木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

年間の推定被ばく線量の計算式について

2011-06-30 01:02:30 | 地方自治
 先週、東京都実施の放射性物質の線量調査を受けて区のホームページにアップされた計算式について、あらためてみてみると、ちょっとわかりにくい点があるなぁと感じました。

 問題のページは6月20日にアップされた「推定被曝線量(年間)算出方法 」というページです。間違いではありません。「今回の計算では、観測地点における自然放射線量のうちの外部線量を含んだ計算としました。」と、計算値の条件も注意書きされています。

 しかし、いっぽうで、「東京都による空間放射線量の測定結果(6月18日東京都実施)について 」のページには「(注釈)東京都福祉保健局から示された積算量の推計式により、自然放射線量0.05マイクロシーベルト/時を差し引いて計算しています。」とも記されています。

 ちょっと分かりにくいですね。

 国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の年間推定被ばく線量の限度値1ミリシーベルトと同条件ですぐに比較できるように、自然被ばくによる日本の平均値0.05を差し引いた計算式だけを説明してくれたほうが、混乱がないと思います。

 そこで、あらためて6月29日に「推定被ばく線量(年間)算出方法」というページがアップされたのではないかと思います。こちらの計算式の説明のほうがずっとわかりやすいでしょう。

 毎時χマイクロシーベルトという値から年間の推定被ばく線量を算出する場合には、みなさんも「推定被ばく線量(年間)算出方法」にアップされている次の計算式で考えたほうがよいと思います。

 (測定結果-自然放射線量0.05)×(8/24×1.0+16/24×0.4)×24時間×365日

 このほうが分かりやすいでしょう。

 ちなみに、「測定した場所に8時間、その場所の木造家屋内に16時間居る」という仮定と「木造家屋内滞在における被ばく低減効果を60%(係数0.4)」という仮定を数式にした部分、つまり(8/24×1.0+16/24×0.4)は、実は、常に0.6となります。ですので、この部分を0.6と記憶しておけば、数式は次のように単純化できます。

 (χ-0.05)× 0.6 × 24時間 × 365日

 これで、すぐに年間推定被ばく線量の値が算出できます。




江戸川区議会議員 木村ながと
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江戸川区実施の空間放射線量調査の結果と評価

2011-06-29 23:50:24 | 地方自治
 6月27日、28日の両日にわたり実施されてきた区内19カ所における大気中の線量調査結果が、今日(6月29日)に公表されました(「区内における放射線量の測定結果について」)。今回の区の調査は、計測地点を2キロメートルメッシュで区切っており、先週実施の4キロメートルメッシュ区切りの都調査よりは、測定地点数においても拡充されました。ちなみに、一カ所ごとの測定地点はそれぞれ3カ所程度をピックアップしていますので(例えば、同じ施設であっても園庭、木陰、砂場など)、実際の測定地点は69地点となります。

 さて、その気になる結果です。

 各測定地点において、都調査の時と同様、地上1mと地上5㎝での測定が行われております。基本的に、放射線物質は地面に落ちていきますので、地上に近いところの測定値が高く出るのが自然です。ですので、とりあえず、より高い値が検出されやすい5㎝のほうの測定結果に注目したいと思います。(案の定、最大値は地上5㎝の地点で観測されていますし。)

 最大の測定値が観測されたのは、鹿本幼稚園と南小岩保育園における0.22マイクロシーベルト毎時(μSv/h)です。この値を、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告に規定されている年間推定被ばく線量の限度値1ミリシーベルト(mSv)と比較しやすいように、年間の被ばく線量の推定計算をしてみます。

 計算式は「推定被ばく線量(年間)算出方法 」に分かりやすく説明されています。そのままここにも貼り付けます。以下の計算方法になります。


【測定結果から1年間の積算線量を推計する場合の条件】
○ 自然放射線量を全国平均値0.05マイクロシーベルト/時と仮定
○ 測定した場所に8時間、その場所の木造家屋内に16時間居ると仮定
○ 木造家屋内滞在における被ばく低減効果を60%(係数0.4)と仮定

【1年間の積算線量を推計するための式】

(測定結果-自然放射線量0.05)×(8/24×1.0+16/24×0.4)×24時間×365日

(注)1000マイクロシーベルト=1ミリシーベルト


 よろしいでしょうか。では、上記の0.22マイクロシーベルトを当てはめてみます。

 (0.22-0.05)×(8/24×1.0+16/24×0.4)× 24 × 365 = 893.52マイクロシーベルト(μSv)

 893.52ですが、ビックリしないでください。単位はマイクロシーベルトですので、ミリシーベルトにそろえなければなりません。1mSv(ミリシーベルト)=1,000μSv(マイクロシーベルト)ですので、893.52マイクロシーベルトは0.89352ミリシーベルトとなります。区のホームページでは小数点第3以降を四捨五入していますので、0.89ミリシーベルトと記載されています。

 結果、鹿本幼稚園と南小岩保育園では相対的に高い数値が検出されていますが、ICRP勧告の限度値以下ということです。あまり過度の心配をしなくても大丈夫な価であると言えるでしょう。

 ついでですので、私の西葛西の自宅の近くの、しばしば訪問している西葛西中学校での測定最大値0.14マイクロシーベルト毎時(μSv/h)についても、年間の推定被ばく線量を算出してみたいと思います。

 (0.14-0.05)×(8/24×1.0+16/24×0.4)× 24 × 365 = 473.04マイクロシーベルト(μSv)
                             = 0.47304ミリシーベルト(mSv)
                             ≒ 0.47ミリシーベルト(mSv)

 このようになります。とりあえずは、即健康被害がると言われるような数値ではないようです。

 ただ、放射線物質は存在する限り、有害な物質です。同時に、地球上に生活する限り、大地から自然放射線を年平均でも1~2ミリシーベルト受けざるを得ないという事実もあります。現在観測されているデータを認識し、今後もアンテナも張りつつも、ストレスをためてしまうほど過度に不安視せぬよう、これからも測定値に注意を払っていきたいと思います。


※このブログを書いたころは、私自身、上記のような考えを示しています。ですが、放射性物質汚染に対する私の考え方は、ブログ記事「『安全宣言』と『危険宣言』はともに慎むべき」を記したころより、変化してきました。現在はパターナリズム的なスタンスには反対です。




