山登り・里歩きの記

主に関西地方を中心とした山登り、史跡巡りの紹介。要は”おっさんの暇つぶしの記”でんナァ!。

三輪山と「山の辺の道」(その3)

2014年03月14日 | 寺院・旧跡を訪ねて

 磯城珠城宮跡・纒向日代宮跡  



JR桜井線の踏み切りを渡り、山裾の「山の辺の道」を目指して東へ進む。広々とした田園地帯の中、道端に「垂仁天皇纒向磯城珠城宮(すいにんてんのう・まきむくのしきたまきのみや、玉垣宮)跡」の石柱と案内板だけが置かれている。それ以外に宮殿跡と思われる痕跡は何もありません。第十一代垂仁天皇は、第十代崇神天皇の第3皇子にあたり、ヤマトタケルの祖父でもある。さらに東へ行くと、これも石柱と案内板だけですが「景行天皇纒向日代(まきむくひしろ)宮跡」があります。

神話・伝承の多い天皇の中、第十代崇神天皇を大和朝廷を開いた初代天皇だ、という考え方が現在では有力です。崇神~垂仁~景行と三代続く天皇が、この周辺に宮殿を設け、また葬られている。やはり「山の辺の道」のここ纒向を中心とした一帯こそ大和朝廷、即ち日本の国の始まりの地と言っていいかもしれない。

 相撲発祥の地とされる「相撲神社」  


宮殿跡からさらに山裾に入っていくと、穴師坐兵主神社(あなしにいますひょうず)の手前に相撲発祥の地とされる「相撲神社」があります。神社といっても石の鳥居と土俵らしきものがあるだけです。
相撲発祥の由来伝承は・・・
「日本書紀・垂仁紀」に、垂仁天皇は纒向に本拠をおく倭氏の祖先になる長尾市(ながおいち)に命じ、出雲国の勇士・野見宿禰(のみのすくね)を呼んで来させ、当時大和に豪腕として名を轟かせ葛城の地に住んでいた当麻蹴速(たいまのけはや)と力競べをさせた。天皇の前で相撲を取る天覧相撲の最初です。力でねじ伏せた野見宿禰に、天皇は褒美として当麻蹴速が持っていた大和国当麻の地を与えた。その後、野見宿禰は朝廷に末永く仕えたそうです。

 渋谷向山古墳(景行天皇陵)と行燈山古墳(崇神天皇陵)  


「山の辺の道」を北上していくと幾つか大きな前方後円墳に出会う。これらは地名から「柳本古墳群(やなぎもとこふんぐん)」と呼ばれ、三世紀末から四世紀の古墳時代前期の古墳です。まず最初に出会うのが「渋谷向山古墳(しぶたにむかいやま、景行天皇陵)」(写真上)。全長300m、周濠が1キロの巨大古墳で、大和地方では見瀬丸山古墳に次いで二番目、全国でも七番目の大きさです。周囲は池や鉄柵で囲われ、宮内庁管理の立ち入り禁止地。この古墳は、古事記に「御陵は山邊の道上にあり」という記述があり、第十二代景行天皇の陵墓「山邊道上陵(やまのべのみちのえのみささぎ)」と比定されている。

ミカン畑やイチゴ園、柿畑の間をさらに北へ行くと、「行燈山古墳(あんどんやま、崇神天皇陵)」が佇む(写真下)。全長242mの墳丘と周濠からなる三世紀後半から四世紀初頭の、典型的な初期巨大前方後円墳。
現在この古墳も宮内庁によって、第十代崇神天皇の墓「山邊道勾岡上陵(やまのべのみちのまがりのおかのえのみささぎ)」とされている。大和朝廷の実質的な創始者とも言われる天皇さんの墓所だけあり、これまで見てきた中で一番金かけ整備されている。正面階段を登ると、玉砂利が敷き詰められた前庭があり、その正面で厳めしい構えの扉が睨みつけている。近寄りがたし!、恐る恐る近寄ってみると、扉の向こうは綺麗な水をたたえた広いお堀(周濠)になっていて、なお近寄りがたし。はるか遠くから遥拝するようになっている。

かっては、ここ行燈山古墳が第十二代景行天皇の陵で、渋谷向山古墳が第十代崇神天皇陵とされていた。ところが江戸時代末に「文久の修陵」と呼ばれる大規模な天皇陵の修復が行われた(1861-1866年)。その際に二つの陵墓比定の取り替えが行われ、現在のように行燈山古墳を崇神陵、渋谷向山古墳を景行陵と変更されたようです。変更の理由は明らかにされていない。しかし現在、考古学的には築造時期が渋谷向山古墳のほうが少し古いとされている。天皇の年代と古墳の築造時期が逆で合わないのです。その上、渋谷向山古墳と比較して、行燈山古墳のほうが一回り小さい。だから比定変更以前のほうが正しかった可能性が強い。宮内庁による天皇陵指定のいい加減さの好例です。

宮内庁「天皇陵」公式ページは陵墓名と所在地を記すのみで、どうして陵墓と比定したのか、一言も触れていない。なんとそっけないページだことか、ボロが出るのを恐れられているのでしょう。これ以上の内容を公表したら「天皇家の静安と尊厳」を損なうことになるんでしょうネ。


詳しくはホームページ

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