goo blog サービス終了のお知らせ 

金沢ミステリ倶楽部

金沢ミステリ倶楽部の公式ブログ。

参加・見学してみたい方はメッセージを送ってね。

凱旋祭

2015年11月23日 00時20分00秒 | ミステリin金沢
先日紹介した『銀杏坂』http://red.ap.teacup.com/lovelib/35.htmlには
「明治のころ、この像のまわりで日本の戦勝(せんしょう)を祝う祭りが行われ…」

という箇所がありますが、それは泉鏡花の「凱旋祭」に書かれています。

 紀元千八百九十五年―月―日の凱旋祭は、小生が覚えたる観世物の中に最も偉なるものに候ひき。先づ巽公園内にござ候記念碑の銅像を以て祭の中心といたし、ここを式場にあて候。
 この銅像は丈一丈六尺と申すことにて、台石は二間に余り候はむ、兀如として喬木の梢に立ちをり候。右手に提げたる百錬鉄の剣は霜を浴び、月に映じて、年紀古れども錆色見えず、仰ぐに日の光も寒く輝き候。
 銅像の頭より八方に綱を曳きて、数千の鬼灯提灯を繋ぎ懸け候が、これをこそ趣向と申せ。一ツ一ツ皆真蒼に彩り候。提灯の表には、眉を描き、鼻を描き、眼を描き、口を描きて、人の顔になぞらへ候。


ここで書かれているのは兼六園の大和武尊の銅像ですが、鳥がよりつかないということで、イグ・ノーベル賞を受賞しています。

『銀杏坂』

2015年11月21日 00時00分00秒 | ミステリin金沢
『銀杏坂』 松尾由美 光文社 2001
 架空の都市、香坂市を舞台に幽霊や超能力が登場する5つの事件を中年の刑事木崎が解決する連作ミステリ。
 作者は金沢出身で、この作品で金沢市民文学賞を受賞した。 

神話上の人物をかたどった巨大な銅像が建っているちょっとした広場だった。明治のころ、この像のまわりで日本の戦勝(せんしょう)を祝う祭りが行われ、敵兵の生首を模(も)した提灯(ちょうちん)などが飾られる奇怪なものだったという――
いや、あれは事実ではなく、水沼霜月(みずぬましもつき)の小説の中の出来事だったろうか。
(p288)




『義血侠血』

2015年11月17日 00時42分00秒 | ミステリin金沢
『義血侠血』(泉鏡花)     
水は沈濁して油のごとき霞が池の汀(みぎわ)に、生死も分かず仆(たお)れたる婦人あり。四肢を弛(ゆるめ)て地に領伏(ひれふ)し、身動きもせでしばらく横たわりたりしが、ようよう枕を返して、がっくりと頭(かしら)を俛(た)れ、やがて草の根を力におぼつかなくも立ち起がりて、よろめく体(たい)をかたわらなる露根松(ねあがりまつ)に辛くも支えたり。
 
その浴衣は所々引き裂け、帯は半ば解(ほど)けて脛(はぎ)を露(あら)わし、高島田は面影を留めぬまでに打ち頽(くず)れたり。こはこれ、盗難に遇(あ)えりし□□□□が姿なり。


泉鏡花の『義血侠血』の中に兼六園の根上松で出て来ます。盗難発生現場です。


『加賀兼六園の死線』

2015年11月16日 00時36分00秒 | ミステリin金沢
『加賀兼六園の死線』 津村秀介 光文社 1997
 大阪から金沢に向かう特急サンダーバード1号の車中で刺殺体が発見され、翌日金沢の名勝兼六園でも女性の刺殺体が。サンダーバードと兼六園、二つの現場には共通の痕跡が…。 

 老夫妻は大きい池を半周して、池畔(ちはん)の栄螺(さざえ)山(やま)に足を向けた。それは霞が池を彫り広げたときの残土(ざんど)を盛り上げて完成した築山(つきやま)であり、そのかたちが、貝の栄螺(さざえ)ににているところから、そう呼ばれているらしい。
 池を見下ろして、栄螺の貝殻(かいがら)のようにぐるぐると回って、頂上に向かう遊歩道(ゆうほどう)ができていた。
 山頂に遊雨亭(ゆううてい)と名付けられた茶室が建っている。
 老夫妻は、まったく人気ない栄螺山の、散策を満喫(まんきつ)した。(略)
 そして、下り道へかかるため、遊雨亭の裏側へ回ったとき、
 (………!)
 妻は声をつまらせて、夫に縋(すが)り付いた。
 (何だ?)
という表情で夫の足もともとまった。
 女性が倒れていたのだ。
 ただの倒れ方ではなかった。
 ハイヒールの片方は、投げ捨てられたかのように坂道に転がっており、ベージュのスーツが血に染まっている。(p23~24)





兼六園の栄螺山が犯行現場なんですね。しばらく前に工事していましたが、もう工事は終わったのでしょうか?

『あまからカルテット』

2015年11月15日 00時00分00秒 | ミステリin金沢
『あまからカルテット』柚木麻子 文藝春秋 2011.10

「美味しい……。加賀棒茶だ。金沢のお茶ですね」
「まあ、よくご存じなんですね。私の出身地なんです」


仲良し女四人組が恋の悩み、仕事の悩みを助け合って解決する一応日常の謎ミステリです。
恋人が昔の同級生の居酒屋に通っているのを知ってショックを受けた友達のために
他のメンバーがその居酒屋を発見して行ったシーンです。
居酒屋の彼女が金沢出身でした。
おいしすぎるハイボールの理由は器でした。

「金沢在住の若手作家に、ハイボールのために特注して作ってもらったものなんです。電球を吹く技術を利用して、極限までガラスを薄くしました。『うすはり』と呼ばれています」