月ねぶる岩戸の窓に玉を投げ夢の中にもとどけとねがふ

月ねぶる岩戸の窓に玉を投げ夢の中にもとどけとねがふ　　　　揺之

夏葛の絶えぬ涙のもとたぐり胸にせつなき君への思ひ

夏葛の絶えぬ涙のもとたぐり胸にせつなき君への思ひ　　　　揺之

高空を飛ぶ鳥のごととほきゆく君の背をおふわが心かな

高空を飛ぶ鳥のごととほきゆく君の背をおふわが心かな　　　　揺之

竹林をあふぐまなこに光ふり風はとほりてひめごと語る

竹林をあふぐまなこに光ふり風はとほりてひめごと語る　　　　揺之

野に結ぶあまたの露に光入り昼にやすらふ星かとも見る

野に結ぶあまたの露に光入り昼にやすらふ星かとも見る　　　　揺之

かしのみのひとり野をゆく君をおひともにゆかむとならびたりけり

かしのみのひとり野をゆく君をおひともにゆかむとならびたりけり　　　　揺之

なづなぐさうれひなきかとたづぬれば風にかすかに露を落とせり

なづなぐさうれひなきかとたづぬれば風にかすかに露を落とせり　　　　揺之

とこしへの神のちぎりを身に浴びてけふもおのれをますぐにも生く

とこしへの神のちぎりを身に浴びてけふもおのれをますぐにも生く　　　　揺之

細道をひとりゆきつつ振り向けばあやしく赤きゆふぐれの月

細道をひとりゆきつつ振り向けばあやしく赤きゆふぐれの月　　　　揺之

とほき日のあやまちを悔いあをぞらを流るる雲に頭を下げしかな

とほき日のあやまちを悔いあをぞらを流るる雲に頭を下げしかな　　　　揺之