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区内の空間放射線量について

2011-06-24 23:46:49 | 地方自治
 みなさんの最大の関心事の一つが、今自分が住んでいる地域の放射線量ではないかと思います。いわゆる「空間放射線量」です。

 しかしながら、わが江戸川区、福島の事故以来みなさんもイライラしながら不安に駆られてきていたと思うのですが、行政の腰が重いこと、重いこと。

 確かに、当初、各地で素人の職員さんが(専門家が少ないので、素人であることを非難することはできません)あたふた測定するものだから、数値に統一性が欠け、かえって混乱を招いてしまったきらいは、なくもありません。区の判断は、それを懸念してのことだ、ということでした。

 しかし、どうでしょう? 私は逆に測定しないことで、つまり安心するための客観的データがまったく提供されない状況が何カ月か続いてきたことで、かえって区民の放射線量に対する不安が増幅してきてしまったように思われるのです。違いますかね?

 やはり、住民が不安に思うなら、できるだけ測定しべきです。そして、速やかにデータを公表しることが大切です。これが情報公開時代にふさわしい、情報提供制度というものです(注1)。

 しかし、ここにきてようやく各行政側に動きが出てまいりました。すでに区のホームページをチェックされた方や報道などで確認された方も少なくないと思いますので、簡単に記しておきます。

 まず、先週来、東京都が約100カ所で線量測定を行いました。江戸川区内では6月18日に、そのうち4カ所で測定されております。

 それぞれ地上5㎝と1mで測定しておりますが、これらの測定値の単位はマイクロシーベルト/h、つまり1時間あたりのマイクロシーベルトです。ですから、法律などで取り上げられている限度の年間の被ばく線量とは単位が異なりますので、推定換算しなければなりません。一喜一憂するのは単位を換算してからにしましょう。(都の測定結果は「東京都による空間放射線量の測定結果(6月18日東京都実施)について」で確認できます。)

 では、推定される年間被ばく量の計算方法は? 基本的には、ある測定値が観測された定点に、24時間365日、人がい続けるということは考えられません。ですから、人が屋外にいると思われる時間や屋内にいると思われる時間を推定し、観測された値にその時間をかけて、年間被ばく量の値を推定するのです。区では次のような計算方法を採用したようです。

 年間の推定被曝線量=365日×(計測値×8時間+計測値×0.4×16時間)

 あくまでも推定値です。これをさらに辛口に推定することも、甘く推定することもできます。例えば、外にいる時間をより長く仮定すれば、当然被ばく量は増えます。

 ただし、専門の放射線医学総合研究所などでも同様の条件を仮定して年間被ばく量を推定していますので(「放射線被ばくに関する基礎知識 第6報」)、私は、基本的に専門家による科学的裏付けのある無難な計算方法である考えます。

 それでは、気になる、そこから計算された推定年間被ばく量は? 地上5㎝と1mの観測地点それぞれの最高地点における推定被ばく量です。地上5㎝のところで0.79ミリシーベルトで、地上1mのところは0.68ミリシーベルトです。

 0ミリシーベルトではないので、もちろん無害とは言えませんが、放射線障害防止法がいうところの年間被ばく線量の限度の1ミリシーベルトよりも低い値ですので、過度に心配する必要はないようです。日本に住む限り誰もがどうしても浴びてしまう自然被ばくが1.5ミリシーベルトあることを考えれば、あまり神経質になって心配を募らせるのも、かえってよくありません。

 さて、以上は東京都が先週、実施した空間線量測定です。都調査では江戸川区内の測定カ所はわずかに4カ所だけでした。区民や議会から、区も独自に線量測定をすべきだ、とずいぶんと要望されてきました。9万5000人以上の子どもたちが住む江戸川区です(注2)。保護者の方々を中心とした区民の心配は自然なことと理解できます。

 そうした声がようやく届いたということでしょうか。区も独自に線量測定をするという方針を今日(6月24日)、ようやく示しました(「区内における放射線量の測定について」)。遅い決断でしたが、原発事故による災害が収束していない以上、やらないよりはずっとよいことです。

 今回発表された実施方法では、6月下旬から7月上旬にかけて「小・中学校、保育園、幼稚園、公園など19か所で測定」するということです。測定カ所はまだ少ないようにも思われますが、順次、拡充していくことを望むところです。また、速やかな測定結果の公表と分かりやすいデータの説明も欠かせません。



(注1)一口に情報公開制度といっても、そこにはいくつかの性質別の類型があります。諸説あるようですが、一般に、①法令や例規に基づく情報開示請求制度(「子どもの内申書を見たいから公表して」と開示請求するケースなど)、②法令や例規に基づく情報公表義務制度(すでに法律や条例によって、例えば入札結果を公表することになっており、それに基づいて公表されるケースなど)、③情報提供制度(特に法的義務はないけれど、広報などを通じ「区民検診を実施します」「ダンスサークル○○が会員募集します」などの情報サービスを提供するケースなど)、があると言われます。

(注2)「子どもたち」とは0~14歳までの年少人口のことを指します。平成22年度のデータによると、区内の年少人口は95347人です。




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科学が沈黙してしまうとき・・・

2011-06-23 04:13:14 | 地方自治
 先日(6月20日)、江戸川区健康部が区管理職級以上の職員と議員を対象に、放射線の専門家による研修会がありました。講師を務めた専門家は昨今、メディアでしばしば登場する放射線医療専門の中川恵一氏でした。

 みなさんの中でも、中川氏の見解や意見を新聞などでチラホラご覧になっている方も多いことと思います。ですので、放射線医療の専門家としての中川氏の講演内容をここに転載する意図はありません。また、講演内容は同氏いわく『放射線のひみつ』に書いてあることと同様だということでした。ご興味のある方はお読みになるとよいでしょう。私はコンパクト版しか持っていませんが・・・。感情的にではなく、放射線について実証的または科学的に理解したいという方にはお勧めです。そもそも原発に関する本ではまったくありませんし、原発に賛成の人も反対の人も、放射線というものに関する科学的な知見は備えておいて損はないと思います。

