やま建築研究所

私が感じたこと、気になった建築などを書き留めたノートです。

映画「みんなのいえ」を観ました。

2011年09月03日 01時36分12秒 | 映画

家を建てようと思ったら・・・
向かう先は書店の家づくりHOW TO コーナー?
本棚にところせましと並ぶ本、雑誌。家づくり段取り術。家の建て方、進め方、などなど。
いったいどれを選んでいいのやら。
「でも読むのは苦手、本ではイメージが湧かないし。」
そんな不満をお持ちの方にオススメ、三谷幸喜原作・脚本・監督作品「みんなのいえ」

この物語は、「古畑任三郎」「ラジオのじかん」の脚本家、三谷先生が自宅を建てる際に経験した出来事をパロディー化。あながちフィクションとはいえない、リアルなストーリーです。

私は家を建てたことはありません。でも住宅メーカーという職業柄、何軒もの家づくりに携わってきました。
建て主にとっては、人生に何度とない一大イベント。
だからこそ妥協はしたくない、わがままになりたい気持ちはわかります。

今まで重ねてきた何百という商談は、時に真剣に、時に可笑しく、まれに怒りを頂戴することもありました。人間の本性が赤裸々に出る場面は緊張の連続。正直疲れます。
「笑いとは緊張と緩和である」とは上方落語の大師匠 故桂枝雀のことば。
張り詰めた空気をゆるます一言があればどんなに助かるか。
実際笑って終われる商談は、その後もうまく進むことが多いですが、現実はなかなかハッピーエンドに終われません。家づくりこそ緊張と緩和の物語。

苦難を乗り越え、運よく契約に至った後、詳細打ち合わせが始まります。
我々営業担当者にとって、山あり谷ありと大変なのは契約に至るまで。
でも注文住宅の場合、お客様にとって大変なのは契約後。たくさんの選択肢のなかから、自分に合ったものを選ばなければなりません。
「間取りはこれでいいの?キッチンはどのメーカーにする?外観は何色にしよう・・・」。


「みんなのいえ」は施主の希望そっちのけで、棟梁とデザイナーと工務店が力を合わせて家を造っていく物語。契約後の実施設計から展開していきます。
家は構造が第一だと譲らない棟梁、法律を知らずに外観を決めてしまったデザイナー、両者を仲立ちする工務店。そして要望通りの家ができたのかどうかは置いといて、職人たちのこだわりに感動する施主夫婦。
タイトルどおり「みんなのいえ」ができました。

ハウスメーカーの進め方とは少し違いますが通じるところも多々あります。
設計担当と工事監督との確執、親からの干渉、仕事そっちのけで家づくりにいそしむ主人、地鎮祭を司るなんだかうさんくさい宮司。
すったもんだを繰り返し、何度も頓挫しそうになる新築計画。
「あるある」、とあいづちを打ちながらも、最後まで自分の仕事を果たそうとするのは現実も映画の世界も同じです。

「緊張と緩和」がいたるところに散りばめられ、泣きあり、笑いあり、感動あり。
家ができる流れを楽しみながら学べる、そんな映画でした。