金沢ミステリ倶楽部

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第5回例会報告『ソルトマーシュの殺人』読書会

2024年05月18日 19時51分00秒 | 例会
金沢ミステリ倶楽部の例会を振り返ります。

第5回例会は2008年9月23日に開催されました。
参加者は6名で、グラディス・ミッチェルの『ソルトマーシュの殺人』を合評しました。
作者グラディス・ミッチェルは、日本ではあまり作品が翻訳されておらず、そのため、いわゆる黄金時代の末期に活躍した過去の人だと思われてきたふしがありますが、実は女王アガサ・クリスティに匹敵する作家歴をもち、ときにクリスティやセイヤーズと並び称されるほどの存在として、本国では非常に評価の高い作家であります。
彼女は、精神分析学者で、魔女の血を引くともいわれる名探偵ミセス・ブラッドリーを探偵役としたシリーズで、英国ファルス・ミステリを代表する作家となりました。
今回の合評では、主に、ミッチェルのオフビートな魅力・・ファルス・ミステリとは何かということや、彼女が生んだ、ミセス・ブラッドリーについて語り合いました。
お約束の展開をはずしたり、本来なら盛り上がるはずのないところで突如盛り上がったりする面白さは、ミッチェルの魅力ですが、奇抜でエキセントリックな内容であるにも関わらず、その語り口は全く扇情的ではありません。
そのミスマッチさ、オフビートな魅力は、トリックやフェアプレイを重視する読者には、なかなか受け入れにくいものがあるかと思われますが、しかしそここそ、彼女の作品を際立たせる、独特の魅力として、ミステリの奥の深さ、幅の広さを読者に感じさせるでしょう。
ミッチェルがその中に入る、「ファルス派」ですが、代表的な作家には、ミッチェル、マイケル・イネス、エドマンド・クリスピンなどがいます。
奇人変人が多数登場し、ひねったユーモア、奇想、ドタバタ騒ぎなどを特徴とするファルス・ミステリは、英国ミステリの重要な一翼を担ってきました。
日本ではあまり多数の読者を獲得してはいないと思いますが、ミステリは奥が深いなと思わせられる作品が多くありますので、皆さんも一度試してみてはいかがでしょうか。
合評の他にも参加者のオススメの本の紹介をしたり、推理ゲーム「クールド」をしたりして楽しみました。