木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

区内の空間放射線量について

2011-06-24 23:46:49 | 地方自治
 みなさんの最大の関心事の一つが、今自分が住んでいる地域の放射線量ではないかと思います。いわゆる「空間放射線量」です。

 しかしながら、わが江戸川区、福島の事故以来みなさんもイライラしながら不安に駆られてきていたと思うのですが、行政の腰が重いこと、重いこと。

 確かに、当初、各地で素人の職員さんが(専門家が少ないので、素人であることを非難することはできません)あたふた測定するものだから、数値に統一性が欠け、かえって混乱を招いてしまったきらいは、なくもありません。区の判断は、それを懸念してのことだ、ということでした。

 しかし、どうでしょう? 私は逆に測定しないことで、つまり安心するための客観的データがまったく提供されない状況が何カ月か続いてきたことで、かえって区民の放射線量に対する不安が増幅してきてしまったように思われるのです。違いますかね?

 やはり、住民が不安に思うなら、できるだけ測定しべきです。そして、速やかにデータを公表しることが大切です。これが情報公開時代にふさわしい、情報提供制度というものです(注1)。

 しかし、ここにきてようやく各行政側に動きが出てまいりました。すでに区のホームページをチェックされた方や報道などで確認された方も少なくないと思いますので、簡単に記しておきます。

 まず、先週来、東京都が約100カ所で線量測定を行いました。江戸川区内では6月18日に、そのうち4カ所で測定されております。

 それぞれ地上5㎝と1mで測定しておりますが、これらの測定値の単位はマイクロシーベルト/h、つまり1時間あたりのマイクロシーベルトです。ですから、法律などで取り上げられている限度の年間の被ばく線量とは単位が異なりますので、推定換算しなければなりません。一喜一憂するのは単位を換算してからにしましょう。(都の測定結果は「東京都による空間放射線量の測定結果(6月18日東京都実施)について」で確認できます。)

 では、推定される年間被ばく量の計算方法は? 基本的には、ある測定値が観測された定点に、24時間365日、人がい続けるということは考えられません。ですから、人が屋外にいると思われる時間や屋内にいると思われる時間を推定し、観測された値にその時間をかけて、年間被ばく量の値を推定するのです。区では次のような計算方法を採用したようです。

 年間の推定被曝線量=365日×(計測値×8時間+計測値×0.4×16時間)

 あくまでも推定値です。これをさらに辛口に推定することも、甘く推定することもできます。例えば、外にいる時間をより長く仮定すれば、当然被ばく量は増えます。

 ただし、専門の放射線医学総合研究所などでも同様の条件を仮定して年間被ばく量を推定していますので(「放射線被ばくに関する基礎知識 第6報」)、私は、基本的に専門家による科学的裏付けのある無難な計算方法である考えます。

 それでは、気になる、そこから計算された推定年間被ばく量は? 地上5㎝と1mの観測地点それぞれの最高地点における推定被ばく量です。地上5㎝のところで0.79ミリシーベルトで、地上1mのところは0.68ミリシーベルトです。

 0ミリシーベルトではないので、もちろん無害とは言えませんが、放射線障害防止法がいうところの年間被ばく線量の限度の1ミリシーベルトよりも低い値ですので、過度に心配する必要はないようです。日本に住む限り誰もがどうしても浴びてしまう自然被ばくが1.5ミリシーベルトあることを考えれば、あまり神経質になって心配を募らせるのも、かえってよくありません。

 さて、以上は東京都が先週、実施した空間線量測定です。都調査では江戸川区内の測定カ所はわずかに4カ所だけでした。区民や議会から、区も独自に線量測定をすべきだ、とずいぶんと要望されてきました。9万5000人以上の子どもたちが住む江戸川区です(注2)。保護者の方々を中心とした区民の心配は自然なことと理解できます。

 そうした声がようやく届いたということでしょうか。区も独自に線量測定をするという方針を今日(6月24日)、ようやく示しました(「区内における放射線量の測定について」)。遅い決断でしたが、原発事故による災害が収束していない以上、やらないよりはずっとよいことです。

 今回発表された実施方法では、6月下旬から7月上旬にかけて「小・中学校、保育園、幼稚園、公園など19か所で測定」するということです。測定カ所はまだ少ないようにも思われますが、順次、拡充していくことを望むところです。また、速やかな測定結果の公表と分かりやすいデータの説明も欠かせません。



(注1)一口に情報公開制度といっても、そこにはいくつかの性質別の類型があります。諸説あるようですが、一般に、①法令や例規に基づく情報開示請求制度(「子どもの内申書を見たいから公表して」と開示請求するケースなど)、②法令や例規に基づく情報公表義務制度(すでに法律や条例によって、例えば入札結果を公表することになっており、それに基づいて公表されるケースなど)、③情報提供制度(特に法的義務はないけれど、広報などを通じ「区民検診を実施します」「ダンスサークル○○が会員募集します」などの情報サービスを提供するケースなど)、があると言われます。

(注2)「子どもたち」とは0~14歳までの年少人口のことを指します。平成22年度のデータによると、区内の年少人口は95347人です。




江戸川区議会議員 木村ながと
公式HP http://www5f.biglobe.ne.jp/~knagato-gikai/
ブログ http://blog.goo.ne.jp/knagato1/
ツイッター http://twitter.com/#!/NagatoKimura