こばさん

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10.15の奇跡(第1章)

2005-12-07 13:47:04 | 10.15の奇跡
静かに幕が上がる。



12:55博多駅着。到着してすぐに思ったこと―「一体ここまで何をしに来たのだろう」。持っていたチケットは、第3戦と第4戦。第4戦までに決着がつくと読んでいた。もちろんホークスの優勝で。それが2連敗で始まり、ホークスが優勝するには第5戦まで持ち込まなければならなくなった。しかし第5戦が行われる朝には東京に戻らなくてはならない。一番の目的だった王監督の胴上げが見られない。

目の前で王監督の胴上げを見たかった。あの世界一美しい胴上げを。そのためだけに、2試合分のチケットと2日間の連休を取っていた。しかし2連敗した時点で、その願いは叶わなくなってしまった。気持ちに張りがなくなった。福岡に行く意味がない気がした。旅費を使うのが無駄なように思えた。行くのを止めようとも思った。だがチケットを見ながら、せっかくだから行くことにしよう、と体を起こした。それでも着いた瞬間は、やはり来るべきではなかった、と感じていた。

どこへ行くともなく、博多を、天神をふらついた後、16:30福岡ドーム入り。あまり気持ちの入らないドーム着であったが、それでも地下鉄でドームに向かうというげんかつぎだけは忘れなかった(地下鉄利用=4戦全勝、バス利用=2敗1分)。ここに来るのは3月26日の開幕戦以来。ソフトバンクとしての記念すべき初戦。あのときは花火とループオープンショーも見られた。今回楽しみにできるのは、もうそれしかなかった。

三塁側内野席10列目。少し前過ぎる。もっと球場全体が見渡せる後ろの席の方が良かった。座席にさえ見放された。三塁側であっても、マリーンズファンはほとんど見当たらない。いるのはレフトスタンドのごく一部のみ。観客のほぼ全員がホークスファン。だが、勢いはマリーンズファンの方にあった。数えるほどしかいない黒軍団でも、いつものようにひとつとなって球場全体に響かせる声。オーバー・ザ・レインボーにのせて、18:00プレイボールの声がかかった。

ホークスの先発は新垣。9月24日ライオンズ戦での登板を見て以来。その日もそうだったが、味方が点を取れないときには抑え、味方が点を取り始めると相手に点を献上してしまう。一筋縄ではいかないピッチャー。あの試合も同じで、追加点を上げた直後に同点に追いつかれ、一時また引き離したものの、結局逆転サヨナラ負けを喫してしまった。あのときあの試合に勝っていればアドバンテージが得られていたものを、今となっては悔やんでも悔やみきれない。

先頭打者は西岡。先頭打者として迎えた西岡は、絶対に塁に出してはいけない。出せば必ずホームまで還ってくる。最も注意しなくてはいけないバッター。しかし今日の新垣は、最初の3球を見ただけでも調子の良いのが分かる。3球三振。続く堀も3球三振。福浦をセカンドゴロ。完璧な立ち上がり。

一方のマリーンズは渡辺俊介。言わずと知れたサブマリン。1週間前のプレーオフ第1ステージでも彼のピッチングを見た。プレーボールホームランを打たれ、直後にピンチを迎えたものの後続を断ち、その後も無難に抑えていた。この試合の初回も、ホークスが一二塁のチャンスを迎えたが、ズレータが見逃しの三振に終わり、チャンスの芽を摘まれた。

静かな幕開けだった。新垣は2回をいずれも三者凡退に、俊介はヒットを許すものの要所を締めた。このまま1点を争う投手戦になりそうな雰囲気があった。劇的な幕切れが訪れることになるとは、このときは誰も想像してはいなかった。



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