 さて、私はここに専門家による放射線の評価について展開する意図はないと申し上げました。と申しますのも、実際のところ、私は放射能についても放射線医療についても門外漢ですので、数字をつらつら並べて力説するには決して適任者とは言えません。私がかりに「何ミリシーベルトは危険だ、安全だ」と語ったとしたら、それは受け売りにしかすぎません。私に限らず、学生時代に原子力物理でも専攻していないかぎり、ほとんどの議員や政治家による原子力や放射能に関する昨今の「危険だ、安全だ」といった意見は専門家の見解の「受け売り」であるはずです。

 もっとも、受け売りが悪いとは申しません。原子力や放射能について語れる人は限られています。ゼネラリストたる政治家には、どんなに専門的な問題であっても、意見や判断を求められることが少なくありません。専門家から学ばざるを得ません。私はただ、政治家が放射線量について数字を取り扱ったり、評価するのはあまり適任ではないと申し上げているだけです。

 さて、私は今「受け売り」と申し上げてきました。専門家の示す数字をそのまま引用することは文字通り「受け売り」ですから。

 ところで、放射線量の値については、数字単体としてはあまり意味がありません。少なくとも、放射能の専門家以外の、私たち一般人にとっては、です。問題となってくるのはその数字をどのように評価するかという解釈の行為が行われたときです。

 例えば、一般公衆の年間被ばく限度の閾値(しきいち)は1ミリシーベルト(注1)なのか、10ミリシーベルトなのか、あるいは20ミリシーベルトなのか。この数字をめぐる疑問に対して評価または解釈がなされたとき、私たち一般人ははじめて大きな関心を持ち、数字に大きな意味が生じてきます。

 ある人は「1ミリシーベルトでも危険だ」と語るでしょうし、またある人は「1ミリシーベルトでは危険だとは評価できない」と語るかもしれません。ラドンのような放射能泉を例に「○○ミリシーベルトくらいならむしろ安全とさえ言える」という解釈も飛び出してくるかもしれません。(注2)専門家の間でもいろいろな評価があるようです(2011年3月25日開催の第373回食品安全委員会)。

 専門家がそれぞれの科学的知見を駆使し、数字に対するある評価や解釈を下すと、今度はそれをメディアが取り上げます。政治家も反応します(私も含め)。専門家の各評価を参考とし、その政治家の主観というフィルターを通し、その政治家の「解釈」がそこから開陳されていくわけです。

 ここで注意すべきは、それら閾値に対する評価や解釈は、専門家による分析評価に比べ、科学的純度の劣った素人の「解釈」だという点です。

 この点をもう少し補強しておきましょう。メディアは視聴率を意識しないわけにはいきません。美談や無難さを報じてもニュースとしてはインパクトが足りません。「ここではこれだけ測定できました! 政府の言う通りで本当に大丈夫なんでしょうか!?」と。ですから、メディアにとっての閾値は低い方が都合がよいでしょう。どちらがニワトリでタマゴなのかはわかりませんが、放射能の危険性は誰しも知っているため、社会的風潮としても閾値を上げることには抵抗があります。メディアと私たち一般人とのベクトルはここで一致します。

 政治家にとってはいつでも有権者(一般人)の動きが一番の関心事です。みなが「危険だ、不安だ」と言えば、「ごもっとも」と、閾値を下げようとします。「危険ですよ、不安ですよ、そうですよね」と。自分もそうですが、政治家は常に世間とベクトルを合わせようとします。というより、合わせざるを得ないというべきかもしれません。ある種の職業的運命というか・・・。

 しかし不幸なのは、メディアや政治家が語れば語るほど、科学的評価から徐々に遠ざかっていき、圧倒的な力を持つ社会的風潮の中で、非科学的な答えや解法が模索されようとするということです。

 放射能を不安に思うことがいけないわけでは毛頭ありません。私だって不安がないと言えば、ウソになります。またむしろ、不安に感じるほうが自然と言えるでしょう。放射能は実際問題、とても危険なものです。(人間は自分たちで制御できない原子炉というものを作り出してしまったのです。)

 しかし、そうした不安な見方を持った時こそ、感情で処理してはいけません。感情は理性で制御する必要があります。科学的データが公表された場合には、科学で理解するのです。前述の「解釈」に踊らされてはいけません! ましてや感情で理解するのも間違いです。イメージでもいけません。

 科学という理性で理解し、対処するのです!

 先日の研修会の開始冒頭、中川氏がこう語っていたのが、放射能の中身の話よりも皮肉にも私にとっては一番印象的なひとことでした。

 「放射線をめぐって、ある数値をもってして『安全だ』と語ると、すごい非難を受ける。東電から金をもらっているんだろう、政府の犬、御用学者、云々と。逆に、『危険だ、危険だ』と言えば、ヒューマニストだと評価される。私たちが語っているのは放射線と人体への影響という自分たちの医療の研究成果。原発の賛否など語ってもいないのに、研究成果と無関係に『危険』と語らなければ、言葉の暴力に襲われる。もはやわれわれ研究者は語らなくなってしまった。」(記憶の中で発言趣旨を綴っていますので、テニオハは不正確です)

 科学が沈黙してしまう・・・。

 社会として非常に不幸なことだと思います。科学は万能ではありませんが、科学者の研究成果の積み上げによって現代社会の多くの部分がつくりあげられてきたことは間違いないと思います。ことに、放射線や医療の研究となれば、その多くが自然科学に負うているはずです(医療においては脳死や輸血などの倫理、思想、宗教と密接な分野もありますので、すべてとは言えません)。

 私は、中川氏の講演を初めて拝聴したという立場で、個人的なお付き合いもありません。あえて無感情に(できるだけ客観的に)言えば、同氏が善人なのか悪人なのかは分かりません。原発に賛成なのか反対なのかもわかりません。(私は明確に脱原発を支持しますが。)政治的スタンスも知りません。ただ、それらは放射線と人体への影響をめぐる氏の医学的研究成果とはまったく関係のないことで、講演で伺った氏の科学的知見には見るべきものがありました。少なくとも、中川氏が科学的数値にきわめて忠実な方であるということは肌で感じられました。

