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セルロイドの英雄

ぼちぼちと復帰してゆきますので宜しくお願いしまする。

【映画】マリー・アントワネット

2007-01-22 23:06:30 | 映画ま行

"Marie Antoinette"
2006年アメリカ/フランス/日本
監督)ソフィア・コッポラ
出演)キルスティン・ダンスト ジェイソン・シュワルツマン ジュディ・デイヴィス ジェイミー・ドーナン スティーヴ・クーガン リップ・トーン アーシア・アルジェント マリアンヌ・フェイスフル
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて

ハプスブルグ家から、後にフランス王ルイ16世となるルイ・オーギュスト(ジェイソン・シュワルツマン)の許に嫁ぐマリー・アントワネット(キルスティン・ダンスト)。
世継ぎを望む宮廷の空気と夫ルイの無関心の狭間で悩むマリーは、華やかな宮廷の中で逃げるように贅沢と浪費に耽るようになる。
全面的にヴェルサイユ宮殿でロケを行ったことでも話題のソフィア・コッポラ最新作。

「ヴェルサイユの生活は想像できなくてもティーンの気持ちはわかると思った」とのたまうソフィア・コッポラ監督。
そんな彼女の描くマリー・アントワネットの物語は、革命に翻弄されるひとりの女性の悲劇でも、民衆を搾取する悪女の一代記でもなく、悩めるセレブ・ティーンエイジャーの青春物語。

まあ、監督自身が生まれつきのセレブリティーなわけですから、存分に甘やかされたマリー・アントワネットの生活の描き方に全く迷いが無い。
時代考証に拘らず、とにかく自分の(多分)チヤホヤされて育った青春時代に思いっきり引き付けてマリー・アントワネットの宮廷生活を描ききった印象。
もっともらしくヴェルサイユ宮殿でロケなんかしてますが、これだって物語に当時の空気を呼び込む効果は全く感じられず、その豪華絢爛さはマリー・アントワネットのセレブリティーっぷりに奉仕する為のみに存在しているように見えます。

そう、一般日本人男性である僕なんかから見るとこれは相当嫌味な作品なんです。
共感も何も無い。お金持ちによる、大金を掛けたおままごとを見せられてるようなものです。

それなのに、この映画は嫌いになれない。むしろ好き。

なにしろセンスが良いんです。
80年代のニューウェーブを多用した音楽。カラフルな色使い。光の扱い方が抜群な映像。
センスの良さ一発で、この嫌味な物語が何だかすごく魅力的に思えてしまう。

『ヴァージン・スーサイズ』以来一貫しているこのハイセンスっぷりこそがソフィア・コッポラをソフィア・コッポラたらしめているわけで、極論すれば中身の薄い内容を、何だかそれらしく観せてしまうんだと思います。

フランス革命前夜の不穏な時代を描きながら、ほぼキレイなものしか出てこないという、例えばケン・ローチ作品とは対極にある映画ですが、僕はこれもこれで積極的に価値を認めます。
コメント (17)
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【映画】マッチポイント

2006-08-20 21:22:53 | 映画ま行

"Match Point"
2005年イギリス
監督)ウディ・アレン
出演)ジョナサン・リース・メイヤーズ スカーレット・ヨハンソン エミリー・モーティマー マシュー・グード ブライアン・コックス ペネロピー・ウィルトン
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
恵比寿ガーデンシネマにて

会員制の高級テニス・クラブで専属コーチに就いた元プロ・テニス・プレイヤー、クリス(ジョナサン・リース・メイヤーズ)。
そこで大富豪の息子トム(マシュー・グード)と懇意になったクリスはオペラの観覧に誘われる。
トムの家族に取り入りトムの妹クロエ(エミリー・モーティマー)と付き合い始めたクリスは家族の経営する会社に幹部として入社するなど順調に出世してゆくが、トムの婚約者であるアメリカ人女優、ノラ(スカーレット・ヨハンソン)がどうしようもなく気になりだす。
NYを飛び出したウディ・アレンがロンドンを舞台に繰り広げるサスペンス劇。

周到に計算し大富豪一族に入り込んでゆく美貌の青年。
そのための努力は怠らないし、その目論見は着々と達成されてゆく。
それでも最後にはその人生は運の有る無しに決定的に左右されてしまう。
ネットにあたったボールが自陣に落ちれば負けだし、相手のコートに落ちれば勝ち。
人生は本当にままならないものです―。

