まつのみのこひと知りつつたそかれの山をまよひて人の名を呼ぶ

まつのみのこひと知りつつたそかれの山をまよひて人の名を呼ぶ　　　　揺之

ひむがしの空に明るき月は照りけふのうれひをしづかにのごふ

ひむがしの空に明るき月は照りけふのうれひをしづかにのごふ　　　　揺之

花を踏み野を荒らしては悔いもせぬ人に落ち来るかなしみの空

花を踏み野を荒らしては悔いもせぬ人に落ち来るかなしみの空　　　　揺之

人の世にくすしき夢を落としつつはるけき空をめぐりゆく月

人の世にくすしき夢を落としつつはるけき空をめぐりゆく月　　　　揺之

わすられぬこひの思ひを石にこめとほき水辺に投げ捨てむとす

わすられぬこひの思ひを石にこめとほき水辺に投げ捨てむとす　　　　揺之

いたづらになししことをぞ悔やみつつけふゆく道におのれをただす

いたづらになししことをぞ悔やみつつけふゆく道におのれをただす　　　　揺之

あをき野にひとり立つ身に風は吹ききのふの夢を流し去りゆく

あをき野にひとり立つ身に風は吹ききのふの夢を流し去りゆく　　　　揺之

ゆきくれて道をうしなひまよふ身をしづかに照らす夏の夜の月

ゆきくれて道をうしなひまよふ身をしづかに照らす夏の夜の月　　　　揺之

とほやまにかたぶく月をながめつつ昔のこひの痛みを思ふ

とほやまにかたぶく月をながめつつ昔のこひの痛みを思ふ　　　　揺之

黒髪の長きを指にからめては薄くほほゑむ君の悲しさ

黒髪の長きを指にからめては薄くほほゑむ君の悲しさ　　　　揺之