 「何ミリシーベルトが危険だ、安全だ」という、メディアや政治家の「解釈」に踊らされそうになったら、科学的に測定されたデータを科学的に理解することです。ちょっと面倒かもしれませんが、専門家の本を1冊でもよいから紐解き、理解する努力を素人の私たち一人一人もすべきです。

 科学には、科学をもって反論。科学を社会の雰囲気が黙らせるとしたら、それは構造的暴力というものです。「安全?」な基準値が非科学的に「危険」と言われれば、それは冤罪というものです。

 放射能はたとえコンマレベルの微量でも浴びれば健康にはマイナスですので、「安全」という言葉は必ずしも適当とは言えませんが、地球上に自然被ばくのない場所がないという事実を踏まえ、現在観測されている線量値を冷静に受け止める必要があります。

 無論、行政はその判断材料となる線量値を、適切に測定し、速やかに公表する義務があるのは言うまでもありません。



(注1)放射線障害防止法において、一般公衆の年間被ばく線量の限度は1ミリシーベルトとされています。ただし、この1ミリシーベルトには自然被ばくと医療被ばくの値は含まれません。私たちが地球上で日常生活を送っているかぎり、大地からの被ばくを受けます。日本国における自然被ばくは年およそ1.5ミリシーベルトで、海外はそれよりも高くおよそ2.4ミリシーベルトだということです。また、日本人の医療被ばくは年平均で2.3ミリシーベルトということで、逆にこれは海外よりもずっと高いそうです。

(注2)放射線と人体への影響の評価において、実際には人の健康には他の要素、つまり喫煙や食生活などの生活習慣やそもそもの遺伝などの要素があるため、年100ミリシーベルト以下の影響評価は正しく判断できない、と言われています。例えば、100ミリシーベルト以下の被ばくによる危険要因と喫煙による危険要因が共存する場合、どちらがガンのリスクとなっているのかその主要因を客観的に評価はできないということです。


※このブログを書いたころは、私自身、上記のような考えを示しています。ですが、放射性物質汚染に対する私の考え方は、ブログ記事「『安全宣言』と『危険宣言』はともに慎むべき」を記したころより、変化してきました。現在はパターナリズム的なスタンスには反対です。




江戸川区議会議員 木村ながと
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山元町でのボランティア作業

2011-06-20 23:58:30 | 地方自治
 今日の午前1時半に宮城県山元町より無事に帰宅しました。まずはご一報です。

 ボランティア隊の皆さんの純粋な気持ちに感心したり、津波被害の実際を目の当たりにし衝撃を受けたりと、一言でまとめることはとても不可能です。震災から3カ月がたち、ある程度生々しい部分が取り除かれた今(地元の方談)でさえ、初めて訪問した私などにとっては十分な衝撃でした。

 今回ですべてをお伝えすることが困難ですので、何回かに分けてご報告したいと思います。今回はまず、ボランティア作業についてのみ記したいと思います。

 さて、それでは、現地での活動報告を詳細にいたします・・・と申し上げたいところですが、実は、具体的様子をお伝えするのに効果の高い、肝心の、作業の様子をお伝えする写真があまりありません。・・・というか、私が撮れたのはたったの1枚だけです。(作業前に地域の様子の写真は何枚か撮れました。)

 と申しますのは、実際にボランティアに入った場合をご想像いただくとお分かりになると思うのですが、みなさん、被災地の復興支援のために労働に来ている状況です。間違っても観光や視察ではありません。みな作業着のいでたちで、台車、スコップ、バケツ、バール、金槌などを手にしているのです。そんな中、カメラのシャッター音を響かせるというのは、ちょっと場を理解していないというか、もっと言えば、無神経なヤツということになりかねません。

 仕事の開始後は作業が一段落した際に、1枚撮るのがやっとでした。それさえも後ろめたい気がしたくらいです。

 作業現場で一緒になったチームのみなさんにも、自分が議員で、ブログで活動を報告したいから写真を・・・なんて説明などいちいちしません。ボランティアに来ていれば、それぞれの本職は何ら関係ありませんし。 

 ということで、画像が乏しいので、がれき撤去作業に関しては、文章での報告がメインになってしまいます。お許しください。

 私は前日の夜1時に江戸川区を出発し、首都高と東北道を乗り継いで、宮城県角田市(山元町の隣)にちょうど朝6時に到着しました。そこで、習志野レスキュー・サポート・バイク(NRB)の会長である石渡さんと合流し、ボランティアのみなさんが宿泊している宿へ向かいました。宿でみなさんと顔合わせをし、朝食をとって、8時に山元町の社会福祉協議会へと出発しました。

 朝8時半に山元町役場に隣接する社会福祉協議会に到着すると、ボランティアのみなさんが集まり、その日の作業現場や内容の指示を受け、確認していました。そして、それぞれの内容に基づいて台車、スコップ、シャベル、バケツなど、必要な道具を車に乗せていました。





 私たちはタグを組んでいる、現地のボランティア団体 band⇔aid のリーダーの方の指示を受けました。
 
 さて、現場で作業を始める前に「なるほど」と思ったことが一つありました。作業現場に散っていく前に、みんなで準備体操!をしたということです。

 「なるほど」というのは実は事後の感想であって、最初は実は「おやっ」と思ったのです。ただ、作業にとりかかってから、自分たちが取り組んでいるのは結構な肉体労働だということが理解でき、最初の準備体操に「なるほど」と感じた次第です。

 うかがった現場は、正確には分かりませんが、私の推測では海岸線から2キロメートル程度のところでしょうか。津波で床上1メートル程度まで迫った地区のようです。私が行動した100メートル範囲に限って言えば、家々は流されずに残っていましたが、各家の壁にはそれとわかる水かさの跡がありました。

