伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ95

2019-01-29 19:35:11 | ジャコシカ・・・小説

ぐずぐずしている内に、とうとう本当に雪が降ってきた。

 寒い朝カーテンの隙間から差す陽の光りが、いつもより明るいことに気付いて外を見たら、街は

白一色に輝いていた。

 空は青く晴れ渡り、地上は柔らかな綿布団に包まれて、眩しく輝いている。

 こんなに優しく美しいなら、春まで留まっていてもいいか、高志は思わずつぶやいていた。

 雪の街がこれほど美しいものだとは知らなかった。

 遅出で日も高くなった雪の通りを歩いていると、そのままどんどん何処までも行きたくなる。

 行き交う人々の目深に被る帽子と、襟を立てたコート姿にも、どこか優しさを感じてしまう。

 思わず柄にもなく、言葉の一つもかけてみたくなる。どうやら自分が、初めての北の冬の戸羽口

に立っていることに気付く。

 厳しさを知らないなら冬はただ美しい。

 そんな雪の日が続き始めると、店の者達の会話が増える。

 シンクに背を丸めた姿に、永山美奈子が声をかけてきたのも、そんなある朝だった。

 「高志さんて皿洗いが好きなんだって」

 上げた顔のすぐそばに、細面をさらに強調するような小さな顎と色白の頬があった。

 青味を帯びた大きな目が睨んでいるようできつい。

 無口だが動きは素早く、いつも人の先に立っている印象のある娘だ。

 そのせいか高志は自分より年上だと思っていた。

 店内が持ち場なので、普段は厨房の高志とは、あまり口を利くことはない。

 その彼女がめずらしく、洗い場に立って高志を見ている。

 高志はゆっくりと腰を伸ばしてから応えた。
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