おひゆけばきみのゆめにもとどかむと山端にしづむ月をあふげり

おひゆけばきみのゆめにもとどかむと山端にしづむ月をあふげり　　　　揺之

夢やぶれとほき山路をこえぬればやがてみゆらむなつかしき庭

夢やぶれとほき山路をこえぬればやがてみゆらむなつかしき庭　　　　揺之

えにしこき親のをしへの胸にしみたがふおのれの恋路くやしき

えにしこき親のをしへの胸にしみたがふおのれの恋路くやしき　　　　揺之

いひよどむ君のまなこを染む花にことをよせつつたをりてしかな

いひよどむ君のまなこを染む花にことをよせつつたをりてしかな　　　　揺之

すみそめのゆふべにちかふひとつ星見る君の目のこころをとひぬ

すみそめのゆふべにちかふひとつ星見る君の目のこころをとひぬ　　　　揺之

ゆく秋の風は小窓に吹き寄せてなげきを呼びぬ灰色の空

ゆく秋の風は小窓に吹き寄せてなげきを呼びぬ灰色の空　　　　揺之

たまづさのつかひ夜明けにたづねきて冬のけはひをかたりそめたり

たまづさのつかひ夜明けにたづねきて冬のけはひをかたりそめたり　　　　揺之

いざよひの月を見上げて我を知る人はありやととひし夜半かな

いざよひの月を見上げて我を知る人はありやととひし夜半かな　　　　揺之

秋の野にあわだち草の黄は栄えからすひとりで鳴きすぎゆきぬ

秋の野にあわだち草の黄は栄えからすひとりで鳴きすぎゆきぬ　　　　揺之

てふ老いて紙のごとくにまひ落ちて深き秋ゆく野辺の静けさ

てふ老いて紙のごとくにまひ落ちて深き秋ゆく野辺の静けさ　　　　揺之