伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ100

2019-03-25 23:52:38 | ジャコシカ・・・小説

 それにしてもあの時何故、もっと言葉を尽して話しかけることが出来なかったのか。

 「何故」と問いかけ続けることが出来なかったのか。

 まるで絶対の力の前に打ち倒されたように、彼女の言うがままだった。

 別れた後で延々と繰り返される疑問と、怨みとも怒りともつかぬ自問の嵐に、仕舞には疲れ果て何

も判らなくなってしまった。

 その後で彼女が告げた最後の言葉だけが、深い淵のように彼を呑みこんでいった。

 「あなたが解らないの」

  時として聴こえるその言葉は、最初に呑みこまれた淵の底から、今度は瘴気のように湧き上が

り、彼を内側からじわじわと腐食し続けた。

 忘れることが一番、そう思っていたのに再び目の前に現れた女は、いやでも彼の女を思い出させ

た。

 顔や姿ではない、その迷いのない物言いと明瞭な性格、うかつにも洋食屋でカレーとハヤシのミ

ックスライスを食べるまでは気付かなかった。

 その上もう一つ気付いたことは、美奈子のことが嫌いではないことだ。

 塩辛を突っつきながら、一本の銚子が空になる頃、高志は美奈子には近付き過ぎないように注意

しなければならないと思った。

 「懲りもせず」

 自嘲気味に嗤(わら)いながら彼は、熱燗の追加を注文した。

 

 雪かきというものが、どんなに骨の折れる仕事であるか初めて知った。


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