"Marie Antoinette"
2006年アメリカ/フランス/日本
監督)ソフィア・コッポラ
出演)キルスティン・ダンスト ジェイソン・シュワルツマン ジュディ・デイヴィス ジェイミー・ドーナン スティーヴ・クーガン リップ・トーン アーシア・アルジェント マリアンヌ・フェイスフル
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて
ハプスブルグ家から、後にフランス王ルイ16世となるルイ・オーギュスト(ジェイソン・シュワルツマン)の許に嫁ぐマリー・アントワネット(キルスティン・ダンスト)。
世継ぎを望む宮廷の空気と夫ルイの無関心の狭間で悩むマリーは、華やかな宮廷の中で逃げるように贅沢と浪費に耽るようになる。
全面的にヴェルサイユ宮殿でロケを行ったことでも話題のソフィア・コッポラ最新作。
「ヴェルサイユの生活は想像できなくてもティーンの気持ちはわかると思った」とのたまうソフィア・コッポラ監督。
そんな彼女の描くマリー・アントワネットの物語は、革命に翻弄されるひとりの女性の悲劇でも、民衆を搾取する悪女の一代記でもなく、悩めるセレブ・ティーンエイジャーの青春物語。
まあ、監督自身が生まれつきのセレブリティーなわけですから、存分に甘やかされたマリー・アントワネットの生活の描き方に全く迷いが無い。
時代考証に拘らず、とにかく自分の(多分)チヤホヤされて育った青春時代に思いっきり引き付けてマリー・アントワネットの宮廷生活を描ききった印象。
もっともらしくヴェルサイユ宮殿でロケなんかしてますが、これだって物語に当時の空気を呼び込む効果は全く感じられず、その豪華絢爛さはマリー・アントワネットのセレブリティーっぷりに奉仕する為のみに存在しているように見えます。
そう、一般日本人男性である僕なんかから見るとこれは相当嫌味な作品なんです。
共感も何も無い。お金持ちによる、大金を掛けたおままごとを見せられてるようなものです。
それなのに、この映画は嫌いになれない。むしろ好き。
なにしろセンスが良いんです。
80年代のニューウェーブを多用した音楽。カラフルな色使い。光の扱い方が抜群な映像。
センスの良さ一発で、この嫌味な物語が何だかすごく魅力的に思えてしまう。
『ヴァージン・スーサイズ』以来一貫しているこのハイセンスっぷりこそがソフィア・コッポラをソフィア・コッポラたらしめているわけで、極論すれば中身の薄い内容を、何だかそれらしく観せてしまうんだと思います。
フランス革命前夜の不穏な時代を描きながら、ほぼキレイなものしか出てこないという、例えばケン・ローチ作品とは対極にある映画ですが、僕はこれもこれで積極的に価値を認めます。