やま建築研究所

私が感じたこと、気になった建築などを書き留めたノートです。

建築の歩き方、松本市編「馬場家住宅」です。

2009年05月07日 02時06分41秒 | 建築の歩き方

平成20年12月16日に訪れた長野県松本市編
松本城、旧開智学校といずれも時代を代表する建築物のある松本市。
最後は信州の民家の代表「馬場家住宅」です。

当日は馬場家、松本城、開智学校の順にまわったのですが、紹介するのは最後になってしまいました。
市の中心からバスでおよそ30分ほど揺られて到着、松本市の郊外にあります。
バス停からしばらく歩くと絵のような風景です。



手前には一面の畑、目下に松本市街が広がり、背後には日本アルプス。
そして村の鎮守の神様。


      林の中に神社があります

初めて見る風景ですが、どこか懐かしさを感じさせられます。


馬場家の広大な敷地は築地塀に囲まれています。
まるで大名屋敷のような構えです。


           馬場家表門

表門を入ると正面に主屋。
ここ長野県の民家に多い「本棟造り」といわれる様式で、屋根の頂点にある「雀おどし」と言われる棟飾りが特徴です。


        屋根の頂点の雀おどし

屋根の形は切妻、三角形の形をした屋根です。
間口 9間(約16.38m)にかかる切妻は、街中では見ることができないほどのダイナミックさ。
屋根を区切る水平の下屋庇が安定感を与えています。


             主屋

主屋は1851年の完成、その他の建物群も江戸時代末期に作られました。
馬場家はこの地域を田畑に開墾した豪農。
そのせいもあり、敷地も広大。中には蔵や馬屋だけでなく茶室まであります。


         敷地の中にある蔵

おもに生活の場となっていたのが主屋。
間取りは農家のプロトタイプである田の字プラン
各部屋は襖で区切られていますが、取り外すとパーティー、冠婚葬祭なんでもこいのオープンスペース。


     部屋が田の字に配されています



     各部屋は襖で仕切られています

たまに訪れていた藩主の殿様ご一行様を迎えるにも、十分な広さがありそうです。


開け放った戸から、風が抜けていきます。
でもこの日は真冬。冷たい風に体が震えます。


          風通しは抜群

徒然草第五十五段、「家のつくりやうは、夏を旨とすべし」。
七百年前の兼好法師の言葉のごとく、夏向きの家ですな。

といっても座敷や縁側は日光による陽だまりの心地よさがあります。


          座敷の陽だまり


           縁側の陽だまり

対照的なのが部屋の天窓からの光。同じ太陽の光なのにこちらはライトのような人工的光線のよう。


              天窓

自然に入ってくる光と人為的に取り入れた光。
同じ光でも印象は全く違いました。

玄関でもある土間の横には日本伝統のダイニングスペース、囲炉裏があります。
古き良き時代の家族のだんらん風景が目に浮かんできます。


            囲炉裏

今まで何軒か民家を見てきましたが、どこの民家も人が集まってくることを想定して、人数や目的に合わせて柔軟に対応できるしつらえにしてあることに共通点があると気付かされました。
空間を細かく壁で区切ることで家族の場所や個人の場所、用途を明確に区別させる今の家とは対照的です。

時代と共に変化する住み方。
進化しているのか、退廃しているのかはわかりませんが、昔の民家にはどこか安堵感を感じます。

高級な仕上げ材で覆われ、ムードのある照明や明るい吹き抜けがあり、ハイテクノロジーな仕様設備。
そんな全てがそろった勤務先の住宅展示場で過ごす毎日は確かに快適、便利(仕事を除いて・・・)、ではありますが、四季の移り変わりを感じ、太陽の動きに合わせて活動するという、人間の生活の原点を忘れているような気がします。

たまには原点に戻るつもりで、昔ながらの民家を訪れてみるのもいいかもしれません。


             民家

東京近辺なら川崎市の「日本民家園」がおすすめです。


    


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