二月になると必ずこの詩が脳裏に浮かぶ
吉野弘
二月の小舟
。 | 冬を運び出すにしては |
小さすぎる舟です。 | |
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春を運びこむにしても | |
小さすぎる舟です。 | |
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ですから、時間が掛かるでしょう・ | |
冬が春になるまでは。 | |
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川の胸乳がふくらむまでは | |
まだまだ、時間が掛かるでしょう。
また 冬になると必ず更科源蔵の父の歌を思い出す。
父の歌
果てしなく 雪は降りつみ 眉にも外套の襟にも 氷の花を咲かせ 白さを愛し きびしさに耐え 吹雪の幕が去って そして黙って私と並び
「父は名もなく、財力も名誉もなく、原野の中の一本の柏(かしわ)の木のように、陽がてれば地上に影をのばし、風が吹けば口笛を吹き、ほとんど人影もない、雪深い北の原野で生涯を終えた。 このように源蔵は書いている。
この詩は中学二年の国語の教科書に載っていた。 私の大好きな詩である。 そして源蔵のエッセイを読みまくった。 熱く語り朗読した若き日の女教師と この詩を 生徒は思いだすことがあるのだろうか?
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