LITTLEWHEEL Modeler's Diary

モデルフィニッシャー北澤志朗が、カーモデル作りに明け暮れる日々の暮らしを赤裸々に綴ります。

映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

2009年03月06日 23時59分10秒 | 映画&小説関連
久々に一日オフにして、映画を見に行ってきました。「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」。

80歳の老人として生まれ、年々若返っていく男の数奇な生涯を描いたこの映画、「セブン」「ファイト・クラブ」などを撮ったデヴィッド・フィンチャーの新作です。予告編を見て以来、ずっと見たかったんですよね。
フィンチャー監督のこれまでの作品は、どちらかと言うとグロテスクで刺激の強いものが多かった気がしますが、今回はグロテスクな面は少なく、非常に美しい映画です。しかし思索的・哲学的という点では、これまでの作品に通底する所があると思いました。

主人公ベンジャミンを演じたブラッド・ピットは、そりゃもう見事な演技でした。主人公ははじめ、表面は年老いているが中身は子供あるいは若者です。これって、演じ様が無いような役柄ですが、ちゃんとそういう人に見えるんですね。特殊メイクがどうのこうのじゃなく、中身の幼さを演じてみせるというのは、考えてみると凄い事ですよ。驚きました。
後半、どんどん若返って輝くような美青年になっていくあたりも、鬼気迫るものがありましたね。中身が年老いているのが画面から感じられるような気がするんですよ。

私ももう40代も後半ですから、たまに「20代の頃に戻れたら…」なんて考える事があります。歳を取るに連れて肉体が若返っていくというのは、若くない人にとっては嬉しい事のように思える。しかし、この映画の主人公は、単に肉体年齢が若返るんじゃなく、人生自体が逆回転なんですね。それは嬉しい事のように見えて、実はそうじゃない。周囲の人々とは完全にすれ違いの人生ですから。

主人公が生涯かけて愛する女性、デイジーは、少女の時には老人のようなベンジャミンの中にいる「少年」にちゃんと気づくんですが、大人になるにつれて彼の本質が見えなくなっていく。80年の人生のちょうど真ん中あたりで、2人の人生は交わり、ようやく理解し合って束の間の幸せを味わいますが、それは長くは続かないんですね。絶対にハッピーエンドにならない事が判っていながら深く愛し合う2人を見続ける我々観客は、ヒリヒリするような不安と哀しみを味わいます。
デイジーを演じたのは、「エリザベス」の英国女王役で知られるケイト・ブランシェット。この女優さんは気品があって、昔のハリウッドのスターのようですね。この人の存在が映画をとても格調高いものにしていました。相手役が彼女じゃなかったら、この映画は成功しなかったかもしれません。

考えてみれば、我々人間はみんな1人で生まれて、1人で死ぬんですね。誰かと本当に理解し合うという事は、なかなか希有な事です。結局ある意味みんな孤独で、みんなすれ違いなんですね、実は。それでも、希有な出会いはちゃんとあって、我々は人生の喜びを何かのカタチでそれぞれに味わっている。
逆回転のベンジャミンの人生は、そんな我々みんなの人生のカリカチュアなんですね。だから、見ていると色々な事を考えさせられます。生きる事は哀しいけれど、それでも生きている事は嬉しい、なんてね。

3時間近い長尺の映画の中で、ベンジャミンとデイジーの恋物語以外のパートもとても面白く出来ているので、全く飽きさせません。ベンジャミンに自らの人生を切り開くきっかけを作ってくれるタグボートの船長や、初恋の相手となる外交官夫人、本筋には全く関係ないのにイイ所で必ず出てくる「7回雷に打たれた男」など、どのエピソードもそれだけで1本の映画になりそうな深みがありました。

物語の終幕はなんとも哀切ですが、映画のエンディングはとても爽やかでした。切ない音を立ててクルクルと回り続けたコマが、パタンとキレイに止まったような、切れ味の良い閉じ方。「お見事!」とひと声かけたくなるような、小粋なイイ映画でした。





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2 コメント

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映画評 (こぶら酒)
2009-03-07 09:06:51
映画はお好きみたいですね。
私は直近(随分前)で観たのが「RAY」です…

この映画、テレビCMでポ~ンと感じたのが、
①老人から若返っていくストリーが斬新である。
②青年期にインディアンらしき単車に乗っている。
この誠に安直な二つでした。

北澤さんの映画評からすると、
内容は濃くて飽きさせない小粋な映画と言う事!
私も見に行ってみようかと言う気になりました。

さて、GT350Rの進み具合方ですが、
昨日は思い切って早起きして少しは進めました。
裏側のホイールは気長筋彫り作戦で、
何とかかんとか、くり貫きに成功しました。
かなりガリガリ状態ですが、ほとんど見えない部分
なのでペーパーをかけて頃合いに整形しておきます。
エンジンのフードヒンジの穴埋めをプラバンで行い、
フードは乗せるだけにしようかと思っています。
ヒンジは金属で作って実車さながらの開閉式に
しようかとも思いましたが、擦れ合って塗装がはがれ
そうなので諦めました。勿論、作る技術が問題…
ファンネルはくり貫いてみました。
これは時間をかけてやる作業ではないと感じました。
実車のファンネルはエラクシャープで薄い金属、
既製パーツの削りこみでは到底無理と判断。
プラ板か、アルミ板で作る事に挑戦します。
余計に難しいかもしれませんが、トライします。
今日はボディーと内装のバスタブ、シャーシの
仮組みをやろうかなと思っています。
これは北澤さんのアイディアを大いに参考に
させて頂きます。決して盗むのではありません(笑

久しぶりに、一つのキットに集中しています。
これなら、何とか完成まで漕ぎ着けられそうです。
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どんどん盗んじゃって下さい (kitazawa)
2009-03-09 09:42:34
私のアイデアで使える所がありましたら、どうぞ遠慮無く!
フードヒンジは確かにあのままではマズい感じですね。どうにかしたいと思っています。以前、このブログで作ったジェイダトイズのカマロ・コンセプトには、ヒンジが無かったので、簡単に自作しました。今回も同じやり方をしようと思っています。
お互い頑張って完成させましょう!
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