
"La Double vie de Véronique"
1991年フランス/ポーランド
監督)クシシュトフ・キェシロフスキ
出演)イレーヌ・ジャコブ フィリップ・ヴォルテール
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
ル・シネマにて
歌うことが大好きなポーランドのベロニカ(イレーヌ・ジャコブ)は、クラクフの音楽学校で働く友人を訪ねた際にその才能を見初められ、コンサート・デビューが決まる。喜んで練習に励むベロニカだったが、彼女は心臓に疾患を抱えていた。
一方、パリで音楽教師をしているベロニカ(イレーヌ・ジャコブ=二役)は自分の生活に意味を見出せず惰性で毎日の生活を送っている。そんなある日、学校行事で人形劇を観にいった彼女は人形使いの男・アレクサンドル・ファブリ(フィリップ・ヴォルテール)に強く魅かれる。
常にもう一人の自分がいることを感じているふたりのベロニカの物語。
うたた寝をしていたパリのベロニカが、チラチラする光が気になって起き上がり窓から外を覗くと、それが向かいのマンションの子供の鏡を使ったいたずらだと分かるシーンがあります。
微笑むベロニカ。手を振って窓を閉める子供。振り返って部屋の中を見やるベロニカ。ゆらめく光は消えていない、子供は窓の中に引っ込んだのに。
ポーランドとフランスの二人のベロニカの物語なのですが、実はポーランドのベロニカは念願だった演奏会のステージの上で命を落としてしまいます。若い人生を目一杯楽しみ一所懸命生ききったポーランドのベロニカ。
彼女が亡くなった後、フランスのベロニカの身の回りにささやかな奇跡が、本当にささやかに起こり続けるわけです。まるで誰かが彼女を見守っているかのように。
その顕現は光だったり、音楽だったり、小道具だったり。
このささやかさが想像力を掻き立てるんですよね。
優れた俳句がそうであるように、この作品は決して雄弁ではありません。ただ、もうひとりのベロニカの存在が微かにほのめかされるだけで。そこには辻褄を合わせようという無駄な説明は全く無い。
ライブリーなポーランドのベロニカとアンニュイなフランスのベロニカ。対照的な二人を今作でカンヌの主演女優賞を受賞したイレーヌ・ジャコブが大好演。当時ほとんど無名だった彼女を抜擢した故キェシロフスキの眼力も流石です。
『美しき運命の傷痕』封切が間近ですが、キシェロフスキの繊細な世界を『ノーマンズ・ランド』のタノヴィッチがどんな風に映像化したのか、ますます楽しみになってきた次第です。
「美しき運命の傷痕」の前売り券を買って帰宅したところでした。と言いながら、実は「ふたりのベロニカ」は未見のアタクシなんですけどね。記事を拝見し、興味が湧きましたよー。ついでに白状すると、「トリコロール」三部作も未見だし、この機会に見るべし!ですね。
前売り券は、同時に3枚買ってしまったので、お財布の中は紙幣よりも映画の前売り券でパンパンになっております。「隠された記憶」と「ステイ」も買っちゃいました。「Ⅴ フォー・ヴェンデッタ」もあるし、もう誰にも止められませんわ。
そう言えば。Kenさんは「ブロークバック・マウンテン」は見るのかしら?「クラッシュ」よりコッチ!という意見が多い中、アタクシは断然「クラッシュ」が好きという少数意見なのでありました。
>お財布の中は紙幣よりも映画の前売り券でパンパン
この財布内の状態、映画ファンとしてすごく正しい気がしますね。なんというか、私は人間である前に映画ファンである、という決意表明のような(笑)。
『トリコロール』三部作、まさに僕が単館系の映画を観るようになったきっかけの中の1本(というか3本)です。今まで観てきたハリウッド映画とは明らかに違う空気感にすごく魅かれたのを覚えてます。
>「ブロークバック・マウンテン」は見るのかしら?
うーん、あんまり惹かれないんですよね、この作品。ゲイを真正面から扱った映画、ということで話題になっていますが、これ、物語そのものはストレートな恋愛物語なのだと推測しています。ストレートな恋愛物、どうもダメなんですよ。うーん、年齢と共にひねくれてきたのかな??
そういえば、ぴあの別冊、僕も買いましたよ!
ここのところ飲み会が続いて(今日も含めて只今5連チャン!)本をゆっくり読むことが出来ず・・・。
読んだら僕も記事をアップするつもりなので、その際にはゆっくりそちらにも寄らせていただきますね!
キェシロフスキは、『トリコロール』からの体験なので、この映画は見ていませんでした。
ニュープリント版の上映が、うれしかったです。
スクリーンでみてよかったと心から思えます。
幻想的で美しい映画でしたね。(うっとり)
僕もこの作品は未見だったので、うれしい再上映でしたです。
こういう、言葉ではなく映像や音楽で魅せる作品は、やっぱり映画館で鑑賞すると感動もひとしおですよね。
時代を感じさせない、素晴らしい作品でした!