 作業現場近くの写真です。



 3カ月たった今でも、汚泥の臭いが時折、風にのって鼻をついてきました。

 現場では、がれき撤去の作業をしました。もう少し正確に申し上げれば、今回は津波で浸水したお宅の床板剥がしおよびそこの汚泥の掻き出しでした。

 画像がないので、十分にお伝えできませんが、床板剥がしは大きなバールを手に一枚一枚剥がします。こ慣れた手つきの、我が習志野レスキュー・サポート・バイク(NRB)の石渡会長より手ほどきを受け、私も一枚一枚剥がしました。人が住んでいた家ですから、それなりのしっかりした造りです。そう簡単には釘を抜いたり、板を剥がすことはできません。素人には十分大変な作業でした。1時間半くらいは作業していたのでしょうか。複数人で取り組んだので、とりあえず、床板剥がしは無事に終了。でも、ここまでで相当の汗が噴き出ました。また、この日はとても暑い日で、シャツはもちろんパンツまでびっしょりになりました。

 作業現場をお伝えする唯一の画像です! 床板剥がしが完了したところです。

 上の画像の床板を剥がしたその下に汚泥らしきドロが何となく確認できませんか? 実は、次なる作業が、この汚泥の掻き出しでした。

 津波から3カ月たったというのに、この床下の汚泥はまだ十分に湿っており、べっとりとしていました。長靴が必須道具であるワケです。足元やズボンはかなりぐちゃぐちゃになります。

 海岸から2キロほどの距離がありながら、床下の泥の上にカビに覆われた小魚の死骸らしきものがあったのには驚きました。JポップらしきCDジャケットまでありました。汚泥と小魚の死骸とCDジャケットという、通常であれば共存しえないものが、民家の床下の泥の上で不調和なまま共存させられている光景を目にし、災害というものの有無を言わさぬ強制的な力の怖さを感じました。

 作業中は、暑いのと結構大変なのとで、もっともこんなことをゆっくり考えていたわけではありませんが、みなでスコップを片手に泥掻きを黙々と続けました。

 床上浸水などを体験されている方々はよくご存じなのかもしれません。私は自分では体験したことはないのですが、今回の民家の泥を見て気づいたことがあります。汚泥が二層になっているのです。まずは大部分が黒い油のような汚泥で、これがほとんどを占めていました。厚さは1.5センチメートルらいでした。その上に、茶色の通常目にする泥がうっすらを数ミリのふたをしています。

 黒い油のような汚泥は、それこそ上水も下水も油も何もかも一緒になったものなのでしょうか? よく分かりませんが・・・。

 昼過ぎまでこの作業を続け、去年10月に痛めた右手の靭帯がまた痛くなってきてしまいました。参った・・・! 

 この日は熱中症も心配されるような暑い一日でした。(みなさんがボランティアに行かれる際には、これからの季節は特に自身の熱中症対策を万全にとられることをお勧めします。自分が倒れてしまっては、何のためにボランティアに来たのか分かりません。)

 さて、私たち習志野レスキュー・サポート・バイク(NRB)のメンバーの作業はここまでで終了です。早いようでも、これで宿に戻って支度をし、千葉や東京に帰るとなると、到着は夜になります。みな、翌月曜日はそれぞれの仕事がありますので、仕事の切り上げが日曜日半日になってしまうのは仕方ありません。

 私は土曜日の作業に参加できていなかったので、正直、物足りない部分もあったのですが、前日夜中の高速移動で文字通り一睡もしていなかったので、あとで思えば、これで体力的には十分働いたのだろうと思います。

 と申しますのも、帰路の東北自動車道での睡魔たるや尋常ではありませんでした。NRBの仲間には先に帰路を急いでもらうことにし、自分だけは休憩し、ゆっくり帰ることにしました。さすがに自分でも「危ない」と思い、途中で2回の仮眠をいれました。いえ、トータルで実は5時間も寝てしまったので、仮眠というより熟睡してしまったのかもしれません。疲れてましたね~、実際。
 
 さて、東北道に乗る前に、会長の取り計らいで、30分程度、山元町の被害の現場をいくつか案内してもらいました。テレビやYouTubeなどで見ていた現場を目の当たりにしました。被災地を訪れた人が一様に、「実際に見ると、全然違う」と指摘していた意味がわかりました。この件に関しては、また別の記事でご報告いたします。

 話を戻します。ボランティアに来ている方々はいろいろでした。私が話をすることができた方々はほんの一部ですが、毎週末欠かさず横浜から来ている人、10日間も寝泊まりしてボランティアしている人(この方は女性でした)、などなど。この、運動部の合宿のような作業を、毎週末あるいは10日間もするといのは、・・・。ビックリです! 感心してしまいます! 

 そういう方々と話をしていると、ほとんど「別に大変だと思わないし」「楽しいからやっているだけだし」という答えが返ってきます。再度、感心!!

 みんなの純粋なエネルギーにボランティアワークというのは支えられているということを実感しました。また、いろいろなことを考えさせられました。本当に貴重な機会となりました。

 習志野レスキュー・サポート・バイク(NRB)も来月以降も、またボランティア隊を編成するようです。私も都合がつく時には参加していきたいと思います。今回の参加で現場の様子と要領が少し理解できたので、次回はもう少しよい装備で臨みたいと思います。




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今から、被災地の一つ宮城県山元町へ

2011-06-18 23:50:26 | 地方自治
 取り急ぎのお知らせですが、今から宮城県山元町へ行き、週末を利用したがれき撤去や掃除の手伝いに行ってきます。今回が、私にとっては最初の被災地入りとなります。

 実は先週、習志野レスキュー・サポート・バイク(NRB)の方々にお会いした際、6月18~19日にわたるがれき撤去のボランティア作業のご案内をいただいておりました。

 今日18日は、私がどうしても出席しなければならない会合が地元、江戸川区で夜の10頃までありましたので、私は遅れて今から出発し、すでに今日の昼間、現地入りしているNRBの方々に明け方合流する予定です。

 先週も記しましたが、NRBの方々はすでに何度か被災地入りし、がれき撤去や被災者支援に取り組んでいます。現地のボランティア団体とのコラボもしっかり組まれており、具体的な作業の指示は現地のボランティア団体から受けるようです。

 議員云々として現地入りするわけではありませんので、私もNRBの先輩方のアドバイスを受け、ジーンズ、長靴、防塵マスク、ゴム手袋、水筒持参といういでたちです。

 第一には、微々たるものかもしれませんが、少しでも復興支援の助力になれば、ということです。

 第二には、議員として、あるいは個人として、いずれを問わず、きちんと災害の現場を体感し、防災についてこれまで以上に考えていくきっかけにしたいと考えています。

 明日はネットにアクセスする十分な暇がないと思いますので、週明け、帰宅後にご報告ができればと思います。

 さて、夜間の高速走行で居眠り運転だけはしないようにしないといけません・・・!