これだけでも十分ウディ・アレン的な物語なのですが、今回はなにしろロンドンが舞台ですからね。それだけでは終わらない。

今回アレンさんの皮肉な世界観の矛先が向かったのはイギリスの上流社会。
なにしろ鷹揚に構えた彼らの世界は安定している。運の有無に右往左往するクリスとは対称的に彼らの世界は決して揺るがないし、手に入れたいものは確実に手に入れてゆく。
たとえ何かを失ったとしても代替品は手を伸ばせばそこにある。

特に、トムを演じたマシュー・グードは、この上流社会の雰囲気をうまーく演じていました。
決して出番が多かったわけではないですが、とても印象深く。
いかにも坊ちゃん然としたトムは決して嫌な人間ではなく、むしろ良い性格をしていると思うのですが、何だかその天真爛漫さが鼻につくというか。
誰かの邪魔をしたり、クリスに意地悪をしたりするわけではなくとも、何故かそこにいるだけで嫌なセレブリティー臭がプンプンとして。
こういう具体的に表現できない嫌味な感じをさりげなく演じるところ、なかなかな俳優さんだと思います。

そしてもちろんファム・ファタルのノラを演じたスカーレット・ヨハンソン。
そりゃもう色っぽいですよ。
「君は官能的な唇をしてるね。」
このセリフ、アレンさんどうしても入れたかったんだろうなあ。
コメント (16)
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【映画】メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

2006-03-19 20:33:40 | 映画ま行


"The Three Burials of Melquiades Estrada"
2005年アメリカ/フランス
監督)トミー・リー・ジョーンズ
出演)トミー・リー・ジョーンズ バリー・ペッパー フリオ・セサール・セディージョ ドワイト・ヨーカム ジャニュアリー・ジョーンズ メリッサ・レオ
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
恵比寿ガーデンシネマにて

テキサスとメキシコの国境地帯。アメリカに不法入国しテキサスの牧場で働くメキシコ人カウボーイ・メルキアデス・エストラーダ(フリオ・セサール・セディージョ)が射殺される。被害者が不法入国者であったところからまともに捜査しない保安官事務所。
メルキアデスの親友ピート・パーキンズ(トミー・リー・ジョーンズ)は、原因が新人国境警備隊員のマイク(バリー・ペッパー)の誤射だったことを突き止めマイクを拉致、メルキアデスとの約束を守って遺体を故郷に埋葬するためにメキシコの寒村ヒメネスを目指す。

公開2週目の土曜日、昼過ぎの回。
カンヌで主演男優賞&脚本賞を受賞した話題の映画だし、混んでるんだろうなあ、と思いながら結構ギリギリの時間にチケットを買ったのですが、整理券番号63番目。意外に空いてました。
まあ、物語を一言で説明しろと聞かれたら、「死んだ男を埋葬するためにひたすらメキシコの寒村を目指す男達の物語」と答えるしかない地味な作品ですので、こんなものなのかもしれないですが・・・。
だけどこのシンプルな粗筋のロード・ムービー、すごくコクがあるわけで、それはもうLotRのフロドの旅にだって負けない中身の濃い旅。

打算の無い、無骨な男の友情物語。
そこでは国境も、法律も、そしてその生死さえも関係ない。
ただひたすら「死んだら故郷に埋めてくれ」という親友との約束を守るために馬を駆る主人公ピートの思いが清清しい。

そんな旅に付き合わされるマイク、美しい妻と安定した仕事を持っていて、申し分のない生活をしているように見えるのですが、実はそれはただ毎日同じことを繰り返すだけの無感動な日々の繰り返しに成り下がっていて、その様子は醜悪でさえあります。

そんな一般人をカリカチュアしたような存在のマイクが、旅を続けるうちにアウトサイダーであるピートに感化されてゆく。もしかしたらピートは傍から見たらドン・キホーテのような滑稽な存在なのかもしれません。だけどそこには打算の無い一途さがあるし、それは多分今の世の中では得難いものなのかもしれない。
そこがこの映画を観て胸に迫ってくるのです。

地味な俳優陣の地味な演技も素晴らしい、観れば観るほど味の出てくる作品です。
個人的には、マイクの妻を演じたジャニュアリー・ジョーンズさん、良かったなあ・・・。
ダイナーでアンニュイに煙草を吸う様とか、かなりツボ。
見れば見るほど美人さんです。

コメント (32)
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【映画】マンダレイ

2006-03-12 18:07:06 | 映画ま行


"Manderlay"
2005年デンマーク
監督)ラース・フォン・トリアー
出演)ブライス・ダラス・ハワード ダニー・グローヴァー イザーク・ド・バンコレ ウィレム・デフォー
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
シャンテ・シネにて

