獅子のごと吠えむとはして沈黙の歯にとぢこめるけふのいらだち

獅子のごと吠えむとはして沈黙の歯にとぢこめるけふのいらだち　　　　揺之

ゆびひとつおるがんをひく音たちてひとりゐる身の小部屋の寒さ

ゆびひとつおるがんをひく音たちてひとりゐる身の小部屋の寒さ　　　　揺之

われとしる思想はるかに空わたりかもめのあとをおふ夢を見る

われとしる思想はるかに空わたりかもめのあとをおふ夢を見る　　　　揺之

拷問のごときおのれの顔を見て身を知れとこそ厳かにいへ

拷問のごときおのれの顔を見て身を知れとこそ厳かにいへ　　　　揺之

明けぬればまたさいはひもたちのぼるけふのうれひをまろめつつゑむ

明けぬればまたさいはひもたちのぼるけふのうれひをまろめつつゑむ　　　　揺之

ぬばたまのやみにも明日をかみしめてとぢしまなこにかふ夢の猫

ぬばたまのやみにも明日をかみしめてとぢしまなこにかふ夢の猫　　　　揺之

たはぶれをねこになとひそうれひせぬもののこころはひとりのおのれ

たはぶれをねこになとひそうれひせぬもののこころはひとりのおのれ　　　　揺之

ありとてもなきがごときといひぬればよしとばかりにあくびをしけり

ありとてもなきがごときといひぬればよしとばかりにあくびをしけり　　　　揺之

まろき猫うれひなきかととひぬればかためをつぶりないとなきけり

まろき猫うれひなきかととひぬればかためをつぶりないとなきけり　　　　揺之

あした知る夢のさきをぞかみしめてけふかさねゆくちひさきおのれ

あした知る夢のさきをぞかみしめてけふかさねゆくちひさきおのれ　　　　揺之