江戸川区議会議員 木村ながと
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段階的な脱原発政策へのシフトを

2011-06-15 06:10:09 | 地方自治

 自由民主党の石原幹事長が反原発の風潮を「集団ヒステリー」と評しました。随分と短絡的かつデリカシーのない表現を使うものだなと感じました。原子力推進の立場だったとしても、もっと論理的というか、冷静な語り口があるのではないでしょうか。

 昨今の反原発の動きが「ヒステリー」だというなら、オーストリア、ドイツ、スイスなどの国民をはじめ、ちょうど昨日、国民投票で原発再開凍結の意思表示をした多くのイタリア国民(暫定投票率57パーセントでそのうちの90パーセント以上が原発の新規建設および再開の凍結を意思表示)の動きも「ヒステリー」だというのでしょうか?

 暫定規制値にはほど遠い値の食物を前に「ガンになるから食べない」と言い、食糧の買いだめをしたり、ひいてはトイレットペーパーの買いだめにまで走り回るのは、これはヒステリーと言えなくもありません。

 しかし、昨今の反原発の動きには明確な根拠があります。石原氏は何を見ているのでしょうか?

 福島第一原発の事故の発生来、近隣自治体は壊滅状態のまま、復興作業さえできません。行方不明の遺族の捜索もできません。近隣の第一次産業も壊されました。農業も酪農も放射能汚染で生産活動は止まり、廃業を余儀なくされ、自殺者まで出ています。

 この状況を受けてもなお、反原発の動きが「ヒステリー」だというのでしょうか? これ以上、人が反原発に動くのに十分な根拠はないと思います。

 200~300キロメートル離れた近隣都県でも放射線物質が観測されています(注1)。

 これでも、反原発が「ヒステリー」なのでしょうか?

 いいえ、むしろ、(原子力の科学的利点を自然科学の立場から説くならともかく、)意味不明の原発の「安全神話」なるまやかしの物語を唱導する専門知識とは無縁の推進派や、それをまた疑いの目を持たずに受け入れる国民のほうが「集団」でどうかしていると思います。

 そもそも原発がそんなに安全だと言うなら、なぜ被爆に対する防護服なる物々しい武装が必要なのでしょうか? 子どもでも素朴に感じる疑問です。

 原発は安全でも何でもない、ということです!

 ちょっと乱暴かつ意地の悪いことを言わせてもらえば、原発の「安全神話」を唱える推進者は原発敷地近隣に住民票を移し、終の棲家としてそこで生活する範を示すべきだろう、と感じます。

 でも、推進者の誰もそんなことはしないでしょう。当人だって原発が安全でないことぐらい分かっているだろうし、原発が「安全」であるということが事実とは異なる、まさに「神話」であることを知っているわけです。

 推進派の立場にある人は、原発が「安全」だから推進したいのではなく、たいてい原子力政策と何らかの利害関係がある状況(電力会社に勤めている、電力会社から政治献金を受けている、政府からまたは電力会社から補助金や利益を受けている、などです。別にそれが悪いとは申しておりません。人それぞれ置かれた状況がありますから。ただ、政治献金がらみのステークホルダーはあまり美しくはありませんね。)に置かれているから推進したいのだろうと思われます。

 私が学生のころの話ですから、ずいぶん前(約20数年前?)になりますが、『東京に原発を』という広瀬隆氏の本が話題を呼んだことがありました。話題を呼んだけれども、書店ではあまり見かけない、読者が増えぬよう電力会社が買い占めたのではないか、などという噂まで流れたのを覚えています(真偽のほどはまったく定かではありませんが)。

 同書をめぐっては反原発の一般読者から賞賛を受ける一方、科学的論拠に基づく冷静な議論が乏しいことから原発推進と反原発の両者から芳しくない評価もあったようです。

 確かに専門的な信頼性は乏しいかもしれません。それでも、同書は、素人が「原発がそんなに安全だというなら、都心にでもつくればいいじゃないか」と言いたくなる部分を代弁してくれた、とは言えるかもしれません。(注2)

 私は、火力、水力のほかに、自然エネルギーによる発電を鋭意進めることで、原発は段階的に廃止していくべきであると考えます。

 風力や太陽光などの自然エネルギーの研究と技術力の向上には時間がかかると思われます。また、原子力の中にはすでに住民合意を得、かつ発災時の事故確率が相対的に低い中で稼働中のものもあります。国民の財産を守るために現状の経済活動を破綻させるわけにもいきません。

 ですから、現状で相対的に危険性が少ないと判断される原発を利用しつつも、火力、水力、自然エネルギーによる発電の比重を高め、そして原発は他の代替エネルギーによる発電比重が増えるにしたがい、段階的に廃止していくのです。

 国民の命を守ることを考えるなら、原発の段階的廃止は自然なことですし、反原発の風潮は「集団ヒステリー」でも何でもありません。生々しいほどの具体的根拠あっての動きにほかなりません。


(注1) 地域によっては3月には農産物から暫定規制値を超える放射性ヨウ素などが検出されました。しかし、5月以降は少しずつ落ち着いてきています。この点は各農産物の生産県のホームページで検査データを確認するなど、みなさんも冷静にとらえてください。

(注2)ただ、今読むのであれば、もっとお勧めの本があります。『隠される原子力 核の真実』小出裕章、2011年、創史社。科学的な議論に裏打ちされた、非常に高い評価を得ている本です。




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食材をめぐる放射能汚染への対応と課題

2011-06-14 00:11:27 | 地方自治
 食べ物をめぐる放射能汚染についての不安の声が区民からかなり聞こえてきます。特に、赤ちゃんや子どもを持つ保護者からの不安の声は増える一方で、今のところ減る傾向はまだみられないようです。

