さてさて久しぶり。
オレ流建築の歩き方は和歌山県にある「高野山」です。(2008年8月16日)
夏休みに実家に帰省した時に行ってきました。
私の実家は大阪府河内長野市。奈良と和歌山の県境です。
良く言えば山と緑に囲まれた水も空気もおいしい自然あふれる地。悪く言えば辺境の地。
有名どころは鎌倉時代末期の武将 楠木正成の菩提寺「観心寺」、そして知る人ぞ知る「関西サイクルスポーツセンター」があります。
上京する11年前、大学卒業時まで住んでいました。
観心寺(2006年8月16日)
河内長野市民の足である南海高野線。いつもは難波方面しか乗らないですがこの日はめったに行かない逆方向である高野山方面へ。
近づくにつれ、登山電車のごとく山間部を縫うように抜けていきます。
電車の終着駅は極楽橋。そこからはケーブルカーに乗って高野山へ登ります。
弘法大師空海により816年に開山。以降約1200年間、真言宗の総本山として日本の歴史にも大きな影響を与えてきました。
高野山とは山の名前ではなく、海抜約900mにある盆地の総称。この地に大小様々な寺院が建立されています。
まず向かったのは「金剛峯寺」。現在の建物は1863年に再建されたもの。
いたって古い建物という訳ではありませんが、築何百年といった京都や奈良の寺院と変わらない風格があります。
金剛峯寺全景
その風格の源は屋根。
桧皮葺の入母屋破風と唐破風、禅宗様に見られる屋根の反り上がりが大屋根に迫力だけでなく品格も与えてます。
金剛峯寺屋根形状
奥には山の緑を借景にした自然庭園と白い砂がまぶしい石庭が広がります。
金剛峯寺石庭
次に行ったのは「徳川家霊台」。
葵の御紋
家康にとってはかわいい孫?、三代将軍家光によって建立されました。
祖父と父を祀った、仲良く二つに並んだ建物は大きさ形もほぼ同じ。
右が家康、左が秀忠。
どちらが誰の霊屋かわかるよう看板が掛けてありますが、ツウはやっぱりここで判断!!正面二本の柱に支えられた欄間の彫刻を見て下さい。
家康は寅年生まれなので寅。
家康の霊屋
秀忠は兎年生まれなので卯の彫刻が彫られています。
秀忠の霊屋
同じに見える二つの霊屋の見分け方。
偉そうに書きましたが、入場券の半券に書いていた案内の受け売りです。
ひっそりとした静かな場所に、彫り物と金具をまとった派手な建築物は高野山の中では異色でした。
徳川家霊台の入口付近の大きな杉の木
登っているのは甥っ子です。三歳
南海電車の広告などでおなじみの朱色の大塔。
この根本大塔が建つ伽藍を最後に訪れました。
池のほとりにある流れるような屋根の形。
意外にも高野山で一番古い国宝建築物。
不動堂
その名は不動堂。鎌倉時代(1192年)の建造です。
伽藍の中でひときわ目を引く根本大塔。
実物を見るまで、こんなに大きいとは思いませんでした。
しかも鮮やか過ぎるほどの朱色をベースに緑と黄色のアクセント。
まさに原色系です。
高さは48.48m。写真下の人と見比べてもらえば大きさが実感できます。
根本大塔
現建物は昭和12年に再建されたもの。
落雷による火災のため、創建以来約千百年の間に5回ほど再建を繰り返してきた経緯より鉄骨鉄筋コンクリート製となっています。
さらに奥には杉の大木に囲まれてひっそりたたずむ西塔があります。
高さ27.3m。1834年の再建です。この塔も創建以来約千百年の間に何度か炎上と再建を繰り返してきています。
西塔
先ほどの根本大塔と同じく、この塔の様式は多宝塔。
真ん中の層が円形になっているのが特徴です。
多宝塔の元祖 根本大塔
この様式は日本全国いろんな場所で見られますが、ルーツはここ高野山の根本大塔。
空海が生きていた頃に今へと続く多宝塔の原型が計画されました。
根本大塔と西塔。この伽藍のツートップ。
様式は同じでもこちらは木造。周囲の木々を借景に自然との調和を感じるなら、根本大塔は空の背景が色彩の引き立て役です。
霊場 高野山。
現代では電車で簡単に来ることができますが、近代以前は秘境の地。
そんな場所にこれだけ大きな街ができたのは、遥か昔から日本全国身分の差なく信仰を集めていたからこそ。
しばし下界の煩悩が癒されました。
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