1933年アメリカ。ドッグヴィルを後にしたグレース(ブライス・ダラス・ハワード)は、父(ウィレム・デフォー)率いるギャングの一団と共にアラバマに向かう。途中、マンダレイという農園の前で車を停める一行。高い鉄柵に囲まれたその農園の中では、70年前に廃止されたはずの奴隷制が未だに生きているのだった。義憤に駆られたグレースはマンダレイに残り、民主的な社会の建設を目指すが・・・。
ニコール・キッドマン主演の『ドッグヴィル』に続く、ラース・フォン・トリアーのアメリカ三部作第2弾。
前作に続いて演劇のような簡素なセットが舞台です。


昨日の初日2回目に観ました。結構な混雑を予想して早めに行ったのですが、これが意外に空いていて。
まあ、ニコール・キッドマンやビョークのようなビッグ・ネームが出ているわけではないし主要な映画賞を取ったわけでも無いので、ただのラース・フォン・トリアーの新作というだけでは動員力はこんなものなのかも知れませんが・・・。
『ドッグヴィル』ではやけに新鮮だった演劇のようなアブストラクトな舞台装置だって2回目ですからね。驚きは特に無いわけです。

毎回話題を振りまくトリアー作品なのですが、今作はそういうことで彼の作品にしては地味。変な先入観無しで観ることが出来ました。

アメリカに行ったことが無い(というかフライト恐怖症で飛行機に乗れないそうです)トリアー監督が描くアメリカ、今作ではアメリカ政府の独りよがり民主主義にもの申しております。
酷い生活を送るマンダレイの奴隷達を見た余所者グレースは素直に「ヒドイ!」と憤慨し、銃を携えた父の配下のギャングたちと共に残り、上から民主主義をガシガシと押し付けてゆくわけです。
なぜならそれこそが唯一無比の正義と信じているから。
立ち止まって「マンダレイには何故奴隷制度が残っているのか、その必然性は?」という検証することは無い。それ故に、最初はうまく行っていたように思える即席民主主義も段々破綻をきたし、やがそれは悲劇につながってゆく。

グレースのすることはあまりにも容易に現代アメリカ政府の行動を連想させるし、物語も図式的にすぎるきらいはあります。意外性はあまり無い。

だけど、この映画は面白い。それはやっぱりあの簡素な舞台装置が想像力を十分刺激するからだし、トリアー監督の、ときには観客に生理的ショックを与えるその語り口が今作でも有効だからだと思います。

しかしこの映画、R-18ということで、ばっちり色んなトコロが見えてましたね。まあ今更そんなことで大騒ぎする時代では無いのかもしれませんが、やっぱり「おお!」と身を乗り出してしまいますよ(笑)。

コメント (24)
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【映画】ミュンヘン

2006-02-05 20:22:00 | 映画ま行

"Munich"
2005年アメリカ
監督)スティーヴン・スピルバーグ
出演)エリック・バナ ダニエル・クレイグ キアラン・ハインズ マチュー・カソヴィッツ ハンス・ジシュラー ジェフリー・ラッシュ
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
シネプレックス幕張にて

1972年、ミュンヘン・オリンピック。パレスチナ・ゲリラ”黒い九月”によるイスラエル選手団11人の人質事件が起こり、結局人質になったイスラエル人11人は全て命を落とすことになる。
事件を主導したパレスチナ人幹部暗殺を秘かに計画したイスラエル政府は、諜報組織モサドのメンバー・アヴナー(エリック・バナ)をヨーロッパに送る。
暗殺を着々と遂行してゆくアヴナーと暗殺団メンバーだったが、逆に自分たちもつけ狙われるようになる・・・。


アヴナー達がアテネで潜伏する隠れ家で、思いがけずPLOのメンバー達と同宿する羽目になる場面があります。ラジオのチャンネル争いをするモサドとPLOのメンバー達。緊張に満ちたこの作品の中で唯一といって良い可笑しいシーンだったのですが、その水と油な二組が「これなら良いだろう」と妥協したラジオ・ステーションから流れるのはアル・グリーンの当時のヒット曲"Let's Stay Together"。