 1、2ヵ月前に比べれば、実際には農産物などへの放射性物質データは減少しているですが、それでも日々、空間放射線量や食の安全管理の問題が報道されることで、放射能をめぐる国民の不安と危機の意識はより強くなっているように思われます。安全、安心の区民生活を確保するためには、できるだけデータ採集をし、速やかに情報を公表していくことが必要と考えます。そうすることで、不安を払しょくできると考えます。

 さて、子どもたちが日々口にする学校給食の食材について、いくつか確認してきた事項がありますので、ご報告したいと思います。

 まず、学校給食の食材をめぐる放射性物質の検査についてです。基本的に、厚生労働省の通知により、東北・北関東の各都県は地元産の農産物や魚介類などの食品について放射性物質の汚染がないかどうかの検査を実施しています。(厚生労働省「放射能汚染された食品の取り扱いについて」)

 学校給食用の食材はもちろん、市場に出回る食品については、このように生産地に当たる各都県で調査を実施しています。東京都では産業労働局がそれを担当しています。生産レベルで汚染食材が出回るのを防ぐという視点のようです。

 調査の産地別の実施地図にあるとおり、農業生産のない都心区を除いて江戸川区でも検査は実施されています。

 区では小松菜が調査され、汚染なしということで出荷制限等はかかっておりません。(「都内産農畜産物の放射能検査結果(第11報)」)

 安全基準に照らし、暫定規制値を超えるようなものについては当然、市場に出回らないように出荷制限がかけられます。検査の結果、汚染が明らかになり、実際に出荷制限されたものもご存知のようにあります。

 区内の学校で日々消費される給食用の牛乳についてもお問い合わせをいただきます。区立の学校で消費している牛乳の源乳の95パーセントは千葉県産の乳牛からです。これまでの県の検査では乳児に対する暫定規制値以下という結果が出ています。暫定規制値に届くような結果が出た場合には、当然、子どもたちの食用に供するわけにはいきませんから、出荷制限する必要があります。

 千葉県による検査結果を確認すると、3月には暫定規制値以下ながら微量の検出があったものの、5月に入ってからの検査では幸いかなり落ち着いてきているようで、検出されないところも増えてきています。ただし、今後もモニタリングを続け、見守っていく必要があります。(千葉県産の源乳)(千葉県産の牛乳

 区市町村やその教育委員会でも独自に食品中の放射性物質の汚染検査が実施できれば理想的です。実際、国の対応の混乱ぶりが目立つ中では、一番身近な政府である自治体にこうした対策を求める声が増えているのでしょう。

 政令指定都市のような大規模な自治体のなかには実施を開始したところもあります(京都市)。政令指定都市は一般の区市町村とは異なり、都道府県から多くの権限が移譲されており、多くの機能を独自に備えている特別な市です。食品衛生を司る保健所機能も充実しています。

 しかし、江戸川区をはじめ一般の区市で同様の検査を実施するには課題があります。

 端的には、一般の区市ではそのような検査室を備えていないということです。食品中の放射性物質の含有検査は空中の放射線量測定とは異なり、手持ちの線量測定機器などで簡単に測定することは困難だということです。いわゆるそれなりの備えのある実験室が必要だと言われています。

 都内でも、そうした検査が可能なのは東京都の健康安全研究センターと東京都立産業技術研究センターとの2か所くらいしかないと側聞しています(他にも大学などにおいて可能なところはあるかもしれませんが、私が現在、具体的に把握しているのは上記の2か所です)。

 これまで原子力行政の安全神話が当たり前のように理解されていたため、そうした検査機関の需要も少なかったことが理由であろうと推測します。

 今後、原子力行政から脱すべく国のエネルギー政策が軌道修正されるのかいなかにもよると思いますが、こうした事故に直面してみれば、食品中の放射性物質の検査が可能な機関が公と民とを問わず、必要なことが指摘できます。

 一朝一夕に実現しない課題もありますが、問題解決を声に出していかなければ物事は進みません。こうした諸課題について、区に対し今後も要望をしてまいりたいと思います。9万5000人という多くの子どもたち(0~14歳までの年少人口)が育つ江戸川区の責務は大きいと言えます。




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被災地への車の寄付の受け付けを再開します

2011-06-13 05:04:47 | 地方自治
 先月、いくつかの課題を抱える中で、被災地への車の寄付を残念ながら、一時中断しておりました。

 ですが、とある方のご支援を得ることができ、再開するメドがたちました。「ご支援」というよりは、「コラボ」といったほうがよいのかもしれません。

 コラボのお相手は「車を届けるボランティア」の山本さんです。

 正直言って、私よりも一歩進んだ態勢づくりをすでに確立しておられ、被災地への車の寄付を実践されています。思わず、感心してしまいました!

 協力を確認してまだ日が浅いので、私のほうに手続き上での試行錯誤があるかもしれませんが、そこは「車を届けるボランティア」の皆さんのアドバイスとご協力を頂戴しながら、確実に進めていきたいと思います。

 被災地ではまだまだ家も職も奪われ、持ち金もなく、でも車を必要としている人たちがたくさんいます。皆さんが、もしまだ走れる車を廃車してしまおうと思っていらっしゃるなら、ぜひご連絡を下さい。

 被災地へ皆さんの善意と車を届けるお手伝いをしたいと思います。




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仮設住宅入居の抽選に当たっても・・・

2011-06-09 17:06:57 | 地方自治
 つい昨日、被災地にすでに何度もボランティア入りしている習志野レスキュー・サポート・バイク(NRB)の方々と会いました。もともとは、私がお世話になっている船橋の方の紹介で会談をセッティングしてもらったのですが、ご自身もそのNRBの中核メンバーのお一人です。

 NRBは、阪神淡路大震災の際に交通が遮断された被災地でボランティア活動を実践したジャパン・レスキュー・サポート・バイク(JRB)のメンバーがその経験を活かし、新たに2006年に立ち上げた災害ボランティア組織です。

 すでにNHKや毎日新聞などでその活動が紹介されており、今でも月に一度のペースで東京湾の湾岸エリアからボランティア隊を被災地に派遣しています。

 さて、昨日NRBの方々と話をしていた中で気になる話題(というか課題です)があったので、一つご紹介します。

 NRBの方々は現地のボランティア団体の方とタイアップして支援活動を行っているのですが、その一つが宮城県角田市や山元町周辺でボランティアを行っているバンドエイド(band aid)という団体です。そのバンドエイドの方からの情報として次のような話があると、NRBのTさんから聞きました。

 「岩沼市周辺で仮設住宅や仮賃貸の入居者が、収入も手持金も無いまま、給食や生活物資の支給を打切られて困窮している」というのです。

 これを聞いて、そういえば、似たような話をどこかで読んだのを思い出しました。南三陸町では仮設住宅への入居抽選に当たっても、半数以上の人が入居をしようとしていないというのです。

 でも、なぜ?

