こばさん

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10.15の奇跡(終章)

2005-12-25 12:06:31 | 10.15の奇跡
そして、来季へ・・・



10月17日プレーオフ第5戦、結局私たちは敗れ去りました。どちらが勝ってもおかしくなかった試合、たった1球が勝敗を分けました。「優勝を逃した」という結果だけを見れば、第3戦に敗れていても同じことでした。しかし私たちは劇的な勝利を収めました。敗北を2日先に延ばしました。だからこそ思うのです。この試合の持つ意味は何なのかと。

この試合最大のポイントは、9回裏ツーアウト二三塁、3対4、バッター松中の場面でした。松中と勝負するか、それとも歩かせるか。このときホークスファンの誰もが、松中が打つ姿を想像していたはずです。それゆえマリーンズが勝負を避けたときに、ブーイングを浴びせました。物を投げ入れました。復活を遂げるチャンスを得たのをふいにされたことに怒りをぶつけました。

しかしそんな中で一人冷静だったのが、松中本人でした。第7章でも書きましたが、投げ込まれた物を拾いに行くときの松中の顔が見えました。勝つか負けるか究極の場面で、本当に落ち着き払った表情をしていました。もし勝負していれば絶対に打っていたと今でも確信しています。

ですが、あのとき松中の胸の内にあったのは、全く別のことだったと思います。それは、次のバッターであるズレータに対する信頼です。自分のバットで結着をつける必要はない、チームが勝つために自分がとるべき道―それは歩くこと、必ずズレータが打ってくれる・・・おそらく、そんなことを考えていたのだと思います。そして自らは静かに歩きました。それが、その後の押し出しフォアボールを生みました。翌第4戦でも松中は、ズレータの逆転ホームランを呼び込むフォアボールを選んでいます。自分が打つのではなくつなぎに徹した、そのことが二つの勝利に結びつきました。

第1戦、第2戦、そしてこの第3戦8回まで、チームはバラバラでした。チャンスはつくってもタイムリーが出ない、ソロホームランでしか得点できない・・・しかしこの試合は、1本のホームランもなく、しかも主砲ではない選手がつないで得点を上げました。最後の最後で、チームは一つにまとまったのです。もしこの試合あのまま負けていれば、単に優勝を逃すだけでなく、来年につながるものは何もない状態でした。来年のシーズン1位そして優勝はなかったでしょう。しかし奇跡の勝利によって、失いかけていたチームの結束力を再び取り戻すことができたのです。

ファンにとっても同様です。8回裏が終了したとき、多くの罵声が飛びました。多くの人が席を立ちました。そのまま終わっていれば、ホークスは多くのファンを失っていたことでしょう。しかしあの勝利によって、このチームを信じようという気持ちに再びなれたのです。

上の写真、クレーム覚悟で使用しているのですが、これを見ればよく分かります。この日の勝利は、誰か一人の力によるものではありません。殊勲打を放った川を中心に、選手とファンが一つになってつかんだ勝利でした。

「絶対にあきらめない」―これは第4戦のヒーローインタビューでズレータが私たちに送ってくれたメッセージです。あきらめない、よく使う言葉です。しかし私たちは簡単にあきらめてしまいます。だからこそ、あきらめない気持ちを形で見せてくれたホークスというチームに、感謝するばかりです。

このシリーズを書いている最中に、仰木彬さんが亡くなられました。西鉄の3連敗からの4連勝、10.19、ブライアントの4連発、野茂、イチロー、神戸・・・仰木さんの命が尽きても、仰木さんの残した遺産は、今も、そしてこれからも永遠に生き続けます。生き続けさせることが、仰木さんから感動をもらった私たちの義務でもあります。

そしてこの10.15。私たちがホークスから贈られたもの、これをしっかりと受け継いでいかなくてはなりません。それが、あのときあの場で感動をもらった者の責務です。10.15― 一生忘れません。

