銀の匙かげん

後味よい 究極ハッピーエンドをめざす
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ぼちぼちと 備忘メモとして

存在の耐えられない軽さ ダニエル・デイ=ルイスの存在

2009-06-16 | 映画
TVの芸能ニュースやネットのない時代の 私のウィキペディア。舞踏会?黒革?の手帳ならぬSノート。早熟で活字中毒のSの、名前・地名研究 読書・映画記録などなど 美しい文字でぎっしり書かれた雑記帳。こっそりのぞいては、大人の世界に入っていた。周五郎の登場人物評、黒沢明 ベルイマン フェリーニ カサベテス 8 1/2 サテリコン・・・うつろな記憶。今では奇抜なタイトルだけ覚えている。こっそり見の幼い子には、読むのも覚えるのも難しい、豊かな情報。今も本や映画を選ぶ指針となっている。もう遠い、かくも長き不在のSです。
その中にも・・・「存在の耐えられない軽さ」

最近は、活動活発なダニエル・デイ=ルイス。「眺めのいい部屋」脇役での強い印象。細長い綺麗な手足や物腰の優雅さ、ドキドキする叶わない存在。
「NINE」の予告に映し出される姿。
軽い身のこなし。見る側を、瞬間に圧倒させる演技の魅力。やっぱり凄いです。マストロヤンニが見え隠れ?と思いきや、すっかり乗り移ってます。どんな役も自分のモノにしてしまう。
そう、トマシュも一体でした

(1988) 米
THE UNBEARABLE LIGHTNESS OF BEING
★★★★★
原作は、チェコのミラン・クンデラが、亡命先のフランスで発表した小説。で、アメリカ映画。(複雑で不思議な事情が)
プラハの春 チェコ事件を背景に、有能で女好きの脳外科医トマシュ(ダニエル・デイ=ルイス)と、タイプの異なる二人の女性、テレーザ(ジュリエット・ビノシュ)と画家サビーナ(レナ・オリン)を描いた作品
当時の実際のフィルムと重ねた映像は、迫力があり、白黒の時間を一層感じさせます。

監督:フィリップ・カウフマン
製作:ソウル・ゼインツ
製作総指揮:ベルティル・オルソン
原作:ミラン・クンデラ
脚本:ジャン=クロード・カリエール
フィリップ・カウフマン
撮影:スヴェン・ニクヴィスト
音楽:レオシュ・ヤナーチェク

ダニエル・デイ=ルイス 
ジュリエット・ビノシュ
レナ・オリン 
デレク・デ・リント 

軽快な音楽に委ねられ、第1楽章、第2第3楽章という感じで、長さを忘れます。
邪魔にならないバックグラウンドというより、重くなりがちな話に押しつぶされることなく、気持ちを先に運んでくれる。そんな役割をもった音楽。
重要なマルタの歌(革命の火を絶やさない“燃料”となった)ヘイ・ジュード。ヤナーチェクの楽曲、チェコ民謡など、コンサート会場にいるように、時間は過ぎます。音を聞いてるだけでもいいです。

女の敵のようなプレーボーイだが、思想的には信念を曲げないトマシュ。
トマシュと同じように生きている、ある意味よき理解者のサビーナ。
二人とは違い、そばにいて愛したいテレーザ。
三人ともインテリで、それを演じる俳優が魅力的で、質の高い映画になっている。

そして最後の美しいシーン。
雨の降る森の中、そこに光がさし、トラックでの二人の会話。
「何を考えているの?」
「どんなに幸せかと・・・」
ああ、何度も聞いていたい。トマシュ=ダニエル・デイ=ルイスの、天から降りて来たかのような やわらかい声。余韻が残り、涙があふれる。ハッピーエンドなのでしょう

「NINE」の日本公開はいつ?「沈黙」は?読むのに時間がかかるなあ。またもや重いテーマ。存在は軽くないダニエル・デイ=ルイス。

 The Unbearable Lightness of Being Trailer - Juliette Binoche