 答えは簡単で、現状では、仮設住宅への入居が完了すると同時に食料などの支援物資の支給もストップしてしまうという仕組みだから、だそうです。

 被災者個々の状況にもよると思いますが、避難所生活を余儀なくされている方々のうち持ち家も手持ち金もなく、職も失ったという方々の場合、仮設住居への入居が保障されても、入居したその日から「はて、何を今日は食べよう? 食べ物がない」ということになるのは目に見えています。

 幸い職場が残った、解雇されずにすんだという方にとっては、仮設住宅入居は生活再建の大きな目途になると思いますが、何もかも一度に失った人にとっては、仮設住宅入居=支援需要終了ではないわけです。

 ちなみに、南三陸町では入居抽選に当たっても入居しない(あるいは、生活が成り立たないから入居できない)方々がいることで、さらに抽選から漏れた方々から今度は不満の声が上がりだしており、二重の課題を抱えることになっているといいます。

 NRBのTさんいわく、「16年前の阪神淡路の教訓が何も活かされていないと言う事」「自殺や孤独死が相次ぎ、市内仮設住宅での孤独死(含自殺)は217人。仮設住宅も仮賃貸も災害支援法の範疇、ゴールでは無い事をマスコミや地元議員、首長、行政に理解させ」ることが必要だ、と。

 まさにその通りだと思いました。国土交通省が舵を取り、現在岩手・宮城・福島あわせて7万戸以上の仮設住宅建設を進めています。政府は「お盆までに希望者全員の入居」を目標として掲げています。

 それは大いに結構です。しかし、仮設住宅入居が支援の完了を意味しないという被災者の立場を理解しなければならないでしょう。

 仮設入居により自力再建できる人はどんどん自立してもらうことが必要だと思いますが、反面、手持ち金も職もともに失ってしまった人には仮設入居後も食料や衣類の支援は現実問題、しばらくは続けることが必要だと思います。

 NRBの方から伺った現地の課題を紹介させていただきました。




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電気事業法第27条と江戸川区

2011-06-08 02:02:13 | 地方自治
 6月に入り、湿気と暑さが感じられるようになりました。梅雨と夏の到来ですね。関東も例年に比べ2週間近く早く梅雨入りしたということです。

 さて、そんな中で気になるのは、やはり今夏の節電の問題です。被災地の状況、社会全体の経済活動、電気の需給バランスなどを考えると、当然無視できない課題です。

 区民活動の権利が制限されることと常にぶつかり合う問題で、私自身もジレンマを抱えています。

 ところで、震災直後に実施された節電対策としての計画停電は、多くの産業活動や国民の日常生活に困難をもたらしたため、とりあえず「不実施が原則」ということになりました。

 しかし、空調利用が本格化する夏の到来を受け、需給バランスの崩れが予測される状況下では、何らかの電気需要の抑制策を講じないわけにはいきません。そこで、伝家の宝刀として出されたのが、電気事業法第27条の規定です。(「夏期の電力需給対策について」<平成23年5月13日 電力需給緊急対策本部決定>

 27条には次のようにあります。「経済産業大臣は、電気の需給の調整を行わなければ電気の供給の不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし、公共の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、その事態を克服するため必要な限度において、政令で定めるところにより、使用電力量の限度、使用最大電力の限度、用途若しくは使用を停止すべき日時を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者の供給する電気の使用を制限し、又は受電電力の容量の限度を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者からの受電を制限することができる。」

 しかし、ここには誰がどのような制限を受けるのかといった、細かく具体的な規定がありません。そこで、同法の細則を定め具体性を持たせるために電気事業法施行令というものが存在します。

 その第2条第1項に次のようにあります。「法第二十七条の規定により使用電力量の限度又は使用最大電力の限度を定めてする一般電気事業者、特定電気事業者又は特定規模電気事業者の供給する電気の使用の制限は、五百キロワット以上の受電電力の容量をもつて一般電気事業者、特定電気事業者又は特定規模電気事業者の供給する電気を使用する者について行うものでなければならない。」

 法令独特の、厳密性を求めるがゆえに分かりにくい文章となっていますが、要は「東京電力と東北電力管内の、500キロワット以上の電力消費をする施設を持つ事業者は制限を受けますよ」ということです。

 500キロワット以上とはどれぐらいの電力で、どれぐらいの事業所が該当するのでしょう。電気について素人の私としては、正直、パッと想起できる数字ではありません。区の担当部に確認をしてみたところ、区内では約60くらいあるようです。そのうち、自治体としての江戸川区が抱える施設では、本庁舎、タワーホール船堀、総合文化センター、スポーツセンターの4施設が、500キロワット以上の電力消費の契約をしているということです。

 ですから、この4施設を抱える江戸川区は電気事業法第27条の使用制限の適用を受けるということです。

 実際に使用制限が開始される期間や時間帯は、東京電力管内の場合、7月1日から9月22日の平日(土日祝日は除く)の9時から20時の間ということです。政府はこの間における電気の使用を「昨夏比15パーセント減」とすべしと要請してきています。

 区としてはさらに踏み込み、20パーセント減を目標として掲げ、取り組むという方向を示しています。区内の産業活動と区民の経済活動への影響を最小限に抑えるためににも、この方向性については私も賛意を示すところです。

 ただ、そのことが同時に、施設の夜間利用制限へと影響を及ぼし、区民の学習機会を奪い、健康増進の妨げとなっているのは何とも残念なことです。区民の方々から節電をめぐる賛否両論の意見をもらい、私も正直、悩んでいます。




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