そして、「良い時も悪い時も寄り添っていよう」と甘く語りかけるアル・グリーンの歌声を遠くに聴きながら、部屋の外でアヴナーとPLOの若いメンバーが語りあうんですよね。パレスチナ国家樹立の夢を語る若者とそれが理解できるはずの無いアヴナー。
このシーン、すごく好きです。
そこでは、分かり合えないまでもイスラエル人とパレスチナ人が対話をしているわけです(PLOのメンバー達はアヴナー達のことをイスラエル人だとは知らないのですが)。
暴力が暴力を、報復が報復を呼ぶ、長く陰鬱なこの映画の展開の中で際立って印象的な場面でしたし、自身もユダヤ系であるスピルバーグのメッセージを僕はこの平和なシーンに感じました。

前述したとおり、長く陰鬱な映画なのですが、スピルバーグの手馴れたサスペンス演出によってだれた感じはありません。この映画の中心となる数々の暗殺シーンでも、子供が巻き込まれそうになったり爆弾が爆発しなかったりと、ちゃんとドキドキできる仕掛けになっています。
それでも僕がこの映画から受けるのは、すごく私的で内省的な印象。

大作ばっかり作っている映画監督、僕はわりと苦手なのですが、スピルバーグだけはどこか信用できる。その理由は、彼のたまにこういう作品を作ってしまうところにあると思っています。
コメント (37)
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【映画】ミステリー・トレイン

2006-01-15 23:13:09 | 映画ま行

"Mystery Train"

1989年アメリカ/日本
監督)ジム・ジャームッシュ
出演)工藤夕貴 永瀬正敏 ニコレッタ・ブラスキ エリザベス・ブラッコ ジョー・ストラマー スティーヴ・ブシェミ リック・アヴィルス スクリーミン・ジェイ・ホーキンス サンキー・リー
満足度)★★★★★ (満点は★5つです)
DVDにて

サン・スタジオとグレイスランドを観光するためにメンフィスを訪れたミツコ(工藤夕貴)とジュン(永瀬正敏)の日本人カップル、夫の遺体をローマを送る途中にメンフィスで足止めを食ったイタリア人女性ルイザ(ニコレッタ・ブラスキ)、計らずも酒屋強盗をしてしまったジョニー(ジョー・ストラマー)とその仲間達。
ある一夜、メンフィスの同じホテルで過ごすことになった人種も境遇も違う3組の物語。


いや、本当に懐かしい。
学生の頃この映画が相当大好きで、メンフィスまで行ったことを思い出します。
舞台となったホテル、ルイザがエルビスの幽霊話を聞くレストラン、エルビスの銅像、鉄道駅、そしてサン・スタジオ、全てメンフィスのダウンタウンから徒歩圏内にあって、また、どこも良い感じに寂れてるんですよね。
その風情に、「ああ、映画のとおりだ!」なんて感激したことを思い出します。

その時うれしかったのが、他の数少ない日本人観光客(というか街を歩いている人間そのものが多くない)と話してみると、僕と同じように『ミステリー・トレイン』ロケ地参りに来た、という人が何人かいたんですよね。
そう、この映画、「メンフィスに行ってみたい!」と思わせる魅力がある、ということだったんだと思います。映画の主役はまさにメンフィスという街なのです。

いつまでもエルビスの亡霊から逃げられない、寂れた街メンフィス。スタックスやハイなどの名門ブラック・ミュージック・レーベルの栄華も今は昔、(多分)富裕層は郊外に引越し、貧困層だけがダウンタウンに残った疲れた町並み。そんな疲れた街の雰囲気が、外部の人間である僕にはすごく魅力的に映りました。 

そんな、僕にとっては街が主役の映画なのですが、そうは言ってもこの映画の配役、憎らしいくらい気が利いています。特にミュージシャン組。スクリーミン・ジェイ・ホーキンスのとぼけたホテル支配人、ジョー・ストラマーの英国出身の労働者、そしてDJ役で声だけ出演のトム・ウェイツによるラジオから流れるダミ声。すごくキャッチーな配役です。

ジム・ジャームッシュの昨年公開された『コーヒー&シガレッツ』、十何年の間に撮りためたフィルムなのに、どの作品も全然古さを感じなかったことに関心したものですが、この映画にしてもなるほど全然古臭くないです。

やっぱり好きです、ジャームッシュ。DVDセット買って良かった!
コメント (3)
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【映画】ミリオンズ

2005-11-28 22:51:30 | 映画ま行

"Millions"

2004年イギリス/アメリカ
監督)ダニー・ボイル
出演)アレックス・エテル ルイス・マクギボン ジェームズ・ネスビット デイジー・ドノヴァン
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
シネマライズにて

