金沢ミステリ倶楽部部員のミステリとの出会いについて載せます。
つぐみ 生まれて初めて読んだ活字のミステリはアガサ・クリスティー『火曜クラブ』のジュヴナイル版『名探偵マープルおばさん』(各務三郎訳)です。
母親に連れられて小さい頃はよく近所の図書館に通っていたので、それなりに本が好きな子供ではあったと思います。今思えば、あまり子供を厳しく管理するタイプの家庭ではない我が家において、息子に本を読ませるのは教育の一環だったかもしれません。
ただ、子供はなかなか親の思うようには育たないものです。最初は母の見せる児童書をよく読んでいたのですが、小学生も学年が上がってくると自我が芽生え、人に勧められる本ではなく自分の読みたい本をたくさん選ぶようになります。ちょうどそのような時期に最も有名だから間違いないとクリスティーを手に取ったのだと記憶しています。ミス・マープルを選んだのは、編み物をしているおばあさんの表紙絵を見てこれなら安心して読めると思ったからかもしれません。大人っぽい知的な物語に触れてみたい一方で血とか死体、暴力が多く出てくる話は怖がりの僕には抵抗があったのです。
そしていざ読んでみると、知力によって読者をあっと言わせる名探偵の世界は、男らしい、腕力によるかっこよさに全く魅力を感じない変わり者の小学生にとって、なんとも魅力的でした。クラスメイト達に対して「自分はみんなが知らない面白いものを知っているんだ」と軽く優越感を抱いたものです(いやな子供ですね)。
大人になって『火曜クラブ』を読み返すと、ミス・マープルの推理は他のメンバーの「考えすぎ」な説と比較して実にシンプルで、かついちばん腑に落ちるものが多いことに気が付きます。特に遺言状が白紙のものにすり替えられた事件は、これ以上ないほど理解しやすいトリックなのにちゃんと意外なのです。またビーチを舞台に恐ろしい犯罪計画が描かれる一作は、ビビリの僕には刺激が強かったもののそれを上回る面白さがあったのを思い出しました(因みに、クリスティーはこの短編の一部のアイデアを別の作品で応用しています)。
高校時代にはまった館シリーズ、国名シリーズも夢中になって読みましたが、元を辿ると僕がミステリマニアになる運命は小学生の時点で決まっていたと言えそうです。
つぐみ 生まれて初めて読んだ活字のミステリはアガサ・クリスティー『火曜クラブ』のジュヴナイル版『名探偵マープルおばさん』(各務三郎訳)です。
母親に連れられて小さい頃はよく近所の図書館に通っていたので、それなりに本が好きな子供ではあったと思います。今思えば、あまり子供を厳しく管理するタイプの家庭ではない我が家において、息子に本を読ませるのは教育の一環だったかもしれません。
ただ、子供はなかなか親の思うようには育たないものです。最初は母の見せる児童書をよく読んでいたのですが、小学生も学年が上がってくると自我が芽生え、人に勧められる本ではなく自分の読みたい本をたくさん選ぶようになります。ちょうどそのような時期に最も有名だから間違いないとクリスティーを手に取ったのだと記憶しています。ミス・マープルを選んだのは、編み物をしているおばあさんの表紙絵を見てこれなら安心して読めると思ったからかもしれません。大人っぽい知的な物語に触れてみたい一方で血とか死体、暴力が多く出てくる話は怖がりの僕には抵抗があったのです。
そしていざ読んでみると、知力によって読者をあっと言わせる名探偵の世界は、男らしい、腕力によるかっこよさに全く魅力を感じない変わり者の小学生にとって、なんとも魅力的でした。クラスメイト達に対して「自分はみんなが知らない面白いものを知っているんだ」と軽く優越感を抱いたものです(いやな子供ですね)。
大人になって『火曜クラブ』を読み返すと、ミス・マープルの推理は他のメンバーの「考えすぎ」な説と比較して実にシンプルで、かついちばん腑に落ちるものが多いことに気が付きます。特に遺言状が白紙のものにすり替えられた事件は、これ以上ないほど理解しやすいトリックなのにちゃんと意外なのです。またビーチを舞台に恐ろしい犯罪計画が描かれる一作は、ビビリの僕には刺激が強かったもののそれを上回る面白さがあったのを思い出しました(因みに、クリスティーはこの短編の一部のアイデアを別の作品で応用しています)。
高校時代にはまった館シリーズ、国名シリーズも夢中になって読みましたが、元を辿ると僕がミステリマニアになる運命は小学生の時点で決まっていたと言えそうです。