花いばらふれて流るるひとすぢの赤き血をなめ忘る恋かな

花いばらふれて流るるひとすぢの赤き血をなめ忘る恋かな　　　　揺之

野の花と君のかたへをとほりすぎ思ひなほしてかへるもならず

野の花と君のかたへをとほりすぎ思ひなほしてかへるもならず　　　　揺之

ゆれまどふ浮世の常は常としてかはらぬものは人のかなしさ

ゆれまどふ浮世の常は常としてかはらぬものは人のかなしさ　　　　揺之

さゆり花ゆりをちかひし人は去りひとり野に伏し見る昼の月

さゆり花ゆりをちかひし人は去りひとり野に伏し見る昼の月　　　　揺之

たまゆらのこひとしりつつ身をかけて君を思ひし人ぞかなしき

たまゆらのこひとしりつつ身をかけて君を思ひし人ぞかなしき　　　　揺之

君去りて後に思ひを重ねては花をとひつつ人をさがしき

君去りて後に思ひを重ねては花をとひつつ人をさがしき　　　　揺之

ねころびてひとり見る空青深みいづれともなくすはるる心

ねころびてひとり見る空青深みいづれともなくすはるる心　　　　揺之

花さうび言ひたきことをとぢこめていついはりの世におのれを折らず

花さうび言ひたきことをとぢこめていつはりの世におのれを折らず　　　　揺之

あまのかは岸辺に生ふる花をつみこひしき人のおとづれをまつ

あまのかは岸辺に生ふる花をつみこひしき人のおとづれをまつ　　　　揺之

松の実の落ちてをさなの玉となり糸を結びて根付となしぬ

松の実の落ちてをさなの玉となり糸を結びて根付となしぬ　　　　揺之