この少女に片思いをしていた同じクラスの空気男が交通事故で死んで猫に生まれ変わった
子猫の時に少女に拾われてから三年が経つ
彼女を癒したり励ましたりは今まで出来るだけしてきたけれど
猫の力ではどうしようもない時もあるんだ
そんな時、猫はずっと傍で見守っている
少女の肩が震えた時は「んにゃぁ…」と小さい鳴き声をかけてみる
「もう薄暗くなってきたぞ」「帰ろうや」「腹冷やすぞ」「焼き肉でも行くか?」
人間に生まれ変わっていたら慰めたり笑かしたりも出来たかも知れないけど
生前の少年のままなら声すらかけられないだろう
どうしたものか
と、猫が二度目の鳴き声をかけようとした時
『ぐぅぅぅ~』
と少女の腹が鳴る
「帰ろっか」
「なぉ…」
少女は猫に泣き言を言ったり相談をしたことはない
哀しい時やつらい時、いつも傍に座ってくれる
それだけでよかった
じっとこっちを見つめてくれる
それだけで心地よかった