ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

カフカ「変身」を読んで(その1)

2018年10月13日 21時47分03秒 | 読書
カフカの「変身」は、ある朝目覚めたら毒虫になっていた男とその家族が織りなす物語です。
この小説の書き出しは、こうです。
『ある朝、グレーゴル・ザムザが不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドのなかで、自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた。』(白水社版の書き出し)

人間や何かが他の何かに変化したり、させられたりの物語は古今東西多くのものがあります。
神話や伝説・説話などには民族や地域を問わず「変身譚」が必ずあると言って良いでしょう。
これらの「変身譚」では、何かがこうなったからとかの原因が変身の契機になっています。
神の怒りに触れたからカエルにさせられたとかの理由があるのが普通です。
何かの原因が結果を生むというのが私たちの考える常識ですが、「変身」の作者は「毒虫になってしまっている」経過を『不安な夢から目を覚ましたところ』と述べています。
作者はこの小説では虫に変身した原因をはっきりとは述べてはいませんが、小説の書き出しを見る限りでは、『不安な夢から目を覚ましたこと』が関係しているようだと見ることが出来ます。

不安な夢と「変身」との因果関係はこの小説では作者により最後まで述べられることはありません。

人間が人間でないモノに変わっていったのがこの小説「変身」であったなら、人間でないモノが人間に「変身」していった物語はないのであろうか。
私たちは後者の例を一つ挙げることが出来ます。「ピノッキオ」がそれです。
ピノッキオは木で作られた人形であったのですが、善行を行い、人間へと変身していきます。善行を行ったモノが人間へと変身したのなら、虫へと変身をしてしまった人間は「善行」をしなかったからなのでしょうか?

書かれなかった「変身に至る構造」を考察する課題は作者から離れ、読者の手に委ねられているのです。









コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アトムの家庭教師を頼まれる | トップ | タイガーには二種類がある(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事