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生物と映画と政治とマレー・インドネシア語にうるさい大学生の戯言

節電の目的って。

2011-06-07 00:43:35 | 政治
 東日本大震災以降、夏場の電力不足を防ぐために企業、家庭に一律15%の節電が求められ、クールビズの衣服や扇風機が飛ぶように売れて、東日本は空前の節電商戦が続いている。テレビでも、過程でできる節電対策が連日報道されていいて、「冷蔵庫の運転強度は『強』から『中』か『弱』に、中に入れるのは容量の70%程度で」など、空でも言えてしまうくらい。そんなムードに水を差すようで、炎上が不安なのだが(水を差して炎上っておかしい)、今の時期にこれだけ節電の努力をするメリットって何だろうか。

 東京電力をはじめとする電力会社は、消費者が電気を使うことで利益をあげている。べらぼうに単純な考え方をすると、節電されたら売り上げや利益が減ってしまいそうである。震災前から電力会社は節電のPRを進めていたが、その目的はピーク時の需要ひっ迫を防ぐことで、夜間も含めた総消費量の減少ではないと考えられる。記憶が不確かで申し訳ないが、朝日新聞で「東電の収支が福島第一原発事故や計画停電に伴う電力供給の激減により極度に悪化」といった趣旨の記事を目にしたような気がする。節電が同じような効果をもたらすとすれば、東電管内の消費者が節電すればするほど、東電の経営は厳しくなっていくのではないか。現在東電は、福島第一原発事故による多額の賠償(数兆円に達するとまで言われる。わが横浜市の歳入が1.5兆円だから、とんでもない規模だ)を負っており、株価は300円を割ってしまっている(震災前は2000円強だった)。社債もまともに発行できておらず、破たん寸前の経営危機だ。そんな東電の売り上げを、需要がひっ迫していない今から我々の節電で(善意からとはいえ)減らしてしまったら、事態はますます悪くならないか。

 政府がどれだけ支援すべき課は激しい議論の的だが、仮に日本航空のように政府のバックアップ下に置かれるとすれば、その費用は結局国民全員の負担になる。電力融通を受ける程度の遠方に住む人々まで負担させられるのはただでさえ不条理なのに、その負担が東電管内の我々の節電によってさらに増してしまうのはあまりに酷だろう。

 もちろん、夏場には全力で節電に取り組むべきであるし、電車の運行本数を減らすなど、今から節電意識を高め、また節電による一定の不便(被災地の方々にとってはあまりに贅沢であるが)になれることも重要である。しかし、NHKなどで発表される電力使用状況では、このところの電力需要はピーク時でも供給能力の80%ほどで推移している。夜間ならばもう少し余裕もあるだろう。発電所を古い火力まで含め限界ギリギリで稼働させ続けるのはまた問題だが、今のうちは家庭で1~2%でも切り詰めようとするほど厳格なことはせず、これまでどおりの生活を続けることが、結局は将来のためになるのではないか。

 重ねて言うが、自分は東京電力の回し者でもないし、反エコロジストでもない。皆がエネルギー消費を抑えて生活することは、地球環境のことを考えればこれからの時代では当然である。それに、いまだに水道すら復旧しないところも多い被災地の方々のことを考えると(いや、首都圏に居座ってボランティアにも参加せず、こんなのんきな暮らしをしながら考えようとすること自体が所詮上から目線で、自分には彼らのことを考える権利すらないのだろうが)、手放しに電気の恩恵を享受する気になどなれないのも事実。だからといって、駅でエスカレーターを停止させまくり、視覚障害者の方のための誘導チャイムすら切ってしまうようなやり方は、高齢者や身体・精神その他に不自由を抱える方々にとって非情でしかなく、本来の節電の目的とはかけ離れている。

 今まで、自分と同じ意見を持つ方を拝見したことが全くないので、きっと自分の意見に大きな間違いがあるのだろう。化石燃料は今のうちに輸入してある程度使わずに保管しておくほうが、北半球諸国が夏になって需要が高まる夏場に買い足すよりも安く済むのかもしれない。間違いに気づかれた方にはぜひ指摘してほしい。まさか、先日政府の国家戦略室がまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」でも原子力を「重要戦略」と位置づけさせ、発送電分離への言及をつぶすなど大活躍の経済産業省が「原発がないと節電しなきゃいけなくて大変でしょう、だからまだ建てなきゃいけないんですよ」とすりこもうとしているのが実情、というわけではあるまいが…。仮にそうだとしても、もはや節電がブーム、ブランドと化した今では無意味でしょうが。

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