LITTLEWHEEL Modeler's Diary

モデルフィニッシャー北澤志朗が、カーモデル作りに明け暮れる日々の暮らしを赤裸々に綴ります。

「エリザベス ゴールデンエイジ」見てきました

2008年02月20日 11時20分15秒 | 映画&小説関連
前作「エリザベス」から10年も経って、再びシェカール・カプールのメガホンになる続編です。なぜ今頃?という声は製作中から少なくなかった様ですが、見ればなるほど納得、の1本でした。

「エリザベス」では不遇の青春時代を送っていた妾腹の王女が、思わぬ運命の悪戯からイングランド王位につくまでを描いたわけですが、今回は女王となってから10数年後の物語。

当時無敵の大帝国だったスペインとの戦争という未曾有の国難を縦軸にストーリーは進行します。それは単なる外交問題ではなく、プロテスタントの英国国教会と熱烈なカトリック国であるスペインの宗教対立なんですね。
映画の中ではカトリックは原理主義者、プロテスタントは自由主義者として描かれています。このへんには現代社会の状況が少し投影されているような気がしますな。
ここにカトリック教徒でイングランドの正当な王位継承者を名乗るスコットランド女王メアリー・スチュアートの存在がからみ、水面下でエリザベス暗殺計画(スロックモートン事件)が…とまあ、陰謀うずまく動乱の時代。

一方、物語の横軸には、探検家ウォルター・ローリーとの出逢いによって、個人的な幸福を夢見ても得られない孤独な女王の苦悩が描かれます。国家と結婚したので夫は持たない、と決意している女王は、忠実な侍女で同じ名を持つエリザベスを自分の身替わりのようにローリーに接近させて、疑似恋愛を味わいますが、これがまた意外な方向へ転がっていき…

とまあ、個人的にも政治的にも苦労のたえない女王の苦闘を描いたこの映画を見ると、英国民の王室に対する思い入れが、ちょっとは判るような気がします。今でも敬愛著しいエリザベス1世ですからね。

映画全編を通して印象的なのは、やはり主演のケイト・ブランシェットの演技の素晴らしさ。前作では青春時代のエリザベスを初々しく演じて絶賛されましたが、今回は堂々たる女王の風格や威厳を見事に表現しています。
この重厚さは、まさに女優としての10年分の経験がもたらすものなのか。10年開いたのはそのせいだったのね、と納得です。
スペインとの決戦を前に、ドレスの上に甲冑をまとって兵士たちを鼓舞するシーンは、あまりにもカッコ良くて鳥肌が立ちました。
戦争に勝利した後、白いドレスをまとった姿の神々しさ、そして赤ん坊を抱いて祝福する慈母のまなざし。こりゃもう女王降りてきてるな、って感じでした。

知略を駆使して献身的に女王に使える重臣ウォルシンガムには、前作に続き名優ジェフリー・ラッシュ。この人の重量感が、映画全体をピシッと引き締めてくれてます。
探検家ローリーには野生味溢れるクライブ・オーウェン。まさにハマリ役でした。

そして今作最大の収穫は、なんといっても侍女エリザベス・スロックモートンを演じたアビー・コーニッシュでしょう。
出てきた頃のニコール・キッドマンをちょっと思わせるタイプですな。まだキャリアの浅い、新人といっても良いような女優さんですが、上品さとコケティッシュさバランスよく同居していて非常に魅力的。
女王への深い忠誠心(というより姉妹のような愛情か)とローリーへの恋の板挟みになるという難しい役どころを、見事に演じています。
この人は多分これからスター街道を驀進するはず。次の出演作がとても楽しみです。

スペインの大艦隊を迎え撃つ海戦のシーンは、実物大の船を作ってCGと組み合わせたという事ですが、なかなか迫力がありました。しかし、ハリウッドものとは違って、アクション馬鹿映画には堕していない。
戦乱シーンはあくまで物語の背景に過ぎないというか、それをメインで見せる映画、ではないんですね。そこはさすがにイギリス映画らしいというか、抑えが効いていて、むしろ大人っぽい作りだな、と思いました。

というわけで、歴史映画好きにはオススメな作品です。大いに満足しました。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (rocketeer)
2008-02-25 23:54:13
遅ればせ、最近やっと前作「エリザベス」を観ました。
彼女の奔放な人間性やプロテスタントとカソリックの世界観などは、やはりちょっと現代的な味付けがなされているようですが、カソリックの権威主義的な本質を強調する手法とも取れます。とにかく堂々たる作品で圧倒されました。ケイト・ブランシェットはもうエリザベス女王以外には見えません(笑
こういう風土や歴史を背景に、後に数々の英国車が登場したんだなあと思うと妙に納得です。こじつけですけど(笑
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プロモデラー千夜一夜 (職人)
2008-02-27 22:16:48
最後の一行が痛快でした。
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歴史って繋がってますよね (kitazawa)
2008-02-29 00:21:12
>rocketeerさん
クルマってその国の文化や歴史を内包していますから、最近はグリーバリゼーションとかで個性が薄まってきたなんて言いますけど、やっぱりそれぞれのお国柄っていうのはまだあると思うんですよね。英国のクルマにはやっぱり英国の歴史が詰まってるんだと思います。他の国のクルマに乗るってのは、そういう所が面白い訳ですよね。
私は自分で乗るなら、やっぱりドイツ車のカチッとした感じが好きなんですけど、ドイツのメーカーがここ一発気合いを入れると、どこか○チスっぽい感じが漂うので、ヤバいなあ、なんて思っちゃいます。最近のアウディのカッコ良さなんか、ドイツ超科学兵器っぽいアブない感じがすると思いません?

>職人さん
ありがとうございます。やっぱり手を動かしている人が一番偉いって事ですよね。どうも最近の世間はそのあたりがねえ(ぶつぶつ)。

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