最後になりましたが、このシリーズを読んでくださった皆さん、ありがとうございました。本当は2,3回で終わらせるつもりでしたが、つい力が入り、このような長編ものになってしまいました。冗長な箇所や個人的な感情に走りすぎている箇所がありましたことをお詫びいたします。また、コメントをくださった皆さん、本当にありがとうございました。書き続ける励みになりました。こんなブログでよろしければ、これからも御愛好ください。

この拙文が、10.15を皆さんの記憶に留めるきっかけになれば、幸いです。



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
松ちゃんの (どどんぱ)
2005-12-25 19:38:53
こばさん、私はこのPOでの松ちゃんの姿にとても感動しました。

松ちゃんは自分の不振とも戦っていましたが、なによりチームのために戦ってくれました。

そこがねー、泣かせるんですよ。

5戦目の松ちゃんの初ヒットのへの、ホークスファンの感動は、ここを見てるからじゃないでしょうか?
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こばさん、ありがとうございました。 (きー坊)
2005-12-25 21:36:23
やはり終章がありましたね・・・。^^

僕も同じ気持ちですよ。10.15の感動は絶対忘れられないもので、ホークスの野球史に永遠に生き続けていくでしょう。



本当にお疲れさまでした。
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どどんぱさんへ (こば)
2005-12-26 00:46:55
どどんぱさん、どうもありがとうございました。

このプレーオフは、ある意味松中の戦いの場でもありましたね。マリーンズとの、それ以上に自分自身との戦い。結果は、来シーズンに出るのではないかと思います。来年の松中が早くも楽しみです。さらに強くなった松中を見たいものです。
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きー坊さんへ (こば)
2005-12-26 00:57:25
きー坊さん、こちらこそありがとうございました。

はい、ありました。。

僕もこの試合は一生忘れられません。この試合でたくさんのことを学びました。それを活かして生きていくことが、感動をもらったことに対するお返しでしょう。感謝の気持ちでいっぱいです。

これから観戦するときも、この試合のことを忘れないようにしないといけませんね。
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Unknown (国王)
2005-12-26 01:01:31
はあ~っ・・・ずっと読んでて感動しちゃった・・・。こんなコメントじゃダメかな?(笑)

それにしても、プレーとは関係ないかもしれないけど、9回裏に投げ込まれたものを落ち着いて拾いに行く松中の姿って、なぜか強烈に印象に残っています。
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国王さんへ (こば)
2005-12-26 01:14:57
国王さんも、どうもありがとうございました。

いえいえ、そう言っていただけるだけで感謝しています。

僕もあのときの松中の姿、目、表情、まだ記憶に残っていますよ。本当に落ち着き払っていました。勝負していたら、絶対に打ったと思いますよ。でも、打たなくても相手を追い詰められるのが、真の4番なんでしょうね。
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こんばんは (ハリー)
2005-12-27 01:01:29
お久しぶりです!あの日の私のブログにコメントいただきましたよね。一つ一つのプレーを振り返っていただいて、私もまた感動がよみがえりました。

松中へのフォアボール。私はあの時、横で「ひどいやん!」と怒る娘に「いいと。信彦を歩かせた時点で小林は負けとるんやけ。これでいいと。信彦はバットを振らんでも点入れるけ、見とき!」と言いました。

松中はどんなに打てなくても、その存在感だけで点を入れる、ホークスの真の4番なのだと思いました。

この試合は多分、一生自分の中に残る一戦です。こばさん!お疲れさまでした!!ありがとうございました!!
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ハリーさんへ (こば)
2005-12-27 01:31:25
ハリーさん、お久しぶりです!ハリーさんのお越しもあのとき以来で。

さすがハリーさん!予言通りで。。あの敬遠は、もうその時点で勝負あった、って感じでしたね。どんなに調子が悪くても、王さんが4番から外さないのも、そんなところからなんでしょうね。彼の貫禄が、ホークスを勝利に導いてくれました。

こちらこそ、ありがとうございます。僕も一生忘れません。いい思い出です。
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