虫けらといはるるものもつまもとめ花のまはりをまよふものかな

虫けらといはるるものもつまもとめ花のまはりをまよふものかな　　　　揺之

世の中ははやりやまひのころならばやどにこもりてうたをうたはむ

世の中ははやりやまひのころならばやどにこもりてうたをうたはむ　　　　揺之

木漏れ日のふるふ根元にやすらひてとぢしまなこに君を見る夢

木漏れ日のふるふ根元にやすらひてとぢしまなこに君を見る夢　　　　揺之

ゆふぐれに悲しきことを思ひ出しおのれのための珈琲をくむ

ゆふぐれに悲しきことを思ひ出しおのれのための珈琲をくむ　　　　揺之

咲きわたる花のさなかに身を捨てて思ふ心を散り消さむとす

咲きわたる花のさなかに身を捨てて思ふ心を散り消さむとす　　　　揺之

振り捨ててゆきし思ひをまたひろひかなしくあふぐゆふぞらの月

振り捨ててゆきし思ひをまたひろひかなしくあふぐゆふぞらの月　　　　揺之

野にあそび花をつみては君思ひ空飛ぶ鳥の声とほくきく

野にあそび花をつみては君思ひ空飛ぶ鳥の声とほくきく　　　　揺之

目を伏せていはぬことばをかみしめて窓辺によりて月影を浴む

目を伏せていはぬことばをかみしめて窓辺によりて月影を浴む　　　　揺之

ほたるびのはかなきかげに手をのべてひとのこころをいかに知るやと

ほたるびのはかなきかげに手をのべてひとのこころをいかに知るやと　　　　揺之

ゆふかげの花を星ともあやしみてあひたき人の名をささやきぬ

ゆふかげの花を星ともあやしみてあひたき人の名をささやきぬ　　　　揺之