マンチェスター郊外の新興住宅地に引っ越してきたカニンガム一家。母親を亡くしたばかりの一家は、父・ロニー(ジェームス・ネスビット)が男手一つで二人の小学生の息子を看ている。兄のアンソニー(ルイス・マクギボン)はしっかり者の現実主義者。弟のダミアン(アレックス・エテル)は聖人マニアの夢見がちな理想主義者。
引っ越してきて間もないある日、ダミアンがいつものように段ボールで作った秘密基地で遊んでいると、空からポンド紙幣が詰まったカバンが降ってくる。神様の贈り物と思い込み恵まれない人たちにお金を分け与えようとすると弟と不動産に投資するなどして利殖を目論む兄。
ユーロへの切り替えを目前に、大量のポンド紙幣を使い切るべく右往左往する兄弟だったが、実はそのポンド紙幣は列車強盗が盗んだお金だった。
やがて彼等のまわりに無くしたカバンを探す強盗犯の影が・・・。


「トレインスポッティング」のダニー・ボイル監督が、「自分の子供にも観せられる映画を作りたい!」と思って作った作品だそうです。確かに、今までの作品は毒があるから子供にわざわざ観せようとは思わないですよね。ただ、じゃあこの作品がただの爽やかな子供映画になっているかというと、全然そんなことはない。暴力シーンやドラッグが出てこないだけで、やっぱり手触りはエッジの効いたダニー・ボイルな映画です。

それにしても、ダミアンの夢見勝ちっ振りが素晴らしい!聖人マニアの彼の前には、ことあるごとにキリスト教史に残る聖人達が現れてアドバイスをしてゆくのですが、このダミアン、聖人が出てくるたびにそいつの生没年を暗唱するんですよね。「あ、アッシジの聖フランチェスコ、1***年から1***年!」みたいに。これが可愛らしい。
そんな彼は自分も聖人になるべく大量のポンド紙幣を分け与えようと貧しい人たちを探してまわるのですが、ストレートに「Are you poor?」って聞いてしまうわけです、まっすぐ目を見つめながら。これもまた微笑ましい。
周りの世知辛さの中で、ダミアンの純真さが際立って何とも言えず良いんです。

そんな彼に、終盤、ささやかな奇跡が起こります。この場面、ダミアンをいつの間にか応援していた僕にとっては結構ジンワリ来るわけです。良かったな、ダミアンと。

ただこの映画、ラスト・シーンがなあ・・・。ちょっとキレイにまとめすぎなような。キレイすぎて鼻白んでしまいました。
自分が大人だからなのかなあ?
もしかしたら、このラスト・シーンこそダニー・ボイルの言う「子供に観せたい映画」、ということなのかもしれませんが・・・。
コメント (9)
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【映画】未来世紀ブラジル

2005-09-04 09:23:35 | 映画ま行

1985年イギリス/アメリカ
監督)テリー・ギリアム
出演)ジョナサン・プライス キム・グリースト ロバート・デ・ニーロ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
DVDにて

-----あらすじ-----
巨大な官僚組織のもと、徹底した情報統制化にある近未来都市「ブラジル」。情報管理課で働くサム・ロウリー(ジョナサン・プライス)は、ある労働者の誤認逮捕に巻き込まれ運命を大きく狂わせて行く。オーウェルの「1984」を思わせるディストピア映画。実際に監督のテリー・ギリアムは当初タイトルを「1984 1/2」にするつもりでいた。

-----感想-----
ビールが飲みたくなる
最初は快調に、幾分ユーモラスにこの奇妙な官僚社会が紹介されてゆきます。上司が部屋に戻った途端一斉にサボりだす官僚達、書類の不備を指摘され発作を起こす書類恐怖症の配管工、顔の皮膚を無理矢理伸ばして皺を取る整形医。。。未来都市「ブラジル」の住人はみな変人です。
サムが本格的に事件に巻き込まれてゆく中盤以降は段々暗ーくなってゆきます。

奇妙な登場人物達、レトロ・モダンな(というかレトロな)未来の道具達がギッチリ詰まっていて、観ていてワクワクします。人物もモノ達も造形がイチイチ変に凝っています。センスの塊です。

決して明るい映画では無いのですが、この奇妙な調度類、そして幻想的な映像に気持ちよく振り回されて後味は決して悪くないです。最後に優雅に流れる主題歌「ブラジル」のせいかもしれませんが、この後味は"We'll Meet Again"で綺麗に締めた「博士の異常な愛情」に似ているかも。

というか、この映画、全体の肌触りが「博士の異常な愛情」とダブりますね。何かに似ていると思ったのですが、やっと腑に落ちた。

コメント (2)
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