる月をあふぎてむらきもの心にけむるうれひを消しぬ

すみのぼる月をあふぎてむらきもの心にけむるうれひを消しぬ　　　　揺之

降りやまぬ時雨の野にはてんてんとちひさき花の灯りてうたふ

降りやまぬ時雨の野にはてんてんとちひさき花の灯りてうたふ　　　　揺之

再びとあへぬ人をぞ思ひつつ木陰の道をひとりゆきけり

再びとあへぬ人をぞ思ひつつ木陰の道をひとりゆきけり　　　　揺之

わたつみの彼方に月はのぼりきてしづかに影の身にしみとほる

わたつみの彼方に月はのぼりきてしづかに影の身にしみとほる　　　　揺之

高光る日を眺めつつ君思ふ我が身のうちに凝るさみしさ

高光る日を眺めつつ君思ふ我が身のうちに凝るさみしさ　　　　揺之

野道ゆき逃ぐる心を押しとどめ君の心をとはむとぞする

野道ゆき逃ぐる心を押しとどめ君の心をとはむとぞする　　　　揺之