『追憶の夜』 山上たつひこ マガジンハウス 2003
23年前に起きた残虐な「児童誘拐殺人」。
その日何があったのか?
金沢の私立探偵の前に、新たな謎と思いもよらぬ真実が姿を現すハードボイルドミステリ。
県立図書館の前庭(ぜんてい)は駐車(ちゅうしゃ)した車でいっぱいだった。歩いてきたのは正解である。
それにしても、正面玄関の前が車で立錐(りっすい)の余地もないというのはいかがなものか。
来館者は車のすき間を縫うように進まないと玄関ロビーに行きつけないのである。設計者が悪いのか、運営者が悪いのか。 (p15)
遠慮のない声が響いた。受付のカウンターで八十歳に近いかと思われる老人が職員の女性相手になにか喋(しゃべ)っていた。
「……全集を読んだ」、「あれは読みやすかったが……のほうはもうひとつ」、とぎれとぎれに話が届いてくる。どうやら本をたくさん読破(どくは)したことを自慢しているらしい。
かなりの大声で、図書館内においては"非常識"の領域(りょういき)に入る行為である。しかし、それをとがめるような視線は周囲にはない。職員も嫌な顔をせず相手になっている。それが事務的ではなく、感情のこもった応対であることに成瀬はちょっと感動した。
東京の図書館には絶対にないなごやかさだろう。(p22)

漫画「がきデカ」で一世を風靡したやまがみたつひこさんのハードボイドミステリーです。金沢が舞台になっています。
山上さんは現在金沢に住んでおいでるそうです。
創作民話「浅野川夢譚かわうそと風鈴」も書かれたそうです。
23年前に起きた残虐な「児童誘拐殺人」。
その日何があったのか?
金沢の私立探偵の前に、新たな謎と思いもよらぬ真実が姿を現すハードボイルドミステリ。
県立図書館の前庭(ぜんてい)は駐車(ちゅうしゃ)した車でいっぱいだった。歩いてきたのは正解である。
それにしても、正面玄関の前が車で立錐(りっすい)の余地もないというのはいかがなものか。
来館者は車のすき間を縫うように進まないと玄関ロビーに行きつけないのである。設計者が悪いのか、運営者が悪いのか。 (p15)
遠慮のない声が響いた。受付のカウンターで八十歳に近いかと思われる老人が職員の女性相手になにか喋(しゃべ)っていた。
「……全集を読んだ」、「あれは読みやすかったが……のほうはもうひとつ」、とぎれとぎれに話が届いてくる。どうやら本をたくさん読破(どくは)したことを自慢しているらしい。
かなりの大声で、図書館内においては"非常識"の領域(りょういき)に入る行為である。しかし、それをとがめるような視線は周囲にはない。職員も嫌な顔をせず相手になっている。それが事務的ではなく、感情のこもった応対であることに成瀬はちょっと感動した。
東京の図書館には絶対にないなごやかさだろう。(p22)

漫画「がきデカ」で一世を風靡したやまがみたつひこさんのハードボイドミステリーです。金沢が舞台になっています。
山上さんは現在金沢に住んでおいでるそうです。
創作民話「浅野川夢譚かわうそと風鈴」も書かれたそうです。